翼賛よくさん政治せいじ会かい

日本にっぽんの政党せいとう

翼賛よくさん政治せいじ会かい
成立せいりつ年月日ねんがっぴ	1942年ねん5月がつ20日はつか
前身ぜんしん政党せいとう	翼賛よくさん議員ぎいん同盟どうめい
解散かいさん年月日ねんがっぴ	1945年ねん3月30日にち
後継こうけい政党せいとう	大だい日本にっぽん政治せいじ会かい
本部ほんぶ所在地しょざいち	東京とうきょう府ふ東京とうきょう市し麹町こうじまち区く永田町ながたちょう2-12（現げん：東京とうきょう都と千代田ちよだ区く永田町ながたちょう2-12）

翼賛よくさん政治せいじ会かい（よくさんせいじかい、英語えいご: IRAPS, Imperial Rule Assistance Political Society）は、戦時せんじ中なかに存在そんざいした日本にっぽんの衆議院しゅうぎいん・貴族きぞく院いん合同ごうどうの院内いんない会派かいは・政治せいじ団体だんたい。略称りゃくしょうは翼つばさ政せい会かい。日本にっぽんの歴史れきし上うえ、唯一ゆいいつの「一いち国こく一いち党とう」体制たいせいを樹立じゅりつした団体だんたいである。

概説がいせつ

1942年ねん（昭和しょうわ17年ねん）4月がつ30日にちの第だい21回かい総そう選挙せんきょ（翼賛よくさん選挙せんきょ）においては、大政たいせい翼賛よくさん会かい及およびその傘下さんかの大だい日本にっぽん翼賛よくさん壮年そうねん団だん推薦すいせんを受うけた候補者こうほしゃが過半数かはんすうを遥はるかに上回うわまわる議席ぎせき数すうを獲得かくとくしたものの、東條とうじょう内閣ないかくに批判ひはん的てきな非ひ推薦すいせん候補こうほも少すくなからず当選とうせんした。これを憂慮ゆうりょした内閣ないかく総理そうり大臣だいじん東條とうじょう英機ひできは、5月7日にちに政界せいかい・財界ざいかい・言論げんろん界かいの代表だいひょう70名めいを招まねいて翼賛よくさん政治せいじ結集けっしゅう準備じゅんび会かいを結成けっせいさせ、座長ざちょうに住友すみとも財閥ざいばつ出身しゅっしんの小倉おぐら正恒まさつね元もと大蔵おおくら大臣だいじんを起用きようした。

その後ご、現職げんしょく閣僚かくりょう5名めいと追加ついか代表だいひょう2名めいを加くわえた77名めいを発起ほっき人じんとして有志ゆうしによる結成けっせいの体裁ていさいを保たもちつつ、5月14日にちに会かい名めい・綱領こうりょう・規則きそくを発表はっぴょうして新しん組織そしきへの参加さんか要請ようせい状じょうを各界かくかい要人ようじんに発送はっそうした。しかし実態じったいとしては衆議院しゅうぎいんにおける大政たいせい翼賛よくさん会かいの別働隊べつどうたいで、今回こんかいの選挙せんきょにおける推薦すいせん候補者こうほしゃの出身しゅっしん母体ぼたいでもあった翼賛よくさん議員ぎいん同盟どうめいは一旦いったん解散かいさんして新しん組織そしきの中核ちゅうかくを担にない、内務省ないむしょうも速すみやかに政治せいじ結社けっしゃとして認可にんかする方針ほうしんを打うち出だしていた。

その一方いっぽうで、選挙せんきょ以前いぜんに存在そんざいしていた翼賛よくさん議員ぎいん同盟どうめい以外いがいの小しょう会派かいは（同どう交会など、非ひ推薦すいせん候補者こうほしゃの出身しゅっしん母体ぼたいでもあった）については、政事せいじ結社けっしゃとしての継続けいぞくを認みとめずに解散かいさんが命めいじられることになった。このため、今回こんかいの選挙せんきょで選えらばれた衆議院しゅうぎいん議員ぎいんは新しん組織そしきに所属しょぞくしない限かぎり、事実じじつ上じょう政治せいじ活動かつどうが出来できなくなった。

かくして、5月20日にちに翼賛よくさん政治せいじ会かいが結成けっせいされ、初代しょだい総裁そうさいには翼賛よくさん選挙せんきょにおける推薦すいせん候補こうほの選定せんてい機関きかんであった翼賛よくさん政治せいじ体制たいせい協議きょうぎ会かい会長かいちょうの阿部あべ信行のぶゆき元もと内閣ないかく総理そうり大臣だいじんがそのまま横滑よこすべりし、衆議院しゅうぎいんにおいては全ぜん466名めい中ちゅう刑事けいじ訴追そつい者しゃ2名めいと解散かいさんに抵抗ていこうした東方とうほう会かいの6名めいを除のぞく458名めいが参加さんか、既存きそんの院内いんない会派かいはとの事実じじつ上じょうの掛かけ持もちが許ゆるされ、なおかつ任意にんい参加さんかとされた貴族きぞく院いんにおいても411名めい中ちゅう326名めいの参加さんかがあった。なお、東方とうほう会かいも3日にち後ごに解散かいさんさせられて全員ぜんいんが翼賛よくさん政治せいじ会かいに強制きょうせい加入かにゅうさせられることになった。貴族きぞく院いんの院内いんない会派かいはは成立せいりつ時じ以来いらいの建前たてまえ上じょう、会派かいはがまとまって政治せいじ活動かつどうはしないこととなっていたため、ここにおいて一いち応おうは「一いち国こく一いち党とう」体制たいせいが成立せいりつしたことになった。

翼つばさ政せい会かいは挙国きょこく的てき政治せいじ力りょくの結集けっしゅう、翼賛よくさん議会ぎかいの樹立じゅりつ、大政たいせい翼賛よくさん会かいとの密みつなる連携れんけいと大政たいせい翼賛よくさん運動うんどうの徹底てっていが綱領こうりょうに掲かかげられ、政府せいふ提出ていしゅつ法案ほうあんに無む修正しゅうせいで速すみやかに可決かけつさせることで戦争せんそう遂行すいこうに協力きょうりょくすることが、帝国ていこく議会ぎかい議員ぎいんの義務ぎむとされた。翼つばさ政せい会かいは最高さいこう機関きかんとして29名めいからなる総務そうむ会かいが置おかれて藤山ふじやま愛一郎あいいちろうら非ひ議員ぎいんが多数たすうを占しめた。一方いっぽう、帝国ていこく議会ぎかいにおける議事ぎじ運営うんえいのために衆しゅう貴き両院りょういんから各かく7名めいずつの常任じょうにん総務そうむ会かいが設置せっちされて、衆議院しゅうぎいん側がわからは前田まえだ米蔵よねぞう・大麻たいま唯男ただお・永井ながい柳太郎りゅうたろう・山崎やまざき達之たつゆき輔ら、貴族きぞく院いん側がわからは後藤ごとう文夫ふみお・伍ご堂どう卓雄たくお・石渡いしわた荘太そうた郎ろう・岡おか部長ぶちょう景けいらが選出せんしゅつされた。

「翼賛よくさん議会ぎかいの確立かくりつ」という綱領こうりょうにも掲かかげられた目標もくひょう達成たっせいのために、常任じょうにん総務そうむ会かいのメンバーには強力きょうりょくな権限けんげんが与あたえられ、非ひ推薦すいせん候補こうほ出身しゅっしん議員ぎいんら政府せいふに批判ひはん的てきな議員ぎいんに対たいしては、翼つばさ政せい会かいでも議会ぎかい内ないでも発言はつげん権けんを剥奪はくだつしていった。一方いっぽう政府せいふや軍部ぐんぶは、相手あいてが翼賛よくさん議会ぎかいであるといってもこれを無視むしして対立たいりつ状じょう況きょうを惹ひき起おこすことは「挙国一致きょこくいっち」の体裁ていさいを守まもるために避さけなければならず、常任じょうにん総務そうむ会かいのメンバーを入閣にゅうかくさせたり、国内こくない政策せいさくの決定けってい過程かていにおいて翼つばさ政せい会かいの意向いこうを配慮はいりょするなどの「協力きょうりょく」を求もとめざるを得えず、翼つばさ政せい会かいには「包括ほうかつ政党せいとう（catch-all party）」的てきな要素ようそも含ふくまれていた。

ところが、程ほどなく衆議院しゅうぎいんでは旧きゅう政党せいとう（立憲りっけん政友せいゆう会かい・立憲りっけん民政みんせい党とう）単位たんいでの派閥はばつ的てきな動うごきが見みられるようになり、翼賛よくさん議会ぎかいで初はつ当選とうせんを果はたした新人しんじん議員ぎいんの中なかでも翼賛よくさん体制たいせいの申もうし子ご的てき存在そんざいであった大だい日本にっぽん翼賛よくさん壮年そうねん団だん出身しゅっしん者しゃと翼賛よくさん体制たいせいに懐疑かいぎ的てきな既存きそん右翼うよく出身しゅっしん者しゃ（赤尾あかお敏さとし・笹川ささかわ良一りょういちら）が、路線ろせん対立たいりつを行おこなうようになった。また、地方ちほう組織そしきを持もたない翼つばさ政せい会かいでは次つぎの選挙せんきょ活動かつどうが出来できないとして大政たいせい翼賛よくさん会かいとの合併がっぺいを求もとめる動うごきが出でてくるものの、東條とうじょう首相しゅしょうの反対はんたいで押おさえ込こまれてしまった。そして1943年ねん（昭和しょうわ18年ねん）6月がつには、鳩山はとやま一郎いちろう・中野なかの正ただし剛つよしら6名めいの衆議院しゅうぎいん議員ぎいんが翼つばさ政せい会かいから離脱りだつしてしまったのである。

それでも東條とうじょう内閣ないかくが継続けいぞくしている間あいだは翼賛よくさん議会ぎかいとこれを支ささえる翼賛よくさん政治せいじ会かいは取とりあえずは磐石ばんじゃくな体制たいせいを継続けいぞくしていた。1944年ねん（昭和しょうわ19年ねん）7月がつに東條とうじょう英機ひできに替かわって小磯こいそ国昭くにあき朝鮮ちょうせん総督そうとくが後任こうにんの内閣ないかく総理そうり大臣だいじんとなり、替かわりの朝鮮ちょうせん総督そうとくに阿部あべ総裁そうさいが任命にんめいされると、8月がつには後任こうにんとして小林こばやし躋造元もと台湾たいわん総督そうとくが就任しゅうにんした。これ以後いご翼つばさ政せい会かい内部ないぶで綻ほころびが生しょうじ始はじめた。小林こばやしの統率とうそつ力りょくに疑問ぎもんが持もたれる中なかで、12月に小磯こいそ内閣ないかくの国務大臣こくむだいじんに任命にんめいされた小林こばやしは小磯こいそ首相しゅしょうから本土ほんど決戦けっせんに備そなえて大政たいせい翼賛よくさん会かいや翼つばさ政せい会かいの改組かいそを指示しじされる。

小磯こいそと小林こばやしは大政たいせい翼賛よくさん会かい・大だい日本にっぽん翼賛よくさん壮年そうねん団だん・翼つばさ政せい会かいを解散かいさんさせる替かわりに大政たいせい翼賛よくさん会かいの地方ちほう部門ぶもんと翼つばさ政せい会かいを統合とうごうして、全ぜん国民こくみんを統合とうごうする新党しんとうを結成けっせいする方針ほうしんを打うち出だした。この方針ほうしんは直ただちに1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）1月がつ20日はつかの翼つばさ政せい会かい代議士だいぎし会かいで了承りょうしょうされ、2月がつ12日にちには小林こばやし総裁そうさいより新党しんとう結成けっせい方針ほうしんが正式せいしきに出だされたものの、少数しょうすう派はとして決定けっていから排除はいじょされる形かたちとなった大政たいせい翼賛よくさん会かい幹部かんぶと大だい日本にっぽん翼賛よくさん壮年そうねん団だん出身しゅっしん議員ぎいんが反発はんぱつ、続つづいて小林こばやし総裁そうさいに不満ふまんを抱だいていた反はん主流しゅりゅう派はの岸きし信介しんすけが松岡まつおか洋右ようすけを新あたらしい総裁そうさいに擁立ようりつする構想こうそうを計画けいかくしていたことが明あきらかとなった。このために翼つばさ政せい会かい内部ないぶは大だい混乱こんらんに陥おちいり、小林こばやしに反発はんぱつする反はん主流しゅりゅう派はや大だい日本にっぽん翼賛よくさん壮年そうねん団だん出身しゅっしん議員ぎいんが次々つぎつぎと離脱りだつを表明ひょうめいした。これに対たいして小林こばやしは3月がつ1日にちに国務大臣こくむだいじんを辞任じにんして新党しんとう結成けっせいと反対はんたい派は説得せっとくに尽力じんりょくするが、3月8日にちの新党しんとうの設立せつりつ準備じゅんび委員いいん会かい結成けっせいの時点じてんで、既すでに小林こばやし構想こうそうは破綻はたん状態じょうたいにあった。

大だい日本にっぽん翼賛よくさん壮年そうねん団だん出身しゅっしん議員ぎいんは3月がつ10日とおかに翼つばさ壮たけし議員ぎいん同志どうし会かいを、岸きし信介しんすけら旧きゅう翼賛よくさん政治せいじ会かい反はん主流しゅりゅう派はも3月11日にちに護国ごこく同志どうし会かいを結成けっせいして、翼つばさ政せい会かい及および新党しんとうとの訣別けつべつを宣言せんげんした。この状況じょうきょうを見みて貴族きぞく院いん側がわも新党しんとう参加さんかを見送みおくることを決定けってい、3月30日にちに翼つばさ政せい会かいは解散かいさんして替かわりに南みなみ次郎じろうを総裁そうさいとする大だい日本にっぽん政治せいじ会かいを結成けっせいするものの、「一いち国こく一いち党とう」の翼賛よくさん議会ぎかい体制たいせいは事実じじつ上じょう崩壊ほうかい状態じょうたいに陥おちいったまま、日本にっぽんの敗戦はいせんを迎むかえることとなった。

戦後せんごは連合れんごう国軍こくぐん最高さいこう司令しれい官かん総そう司令しれい部ぶにより、翼賛よくさん政治せいじ会かいの幹部かんぶ経験けいけん者しゃが多数たすう逮捕たいほ。巣鴨すがも拘置こうち所しょに勾留こうりゅうされた。

歴代れきだい翼賛よくさん政治せいじ会かい総裁そうさい一覧いちらん

	代表だいひょう		備考びこう
1		阿部あべ信行のぶゆき	元もと内閣ないかく総理そうり大臣だいじん、陸軍りくぐん大将たいしょう（予備よび役やく）
2		小林こばやし躋造	元もと台湾たいわん総督そうとく、海軍かいぐん大将たいしょう（予備よび役やく）

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