(Translated by https://www.hiragana.jp/)
薄膜干渉 - Wikipedia コンテンツにスキップ

薄膜うすまく干渉かんしょう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
あぶらふくみずたまり。油膜ゆまくによって薄膜うすまく干渉かんしょうこり、干渉かんしょうパターンを観察かんさつすることができる。みず流出りゅうしゅつてん中心ちゅうしん油膜ゆまくあつさが変化へんかするため、ドーナツがたのパターンとなっている。
シャボンだまから反射はんしゃしたひかりいろ
レーザ出力しゅつりょくカプラ英語えいごばんは、550nmで80%の反射はんしゃりつ実現じつげんするために、おおくのかさねたまくでコーティングされている。ひだり: このミラーは黄色おうしょくみどりたいする反射はんしゃりつたかいが、あかあおたいしては透過とうかりつたかい。みぎ: このミラーは589nmのレーザこうの25%を透過とうかする。

薄膜うすまく干渉かんしょう(はくまくかんしょう)は、薄膜うすまく上下じょうげ境界きょうかい反射はんしゃされた光波こうはたがいに干渉かんしょうし、特定とくてい波長はちょう反射はんしゃこう増強ぞうきょうまた低減ていげんさせる自然しぜん現象げんしょうである。

概要がいよう

[編集へんしゅう]

まくひかり入射にゅうしゃしたときまく上下じょうげ界面かいめんでは、それぞれこう反射はんしゃこる。まくあつさがひかりの1/4波長はちょうすうばいになると、両方りょうほうからの反射はんしゃ干渉かんしょうしてしあうようになる。一方いっぽうあつさがひかりの1/2波長はちょう倍数ばいすう場合ばあいは、2つの反射はんしゃたがいにつよう。このように、さまざまな波長はちょうからなる白色はくしょくこうまく入射にゅうしゃすると、特定とくてい波長はちょういろ)がつよくなり、波長はちょうよわくなる薄膜うすまく干渉かんしょうにより、シャボンだま水中すいちゅう油膜ゆまくからの反射はんしゃこう複数ふくすういろえることが説明せつめいされる。また、メガネカメラレンズ使つかわれている反射はんしゃ防止ぼうしまくはたらきも、この薄膜うすまく干渉かんしょうによるものである。

まく本当ほんとうあつさは、その屈折くっせつりつひかり入射にゅうしゃかく両方りょうほう依存いぞんする。屈折くっせつりつたか媒質ばいしつではひかり速度そくどおそくなるため、ひかりまく通過つうかするさい波長はちょう比例ひれいしてまくつくられる。通常つうじょう入射にゅうしゃかくでは、あつさは中心ちゅうしん波長はちょうの4ぶんの1または2ぶんの1の倍数ばいすうになるが、ななめに入射にゅうしゃするとあつさは4ぶんの1波長はちょうまたは2ぶんの1波長はちょう位置いちでの角度かくど余弦よげんひとしくなり、角度かくどわるといろわる(所定しょていあつさの場合ばあい角度かくど垂直すいちょくからななめにわると、いろ短波たんぱちょうから長波ちょうはちょうへと変化へんかする)。このようなつよめあう/よわめあう干渉かんしょうによる反射はんしゃ/透過とうか帯域たいいきはばせまくなるため、回折かいせつ格子こうしプリズムのように波長はちょうごとにかれたいろではなく、スペクトルちゅう波長はちょうふくまない様々さまざま波長はちょう混在こんざいしたいろ観察かんさつされる。したがって、観察かんさつされるいろ虹色にじいろではなく、茶色ちゃいろ金色きんいろ、ターコイズ、ティール(teal)、あかるいあおむらさき、マゼンタなどである。薄膜うすまく反射はんしゃしたり透過とうかしたりするひかり調しらべることで、まくあつさやまく媒質ばいしつ有効ゆうこう屈折くっせつりつなどの情報じょうほうることができる。薄膜うすまくは、反射はんしゃ防止ぼうしまくミラー光学こうがくフィルタなど様々さまざま用途ようと使用しようされている。

理論りろん

[編集へんしゅう]
薄膜うすまく上下じょうげ境界きょうかいからの反射はんしゃこうひかりちょうしめ
エアバスのコックピットのまどほどこされたITOしもりコーティングによる薄膜うすまく干渉かんしょう

光学こうがくにおいて、薄膜うすまくはサブナノメートルからマイクロメートル範囲はんいあつさを物質ぶっしつそうである。ひかりまく表面ひょうめんにあたると、上面うわつら透過とうかまた反射はんしゃする。透過とうかしたひかり下面かめん到達とうたつし、ふたた透過とうかまた反射はんしゃする。界面かいめんでどの程度ていどひかり透過とうかまた反射はんしゃするかはフレネルのしきにより定量ていりょうてきあらわされる。上面うわつら下面かめん反射はんしゃしたひかり干渉かんしょうする。2つのひかりなみがどの程度ていどつよめあうまたよわめあう干渉かんしょうをするかは、その位相いそうちがいにより決定けっていされる。この位相いそうまくあつまく屈折くっせつりつもとなみまくへの入射にゅうしゃかくなどに依存いぞんする。また、境界きょうかいでの反射はんしゃさいには、境界きょうかい両側りょうがわにある物質ぶっしつ屈折くっせつりつにより180°(ラジアン)の位相いそうのずれがしょうじることがある。この位相いそうひかりすす媒質ばいしつ屈折くっせつりつが、ひかりたる物質ぶっしつ屈折くっせつりつよりもちいさい場合ばあいしょうじる。いいかえると、 であり、ひかり物質ぶっしつ1から物質ぶっしつ2にかって進行しんこうしているとき、反射はんしゃ位相いそうシフトがしょうじる。この干渉かんしょうによりしょうじるひかりのパターンは、入射にゅうしゃこう光源こうげんにより明暗めいあん帯状おびじょうになったり、カラフルな帯状おびじょうになったりする。

薄膜うすまく入射にゅうしゃしたひかり上下じょうげ境界きょうかい反射はんしゃすることをかんがえる。干渉かんしょう条件じょうけん決定けっていするためには反射はんしゃこうひかり (OPD) を計算けいさんする必要ひつようがある。うえ光線こうせん参照さんしょうすると、2つのなみあいだのOPDはつぎのようになる。

ここで

スネルの法則ほうそくもちいると、

ひかりひかり波長はちょう整数せいすうばいであれば、干渉かんしょうつよう。

この条件じょうけんは、反射はんしゃによりしょうじる可能かのうせいのある位相いそうシフトを考慮こうりょして変更へんこうすることができる。

単色たんしょく光源こうげん

[編集へんしゅう]
水中すいちゅうのガソリンに589nmのレーザこう照射しょうしゃすると、明暗めいあんしま模様もようあらわれる。

入射にゅうしゃこう単色たんしょく場合ばあい干渉かんしょうパターンは明暗めいあんおびとしてあらわれる。あかるいおびつよめあう干渉かんしょうきている領域りょういき対応たいおうし、くらおびよわめあう干渉かんしょうきている領域りょういき対応たいおうする。まくあつさが場所ばしょによってことなると、干渉かんしょうつよめあうものからよわめあうものにわることがある。この現象げんしょう好例こうれいニュートンリングばれるたいらなめん隣接りんせつする球状きゅうじょうめんからひかり反射はんしゃさせたときにしょうじる干渉かんしょうパターンをしめすものである。単色たんしょくこう照射しょうしゃすると、同心円どうしんえんじょうのリングが観察かんさつされる。この現象げんしょう利用りようして、オプティカルフラット英語えいごばんにより表面ひょうめん形状けいじょう平坦へいたん測定そくていすることができる。

広帯域こうたいいき光源こうげん

[編集へんしゅう]

入射にゅうしゃこう広帯域こうたいいき、つまり太陽たいようひかりのような白色はくしょくこう場合ばあい干渉かんしょうしまはカラフルな帯状おびじょうえる。ひかり波長はちょうことなると、まくあつさにおうじてつよめあう干渉かんしょうしょうじる。まくことなる領域りょういきは、局所きょくしょてきまくあつさによりことなるいろあらわれる。

位相いそう相互そうご作用さよう

[編集へんしゅう]
つよめあう位相いそう相互そうご作用さよう
よわめあう位相いそう相互そうご作用さよう

2つのは、2つの入射にゅうしゃこうビーム(AとB)をしめしている。かくビームにより反射はんしゃビーム(破線はせん)がしょうじる。注目ちゅうもくすべき反射はんしゃ、ビームAの下面かめんでの反射はんしゃと、ビームBの上面うわつらでの反射はんしゃである。これらの反射はんしゃビームが結合けつごうした結果けっか、ビーム(C)が生成せいせいされる。反射はんしゃしたビームの位相いそうっているとき(うえ)、結果けっかしょうじるビームは比較的ひかくてきつよくなる。一方いっぽう反射はんしゃしたビームの位相いそうぎゃくであれば、結果けっかしょうじるビームは減衰げんすいする(下図したず)。

2つの反射はんしゃビームの位相いそう関係かんけいは、まくないでのビームAの波長はちょうまくあつさの関係かんけい依存いぞんする。ビームAがまくない伝播でんぱする距離きょりまくないのビームの波長はちょう整数せいすうばいであれば、2つの反射はんしゃビームは位相いそうそろつよ干渉かんしょうをする(うえ)。また、ビームAの伝播でんぱ距離きょりまくないひかりはん波長はちょうすうばいであれば、2つのビームはよわ干渉かんしょうをする(下図したず)。このようにこれらのしめされたまくは、うえひかりのビームの波長はちょうではよりつよ反射はんしゃし、下図したずひかりビームの波長はちょうではよりよわ反射はんしゃする。

薄膜うすまくからひかり反射はんしゃするときにこる干渉かんしょう種類しゅるいは、入射にゅうしゃこう波長はちょう角度かくどまくあつさ、まく両側りょうがわ材料ざいりょう屈折くっせつりつまく媒質ばいしつ指標しひょう依存いぞんする。以下いかれいにおいて、さまざまなまく構成こうせい関連かんれんする方程式ほうていしきくわしく説明せつめいする。

シャボンだま

[編集へんしゅう]
シャボンだま薄膜うすまく干渉かんしょうまくあつさによりいろわる。
空気くうきちゅうのシャボンまく入射にゅうしゃするひかり

シャボンだまにおいて、ひかり空気くうきちゅう伝播でんぱしシャボンまくにあたる。空気くうき屈折くっせつりつは1()であり、まく屈折くっせつりつは1よりおおきい()。まく上部じょうぶ境界きょうかい空気くうきまく境界きょうかい)での反射はんしゃは、空気くうき屈折くっせつりつまく屈折くっせつりつよりもちいさいため()、反射はんしゃに180°の位相いそうシフトがしょうじる。上部じょうぶ空気くうきまく境界きょうかい透過とうかしたひかりは、したがわまく空気くうき境界きょうかいまで伝播でんぱし、そこで反射はんしゃまた透過とうかする。であるため、この境界きょうかい反射はんしゃしても反射はんしゃ位相いそうわらない。シャボンだま干渉かんしょう条件じょうけんつぎのようになる。

 反射はんしゃつよ干渉かんしょうをする場合ばあい
 反射はんしゃよわ干渉かんしょうをする場合ばあい

ここでまくあつさ、まく反射はんしゃりつした境界きょうかいでのなみ入射にゅうしゃかく整数せいすうひかり波長はちょうである。

油膜ゆまく

[編集へんしゅう]
水上すいじょう油膜ゆまく入射にゅうしゃするひかり

うす油膜ゆまく場合ばあいみずそううえあぶらそうっている。あぶら屈折くっせつりつはおよそ1.5であり、みず屈折くっせつりつはおよそ1.33である。シャボンだま場合ばあいおなじように、油膜ゆまく両側りょうがわ物質ぶっしつ空気くうきみず)の屈折くっせつりつは、いずれも油膜ゆまく屈折くっせつりつよりもちいさい()。上側うわがわ境界きょうかいからの反射はんしゃではであるため位相いそうシフトがしょうじるが、したがわ境界きょうかいからの反射はんしゃではであるため位相いそうシフトはしょうじない。しきはシャボンだま場合ばあいおなじになる。

 反射はんしゃつよ干渉かんしょうをする場合ばあい
 反射はんしゃよわ干渉かんしょうをする場合ばあい

反射はんしゃ防止ぼうしまく

[編集へんしゅう]
ガラスじょう反射はんしゃ防止ぼうしまく入射にゅうしゃするひかり

反射はんしゃ防止ぼうしまくは、光学こうがくけいにおいて反射はんしゃこう除去じょきょ透過とうかこう最大さいだいするためのまくである。まくは、ある波長はちょうひかりたいして反射はんしゃこうよわ干渉かんしょうをし、透過とうかこうつよ干渉かんしょうをするように設計せっけいされる。もっと簡単かんたんれいでは、光学こうがくてきあつ入射にゅうしゃこうの1/4波長はちょうであり、屈折くっせつりつ空気くうき屈折くっせつりつよりおおきく、ガラスの屈折くっせつりつよりちいさくなるようにつくられている。

およであるため、まく上下じょうげ界面かいめん反射はんしゃすると、180°の位相いそうしょうじる。反射はんしゃこう干渉かんしょうあらわしきつぎのようになる。

 反射はんしゃよわ干渉かんしょうをする場合ばあい
 反射はんしゃよわ干渉かんしょうをする場合ばあい

光学こうがくてきあつ入射にゅうしゃこうの1/4波長はちょう相当そうとうし、ひかり垂直すいちょくまく入射にゅうしゃすると、反射はんしゃこう完全かんぜん位相いそうがずれてよわ干渉かんしょうをする。ひかり波長はちょうわせてそうかさねることでさらに反射はんしゃおさえることができる。

これらのまくにおいて、透過とうかこう干渉かんしょう完全かんぜんつよう。

自然しぜんかいにおいて

[編集へんしゅう]

薄膜うすまくによる構造こうぞうしょくは、自然しぜんかいでもよくられる。おおくの昆虫こんちゅうの翅は、最小さいしょうあつさゆえに薄膜うすまくとして機能きのうしている。このことは、おおくのハエやスズメバチの翅にはっきりとみることができる。チョウでは、クジャクチョウあおい翅の斑点はんてんのように、翅自たい色素しきそのある翅の鱗粉りんぷんおおわれていない場合ばあいに、薄膜うすまく光学こうがくられる[1]。キンポウゲのはな光沢こうたく薄膜うすまくによるもの[2][3]であり、ゴクラクチョウむねはね光沢こうたくがある[4]

応用おうよう

[編集へんしゅう]
反射はんしゃ防止ぼうしまくほどこされた光学こうがくまど英語えいごばん。45°の角度かくどでは、入射にゅうしゃこうたいしてまくがわずかにあつくなるため、中心ちゅうしん波長はちょうあかがわにシフトし、むらさきがわ反射はんしゃしょうじている。このコーティングが設計せっけい対象たいしょうとした0°では、ほとんど反射はんしゃられない。

薄膜うすまく反射はんしゃ防止ぼうしまく、ミラー、光学こうがくフィルタなどに使用しようされている。これらは特定とくてい波長はちょうひかり表面ひょうめん反射はんしゃまた透過とうかさせるりょう制御せいぎょするように設計せっけいすることができる。ファブリ・ペロー干渉かんしょうけいは、薄膜うすまく干渉かんしょう利用りようして、どの波長はちょうひかり透過とうかさせるかを選択せんたくしている。これらの薄膜うすまくは、基板きばん材料ざいりょうくわえて制御せいぎょする蒸着じょうちゃくプロセスによりつくられる。方法ほうほうとしては化学かがくしょう成長せいちょうやさまざまな物理ぶつりしょう成長せいちょうほうがある。

薄膜うすまく自然しぜんかいにも存在そんざいする。おおくの動物どうぶつは、網膜もうまくうしろにひかりあつめるのをたすける組織そしきてるばん)のそうつ。また、油膜ゆまくやシャボンだまにも薄膜うすまく干渉かんしょう効果こうかられる。薄膜うすまく反射はんしゃりつスペクトルには明瞭めいりょう振動しんどうがあり、そのきょくから薄膜うすまくあつさを算出さんしゅつすることができる[1]

へんこう解析かいせきほう(エリプソメトリー)は、薄膜うすまく特性とくせい測定そくていするためによくもちいられる手法しゅほうである。一般いっぱんてきへんこう解析かいせきほう実験じっけんでは、へんひからしたひかり薄膜うすまく表面ひょうめん反射はんしゃさせ、それを検出けんしゅつ測定そくていする。けい複素ふくそ反射はんしゃりつ 測定そくていされる。その、この情報じょうほう使用しようしてモデル解析かいせきおこない、まくそうあつさや屈折くっせつりつ決定けっていする。

じゅうへんこう干渉かんしょうほうは、分子ぶんしスケールの薄膜うすまく屈折くっせつりつあつさを測定そくていし、それらが刺激しげきをうけたときにどのように変化へんかするかを調しらべるあらたな技術ぎじゅつである。

歴史れきし

[編集へんしゅう]
焼戻やきもどいろは、はがね加熱かねつして表面ひょうめん酸化さんかてつ薄膜うすまく形成けいせいされたときにしょうじるいろである。このいろはがねたっした温度おんどあらわしており、薄膜うすまく干渉かんしょう実用じつようした最初さいしょれいの1つである。
油膜ゆまくちゅう虹色にじいろ干渉かんしょうしょく

薄膜うすまく干渉かんしょうによる虹色にじいろは、自然しぜんかいではよくられる現象げんしょうであり、さまざまな動植物どうしょくぶつられる。この現象げんしょう最初さいしょ研究けんきゅうは、1665ねんロバート・フックおこなったものであるとわれている。『ミクログラフィア』において、フックはクジャクはね虹色にじいろうすいた空気くうきそう交互こうごかさなっているためにこると提唱ていしょうした。1704ねんアイザック・ニュートン著書ちょしょ光学こうがく』のなかでクジャクのはね虹色にじいろ透明とうめいそううすいからであるとべている[5]。1801ねんトマス・ヤングつよ干渉かんしょうよわ干渉かんしょうはじめて説明せつめいあたえた。ヤングの貢献こうけんは、1816ねんオーギュスタン・ジャン・フレネルひかり波動はどう理論りろん確立かくりつするまでほとんどられていなかった[6]。しかし、1870年代ねんだいジェームズ・クラーク・マクスウェルハインリヒ・ヘルツひかり電磁でんじてき性質せいしつ説明せつめいするまで、虹色にじいろ説明せつめいはほとんどできなかった[5]。1899ねんファブリ・ペロー干渉かんしょうけい発明はつめいされると、薄膜うすまく干渉かんしょうのメカニズムがよりおおきいスケールで実証じっしょうされるようになった[6]

初期しょき研究けんきゅうでは、クジャクやコガネムシのような動物どうぶつ虹色にじいろを、さまざまな角度かくどから反射はんしゃしたときにひかりえることのある染料せんりょう顔料がんりょうなどの表面ひょうめんしょく一種いっしゅとして説明せつめいしようとしていた。1919ねんレイリーきょうは、あかるく変化へんかするいろ染料せんりょう顔料がんりょうによるものではなく、微細びさい構造こうぞう(レイリーは「構造こうぞうしょく」とんだ)によるものであると提案ていあんした[5]。1923ねん、C. W. Masonはクジャクのはね小羽おばえだ非常ひじょううすそうでできているとべた。これらのそうのいくつかはいろがついていたが、そう透明とうめいであった。かれは、小羽おばえだすといろあおにシフトし、化学かがく薬品やくひんで膨潤させるといろあかにシフトすることにづいた。かれはまた、羽毛うもうから色素しきそ漂白ひょうはくしても、虹色にじいろけないことを発見はっけんした。これにより、表面ひょうめんしょくせつ払拭ふっしょくされ、構造こうぞうしょくせつ強化きょうかされた[7]

1925ねんアーネスト・メリット英語えいごばんは、論文ろんぶん A Spectrophotometric Study of Certain Cases of Structural Colorなか虹色にじいろ説明せつめいとして薄膜うすまく干渉かんしょうのプロセスをはじめて記述きじゅつした。1939ねんはじめて電子でんし顕微鏡けんびきょう虹色にじいろはね観察かんさつすると、複雑ふくざつ薄膜うすまく構造こうぞう確認かくにんされ、1942ねんモルフォちょう観察かんさつしたところ、ナノメートルスケールの非常ひじょうちいさな薄膜うすまく構造こうぞう配列はいれつ確認かくにんされた[5]

薄膜うすまくコーティングの最初さいしょ製造せいぞうまったくの偶然ぐうぜんからはじまった。1817ねんヨゼフ・フォン・フラウンホーファーは、ガラス硝酸しょうさん変色へんしょくさせることで表面ひょうめん反射はんしゃおさえることができることを発見はっけんした。1819ねん、フラウンホーファーは、ガラスのシートからアルコールのそう蒸発じょうはつするのをて、液体えきたい完全かんぜん蒸発じょうはつする直前ちょくぜんいろあらわれることを発見はっけんし、透明とうめい素材そざい薄膜うすまくであればいろあらわれることを推測すいそくした[6]

薄膜うすまくコーティングの技術ぎじゅつは1936ねんにJohn Strongがガラスの反射はんしゃ防止ぼうしまく作成さくせいするためにぼたるせき蒸着じょうちゃくはじめるまで、ほとんど進歩しんぽがなかった。1930年代ねんだいには真空しんくうポンプ改良かいりょうされ、スパッタリングのような真空しんくう蒸着じょうちゃく可能かのうになった。1939ねん、Walter H. Geffckenは誘電ゆうでんたいコーティングを使用しようしたはつ干渉かんしょうフィルター作成さくせいした[6]

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
  1. ^ a b c Stavenga, D. G. (2014). “Thin Film and Multilayer Optics Cause Structural Colors of Many Insects and Birds”. Materials Today: Proceedings 1: 109–121. doi:10.1016/j.matpr.2014.09.007. 
  2. ^ a b Van Der Kooi, C. J.; Elzenga, J.T.M.; Dijksterhuis, J.; Stavenga, D.G. (2017). “Functional optics of glossy buttercup flowers”. Journal of the Royal Society Interface 14 (127): 20160933. doi:10.1098/rsif.2016.0933. PMC 5332578. PMID 28228540. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5332578/. 
  3. ^ Van Der Kooi, C. J.; Wilts, B. D.; Leertouwer, H. L.; Staal, M.; Elzenga, J. T. M.; Stavenga, D. G. (2014). “Iridescent flowers? Contribution of surface structures to optical signaling” (PDF). New Phytologist 203 (2): 667–73. doi:10.1111/nph.12808. PMID 24713039. https://www.researchgate.net/publication/261515138. 
  4. ^ Stavenga, D. G.; Leertouwer, H. L.; Marshall, N. J.; Osorio, D. (2010). “Dramatic colour changes in a bird of paradise caused by uniquely structured breast feather barbules”. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences 278 (1715): 2098–104. doi:10.1098/rspb.2010.2293. PMC 3107630. PMID 21159676. http://classic.rspb.royalsocietypublishing.org/content/278/1715/2098.full. 
  5. ^ a b c d Structural colors in the realm of nature By Shūichi Kinoshita – World Scientific Publishing 2008 pages 3–6
  6. ^ a b c d Thin-film optical filters By Hugh Angus Macleod – Institute of Physics Publishing 2001 Pages 1–4
  7. ^ Structural colors in the realm of nature By Shūichi Kinoshita - World Scientific Publishing 2008 Page 165-167

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]