金鵄きんし

月岡つきおか芳年よしとし『大だい日本にっぽん名将めいしょう鑑かん』より「神武じんむ天皇てんのう」。神武じんむ天皇てんのうの弓ゆみの先さきに止とまった金鵄きんしが光ひかりを放はなち、長ちょう髄ずい彦軍の兵へいの目めをくらませている。

金鵄きんし（きんし）は、『日本書紀にほんしょき』に登場とうじょうし、神武じんむ天皇てんのうによる日本にっぽん建国けんこくを導みちびいた金色きんいろの鵄とび。

概要がいよう

『日本書紀にほんしょき』の記述きじゅつでは、東征とうせいを進すすめる彦火火ひ出で見み（後ごの神武じんむ天皇てんのう）が長ちょう髄ずい彦と戦たたかっている際さいに、金色きんいろの霊れい鵄とびが天皇てんのうの弓ゆみに止とまると、その体からだから発はっする光ひかりで長ちょう髄ずい彦の軍兵ぐんびょうたちの目めがくらみ、東征とうせい軍ぐんが勝利しょうりすることができたとされる。この霊れい鵄とびを指さして「金鵄きんし」と呼よぶ。

ただし、『古事記こじき』に金鵄きんしは登場とうじょうせず、神武じんむ東征とうせいの際さいに熊野くまのから大和やまとへ東征とうせい軍ぐんを道案内みちあんないした八はち咫烏と混同こんどう、あるいは同視どうしされることが多おおい。金鵄きんしと八はち咫烏が同一どういつであるか、それとも別べつの存在そんざいであるかはっきりしないが、いずれにしろ日本にっぽん建国けんこくに関かかわった霊鳥れいちょうとして、吉事きちじや勝利しょうりあるいは建国けんこくの代名詞だいめいしとして使つかわれ、特とくに大日本帝国だいにっぽんていこく時代じだいには金鵄勲章きんしくんしょうをはじめ、意匠いしょうや名称めいしょうが多方面たほうめんで採用さいようされた。

また、平安へいあん時代じだいから存続そんぞくする賀茂かも神社じんじゃにおいては、金鵄きんしおよび八はち咫烏ともに、賀茂かも建けん角かく身命しんめいの化身けしんとされており、この二ふたつを合あわせて「金鵄きんし八はち咫烏」と呼よび祀まつっている。

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  金鵄勲章きんしくんしょうの功こう一いち級きゅう副ふく章しょうおよび功こう二に級きゅう正章まさあき
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  昭和しょうわ六ろく年ねん乃至ないし九きゅう年ねん事変じへん従軍じゅうぐん記章きしょう（表面ひょうめん）
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  大日本帝国だいにっぽんていこく政府せいふ50銭ぜに紙幣しへい。靖国神社やすくにじんじゃと金鵄きんしと桜花おうか
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  1937年ねん発行はっこうの葉書はがき料りょう面めんに描えがかれた金鵄きんし
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  紀元きげん二に千せん六ろく百ひゃく年ねんを記念きねんして1940年ねんに発行はっこうされた2銭ぜに切手きってに描えがかれた金鵄きんし

霊れい鵄とび形がた大だい錦にしき旛

霊れい鵄とび形がた大だい錦にしき旛（即位そくいの礼れい複製ふくせい品ひん・神社じんじゃ展示てんじ用よう）大阪おおさか放出ほうしゅつの阿おもね遅速ちそく雄ゆう神社じんじゃの展示てんじ品ひん

霊れい鵄とび形がた大だい錦にしき旛（れいしけいだいきんばん）は、天皇てんのう即位そくいの礼れいに使用しようされる大だい錦にしき旛のひとつである。それには金色きんいろに輝かがやく金鵄きんしが刺繍ししゅうされており、頭あたま八咫烏形大錦旛（やたがらすだいきんばん）と対たいになっている。それらは、日ひ（太陽たいよう）および月つきの象徴しょうちょうたる日にち像ぞう纛旛、月つき像ぞう纛旛の次つぎに掲かかげられ、太陽たいようや月つきに次つぐものとして極きわめて重用じゅうような位置いちに配置はいちされ、即位そくいの礼れいでも重視じゅうしされていることが窺うかがい知しれる。

商品しょうひんに使つかわれた金鵄きんし

「金鵄きんし」名めい時期じきのゴールデンバットの箱はこ。

金鵄きんしは戦たたかわず光ひかり威徳いとくで敵てきを降伏ごうぶくせしめた日本にっぽん神話しんわから、大変たいへんに縁起えんぎが良よいとして明治めいじ以降いこう、商品しょうひんなどに使用しようされた。特とくに日本酒にほんしゅに多おおく、造つくり酒屋ざかやの金鵄きんし盃さかずき酒造しゅぞうやキンシ正宗まさむねの「金鵄きんし正宗まさむね」などがある。これらは、金鵄きんしに化身けしんしたとされる賀茂かも一族いちぞくの神社じんじゃ、賀茂かも御ご祖神そしん社しゃに献上けんじょうされている。

また、紙巻かみまきたばこの「ゴールデンバット」は、戦時せんじ中ちゅうの敵性てきせい語ご追放ついほうの動うごきを受うけて、1940年ねん（昭和しょうわ15年ねん）から1949年ねん（昭和しょうわ24年ねん）まで「金鵄きんし」に改名かいめいされていた。 1941年ねん（昭和しょうわ16年ねん）のパッケージには当初とうしょ、神武じんむ天皇てんのうの弓ゆみが描えがかれていたが、これを捨すてたり踏ふみつけることは不敬ふけいであるとの批判ひはんを受うけ、デザインの変更へんこうを余儀よぎなくされたことがある。

金きむトビ志賀しが(製粉せいふん製せい麺めん業ぎょう)の創業そうぎょう者しゃである志賀しが八はち五ご郎ろうは、空そら高たかく舞まうトビの姿すがたに事業じぎょうの夢ゆめを重かさね、小麦粉こむぎこのマークを「トビ印しるし」と定さだめ、ふるさと名古屋なごやの誇ほこりである「金きむ鯱しゃち（きんのしゃちほこ）」と、神武じんむ天皇てんのうの「金鵄きんし（きんとび）」の故事こじにならい、最高さいこう品質ひんしつの小麦粉こむぎこを「金きむトビ」と名なづけて売うり出だした。

関連かんれん項目こうもく

• 日本にっぽんの神かみの一覧いちらん
• 橿原神宮かしはらじんぐう
• 八はち咫烏
• 金鵄勲章きんしくんしょう
• 明あけの明星みょうじょう
• 水陸すいりく機動きどう団だん (陸上りくじょう自衛隊じえいたい) - 部隊ぶたい章しょうに金鵄きんしと天てん叢雲むらくも剣けんが使つかわれている。
• アールパード - ハンガリー建国けんこく者しゃ。建国けんこく時じにトゥルルという輝かがやく鳥とりが来きて止とまったという、金鵄きんしと同様どうようの伝説でんせつがある。

外部がいぶリンク

• 宮内庁くないちょう「京都きょうと御所ごしょと離宮りきゅうの栞しおり(しおり)　-京都きょうと御所ごしょ-」 - 約やく100年ねん前まえに行おこなわれた大正天皇たいしょうてんのう御ご大礼たいれい。大正天皇たいしょうてんのう即位そくいの礼れいに使つかわれた「金鵄きんしをかたどった霊れい鵄とび形がた大だい錦にしき旛」の配置はいち(p2)および現物げんぶつ写真しゃしん(p3)が掲載けいさいしてある(PDF)。一部いちぶ、金鵄きんしと縁えんが深ふかい神社じんじゃで掲載けいさいされている金鵄きんし(霊れい鵄とび形がた大だい錦にしき旛)のレプリカは、これらを元もとにしてある。
• ウィキメディア・コモンズには、金鵄きんしに関かんするカテゴリがあります。