菅かん礼あや之これ助すけ

菅かん礼あや之これ助すけ（すがれいのすけ、1883年ねん 11月25日にち - 1971年ねん 2月がつ18日にち）は、日本にっぽんの実業じつぎょう家か、俳人はいじん^[1]^[2]。秋田あきた県けん生うまれ。旧制きゅうせい秋田あきた中学ちゅうがく、日本にっぽん中学ちゅうがく（現げん：日本にっぽん学園がくえん）、東京とうきょう高等こうとう商業しょうぎょう学校がっこう（現げん：一橋大学ひとつばしだいがく）出身しゅっしん。古河ふるかわ鉱業こうぎょう（現げん古河機械金属ふるかわきかいきんぞく）を経へて、石炭せきたん庁ちょう長官ちょうかん、同和どうわ鉱業こうぎょう（現げんDOWAホールディングス）会長かいちょう、昭和鉱業しょうわこうぎょう（現げん昭和しょうわKDE）会長かいちょう、東京電力とうきょうでんりょく会長かいちょう、経済けいざい団体だんたい連合れんごう会かい評議ひょうぎ会かい議長ぎちょう等とうを務つとめた。1970年ねん勲一等くんいっとう瑞宝章ずいほうしょう、1971年ねん従したがえ三さん位い勲一等くんいっとう。第だい九きゅう代だい、十じゅう代だい、十じゅう三さん代だい如水にょすい会かい理事りじ長ちょう。初代しょだい日本にっぽん相撲すもう協会きょうかい運営うんえい審議しんぎ会かい会長かいちょう。俳人はいじんとしては裸馬はだかうまと号ごうし、俳誌はいし「同人どうじん」を主宰しゅさいした^[2]。

経歴けいれき

菅かん礼あや之これ助すけ（菅裸馬すがらば）は明治めいじ16年ねん（1883年ねん）に秋田あきた県けん南秋田みなみあきた郡ぐん土崎つちざき港町みなとちょうに生うまれ（本籍ほんせきは雄勝おがつ郡ぐん秋ノ宮あきのみや）、東京とうきょう高等こうとう商業しょうぎょう学校がっこう（現げん：一橋大学ひとつばしだいがく）を卒業そつぎょう後ご、明治めいじ38年ねん（1905年ねん）に古河ふるかわ鉱業こうぎょうへ入社にゅうしゃ、古河ふるかわグループの三さん代目だいめ古河ふるかわ虎之助とらのすけをビジネスで支ささえる一人ひとりとなった。大阪おおさか支店してん長等ながらを経へて、大正たいしょう6年ねん（1917年ねん）に古河ふるかわ商事しょうじ取締役とりしまりやく、大正たいしょう9年ねん（1920年ねん）に古河ふるかわ合名ごうめい会社かいしゃの取締役とりしまりやくになっている。昭和しょうわ6年ねん（1931年ねん）、古河ふるかわ鉱業こうぎょうを退職たいしょくし、2年間ねんかんアジア、欧州おうしゅう、米国べいこく等とう外遊がいゆうし見聞けんぶんを広ひろめた（昭和しょうわ8年ねん帰国きこく）。帰国きこく後ご、閑居かんきょしていたが、東京とうきょう証券しょうけん取引とりひき所しょ監査かんさ役やく、日にち満まん鉱業こうぎょう（株）かぶしきがいしゃ会長かいちょう等とうの声こえがかかった。昭和しょうわ14年ねん（1939年ねん）帝国ていこく鉱業こうぎょう開発かいはつ（株）かぶしきがいしゃ社長しゃちょうとなる。帝国ていこく鉱業こうぎょう開発かいはつは国策こくさく会社かいしゃで、国くにが中小ちゅうしょう鉱山こうざんに金融きんゆう面めんでの支援しえん、あるいは自みずから事業じぎょうを行おこなう機関きかんで、同和鉱業どうわこうぎょう、昭和鉱業しょうわこうぎょう等とうの支援しえんを行おこなった。その結果けっか、戦後せんごに昭和鉱業しょうわこうぎょう、同和鉱業どうわこうぎょうの会長かいちょうに招まねかれている。また第だい1次じ吉田よしだ内閣ないかく、片山かたやま哲あきら社会党しゃかいとう内閣ないかくの石炭せきたん庁ちょう長官ちょうかんを務つとめた。石炭せきたん供給きょうきゅうをめぐる贈収賄ぞうしゅうわい事件じけんで東京電力とうきょうでんりょくの従業じゅうぎょう員いんが逮捕たいほ・安蔵あぞう弥わたる輔会長かいちょうと高井たかい亮あきら太郎たろう社長しゃちょうがともに引責いんせき辞任じにんした際さいには松永まつなが安やすし左ひだりエ門もんの推挙すいきょもあって後任こうにんの会長かいちょうに白羽しらはの矢やが立たち、昭和しょうわ29年ねん（1954年ねん）に四よん代目だいめ東京電力とうきょうでんりょく会長かいちょうとなり、その職しょくを7年間ねんかん務つとめた。また昭和しょうわ30年ねん（1955年ねん）に石坂いしざか泰三たいぞう会長かいちょうの時代じだいに経団連けいだんれん評議ひょうぎ会かい議長ぎちょうを務つとめた。経団連けいだんれんは昭和しょうわ35年ねん（1960年ねん）に経団連けいだんれんビルを立たて直なおしているが、菅かんは「経団連会館けいだんれんかいかん建設けんせつ委員いいん長ちょう」として財界ざいかいから当時とうじの約やく70億おく円えんの募金ぼきんを集あつめる役割やくわりを果はたした（経団連会館けいだんれんかいかんは平成へいせい21年ねんに再築さいちくされている）。

菅かんには財界ざいかい人じんのほかにもう一ひとつの顔かおがあった。俳句はいくである。昭和しょうわ24年ねん（1949年ねん）に、関西かんさいの雄ゆうといわれた青木あおき月斗げっとの後のちを継つぎ、俳句はいく結社けっしゃ「同人どうじん」の二に代目だいめ主宰しゅさいとなり、約やく20年間ねんかんその役割やくわりを続つづけた。作さく句くに関かんしては、奇きを好このまず、小しょう主観しゅかんを捨すてて、自然しぜん描写びょうしゃの中なかから個性こせいを引ひき出だすことを重視じゅうししたと言いわれる。裸馬はだかうまと交流こうりゅうが深ふかく、裸馬はだかうまの句集くしゅう「玄げん酒しゅ」を編集へんしゅうした石田いしだ波郷はきょうは「裸馬はだかうまの句くは、平明へいめいな詠よみぶりだが、充実じゅうじつ、鋭敏えいびん、脈動みゃくどうが迫せまってくる」と評ひょうしている。

その他た、相撲すもう、芝居しばい（歌舞伎かぶき）の世界せかいでも多おおくの交流こうりゅうを持もち、横綱よこづな・双葉ふたば山さんとの交流こうりゅうは深ふかかった。1957年ねんには就任しゅうにん間あいだもない時津風ときつかぜ理事りじ長ちょう（双葉ふたば山さん）に請こわれて運営うんえい審議しんぎ委員いいん会かいの初代しょだい委員いいん長ちょうを務つとめた。さらに源実朝みなもとのさねともの研究けんきゅう者しゃとしての実績じっせきも残のこした（現在げんざいでも鎌倉かまくらの鶴岡つるおか八幡宮はちまんぐうには菅裸馬すがらばの句く、「歌うたあはれ　その人ひとあはれ　実じつ朝ちょう忌き」の句碑くひが残のこっている）。

（菅裸馬すがらばの著書ちょしょ）随筆ずいひつ「うしろむき」、「雁かりわたる」、句集くしゅうに「玄げん酒しゅ」、「裸馬はだかうま翁おきな五ご千せん句く」、「自じ註菅裸馬はだかうま集しゅう」等とうがある。随筆ずいひつ「うしろむき」の中なかの「錦にしき島とう三太夫さんだゆうの死し」は金子かねこ洋文ひろふみの脚本きゃくほんで、花柳はなやぎ章太郎しょうたろう、エノケン一座いちざが上演じょうえんし、ＮＥＴねっと（現げんテレビ朝日てれびあさひ）でテレビドラマ化かされている。

菅裸馬すがらばの代表だいひょう句く

草くさ焼やくや眼前がんぜんの風ふう火ひとなりぬ（昭和しょうわ２年ねん）
歌うたあはれその人ひとあはれ実じつ朝ちょう忌き（昭和しょうわ14年ねん）
天皇てんのうは人ひとにておはす麦藁むぎわら帽ぼう（昭和しょうわ22年ねん）
星ほし二に三さんひそめて夜よるの梅うめとなる（昭和しょうわ25年ねん）
庭前ていぜんの柏かしわ樹いつき子こ冬日ふゆび弄もてあそぶ（昭和しょうわ25年ねん）
紅梅こうばいに匂においふ少年しょうねん老おい易やすし（昭和しょうわ26年ねん）
水中花すいちゅうか人じんには人ひとにあるだけの運うん（昭和しょうわ29年ねん）
咲さき絶ぜっゆるまで朝顔あさがおに流ながれたりし月日つきひ（昭和しょうわ29年ねん）
失うしなわれるものゆゑ虹にじに佇（た）ちつくす（昭和しょうわ29年ねん）
選せん二にタ夜よる五更ごこうの露つゆを感かんじずらく（昭和しょうわ32年ねん）
ほかの道みちを知しらずこの道みち花はな茨いばら（昭和しょうわ33年ねん）
歳月さいげつは空そら行いく天馬てんば雲くもの秋あき（昭和しょうわ36年ねん）
母ははの日ひやそのありし日ひの裁たちばさみ（昭和しょうわ37年ねん）
また今日きょうへつづく春寒しゅんかん人じん殺ころす（昭和しょうわ38年ねん）
春はるの霜しも解かいくるを待まてたで旅行りょこうくも（昭和しょうわ39年ねん）

年譜ねんぷ

1883年ねん - 南秋田みなみあきた郡ぐん土崎つちざき港町みなとちょう生うまれ、雄勝おがつ郡ぐん雄勝おがつ町まち秋ノ宮あきのみや（現げん湯沢ゆざわ市し）(本籍ほんせき）。
1896年ねん - 旧制きゅうせい秋田あきた中学校ちゅうがっこう（現げん秋田あきた県立けんりつ秋田あきた高等こうとう学校がっこう）
1898年ねん - 日本にっぽん中学校ちゅうがっこう（現げん日本にっぽん学園中がくえんなか学校がっこう・高等こうとう学校がっこう）
1905年ねん - 東京とうきょう高等こうとう商業しょうぎょう学校がっこう（現げん一橋大学ひとつばしだいがく）卒そつ
1905年ねん - 古河ふるかわ鉱業こうぎょう（現げん古河機械金属ふるかわきかいきんぞく）入社にゅうしゃ
1921年ねん - 古河ふるかわ合名ごうめい理事りじ
1934年ねん - 東京とうきょう証券しょうけん取引とりひき所しょ監査かんさ役やく
1937年ねん - 日にち満まん鉱業こうぎょう会長かいちょう
1939年ねん - 帝国ていこく鉱業こうぎょう開発かいはつ社長しゃちょう
1940年ねん - 昭和鉱業しょうわこうぎょう（現げん昭和しょうわKDE）会長かいちょう
1943年ねん - 同和鉱業どうわこうぎょう（現げんDOWAホールディングス)会長かいちょう
1946年ねん - 石炭せきたん庁ちょう長官ちょうかん
1946年ねん - 1952年ねん社団しゃだん法人ほうじん如水にょすい会かい理事りじ長ちょう
1947年ねん - 配はい炭ずみ公団こうだん総裁そうさい
1949年ねん - 東京瓦斯とうきょうがす監査かんさ役やく、俳句はいく結社けっしゃ「同人どうじん」主宰しゅさいとなる
1954年ねん - 東京電力とうきょうでんりょく会長かいちょう
1955年ねん - 電気事業連合会でんきじぎょうれんごうかい会長かいちょう
1956年ねん - 社団しゃだん法人ほうじん日本にっぽん原子力げんしりょく産業さんぎょう会議かいぎ初代しょだい会長かいちょう
1956年ねんから1968年ねんまで社団しゃだん法人ほうじん経済けいざい団体だんたい連合れんごう会かい評議ひょうぎ会かい議長ぎちょう。後のちに同どう顧問こもん。
科学かがく新聞しんぶん社会しゃかい長ちょう
財団ざいだん法人ほうじん日本にっぽん原子力げんしりょく研究所けんきゅうじょ理事りじ
産業さんぎょう計画けいかく会議かいぎ委員いいん（議長ぎちょう・松永まつなが安やすし左ひだりヱ門もん）
1957年ねん - 日本にっぽん相撲すもう協会きょうかい運営うんえい審議しんぎ会かい会長かいちょう、一橋大学ひとつばしだいがく奨学しょうがく財団ざいだん理事りじ、日本開発銀行にほんかいはつぎんこう参与さんよ
1958年ねん - アラビア石油あらびあせきゆ（株）かぶしきがいしゃ取締役とりしまりやく
1959年ねん - 勲くん二に等とう・藍綬らんじゅ褒章ほうしょう受章じゅしょう
1961年ねん - 東京電力とうきょうでんりょく会長かいちょう辞任じにん
1966年ねん - アラスカ石油せきゆ開発かいはつ相談役そうだんやく
1970年ねん - 勲一等くんいっとう瑞宝章ずいほうしょう受章じゅしょう
1971年ねん没ぼっす。従したがえ三さん位い勲一等くんいっとう

親族しんぞく

父ちち - 菅かん礼治れいじ
- 元もと第だい四よん十じゅう八はち国立こくりつ銀行ぎんこう→第だい四よん十じゅう八はち銀行ぎんこう（現げん秋田銀行あきたぎんこう）頭取とうどり
子こ - （長男ちょうなん）菅かん礼あや太ふとし（三菱みつびし鉱業こうぎょう東京とうきょう支店してん長ちょう）（次男じなん）長瀬ながせ達吉たつきち（旧きゅう：菅かん達吉たつきち）（通商産業省つうしょうさんぎょうしょう、アラビア石油あらびあせきゆアラビア鉱業こうぎょう所しょ副ふく所長しょちょう、共同きょうどう石油せきゆ常務じょうむ）（三男さんなん）菅かん元彦もとひこ（経団連けいだんれん総務そうむ部ぶ次長じちょう（長女ちょうじょ）栄子えいこ（岡野おかの栄子えいこ：日本にっぽん銀行ぎんこう経理けいり局長きょくちょう岡野おかの節たかし氏し夫人ふじん）（四男よつお）菅かん順一じゅんいち大陽寺おおひじ順一じゅんいち（大陽寺おおひじ家かへ養子ようし、社会しゃかい政策せいさく学者がくしゃ、元もと社会しゃかい政策せいさく学会がっかい代表だいひょう幹事かんじ、一橋大学ひとつばしだいがく名誉めいよ教授きょうじゅ）。

参考さんこう書籍しょせき

『俳人はいじん菅裸馬すがらば』長瀬ながせ達郎たつお著ちょ、2011年ねん7月がつ発行はっこう、角川書店かどかわしょてん、ISBN 978-4046523839
『新版しんぱん　俳人はいじん菅裸馬すがらば』長瀬ながせ達郎たつお著ちょ、2017年ねん7月がつ発行はっこう、角川かどかわ文化ぶんか振興しんこう財団ざいだん、ISBN978-4-04-876472-8
菅かん礼あや之これ助すけの孫まごである長瀬ながせ達郎たつおによる評伝ひょうでん。菅裸馬すがらばの代表だいひょう句く173句くが収おさめられている他ほか、古河ふるかわ虎之助とらのすけ、佐佐木ささき信綱のぶつな、昭和しょうわ天皇てんのう、与謝野よさの晶子あきこ、松永まつなが安やすし左ひだりエ門もん、双葉ふたば山さん、石田いしだ波郷はきょう、武たけ原げんはん、金子かねこ洋文ひろふみ、岸きし信介しんすけ、池田いけだ勇人はやと、石坂いしざか泰三たいぞうといった交友こうゆう関係かんけいについても採とり上あげられている。