巨きょ人じん (伝説でんせつの生物せいぶつ)

フランシスコ・デ・ゴヤ（異説いせつあり）の『巨人きょじん』。1808年ねんから1812年ねん頃ごろ、プラド美術館びじゅつかん所蔵しょぞう。

巨人きょじん（きょじん、英えい ジャイアント（giant）、ジャイガント（gigant））は、様々さまざまな神話しんわや伝説でんせつ、ファンタジーに登場とうじょうする伝説でんせつの生物せいぶつの一種いっしゅで、長身ちょうしん・巨体きょたいの神かみや人間にんげんあるいは人ひと型がたの生物せいぶつ、亜あ人間にんげんのことである。

英語えいごのジャイアント・ジャイアンツは、ギリシア神話しんわのギガス（ギガンテス）に由来ゆらいする。また、ティーターン（タイタン）など、神かみである場合ばあいは巨きょ神しんと書かく事こともある。

概要がいよう

媒体ばいたいによってそれぞれである。知能ちのうが低ひくく乱暴らんぼうで、人ひとを食たべたりすることになっている場合ばあいが多おおいが、賢かしこく友好ゆうこう的てきだったり、超ちょう古代こだいの生いき残のこりになっていることもある。多おおくの巨人きょじんは古ふるい時代じだいの神かみの信仰しんこうが残のこったものともいわれている。北欧ほくおう神話しんわの巨きょ人じんについても同様どうようの仮説かせつが19世紀せいき末まつアクセル・オルリックによって提示ていじされたが、ジョルジュ・デュメジルは「ゲルマニアにおいてもカフカスにおいてもまたヨーロッパのいかなる所ところであれ、『巨人きょじん崇拝すうはい』なるものはけっして存在そんざいしなかった」（『デュメジル・コレクション４』p. 150）としてこれを否定ひていしている。

アジアでも神かみ婚こん譚たんの一種いっしゅとして、周しゅう王朝おうちょうの先祖せんぞの后きさき稷きび（こうしょく）の母はは姜きょう嫄は野原のはらで巨人きょじんの足跡あしあとを踏ふんで妊娠にんしんしたというものがある。

多おおくの人類じんるい学者がくしゃやスミソニアンなどの博物館はくぶつかんは巨人きょじんの存在そんざいを動物どうぶつなどの骨ほねの見み間違まちがいであると積極せっきょく的てきに否定ひていしているが、科学かがく者しゃの中なかには巨人きょじんが実際じっさいに存在そんざいした と主張しゅちょうする者ものもいる。彼かれらはノアの方舟はこぶね伝説でんせつが実在じつざいした洪水こうずいから来きているように、ゴリアテなどの神話しんわも巨きょ人じんから由来ゆらいしているのではないかと考かんがえている。 事実じじつ、巨人きょじんの骨ほねと見みられる2 - 3メートル近ちかくの骨ほねが見みつかったという写真しゃしん、新聞しんぶん等ひとしの記録きろくは残のこっているがその全すべての骨ほねは行方ゆくえ不明ふめいまたは消失しょうしつしており、またその骨ほねが巨人きょじんの骨ほねであるという証拠しょうこも残のこされていない。 ただし骨ほねが見みつかった記録きろくのあるパケット洞窟どうくつ(アメリカ)の様ように大おおきな人ひとの歯はのような骨ほねが実際じっさいに見みつかっている例れいはある。

巨人きょじんの例れい

• ギリシア神話しんわ
  • ガイアの子供こどもたち
    • ヘカトンケイル族ぞく（ヘカトンケイレス）- 五ご十じゅう頭とう百ひゃく手ての巨きょ人じん。
    • キュクロープス族ぞく（英えい サイクロプス）- 単眼たんがんの巨きょ人じん。
    • ティーターン神かみ族ぞく（巨きょ神かみ族ぞく、英えい タイタン） - ゼウスの前まえの時代じだいの神かみ。
    • ギガス族ぞく（ギガンテス）- 不死ふしに近ちかい巨きょ人じん。
  • アルビオン － 海神わたつみポセイドーンと正妻せいさいアムピトリーテーの間あいだに生うまれた巨きょ人じん。
• 旧約きゅうやく聖書せいしょ
  • サムエル記きには巨人きょじんの子孫しそんというペリシテ人じんが4人にん登場とうじょうする。
    • ゴリアテ（ゴライアス） - ペリシテ人じんの巨人きょじん兵士へいし。巨人きょじんの子孫しそんとされる。
    • 巨人きょじんの子孫しそんたち - ゴリアテと共ともにダビデに倒たおされたペリシテの巨きょ人じん。イシビベノブ、シパイ、多た指ゆび症しょうの人物じんぶつ（本名ほんみょう不ふ詳しょう）。
  • ネフィリム - 『創世そうせい記き』や偽にせ典てん『ヨベル書しょ』などに伝つたわる巨人きょじんと訳やくされる名前なまえ。『エノク書しょ』などでグリゴリと人間にんげんの娘むすめの間あいだから生うまれた巨人きょじんと同一どういつ視しされる。
• 北欧ほくおう神話しんわ
  • 霜しもの巨人きょじん（ヨートゥン）
  • 山やまの巨人きょじん
• イギリスの伝説でんせつ
  • ゴグマゴグ - 『ブリタニア列れつ王おう史し』などに登場とうじょうする巨きょ人じん。
  • サンダーデル - 『巨きょ人殺ひとごろしのジャック』に登場とうじょうする巨きょ人じん。
  • リトー - 『ブリタニア列れつ王おう史し』などアーサー王おうの伝説でんせつに登場とうじょうする巨きょ人じん。
• ツニート - イヌイット（エスキモー）のい伝いつたえで、心しん優やさしい巨きょ人じん。
• 中国ちゅうごく
  • 盤ばん古いにしえ - 中国ちゅうごく神話しんわに登場とうじょうする、世界せかいの基もととなった巨きょ人じん。
  • 長人ながと - 長人ながと国こくに棲すむという巨きょ人じん。
  • 夸父 - 『山海さんかい経けい』に登場とうじょうする巨人きょじん族ぞく
• 日本にっぽんの伝承でんしょう
  • ダイダラボッチ（ダイタボウ、ダイランボウ） - 日本にっぽん各地かくちの伝説でんせつに登場とうじょうする巨きょ人じん。
  • 東北とうほくのわら人じん - 東北とうほく地方ちほうから関東かんとう地方ちほうに伝つたわる大男おおおとこ。カシマ様さま、ショウキ様きさま、オニオウ様さまなどとも呼よばれる。
  • 弥五郎やごろうどん - 南みなみ九州きゅうしゅうに伝つたわる大男おおおとこ。
  • カタンナーバ - 沖縄おきなわ県けん伊江島いえじまに伝つたわる大男おおおとこ。
  • アマンチュ - 沖縄おきなわ県けん佐敷さしき町まちに伝つたわる身みの丈たけ3メートルもの天人てんにん。
• モンゴルの神話しんわ
  • マンザシリ - 原初げんしょの巨きょ人じん。
• 台湾たいわんの伝説でんせつ
  • アリカガイ - アミ族ぞくの伝説でんせつに登場とうじょうする巨きょ人じん。
  • ハルス - タイヤル族ぞくの伝説でんせつに登場とうじょうする巨きょ人じん。
• インドの伝説でんせつ
  • クンバーカルナ - ヒンドゥー教きょうの叙事詩じょじし『ラーマーヤナ』に登場とうじょうする悪魔あくま軍団ぐんだんの切きり札ふだとなった巨きょ人じん。6ヶ月かげつたっぷり眠ねむることで、1日にちだけ不死身ふじみの体からだとなり、半日はんにちでラーマが率ひきいた猿さる軍団ぐんだんの4分ぶんの1を食くい殺ころした（ハヌマーンを気絶きぜつさせる戦闘せんとう力りょくを誇ほこるも首くびをはねられた）。
• ネイティブ・アメリカンの伝承でんしょう
  • ナルムクツェ - クーテネイ族ぞくの伝承でんしょうに登場とうじょうする巨きょ人じん。