自由民主党じゆうみんしゅとう本部ほんぶ放火ほうか襲撃しゅうげき事件じけん

自由民主党じゆうみんしゅとう本部ほんぶ放火ほうか襲撃しゅうげき事件じけん
自由民主党じゆうみんしゅとう本部ほんぶ
場所ばしょ	日本にっぽん・東京とうきょう都と千代田ちよだ区く永田町ながたちょう1丁目ちょうめ11番ばん23号ごう 自由民主党じゆうみんしゅとう本部ほんぶビル
座標ざひょう	北緯ほくい35度ど40分ふん42.6秒びょう 東経とうけい139度ど44分ふん29.1秒びょう
標的ひょうてき	自由民主党じゆうみんしゅとう本部ほんぶ（自由じゆう民主みんしゅ会館かいかん）
日付ひづけ	1984年ねん9月19日にち 19時じ30分ふん頃ごろ (日本にっぽん標準時ひょうじゅんじ)
攻撃こうげき手段しゅだん	火炎かえん放射ほうしゃ器きを用もちいて放火ほうか
武器ぶき	火炎かえん放射ほうしゃ器き
損害そんがい	本部ほんぶビルの一部いちぶ焼失しょうしつ
犯人はんにん	革命かくめい的てき共産きょうさん主義しゅぎ者しゃ同盟どうめい全国ぜんこく委員いいん会かい（中核ちゅうかく派は）
動機どうき	新しん東京とうきょう国際こくさい空港くうこうに対たいする反発はんぱつ

自由民主党じゆうみんしゅとう本部ほんぶ放火ほうか襲撃しゅうげき事件じけん（じゆうみんしゅとうほんぶほうかしゅうげきじけん）とは、革命かくめい的てき共産きょうさん主義しゅぎ者しゃ同盟どうめい全国ぜんこく委員いいん会かい（中核ちゅうかく派は）の非ひ公然こうぜん組織そしきである「人民じんみん革命かくめい軍ぐん」が、火炎かえん放射ほうしゃ器きによって自由民主党じゆうみんしゅとうの本部ほんぶビルに放火ほうかした事件じけんである。

事件じけんの概略がいりゃく

1984年ねん（昭和しょうわ59年ねん）9月19日にち午後ごご7時じ35分ふんごろ、東京とうきょう都と千代田ちよだ区く永田町ながたちょうにある自由民主党じゆうみんしゅとう本部ほんぶ裏うらの中華ちゅうか料理りょうり店みせ駐車ちゅうしゃ場じょうに、某ぼう運送うんそう会社かいしゃの配達はいたつ車しゃに偽装ぎそうした2台だいの小型こがたトラックが停車ていしゃした。

30歳さい前後ぜんこうの運転うんてん手しゅの男性だんせいが、店員てんいんに対たいし「宅配たくはい便びんです。印鑑いんかんをお願ねがいします」と話はなしかけたため、店員てんいんは店みせの奥おくにある印章いんしょうを取とりに行いった。

その間あいだに、数すう人にんが駐車ちゅうしゃした偽造ぎぞうナンバープレートのトラックの荷台にだいに積つみ込こんでいた火炎かえん放射ほうしゃ器きを操作そうさして、自民党じみんとう本部ほんぶ北側きたがわ3階かいに向むけて火炎かえん放射ほうしゃした。

犯人はんにんらはライトバンで逃走とうそうし、その後ご車しゃごと作業さぎょう服ふくとともに焼やき捨すてる証拠しょうこ隠滅いんめつを図はかっていた。なお、火炎かえん放射ほうしゃ器きの下したの箱はこには「中核ちゅうかく派は」と書かいていた。

この火炎かえん放射ほうしゃ器きは、液化えきか石油せきゆガスの入はいった高こう圧あつガスが可燃かねん性せいの液体えきたいを噴射ふんしゃし、それに着火ちゃっかした火炎かえんを放射ほうしゃする仕組しくみで、火炎かえん放射ほうしゃノズルは、自在じざいに角度かくどを変かえることができる仕組しくみになっていた。これによって発生はっせいした火災かさいにより、自民党じみんとう本部ほんぶの北側きたがわ3階かいから7階かいが類焼るいしょうし、党とう事務じむ局きょくや会議かいぎ室しつなど約やく520平方へいほうメートルが焼失しょうしつした。

折おりしも、党とう総裁そうさい選挙せんきょを控ひかえており、2階かいにあった選挙せんきょ人じん名簿めいぼなどの書類しょるいを搬出はんしゅつするため、党とう本部ほんぶ職員しょくいんだけでなく党とう所属しょぞくの国会こっかい議員ぎいんまで駆かけ付つけるなど騒然そうぜんとなり、被害ひがい額がくは10億おく円えんにも及およんだ。なお自民党じみんとう本部ほんぶへは、火炎瓶かえんびんが投なげ込こまれたり、発火はっか装置そうちを玄関げんかんに置おかれた事ことはあったが、放火ほうかされたのは初はじめてであった。

この事件じけん現場げんばで、法務大臣ほうむだいじんの住じゅう栄作えいさくが、消火しょうか活動かつどうに当あたっていた衆議院しゅうぎいん議員ぎいんの浜田はまだ幸一こういちを見みて、「マッチポンプみたいな真似まねしやがって」と発言はつげんし、その場ばで浜田はまだに殴打おうだされた（法相ほうしょう殴打おうだ事件じけん）。後日ごじつ、住じゅうは浜田はまだに発言はつげんは不ふ適当てきとうだったと謝罪しゃざいした。

犯人はんにんグループ

事件じけん直後ちょくごに一部いちぶ報道ほうどう機関きかんに「救国きゅうこく霊れい団だん」を名乗なのる男おとこから「戦後せんごポツダム体制たいせいに対たいする報復ほうふくである。昭和しょうわ維新いしん断行だんこう万まん歳さい」と新しん右翼うよくのような電話でんわがあったが、これは偽装ぎそう工作こうさくと見みられている。また現場げんば付近ふきんでは、警察けいさつ無線むせんを妨害ぼうがいするためと見みられる妨害ぼうがい電波でんぱが発信はっしんされており、警視庁けいしちょうの連絡れんらくがつきにくかった。

午後ごご9時じ過すぎに、革かわ共同きょうどう中核ちゅうかく派はの非ひ公然こうぜん軍事ぐんじ組織そしき「革命かくめい軍ぐん」が、「中核ちゅうかく派は革命かくめい軍ぐんは、本日ほんじつ、自民党じみんとう本部ほんぶを襲撃しゅうげきし大だい炎上えんじょうさせた。この戦たたかいは自民党じみんとう中曽根なかそね政権せいけんの圧政あっせいに飽あき、三里塚さんりづか二に期き着工ちゃっこう声明せいめいに対たいする二に期き絶対ぜったい実力じつりょく阻止そしの鉄てつの回答かいとうである」などと都内とないの報道ほうどう機関きかんに対たいして犯行はんこう声明せいめいを出だした。事件じけんの翌日よくじつ午前ごぜんには、法政大学ほうせいだいがくと横浜国立大学よこはまこくりつだいがくの構内こうないで、中核ちゅうかく派はが犯行はんこうを認みとめるビラがばら撒まかれた。

用意ようい周到しゅうとうに準備じゅんびされた犯行はんこうであり、三里塚さんりづか芝山しばやま連合れんごう空港くうこう反対はんたい同盟どうめい北原きたはら派はを支援しえんする中核ちゅうかく派はによる成田空港なりたくうこう関連かんれん施設しせつに対たいするテロリズムはその後ごも継続けいぞくされ、国会こっかい議員ぎいん事務所じむしょや千葉ちば県知事けんちじの私邸していなども標的ひょうてきとなった。

裁判さいばん

犯行はんこうグループを中核ちゅうかく派はと断定だんていし、警視庁けいしちょう公安こうあん部ぶは中核ちゅうかく派はの活動かつどう拠点きょてんになっている前進ぜんしん社しゃなど捜索そうさくしたが、実行じっこう犯はんを割わり出だすことは難航なんこうした。被疑ひぎ者しゃとして中核ちゅうかく派は活動かつどう家かの男性だんせいF（逮捕たいほ時じ40歳さい）を1985年ねん4月がつ28日にちに逮捕たいほし、一人ひとりを指名しめい手配てはい（逮捕たいほできず）し、1987年ねん1月がつに主犯しゅはんとしてY（逮捕たいほ時じ37歳さい）を逮捕たいほしたが、Yについては、放火ほうか事件じけんへの関与かんよを実証じっしょうするだけの証拠しょうこを得えられず、処分しょぶん保留ほりゅうで釈放しゃくほうされている。

Fは、実行じっこう犯はんの逃走とうそうを手助てだすけした放火ほうかの共謀きょうぼう共同きょうどう正犯せいはんとして起訴きそされたが、Fは事件じけん当日とうじつのアリバイがあると無罪むざいを主張しゅちょうし、裁判さいばんは紛糾ふんきゅうした。東京とうきょう地方ちほう検察庁けんさつちょうの検察官けんさつかんの冒頭ぼうとう陳述ちんじゅつによれば、Fは実行じっこう犯はんの逃走とうそうを手助てだすけし、火炎かえん放射ほうしゃ器き製造せいぞうの準備じゅんびをしたと主張しゅちょうしたが、具体ぐたい的てきな役割やくわりを特定とくていしなかった。

これは、Fの自白じはくが得えられなかったこともあるが、検察けんさつが有罪ゆうざいとする証拠しょうこは、前者ぜんしゃは現場げんば近ちかくで警察官けいさつかんが、逃走とうそう車しゃとみられるライトバンの助手じょしゅ席せきにFを見みたという目撃もくげき証言しょうげん、後者こうしゃは8月がつ2日にちにFに似にた男おとこが、大量たいりょうの圧力あつりょく調節ちょうせつ器きを購入こうにゅうしていたという電気でんき店てんの従業じゅうぎょう員いんの証言しょうげんが、唯一ゆいいつの有罪ゆうざい証拠しょうこであった。それに対たいしFは、事件じけん当日とうじつは埼玉さいたま県けんで開催かいさいされていた学習がくしゅう会かいに出席しゅっせきしており、ホテルに宿泊しゅくはくしていたとして、ホテルの領収りょうしゅう書しょと宿泊しゅくはく者しゃ名簿めいぼを証拠しょうことして、裁判所さいばんしょに提出ていしゅつした。中核ちゅうかく派はは、1988年ねん9月がつに本ほん事件じけん担当たんとう裁判官さいばんかんが居住きょじゅうする宿舎しゅくしゃ内ないの車両しゃりょうを放火ほうかする事件じけんを起おこしている。

東京とうきょう地方裁判所ちほうさいばんしょは、1991年ねん2月がつになって保釈ほしゃく保証ほしょう金きん1,500万まん円えんでFの保釈ほしゃくを認みとめた。これに対たいし検察けんさつ側がわは準じゅん抗告こうこくしたが裁判所さいばんしょは「検察けんさつはFがいつどこでだれと放火ほうかを共謀きょうぼうしたか十分じゅうぶん実証じっしょうしていない」として退しりぞけた。

検察けんさつはFに懲役ちょうえき10年ねんを求刑きゅうけいしたが、1991年ねん6月27日にちに一いち審しん判決はんけつは無罪むざいをい渡いわたした。電気でんき店てんの従業じゅうぎょう員いんの証言しょうげんは信用しんようできるが、購入こうにゅうした部品ぶひんが犯行はんこうに使つかわれたという証拠しょうこがなく、警官けいかんの証言しょうげんは暗闇くらやみの中なかでFと認識にんしきできたのか疑問ぎもんであり、また、Fのアリバイには「不自然ふしぜん、不都合ふつごうな点てんも少すくなくないが、虚偽きょぎとまではいえず」として、結論けつろんとして、この放火ほうか事件じけんにおける「Fの役割やくわりは特定とくていできない」、としたものであった。

東京とうきょう地方ちほう検察庁けんさつちょうは「事実じじつ誤認ごにん」として控訴こうそしたが、二に審しんの東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょは1994年ねん12月2日にちに「自白じはくも物証ぶっしょうもなく、目撃もくげき証言しょうげんで有罪ゆうざいとする事実じじつ認定にんていはできない」として棄却ききゃくし、東京とうきょう高等こうとう検察庁けんさつちょうは上告じょうこくしなかった為ため、12月16日にちにFの無罪むざいは確定かくていした。

その他た

• 火炎瓶かえんびんによる自民党じみんとう本部ほんぶ襲撃しゅうげきは1976年ねん11月4日にちにも行おこなわれている。この際さいは本部ほんぶ前まえの路上ろじょうで火炎瓶かえんびんが破裂はれつ、炎上えんじょうしたが速すみやかに消火しょうかされている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 『過激かげき派は事件じけん簿ぼ40年ねん史し』立花たちばな書房しょぼう〈別冊べっさつ治安ちあんフォーラム〉、2001年ねん8月がつ。ISBN 9784803714081。 
• 村野むらの薫かおる、事件じけん犯罪はんざい研究けんきゅう会かい 編へん『明治めいじ・大正たいしょう・昭和しょうわ・平成へいせい 事件じけん・犯罪はんざい大だい事典じてん』東京法経学院出版とうきょうほうけいがくいんしゅっぱん、2002年ねん7月がつ1日にち、337頁ぺーじ。ISBN 9784808940034。 

関連かんれん項目こうもく

• 革命かくめい的てき共産きょうさん主義しゅぎ者しゃ同盟どうめい全国ぜんこく委員いいん会かい（中核ちゅうかく派は）
• 成田空港なりたくうこう問題もんだい（三里塚さんりづか闘争とうそう）
• 立憲りっけん政友せいゆう会かい本部ほんぶ放火ほうか事件じけん－1919年ねんに起おきた事件じけん（立憲りっけん政友せいゆう会かいは歴史れきし的てきには自由民主党じゆうみんしゅとうの源流げんりゅうとなる政党せいとうの1つ）

外部がいぶリンク

• 自民党じみんとう本部ほんぶが過激かげき派はに放火ほうかされる - NHK放送ほうそう史し