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空中くうちゅう投下とうか

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2010ねんのハイチ地震じしんさいC-17 グローブマスターIII輸送ゆそうより空中くうちゅう投下とうかされた人道じんどう支援しえん物資ぶっし

空中くうちゅう投下とうか(くうちゅうとうか, Airdrop)は、航空こうくう輸送ゆそういち形態けいたいであり、飛行ひこうちゅう航空機こうくうきから物資ぶっし投下とうかし、所要しょよう地点ちてん物資ぶっしとどける方法ほうほうである。自衛隊じえいたいでは、人員じんいん降下こうかする空挺くうてい降下こうかと、貨物かもつ装備そうび投下とうかするものりょう投下とうかの2種類しゅるいけている[1]

ものりょう投下とうか[編集へんしゅう]

だい世界せかい大戦たいせん時点じてんもちいられていた輸送ゆそうは、いずれも貨客搭載とうさいこう胴体どうたい左側ひだりがわめんポートサイド)にもうけられており、開口かいこうちいさかったため、空中くうちゅう投下とうかできる兵器へいき機関きかんじゅうけい迫撃はくげきほうなどにかぎられた[2]空挺くうていへいがより強力きょうりょく装備そうび使用しようするためには、軍用ぐんようグライダーや、あるいは輸送ゆそう強行きょうこう着陸ちゃくりくさせて必要ひつようがあった[2]大戦たいせんまもなく大型おおがたパラシュートとプラットフォームによるじゅうものりょう投下とうか方法ほうほう開発かいはつされ、アメリカ空軍くうぐんにおいては、1948ねんフェアチャイルド C-119実用じつようとともにじゅうものりょう投下とうか可能かのうとなった[2]

じゅうものりょう投下とうか方法ほうほうは、コンテナをもちいるものとプラットホームをもちいるものの2種類しゅるい大別たいべつされ[3]、このための器材きざいは、陸上りくじょう自衛隊じえいたいではじゅうものりょう投下とうか器材きざいとして装備そうびされている[1]

連続れんぞく投下とうかされるコンテナ
コンテナ投下とうか方式ほうしきContainer Delivery System, CDS
弾薬だんやく燃料ねんりょう糧食りょうしょくなどの補給ほきゅうしなや、比較的ひかくてき軽量けいりょう小型こがた装備そうびひん(250-1,000キロ)を投下とうか容器ようき収容しゅうようして投下とうかする方式ほうしき[3][1]。ここで使用しようされるのは直径ちょっけい19メートルのものりょうかさ2ごう、または抽出ちゅうしゅつがさ使用しようする場合ばあいもある[3][1]容器ようき投下とうかするとき、輸送ゆそう投下とうか地点ちてん機首きしゅげて[ちゅう 1]機内きないものりょうすべとす「重力じゅうりょく投下とうかほう」をおこない、連続れんぞくしてすう容器ようき投下とうかすることができる[3]C-1では最大さいだい8最大さいだいそう重量じゅうりょうにして8トン、またC-130Hでは最大さいだい16最大さいだいそう重量じゅうりょうにしてやく13.9トンまで投下とうかできる[1]
たとえば81mm迫撃はくげきほう弾薬だんやく投下とうかする場合ばあい1個いっこあたりの梱包こんぽう重量じゅうりょうは910キログラム、梱包こんぽう時間じかん1個いっこあたり15ふんとされる[1]
プラットホーム投下とうか方式ほうしきPlatform Delivery System, PDS[1]
車両しゃりょう火砲かほうアルミニウムせいのプラットフォームに積載せきさいかたばくし、投下とうかぶつ重量じゅうりょうおうじてものりょうかさパラシュート)を1-3装着そうちゃくして投下とうかする方式ほうしき[3]投下とうかさいには、まず直径ちょっけいやく5メートルの抽出ちゅうしゅつがさ機外きがい放出ほうしゅつしてひらきかささせ、その空気くうき抵抗ていこうにより、機内きないのコンベアにっているじゅうぶつりょう機外きがいして、直径ちょっけい30メートルのものりょうかさひらけかさし、降下こうかする[3]。ここで使用しようされるのはものりょうかさ1ごう[1]1個いっこで1.6トンの能力のうりょくゆうしており[3]降下こうか速度そくど投下とうかぶつおもさによってわるものの、おおむね6-9メートル毎秒まいびょうとされる[1]。C-1では最大さいだいで2最大さいだいそう重量じゅうりょうにしてやく8トン、またC-130Hでは最大さいだいで3最大さいだいそう重量じゅうりょうやく19トンまで投下とうかできる[1]
たとえば1/2tトラック投下とうかする場合ばあい梱包こんぽうやく4あいだ、また投下とうかひらけこりしてエンジンを始動しどうするまでにやく30ふんかかる[1]
ソビエト連邦れんぽうでは、プラットフォームと落下傘らっかさんとをむすたい減速げんそくようぎゃく噴射ふんしゃロケットを装着そうちゃくして、着地ちゃくち衝撃しょうげきやわらげるという工夫くふうおこなっていた[3]。またアメリカぐんでは、輸送ゆそう着陸ちゃくりくすれすれのちょうてい高度こうど低速ていそく飛行ひこうさせ、ものりょうかさ装着そうちゃくせずに抽出ちゅうしゅつがさのみでものりょうして地上ちじょうろすというてい高度こうどパラシュート抽出ちゅうしゅつシステム (LAPES実用じつようしたが、これも接地せっち衝撃しょうげきらして極力きょくりょく破損はそんけるための工夫くふうであった[4]

ただし、パラシュートによる投下とうかでは、ふうながされて着地ちゃくち位置いちがずれるという問題もんだいがある[5]。この問題もんだいたいして、アメリカぐんではGPS誘導ゆうどう導入どうにゅうした統合とうごう空中くうちゅう精密せいみつ投下とうかシステム (JPADS開発かいはつしており、2007ねんには実戦じっせん投入とうにゅうした[5]通常つうじょう空中くうちゅう投下とうかでは輸送ゆそう地上ちじょうとの高度こうどが400–10,000フィート (120–3,050 m)程度ていどのところを飛行ひこうするのにたいして、JPADSをもちいた投下とうか場合ばあいは25,000フィート (7,600 m)からでも精確せいかく投下とうか可能かのうであり、対空たいくう兵器へいきによる脅威きょうい低減ていげんできるというメリットもある[5]

一方いっぽう、CDS・PDSよりも小型こがた軽量けいりょう物資ぶっし投下とうかするときにはていコストてい高度こうど投下とうかLow Cost Low Altitude, LCLA)という方式ほうしきもちいられる[6]。これはちいさな木製もくせいパレットに荷物にもつ落下傘らっかさん固定こていし、乗員じょういんしてドアから投下とうかするという手動しゅどう方式ほうしきである[6]。また心理しんりせんようビラ一部いちぶ人道じんどう支援しえん物資ぶっし投下とうか場合ばあいは、衝撃しょうげき考慮こうりょしないため、パラシュートも装着そうちゃくしないで投下とうかする自由じゆう投下とうかFreedrop)がもちいられる[7]

軍事ぐんじ目的もくてきによる投下とうか事例じれい[編集へんしゅう]

日本にっぽん国内こくない[編集へんしゅう]

全国ぜんこく高等こうとう学校がっこう野球やきゅう選手権せんしゅけん大会たいかいだい92かい始球しきゅうしき投下とうかされたボール

日本にっぽん航空こうくうほうではだい89じょう規定きていされており、落下らっか地点ちてん損害そんがいがない地点ちてんであって、事前じぜん国土こくど交通こうつう大臣だいじんとどれば可能かのうとなる。全国ぜんこく高等こうとう学校がっこう野球やきゅう選手権せんしゅけん大会たいかいでは、開幕かいまく試合しあい始球しきゅうしきのボールは航空機こうくうきから球場きゅうじょう投下とうかされるが、これは甲子園こうしえん球場きゅうじょう完成かんせい前年ぜんねんの1923ねん8がつ16にち鳴尾なるお球場きゅうじょう開催かいさいされただい9かい全国ぜんこく中等ちゅうとう学校がっこう優勝ゆうしょう野球やきゅう大会たいかい以来いらい伝統でんとうで、連合れんごう国軍こくぐん占領せんりょうではアメリカ軍機ぐんきによっておこなわれたこともあり、1956ねんだい38かい大会たいかい以降いこう朝日新聞社あさひしんぶんしゃヘリコプターによっておこなわれている[8]

なお自衛隊じえいたい場合ばあい自衛隊じえいたいほう優先ゆうせんされるため国交こっこうしょうとどなくとも空中くうちゅう投下とうかおこなこと出来できる。

国連こくれん世界せかい食糧しょくりょう計画けいかく[編集へんしゅう]

国際こくさい連合れんごう世界せかい食糧しょくりょう計画けいかくでは、1973ねん8がつからかんばつくるしむチャドマリ共和きょうわこくモーリタニアニジェールセネガル、オートボルタ(げんブルキナファソ)の国々くにぐに対象たいしょう支援しえん物資ぶっし空中くうちゅう投下とうかはじめた。ただし、空中くうちゅう投下とうかについては飛行機ひこうき運行うんこうするコスト、投下とうかさき確保かくほ、トラックとくらべてすくない輸送ゆそうりょうなどの問題もんだいがあり、選択肢せんたくし場合ばあい最後さいご手段しゅだんとして実施じっしされている[9]

2023ねんパレスチナ・イスラエル戦争せんそう[編集へんしゅう]

2024ねん3がつガザ地区ちくでは食糧難しょくりょうなん深刻しんこくし、アメリカぐんによる人道じんどう支援しえん物資ぶっし空中くうちゅう投下とうかおこなわれた[10]空中くうちゅう投下とうかさいしては、海域かいいき落下らっかした物資ぶっし回収かいしゅうしようとした住民じゅうみん溺死できし[11]、また、投下とうかした物資ぶっし民家みんか直撃ちょくげきして死者ししゃ事故じこ発生はっせいした[12]同年どうねん5がつハマース死者ししゃ発生はっせいじょうきょうから、空中くうちゅう投下とうか中止ちゅうしうったえた[13]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 航空こうくう自衛隊じえいたい場合ばあい、C-1であればやく6、C-130Hであればやく6から8ほど機首きしゅげる[1]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l 矢作やさく 2018.
  2. ^ a b c 田中たなか 1986, pp. 166–168.
  3. ^ a b c d e f g h 田中たなか 1986, pp. 186–188.
  4. ^ 青木あおき 2019, p. 16.
  5. ^ a b c 井上いのうえ 2012, pp. 112–114.
  6. ^ a b 布留ふるがわ 2023.
  7. ^ Cuny 1989.
  8. ^ 河原かわはら一郎いちろう永井ながい靖二やすじ航空機こうくうきからボール投下とうか甲子園こうしえん球場きゅうじょうよりふる歴史れきし 始球しきゅうしき」『朝日新聞あさひしんぶん』、2018ねん8がつ4にち
  9. ^ 人道的じんどうてき空中くうちゅう投下とうか希望きぼうひかり”. 国際こくさい連合れんごう世界せかい食糧しょくりょう計画けいかく (2021ねん7がつ14にち). 2024ねん4がつ28にち閲覧えつらん
  10. ^ 食料しょくりょう不足ふそく深刻しんこくするガザ 人道じんどう支援しえん物資ぶっし空中くうちゅう投下とうかへ べい大統領だいとうりょう表明ひょうめい”. 朝日新聞あさひしんぶんDIGITAL (2024ねん3がつ2にち). 2024ねん4がつ28にち閲覧えつらん
  11. ^ うみ投下とうか物資ぶっし回収かいしゅうかった住民じゅうみん12にん水死すいし”. CNN (2024ねん3がつ27にち). 2024ねん4がつ28にち閲覧えつらん
  12. ^ ガザ支援しえん物資ぶっし空中くうちゅう投下とうかで5にん死亡しぼう、パラシュートひらかず民家みんか直撃ちょくげき”. AFP (2024ねん3がつ9にち). 2024ねん4がつ28にち閲覧えつらん
  13. ^ ガザへの支援しえん物資ぶっし空中くうちゅう投下とうか、ハマスが中止ちゅうし要請ようせい 2にん死亡しぼう”. AFP (2024ねん5がつ10日とおか). 2024ねん5がつ20日はつか閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]