三さん才さい図会ずえ

三さん才さい図会ずえ（さんさいずえ）は、絵えを主体しゅたいとした中国ちゅうごくの類書るいしょ。明あきらの万まん暦れき35年ねん（1607年ねん）に完成かんせいし、1609年ねんに出版しゅっぱんされた。王おう圻（おうき）とその次男じなんの王思おうし義よしによって編纂へんさんされた。全ぜん106巻かんから構成こうせいされる。

概要がいよう[編集へんしゅう]

三さん才さいとは天てん・地ち・人にんをいい、万物ばんぶつを意味いみする。世界せかいの様々さまざまな事物じぶつを、天文てんもん、地理ちり、人物じんぶつ、時どき令れい、宮室きゅうしつ、器用きよう、身体しんたい、衣服いふく、人事じんじ、儀ぎ制せい、珍宝ちんぽう、文ぶん史し、鳥獣ちょうじゅう、草木くさきの14部門ぶもんに分わけて説明せつめいしており、各かく項目こうもくが図ず入いりである点てんが本書ほんしょの大おおきな特徴とくちょうである。

江戸えど時代じだいに日本にっぽんで出版しゅっぱんされた類書るいしょ（百科ひゃっか事典じてん）『和漢わかん三さん才さい図会ずえ』（寺島てらしま良りょう安やす）は、本書ほんしょに触発しょくはつされて編著へんちょされたものである。

特とくに中国ちゅうごくの歴史れきし人物じんぶつの絵えが多数たすう載のっているため、日本にっぽんの中国ちゅうごく史しの書籍しょせきには『三さん才さい図会ずえ』から画像がぞうを引用いんようしていることが多おおい。しかし、この本ほんの歴史れきし人物じんぶつの画像がぞうは歴史れきし的てきに根拠こんきょがあるものではなく、古ふるく清きよしの時代じだいの『四庫全書総目提要』でもこの点てんは批判ひはんされている^[1]。

動植物どうしょくぶつの絵えには正確せいかくなものもあるが、文献ぶんけんの記載きさいから絵えをおこしたために、鱟（カブトガニ）のように実物じつぶつとかけはなれた絵えになっている場合ばあいもある^[2]（なお『和漢わかん三さん才さい図会ずえ』では正確せいかくなカブトガニの絵えが描えがかれている）。

各巻かくかんの構成こうせい[編集へんしゅう]

巻まき名めい	主おもな内容ないよう
天文てんもん1巻かん	天文てんもん総そう図ず、太ふとし微ほろ垣かき、紫むらさき微ほろ垣かき、天てん市し垣かき
天文てんもん2巻かん	東方とうほう七なな宿しゅく、北方ほっぽう七なな宿しゅく、西方せいほう七なな宿しゅく
天文てんもん3巻かん	南方なんぽう七なな宿しゅく、星図せいず、日月じつげつ週しゅう天てん、五ご星ほし週しゅう天てん、黄道こうどう宿やど
天文てんもん4巻かん	五ご辰たつ、北極ほっきょく、日食にっしょく、月食げっしょく、月つき
地理ちり1巻かん	山海さんかい輿地よち全ぜん図ず、華はな夷えびす、北きた直ただし、南みなみ直ただし、山東さんとう、山西さんせい、陝西せんせい、河南かなん
地理ちり2巻かん	浙江せっこう、江西えにし、湖みずうみ広ひろ、四川しせん、福建ふっけん、広東かんとん、広西ひろせ、雲南うんなん、貴き州しゅう
地理ちり3巻かん	九きゅう辺へん、遼東りゃおとん、蘇州そしゅう
地理ちり4巻かん	黄河こうが、長江ながえ、広東かんとん沿海えんかい、福建ふっけん沿海えんかい
地理ちり5巻かん	浙江せっこう沿海えんかい、山東さんとう沿海えんかい、遼東りゃおとん沿海えんかい、海運かいうん、海うみ市し
地理ちり6巻かん	順じゅん天てん京きょう城じょう、応おう天てん京きょう城じょう
地理ちり7巻かん	天てん平山ひらやま、洞ほら庭山にわやま、黄き山やま
地理ちり8巻かん	泰山たいざん、崑崙山こんろんざん、華山かざん、蓬莱山ほうらいさん
地理ちり9巻かん	西湖さいこ、天目山てんもくざん、金きむ華山かざん、補ほ陀山
地理ちり10巻かん	楚すわえ江こう、赤あか壁かべ山さん、鹿しか門もん山やま
地理ちり11巻かん	蜀しょく都と、峨眉山がびさん、武たけ夷えびす山さん、蓮はちす峰山みねやま、壺つぼ公こう山やま
地理ちり12巻かん	羅ら浮山、桂かつら林りん、七なな星巌せいがん、九きゅう鼎かなえ山さん、方丈山ほうじょうさん
地理ちり13巻かん	東夷あずまえびす（日本にっぽん、朝鮮ちょうせん）、西にし夷えびす（吐蕃）、南夷みなみえびす（安やす南みなみ）、北きた夷えびす（韃靼だったん）、東南とうなん夷えびす（琉球りゅうきゅう）、西南せいなん夷えびす、東北とうほく夷えびす、西北せいほく夷えびす
地理ちり14巻かん	九州きゅうしゅう図ず、五ご服ふく図ず、疆界、貢みつぎ賦ふ之の道みち、六郷ろくごう図ず、六ろく逐図、井田いだ溝みぞ洫
地理ちり15巻かん	百ひゃく畝うね、禄ろく田た、春秋しゅんじゅう列国れっこく、十じゅう五ご国こく、国くに図ず、十じゅう道みち、唐から十じゅう五ご採訪さいほう使し、唐から郡ぐん名めい
地理ちり16巻かん	国くに図ず、歴代れきだい帝都ていと、田圃たんぼ、井い、地形ちけい図ず、龍りゅう穴あな砂すな水すい図ず、中国ちゅうごく三さん大だい幹みき図ず
人物じんぶつ1巻かん	三さん皇すめらぎ五ご帝みかど、殷いん、周しゅう、戦国せんごく
人物じんぶつ2巻かん	西にし漢かん、東ひがし漢かん、呉ご、晋すすむ、唐とう、宋そう
人物じんぶつ3巻かん	五ご代だい、元もと、明あきら
人物じんぶつ4巻かん	倉くら頡、后きさき稷きび、太ふとし公おおやけ、五ご帝みかど三さん王おう名めい臣しん、孔子こうし、孟子もうし、荘そう子こ、張ちょう良りょう、韓かん信しん、司馬しば遷、屈こごめ原はら
人物じんぶつ5巻かん	諸しょ葛かずら亮あきら、関せき羽はね、司馬しば懿、周しゅう瑜、陶とう淵ふかし明あきら
人物じんぶつ6巻かん	顔かお師し古いにしえ、郭かく子こ儀ぎ、顔かお真ま卿きょう、李白りはく、杜もり甫はじめ、白楽はくらく天たかし
人物じんぶつ7巻かん	岳たけ飛ひ、米べい芾、蘇そ軾、司馬しば光ひかり
人物じんぶつ8巻かん	耶律楚すわえ材ざい、王おう忠文ただふみ、軒のき左ひだり都と、魏ぎ文ぶん靖やすし、道統どうとう総そう図ず、伝つて経けい図説ずせつ、
人物じんぶつ9巻かん	釈迦牟尼しゃかむに、三さん十じゅう三さん祖そ、布袋ほてい和尚おしょう、十じゅう八はち羅漢らかん尊者そんじゃ
人物じんぶつ10巻かん	観音かんのん、老子ろうし、西王母せいおうぼ
人物じんぶつ11巻かん	張ちょう道みち陵りょう、左ひだり慈、八はち仙せん
人物じんぶつ12巻かん	異国いこく
人物じんぶつ13巻かん	異国いこく、蓐収、相あい柳やなぎ、帝みかど江こう
時どき令れい1巻かん	気候きこう、暦こよみ
時どき令れい2巻かん	六ろく十じゅう年ねん神しん方位ほうい
時どき令れい3巻かん	十二月じゅうにがつ方位ほうい、天運てんうん星ぼし
時どき令れい4巻かん	天運てんうん星ぼし、周しゅう堂どう、九星きゅうせい吉凶きっきょう
宮室きゅうしつ1巻かん	宮みや、殿しんがり、堂どう、楼ろう、宅たく、庭にわ、市し、廟びょう、学まなべ、坊ぼう、厨くりや、竈かまど
宮室きゅうしつ2巻かん	田た廬いおり、牛うし室しつ、倉くら、厩うまや、厠かわや、城しろ、橋はし
宮室きゅうしつ3巻かん	陽ひ宅内たくない形がた吉凶きっきょう
宮室きゅうしつ4巻かん	陽ひ宅たく外形がいけい吉凶きっきょう、四よん位い宅たく
器用きよう1巻かん	鼎かなえ、壺つぼ、盆ぼん、鑑かん
器用きよう2巻かん	尊みこと、圭けい、玉たま、璧、漏刻ろうこく、規矩きく、度量衡どりょうこう
器用きよう3巻かん	楽器がっき
器用きよう4巻かん	舞まい、干ひ、筏いかだ、船ふね
器用きよう5巻かん	車くるま、網あみ、釣竿つりざお、蟹かに断だん
器用きよう6巻かん	武器ぶき、旗はた
器用きよう7巻かん	砲ほう、火器かき
器用きよう8巻かん	火器かき
器用きよう9巻かん	養蚕ようさん、織機しょっき
器用きよう10巻かん	農具のうぐ、水車みずぐるま
器用きよう11巻かん	農具のうぐ
器用きよう12巻かん	文房具ぶんぼうぐ、仏具ぶつぐ、薬研やげん、鉢はち、扇おうぎ、照明しょうめい、刑けい具ぐ
身体しんたい1巻かん	五臓ごぞう
身体しんたい2巻かん	五臓ごぞう、経絡けいらく
身体しんたい3巻かん	脈みゃく
身体しんたい4巻かん	脈みゃく、八はち会かい
身体しんたい5巻かん	病やめ、診み四よん時じ、傷寒しょうかん熱ねつ
身体しんたい6巻かん	瘡かさ図ず
身体しんたい7巻かん	人相にんそう
衣服いふく1巻かん	衣ころも、帽子ぼうし
衣服いふく2巻かん	国くに朝あさ冠かんむり服ふく
衣服いふく3巻かん	衣ころも、笠かさ、蓑みの、沓くつ、僧衣そうい、道みち衣ころも、防具ぼうぐ
人事じんじ1巻かん	鼓つづみ琴きん、象ぞう戯おどけ、打馬うつま
人事じんじ2巻かん	囲かこえ棋
人事じんじ3巻かん	書しょ、永字八法えいじはっぽう、草くさ訣百ひゃく韻いん、隷字法ほう
人事じんじ4巻かん	書しょ、画が
人事じんじ5巻かん	画が
人事じんじ6巻かん	画が、除じょ紅べに
人事じんじ7巻かん	武芸ぶげい
人事じんじ8巻かん	八はち陣じん、牌ぱい図ず
人事じんじ9巻かん	律りつ呂りょ、舞楽ぶがく
人事じんじ10巻かん	二十四気にじゅうしき脩おさむ真しん図ず、遊戯ゆうぎ
儀ぎ制せい1巻かん	王宮おうきゅう
儀ぎ制せい2巻かん	王宮おうきゅう
儀ぎ制せい3巻かん	鹵簿ろぼ、儀仗ぎじょう
儀ぎ制せい4巻かん	儀仗ぎじょう
儀ぎ制せい5巻かん	帝室ていしつ
儀ぎ制せい6巻かん	帝室ていしつ
儀ぎ制せい7巻かん	祭礼さいれい
儀ぎ制せい8巻かん	祭礼さいれい、軍ぐん、刑罰けいばつ
珍宝ちんぽう1巻かん	金石かねいし、銭ぜに
珍宝ちんぽう2巻かん	銭ぜに
文ぶん史し1巻かん	河かわ図ず、八卦はっけ
文ぶん史し2巻かん	詩経しきょう
文ぶん史し3巻かん	春秋しゅんじゅう二に十じゅう国こく年表ねんぴょう、詩文しぶん
文ぶん史し4巻かん	詩文しぶん
鳥獣ちょうじゅう1巻かん	鳥類ちょうるい
鳥獣ちょうじゅう2巻かん	鳥類ちょうるい
鳥獣ちょうじゅう3巻かん	獣類じゅうるい
鳥獣ちょうじゅう4巻かん	獣類じゅうるい
鳥獣ちょうじゅう5巻かん	鱗うろこ類るい
鳥獣ちょうじゅう6巻かん	鱗うろこ類るい、介かい類るい、虫むし類るい
草木くさき1巻かん	草くさ類るい
草木くさき2巻かん	草くさ類るい
草木くさき3巻かん	草くさ類るい
草木くさき4巻かん	草くさ類るい
草木くさき5巻かん	草くさ類るい
草木くさき6巻かん	草くさ類るい
草木くさき7巻かん	草くさ類るい
草木くさき8巻かん	木き類るい
草木くさき9巻かん	木き類るい
草木くさき10巻かん	蔬類
草木くさき11巻かん	菓類、穀類こくるい
草木くさき12巻かん	花卉かき類るい

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

^ 『四庫全書総目提要』巻まき138・子し部ぶ48・類書るいしょ類るい存そん目め2・三さん才さい図会ずえ「其人物ぶつ一門いちもん、絵画かいが古来こらい名人めいじん形像けいぞう。某ぼう甲かぶと某ぼう乙おつ、宛あて如目睹もくと、殊こと非ひ徴しるし信之のぶゆき道どう。如拠倉くら頡四目よつめ之の説せつ、即そく画一かくいつ面めん有ゆう四よん目もく之これ人にん、尤ゆう近きん児戯じぎ也。」
^ 『三さん才さい図会ずえ』巻まき93・鳥獣ちょうじゅう5・鱟。