(Translated by https://www.hiragana.jp/)
直交群 - Wikipedia コンテンツにスキップ

直交ちょっこうぐん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

数学すうがくにおいて、n 次元じげん直交ちょっこうぐん(ちょっこうぐん、えい: orthogonal group)とは、n 次元じげんユークリッド空間くうかんうえのある固定こていされたてんたもつような距離きょりたも変換へんかん全体ぜんたいからなるぐんであり、ぐん演算えんざん変換へんかん合成ごうせいによってあたえる。O(n)表記ひょうきする。同値どうちべつ定義ていぎをすれば、直交ちょっこうぐんとは、もとn×nじつ直交ちょっこう行列ぎょうれつであり、ぐんせき行列ぎょうれつせきによってあたえられるものをいう。直交ちょっこう行列ぎょうれつとは、ぎゃく行列ぎょうれつがもとの行列ぎょうれつ転置てんちひとしくなるような行列ぎょうれつのことである。

直交ちょっこう行列ぎょうれつ行列ぎょうれつしき1−1 である。O(n)重要じゅうよう部分ぶぶんぐんである特殊とくしゅ直交ちょっこうぐん SO(n)行列ぎょうれつしき1 である直交ちょっこう行列ぎょうれつからなる。このぐん回転かいてんぐんともよばれ、たとえば次元じげん 2 や 3 では、ぐんもとあらわ変換へんかんは(2次元じげんにおける)てんや(3次元じげんにおける)直線ちょくせんのまわりの通常つうじょう回転かいてんである。てい次元じげんではこれらのぐん性質せいしつ幅広はばひろ研究けんきゅうされている。

用語ようご直交ちょっこうぐん」はうえ定義ていぎ一般いっぱんして、からだうえのベクトル空間くうかんにおける退化たいか対称たいしょうそう線型せんけい形式けいしき形式けいしき[note 1]たもつような、可逆かぎゃく線形せんけい作用素さようそ全体ぜんたいからなるぐんあらわすことがある。とくに、からだ F うえn 次元じげんベクトル空間くうかん F n うえそう線型せんけい形式けいしきドットせきあたえられ、形式けいしきじょうあたえられるとき、これに対応たいおうする直交ちょっこうぐん O(n, F) は、ぐんもとF 成分せいぶん n × n 直交ちょっこう行列ぎょうれつぐんせき行列ぎょうれつせきさだめるものである。これは一般いっぱん線形せんけいぐん GL(n, F )部分ぶぶんぐんであって、以下いかかたちあたえられる。

ここで QTQ転置てんちであり、 I単位たんい行列ぎょうれつである。

偶数ぐうすう次元じげんすう次元じげん

[編集へんしゅう]

直交ちょっこうぐん構造こうぞう偶数ぐうすう次元じげん奇数きすう次元じげんでいくつかのてんことなっている。たとえば、R のような順序じゅんじょたいうえでは、もと II単位たんい行列ぎょうれつ) は偶数ぐうすう次元じげんでは保存ほぞんするがすう次元じげんでは反転はんてんさせる。この区別くべつ強調きょうちょうするときは、直交ちょっこうぐんO(2k)O(2k + 1)くことがある。また、対応たいおうするリー代数だいすう階数かいすう対応たいおうすることを念頭ねんとういて、文字もじ k のかわりに文字もじ pr使つかうこともある。あとでべるように、対応たいおうするリー代数だいすうとはすう次元じげんでは 偶数ぐうすう次元じげんでは である。

偶数ぐうすう次元じげんにおける O(n) と SO(n) のちが

[編集へんしゅう]

2次元じげん空間くうかんで、O(2) は原点げんてんまわりのすべての回転かいてんおよび、原点げんてんとお直線ちょくせんによるすべてのかがみうつ変換へんかんからなるぐんである。一方いっぽう、SO(2) は原点げんてんまわりのすべての回転かいてんからなるぐんである。

これらのぐん密接みっせつ関連かんれんしていて、SO(2) は O(2) の部分ぶぶんぐんである。なぜなら、ふたつのかがみうつ変換へんかん合成ごうせい回転かいてん変換へんかんあたえるからである。

一般いっぱん次元じげんかんがえると、偶数ぐうすうかいかがみうつ変換へんかん回転かいてん変換へんかんあたえ、回転かいてんのちかがみうつする操作そうさ、およびそのぎゃくは、ひとつのかがみうつ変換へんかんあたえる。よって、回転かいてん操作そうさは O(2) の部分ぶぶん空間くうかんとなるが、かがみうつ変換へんかんのみの部分ぶぶん集合しゅうごう部分ぶぶんぐんをなさないことがわかる。

原点げんてん中心ちゅうしんとしたかがみうつ変換へんかん」は、それぞれの座標軸ざひょうじくたいして、いちかいずつかがみうつすることによって生成せいせいできる。この「原点げんてん中心ちゅうしんかがみうつ」は偶数ぐうすう次元じげんにおいては通常つうじょう意味いみでのかがみうつではなく、むしろ回転かいてんである。2次元じげんでは、2かい適用てきようすると恒等こうとう変換へんかんになるような唯一ゆいいつ自明じめい回転かいてんである。一般いっぱん次元じげんにおいて、この変換へんかんぎゃく変換へんかん自分じぶん自身じしん一致いっちする。4次元じげんにおいてこれはisoclinic(とうはす同型どうけい)であり、この分類ぶんるい一般いっぱん次元じげん拡張かくちょうされるとしたら、すべての偶数ぐうすう次元じげんにおいてそれは isoclinic であるといえる。

実数じっすうたいじょう直交ちょっこうぐん

[編集へんしゅう]

実数じっすうたい R うえ直交ちょっこうぐん O(n, R) および特殊とくしゅ直交ちょっこうぐん SO(n, R)とく誤解ごかいおそれのない場合ばあいO(n)SO(n)かれる。これらは n(n − 1)/2 次元じげんコンパクトリーぐんである。O(n, R)ふたつの連結れんけつ成分せいぶんをもち、SO(n, R)単位たんいもと成分せいぶん、すなわち単位たんい行列ぎょうれつふく連結れんけつ成分せいぶんである。

幾何きかがくてき解釈かいしゃく

[編集へんしゅう]

O(n, R)Rn うえとうちょう変換へんかん全体ぜんたいからなるぐんであるユークリッドの運動うんどうぐん E(n) において、原点げんてんたも変換へんかんからなる部分ぶぶんぐんである。このことから、直交ちょっこうぐんをユークリッドの運動うんどうぐん一般いっぱん線型せんけいぐん共通きょうつう部分ぶぶんとしてあたえることができる: O(n, R) = E(n) ∩ GL(n, R). SO(n) は、原点げんてん中心ちゅうしんであるような(n − 1)次元じげん球面きゅうめん (とくn = 3 のとき通常つうじょう球面きゅうめん) およびたま対称たいしょうなすべての図形ずけい対称たいしょうぐんとなっている。

えん対称たいしょうぐんO(2, R) である。きをたも部分ぶぶんぐん SO(2, R)円周えんしゅうぐん T あるいは 1次元じげんユニタリぐん U(1) に(じつリーぐんとして)同型どうけいである。この同型どうけい写像しゃぞうは、U(1)もと exp(φふぁいi) = cos φふぁい + i sin φふぁい以下いかの SO(2)のもと対応たいおうさせる。

てい次元じげん直交ちょっこうぐんのトポロジー

[編集へんしゅう]

てい次元じげん特殊とくしゅ直交ちょっこうぐんられた位相いそう空間くうかん同相どうしょうである[1]

複素数ふくそすうじょう直交ちょっこうぐん

[編集へんしゅう]

複素数ふくそすうからだ C うえ直交ちょっこうぐん O(n, C) および特殊とくしゅ直交ちょっこうぐん SO(n, C) は、C うえ n(n − 1)/2 次元じげん複素ふくそリーぐんである(つまり、R うえのリーぐんとしてみると、その2ばい次元じげんである)。O(n, C)ふたつの連結れんけつ成分せいぶんをもち、SO(n, C)単位たんい行列ぎょうれつふくむほうの連結れんけつ成分せいぶんである。 n ≥ 2 ではこれらのぐんコンパクトである。

実数じっすう場合ばあいおなじように、SO(n, C)たん連結れんけつでない。 n > 2 では SO(n, C) の基本きほんぐんすう 2巡回じゅんかいぐんであり、SO(2, C)基本きほんぐん無限むげん巡回じゅんかいぐんである。

有限ゆうげんたいじょう直交ちょっこうぐん

[編集へんしゅう]

直交ちょっこうぐん有限ゆうげんたい Fq うえにも定義ていぎできる。ここで q素数そすう pべきである。

しるべすう2 でないからだじょうでは、 直交ちょっこうぐん偶数ぐうすう次元じげんではふたつのタイプ O+(2n, q)O(2n, q)になり、すう次元じげんでは、ひとつのタイプ O(2n + 1, q)になる[2]

V直交ちょっこうぐん G作用さようするベクトル空間くうかんとすると、直交ちょっこうする部分ぶぶん空間くうかん直和なおかずとして、以下いかのようにける。

ここで Liそうきょくてき直線ちょくせんW特異とくいベクトルふくまない。W自明じめい部分ぶぶん空間くうかん {0} のとき、G は + のタイプである。W が 1 次元じげんのとき、Gすう次元じげんになる。W次元じげんが 2 のとき、G は − のタイプである。

とくに n = 1 である場合ばあいには、Oϵ(2, q)すう 2(q − ϵ)面体めんていぐんである。

O(n, q)すうは、しるべすうが2でないとき以下いかしきよってあたえられる。

−1Fqにおいて平方へいほうならば

−1Fqにおいて平方へいほうでないならば

直交ちょっこうリー代数だいすう

[編集へんしゅう]

リーぐん O(n,  F ), SO(n,  F)対応たいおうするリー代数だいすうは、n つぎ交代こうたい行列ぎょうれつ全体ぜんたいからなり、リーブラケット [ , ]交換こうかんによってあたえられる。かく nたいおなじリー代数だいすう対応たいおうし、これを あるいは しるし、直交ちょっこうリー代数だいすうあるいは特殊とくしゅ直交ちょっこうリー代数だいすうという。実数じっすうたいじょうのそれぞれの n についてのリー代数だいすうは、はん単純たんじゅんリー代数だいすうの4つのぞくのうち2つのコンパクトがた (compact real form) である。その2種類しゅるいとは、n奇数きすう 2k + 1 のとき Bk であり、偶数ぐうすう 2r のとき Dr である。

注釈ちゅうしゃく

[編集へんしゅう]
  1. ^ 基礎きそたいしるべすう2 でなければ、対称たいしょうそう線型せんけい形式けいしき形式けいしきのどちらを使つかっても同値どうちである。

文献ぶんけん

[編集へんしゅう]
  1. ^ Hatcher, Allen (2002). Algebraic Topology. Cambridge University Press. pp. 293–294. ISBN 0-521-79160-X. Zbl 1044.55001 
  2. ^ Wilson, Robert A. (2009). The Finite Simple Groups. Graduate Texts in Mathematics. 251. London: Springer. pp. 69–75. ISBN 978-1-84800-987-5. Zbl 1203.20012