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さん水素すいそガス

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さん水素すいそガス(さんすいそガス)は、水素すいそ (H2) と酸素さんそ (O2) の混合こんごう気体きたいで、モルぶんりつみずおなじ 2:1 とするのが典型てんけいてきである[1]耐火たいかぶつ製造せいぞうのトーチやガス溶接ようせつ燃料ねんりょう使つかわれている。酸化さんかえんとなるのをふせぐには、水素すいそ比率ひりつたかめ 4:1 から 5:1 にする[2]

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

さん水素すいそガスは温度おんど発火はっかてんになると自発じはつてき燃焼ねんしょうする。水素すいそ酸素さんそが 2:1 の混合こんごうガス(水素すいそばく)は、つねあつにおいて発火はっかてんやく 570 °C となる[3]。そのような混合こんごう気体きたい着火ちゃっかするのに必要ひつようなスパークの最小さいしょうエネルギーは、やく20マイクロジュールである[3]常温じょうおんつねあつでは、水素すいそ体積たいせきの4%から95%をめている場合ばあいさん水素すいそガスは燃焼ねんしょう可能かのうである[3]

ひとたび着火ちゃっかすると、この混合こんごう気体きたい発熱はつねつ反応はんのうにより水蒸気すいじょうきへとわり、その発熱はつねつによって反応はんのう持続じぞくする。1モル水素すいそ燃焼ねんしょうにつき 241.8 kJ のエネルギー(てい発熱はつねつりょう)を発生はっせいする。発生はっせいするねつエネルギーのりょう燃焼ねんしょう形式けいしき影響えいきょうされないが、ほのお温度おんど変化へんかする[1]酸素さんそ水素すいそ組成そせい正確せいかく調整ちょうせいするとほのお最高さいこうやく 2800 °C となり、大気たいきちゅう水素すいそガスをやしたときより 700 °C たか[4][5][6]混合こんごう比率ひりつが 2:1 でない場合ばあいや、窒素ちっそのような活性かっせい気体きたいざっている場合ばあいねつがよりおおきな体積たいせき拡散かくさんするため、温度おんどひくくなる[1]

製法せいほう[編集へんしゅう]

2:1 の正規せいき組成そせいさん水素すいそガスは、みず電気でんき分解ぶんかい生成せいせいできる。これは電流でんりゅうによって水分すいぶんつぎのように分解ぶんかいするものである。

電気でんき分解ぶんかい
燃焼ねんしょう

1800ねんウィリアム・ニコルソンはじめてこの方式ほうしきみず分解ぶんかいした。さん水素すいそガスを生成せいせいするのにようするエネルギーは、つねにその燃焼ねんしょうによってられるエネルギーよりもおおい。

用途ようと[編集へんしゅう]

ライムライト高温こうおん熱源ねつげんとしてさん水素すいそガスのほのお使つかっている。

照明しょうめい[編集へんしゅう]

さん水素すいそガスは、ライムライトなどのガス灯がすとう使つかわれている。ライムライトの場合ばあいさん水素すいそガスのほのお使つかって石灰せっかいへんねっし、それによってはっする白熱はくねつこう照明しょうめい使つか[7]さん水素すいそガスは爆発ばくはつせいがあるため、ライムライトは電気でんきによる照明しょうめいえられていった。

白金はっきん融解ゆうかい温度おんどたかく (1768.3 °C)、かつてはそのような温度おんどほのおとしてはさん水素すいそガスしかなかったため、白金はっきん細工ざいくさん水素すいそガスのトーチが使つかわれていた[1]。この技法ぎほういまでは電気でんきアークえられた。

さん水素すいそガス吹管すいかん[編集へんしゅう]

19世紀せいきの鞴式さん水素すいそガス吹管すいかん。2種類しゅるいぎゃく防止ぼうし装置そうちき。

さん水素すいそガス吹管すいかんイングランド鉱物こうぶつがくものエドワード・ダニエル・クラークアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく化学かがくものロバート・ヘアが19世紀せいきはじめに開発かいはつした。高温こうおんほのお白金はっきん陶磁器とうじき耐火たいか煉瓦れんがといった耐火たいかぶつかすことができ、様々さまざま科学かがく分野ぶんや器具きぐとして使つかわれていた。

さん水素すいそガストーチ[編集へんしゅう]

さん水素すいそガストーチは酸素さんそ混合こんごうガストーチ一種いっしゅで、燃料ねんりょうとしての水素すいそガスを酸化さんかざいとしての酸素さんそガスとともに燃焼ねんしょうさせるものである。金属きんぞくガラスねつ可塑かそせい樹脂じゅし切断せつだん溶接ようせつ使つかわれる[7]。ガラス工芸こうげいみがをするのに使つかわれている[よう出典しゅってん]みがきとは、ガラス表面ひょうめんすこかして微細びさいきずをなくし、表面ひょうめんかがやくようにする技法ぎほうである。

アセチレンやアーク溶接ようせつがよく使つかわれるようになっているため、さん水素すいそガストーチの利用りようすくなくなっているが、特定とくてい用途ようとではいま使つかわれている。

みずトーチ[編集へんしゅう]

みずトーチ (Water Torch) は、直流ちょくりゅう電源でんげん装置そうち電気でんき分解ぶんかいそう圧力あつりょくけいぎゃく防止ぼうし装置そうち構成こうせいされる携帯けいたい可能かのうさん水素すいそガストーチである。みず電気でんき分解ぶんかいしてさん水素すいそガスを生成せいせいし、その燃焼ねんしょうさせるため、ガスようタンクが不要ふようである。1962ねん、Henes Manufacturing Co. の William Rhodes と Raymond Henes が設計せっけいしたのが最初さいしょ[8]、これを "Water Welder"(すい溶接ようせつ)という商標しょうひょう発売はつばいした。皮下ひか注射ちゅうしゃよう注射ちゅうしゃはりはもともとこのトーチの先端せんたん使つかわれていた金具かなぐ原形げんけいとされている。

疑似ぎじ科学かがく[編集へんしゅう]

さん水素すいそガスは、みず燃料ねんりょうとする自動車じどうしゃといったあやしげな装置そうちとの関連かんれん言及げんきゅうされることがおおい。Yull Brown という「詐欺さぎ」「妄想もうそう」としょうされる技術ぎじゅつしゃ[9]がそのような装置そうちさいさん水素すいそガスをブラウンガス (Brown's Gas) というんでいたため、それがさん水素すいそガスの別名べつめいにもなっている[10]。また物理ぶつり学者がくしゃ Ruggero Santilli のっていた主張しゅちょうからHHOガスともばれる[11]。アメリカの発明はつめいスタンリー・メイヤーは、みず電気でんき分解ぶんかいしてブラウン・ガスをつくり、それを燃料ねんりょうにして自動車じどうしゃのエンジンをまわすことで、100%以上いじょうエネルギー効率こうりつ実現じつげんできると主張しゅちょうしていた[12][13]

もっと一般いっぱんてきかつ決定的けっていてき反論はんろんは、みず電気でんき分解ぶんかいするのにようするエネルギーはさん水素すいそガスを燃焼ねんしょうしてられるエネルギーよりおおきいというもので、この装置そうち燃料ねんりょう効率こうりつげることはあっても、げることはない[14]

日本にっぽんにおいても日本にっぽんテクノ株式会社かぶしきがいしゃ社長しゃちょう大政たいせいりゅうすすむが、みずてい周波しゅうは撹拌かくはんしながら電気でんき分解ぶんかいしてられた混合こんごう気体きたいさん水素すいそガスあるいは「OHMASA-GAS」とづけ、ばくよりも安定あんてい安全あんぜんなエネルギー効率こうりつたか燃料ねんりょうであるとして発明はつめい主張しゅちょうしている[15]通常つうじょう電気でんき分解ぶんかいられるガスとちがい、みずクラスターおおふくまれているため爆発ばくはつしないことが、首都しゅと大学だいがく東京とうきょう大学院だいがくいん理工りこうがく研究けんきゅうにより判明はんめいしたと主張しゅちょうしている[16]また、電気でんき分解ぶんかいようする電気でんきエネルギーよりも、ガスの燃焼ねんしょうによってられるエネルギーのほうがおおきいと説明せつめいしている報道ほうどうがいくつか存在そんざいするが[よう出典しゅってん]燃焼ねんしょうさせた場合ばあいせるエネルギーは電気でんき分解ぶんかい必要ひつようとしたエネルギーのやく50%にまることが環境省かんきょうしょう 地球ちきゅう温暖おんだん対策たいさく技術ぎじゅつ開発かいはつ事業じぎょう検証けんしょう実験じっけん確認かくにんされている[17]。また、エネルギー密度みつど都市としガスの1/5程度ていどでされ優位ゆういせいがないとされる[17]燃料ねんりょう電池でんち燃料ねんりょうとしては反応はんのう持続じぞくせい制御せいぎょ問題もんだいがあるとされ、かりにそれらの問題もんだい解決かいけつしても、発電はつでんよりも燃焼ねんしょうのほうが優先ゆうせんてきにおこるので電気でんき出力しゅつりょくることは困難こんなんであるとされた[17]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d 1911 Encyclopedia. "Oxyhydrogen Flame." (Available here Accessed 2008-01-19.)
  2. ^ Viall, Ethan (1921). Gas Torch and Thermite Welding. McGraw-Hill. p. 4 
  3. ^ a b c O'Connor, Ken. “Hydrogen”. NASA Glenn Research Center Glenn Safety Manual 
  4. ^ Calvert, James B. (2008ねん4がつ21にち). “Hydrogen”. University of Denver. 2009ねん4がつ23にち閲覧えつらん。 “An air-hydrogen torch flame reaches 2045 °C, while an oxyhydrogen flame reaches 2660 °C.”
  5. ^ Adiabatic Flame Temperature”. The Engineering Toolbox. 2009ねん4がつ23にち閲覧えつらん "Oxygen as Oxidizer: 3473 K, Air as Oxidizer: 2483 K"
  6. ^ Temperature of a Blue Flame”. 2008ねん4がつ5にち閲覧えつらん "Hydrogen in air: 2,400 K, Hydrogen in Oxygen: 3,080 K"
  7. ^ a b Tilden, William Augustus. Chemical Discovery and Invention in the Twentieth Century. Adamant Media Corporation. p. 80. ISBN 0543916464. https://books.google.co.jp/books?id=gDB2P9Tmg8MC&printsec=frontcover&dq=%22Chemical+Discovery+and+Invention+in+the+Twentieth+Century%22&source=bl&ots=roXw2BrVhh&sig=tpPnzM3YAf9w7b4_8yObrwqSoUU&hl=ja&ei=HcJ8S4KsPM2IkAWQiNnNBA&sa=X&oi=book_result&ct=result&resnum=1&ved=0CAoQ6AEwAA#v=onepage&q=&f=false 
  8. ^ アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく特許とっきょだい 3,262,872ごう Apparatus for the electrolytic production of Hydrogen and Oxygen for the safe consumption thereof, William A. Rhodes, Raymond A. Henes, Filed March 23, 1962
  9. ^ Yull Brown History and Controversy 2011ねん7がつ28にち閲覧えつらん
  10. ^ Ball, Philip (2006). “Nuclear waste gets star attention”. news@nature. doi:10.1038/news060731-13. ISSN 1744-7933. 
  11. ^ Weimar, Carrie (2007ねん5がつ7にち). “Snubbed By Mainstream, Scientist Sues”. St. Petersburg Times. https://news.google.com/newspapers?id=BYtIAAAAIBAJ&sjid=e3QDAAAAIBAJ&pg=1570,2000590&dq=ruggero-santilli+fringe&hl=en 2011ねん2がつ3にち閲覧えつらん 
  12. ^ Dean Narciso (July 8, 2007-7-8). “The Car that Ran on Water”. コロンバス・ディスパッチ英語えいごばん. 2008ねん2がつ14にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2021ねん4がつ25にち閲覧えつらん
  13. ^ Philip Ball (2007-9-14). “Burning water and other myths”. Nature News. doi:10.1038/news070910-13. https://www.nature.com/news/2007/070914/full/news070910-13.html 2021ねん4がつ25にち閲覧えつらん. 
  14. ^ Schadewald, Robert J. (2008), Worlds of Their Own - A Brief History of Misguided Ideas: Creationism, Flat-Earthism, Energy Scams, and the Velikovsky Affair, Xlibris, ISBN 978-1-4363-0435-1 
  15. ^ さん水素すいそガス」[リンク] (YouTube) など
  16. ^ 【WBS】2011.10.24 しんエネルギーの可能かのうせいは OHMASA-GAS ・マイクロバイナリー
  17. ^ a b c 環境省かんきょうしょう 地球ちきゅう温暖おんだん対策たいさく技術ぎじゅつ開発かいはつ事業じぎょう 水素すいそ代替だいたいエネルギーとしてのしん水素すいそ酸素さんそ混合こんごうガスの実用じつよう技術ぎじゅつ開発かいはつ 2016ねん11月閲覧えつらん