足長あしなが手長てなが

歌川うたがわ国芳くによし 『浅草あさくさ奥山おくやま生せい人形にんぎょう』

和漢わかん三さん才さい図会ずえの長ちょう脚あし（右みぎ）と長ちょう臂ひじ（左ひだり）

水木みずきしげるロードに所在しょざいする「足長あしなが手長てなが」の像ぞう

足長あしなが手長てなが（あしながてなが）は、中国ちゅうごくおよび日本にっぽんに伝つたわる妖怪ようかい。1種しゅのみの妖怪ようかいではなく、足長あしなが人じん（あしながじん）と手長てなが人じん（てながじん）の2種しゅの総称そうしょうである。

概要がいよう

足長あしなが人じんは「足長あしなが国こく」の住民じゅうみん、手長てなが人じんは「手長てなが国こく」の住民じゅうみん。その名なの通とおり、それぞれ脚あしと手ての長ながさが体格たいかくに比較ひかくして非常ひじょうに長ながいとされる。海うみで漁りょうをする際さいには、常つねに足長あしなが人じんと手長てなが人じんの1人ひとりずつの組くみ合あわせで海うみへ出でて、足長あしなが人じんが手長てなが人じんを背負せおい、手長てなが人じんが獲物えものを捕とらえるという。

これらの存在そんざいは、中国ちゅうごくの古代こだいの地理ちり書しょ『山海さんかい経けい』（せんがいきょう）に記しるされている長ちょう股また（ちょうこ）長ちょう臂ひじ（ちょうひ）という足あしの長ながい・手ての長ながい異国いこく人物じんぶつの伝説でんせつが起原きげんであると考かんがえられている。

王おう圻が編纂へんさんした中国ちゅうごくの類書るいしょ『三さん才さい図会ずえ』（1609年ねん）および、その記述きじゅつをもとに日本にっぽんで江戸えど時代じだいに編纂へんさんされた『和漢わかん三さん才さい図会ずえ』では、足長あしながは長ちょう脚あし（ちょうきゃく）、手長てながは長ちょう臂ひじ（ちょうひ）とされ、それぞれ脚あしの長ながさが3丈たけ、腕うでの長ながさが2丈たけとある。また、長ちょう脚あし人じんが長ちょう臂ひじ人じんを背負せおって海うみで魚さかなを捕とるということも記しるされており、日本にっぽんではこれを画題がだいとした絵画かいがが御所ごしょの中なかに設置せっちされている「荒海あらうみ障子しょうじ」（あらうみのしょうじ）にも描えがかれている。

『塵ちり添壒嚢鈔』（1532年ねん）には、中国ちゅうごくの王宮おうきゅうには奇き仙せん・異人いじん・仙せん霊れいのあやしき人ひとといった画題がだいの絵画かいがを描えがく風習ふうしゅうがあったというのでそれにならって我わが国くにの皇居こうきょの荒海あらうみ障子しょうじも描えがかれたのでは無ないだろうかと記しるしてある。また、中世ちゅうせいころの仏教ぶっきょう説話せつわでは龍宮りゅうぐうに足長あしながと手長てながが存在そんざいしてるという物語ものがたりがあったようで、そこでは龍王りゅうおうの眷属けんぞくとして登場とうじょうしている。

取扱とりあつかわれている作品さくひん

風かぜ来山らいざん人じん（平賀ひらが源内げんない）の戯作げさく『風流ふうりゅう志こころざし道どう軒のき伝でん』（巻まき四よん）には足長あしながと手長てながが登場とうじょうしている。挿絵さしえにも描えがかれており、そこでもやはり足長あしなが人じんが手長てなが人じんを背負せおっている。また、葛飾かつしか北斎ほくさい、歌川うたがわ国芳くによし、河鍋かわなべ暁斎きょうさいといった画家がかが戯画ぎがなどに描えがいているほか、都市とし部ぶなどで興業こうぎょうがおこなわれていた生なま人形にんぎょう（いきにんぎょう）の題材だいざいとしても取とり扱あつかわれ、製作せいさくされていた（画像がぞう参照さんしょう）。

葛飾かつしか北斎ほくさい『北斎ほくさい漫画まんが』

第だい3編へん（1815年ねん）に描えがかれている。

河鍋かわなべ暁斎きょうさい「柿かきの曲きょく食しょく」

錦絵にしきえによる戯画ぎが組くみ物もの『暁斎きょうさい百ひゃく図ず』（1863年ねん - 1866年ねん）中ちゅうの1枚まい「柿かきの曲きょく食しょく」に足長あしながと手長てながが描えがかれている。

日本にっぽんの「足長あしなが」

江戸えど時代じだいに書かかれた松浦まつうら静しず山さんによる随筆ずいひつ『甲子きのえね夜話やわ』（巻まき之の二に十じゅう六ろく）には、平戸ひらどのある武士ぶしが月つきの綺麗きれいな夜よるに海うみで夜よる釣つりをしていたところ、九きゅう尺しゃく（約やく2.7メートル）もの脚あしを持もつ者ものが海辺うみべをさまよっており、ほどなく天候てんこうが急転きゅうてんして土砂降どしゃぶりに遭あったという逸話いつわが語かたられている。その者ものの従者じゅうしゃの語かたるところによれば、それは足長あしなが（あしなが）と呼よばれる妖怪ようかいで、足長あしながが出没しゅつぼつすると必かならず天気てんきが変かわるとされている。

『甲子きのえね夜話やわ』の原文げんぶんでは前半ぜんはんに『和漢わかん三さん才さい図会ずえ』の文ぶんを引ひいて長ちょう脚あしと長ちょう臂ひじについて述のべているが、この平戸ひらどに現あらわれた「足長あしなが」は特とくに俗ぞくにいわれる中国ちゅうごくの伝説でんせつにもとづいた「足長あしなが手長てなが」と同一どういつのものであるわけではなく、足あしの長ながい点てんから「足長あしなが」と呼よばれているもので、「手長てなが」のようなものも付つき添そっていない。

参考さんこう文献ぶんけん

• 水木みずきしげる『妖鬼化か 5 東北とうほく・九州きゅうしゅう編へん』Softgarage、2004年ねん。ISBN 4-86133-027-0。 
• 寺島てらしま良りょう安やす『和漢わかん三さん才さい図会ずえ 3』島田しまだ勇雄いさお他た訳やく、平凡社へいぼんしゃ、1986年ねん。ISBN 4-582-80456-X。 

関連かんれん項目こうもく

• 中国ちゅうごくの妖怪ようかい一覧いちらん
• 日本にっぽんの妖怪ようかい一覧いちらん
• 長ちょう股また人じん
• 長ちょう臂ひじ人じん
• 海外かいがい三さん十じゅう六ろく国こく

外部がいぶリンク

• 水木みずきしげるロードの妖怪ようかいたち （境港さかいみなと市し観光かんこうガイド内うち）