銀河ぎんが潮汐ちょうせきりょく

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マウス銀河ぎんが

銀河ぎんが潮汐ちょうせきりょく(ぎんがちょうせきりょく、えい: Galactic tide)は、銀河ぎんが重力じゅうりょくじょうによって発生はっせいする潮汐ちょうせきりょく一種いっしゅで、主要しゅよう効果こうかには、相互そうご作用さよう銀河ぎんが矮小わいしょう銀河ぎんがばん銀河ぎんが分解ぶんかいオールトのくも摂動せつどうなどがある。

外部がいぶ銀河ぎんが影響えいきょう[編集へんしゅう]

銀河ぎんがあいだ衝突しょうとつ[編集へんしゅう]

触角しょっかく銀河ぎんが衝突しょうとつちゅう潮汐ちょうせきりょくによってしょうじたなが潮汐ちょうせき英語えいごばん

潮汐ちょうせきりょく重力じゅうりょく絶対ぜったいてきつよさより重力じゅうりょく差異さい関係かんけいがあるため、銀河ぎんが潮汐ちょうせきりょく銀河ぎんが周辺しゅうへんでのみ作用さようする。もし2つの銀河ぎんがちかくをとおぎる場合ばあい、とてもおおきな潮汐ちょうせきりょく作用さようすることになる。

2つの銀河ぎんが正面しょうめん衝突しょうとつする場合ばあい滅多めったになく、潮汐ちょうせきりょく作用さようして銀河ぎんが進行しんこう方向ほうこう影響えいきょうあたえる。2つの銀河ぎんが重力じゅうりょくてき相互そうご作用さようたがいのまわりをまわさい潮汐ちょうせきりょく影響えいきょうけた地域ちいき銀河ぎんが本体ほんたいから分離ぶんりしてどう回転かいてんにより分解ぶんかいされ銀河ぎんがあいだ空間くうかんへとばされていく。このさい発生はっせいする尻尾しっぽのような模様もよう構造こうぞう潮汐ちょうせき英語えいごばんという。潮汐ちょうせきがったかたちをしており、直線ちょくせんえる場合ばあいは、よこからると、直線ちょくせんのようにえるのである。潮汐ちょうせき形成けいせいする物質ぶっしつ普通ふつう重力じゅうりょくつよける銀河ぎんが中心ちゅうしん膨大ぼうだいよりも銀河ぎんが円盤えんばんでよりおお供給きょうきゅうされる[1]潮汐ちょうせきつよあらわれたれいに、マウス銀河ぎんが触角しょっかく銀河ぎんががある。

つきが2つの潮汐ちょうせき膨大ぼうだいつくるのとおな原理げんりで、潮汐ちょうせき通常つうじょう場合ばあい2つできる。相対そうたい銀河ぎんがより質量しつりょう同等どうとうすくないとなが潮汐ちょうせきができる。ぎゃくおおきいとみじか潮汐ちょうせきができ、潮汐ちょうせききょう(bridge)とばれる銀河ぎんが前方ぜんぽう尻尾しっぽがよりおおきくなる[1]潮汐ちょうせききょう位置いちじょう潮汐ちょうせき区別くべつむずかしく、2つの銀河ぎんがわさる過程かてい銀河ぎんがふたた吸収きゅうしゅうされ潮汐ちょうせきより観測かんそくできる期間きかんみじかく、もし2つの銀河ぎんが地球ちきゅうとの距離きょりちがうと、潮汐ちょうせききょうかくれてえない場合ばあいもある。潮汐ちょうせき両方りょうほう銀河ぎんが連結れんけつした模様もようである潮汐ちょうせき(tidal loop)はさらに観測かんそくむずかしい[2]

ばん銀河ぎんが[編集へんしゅう]

アンドロメダ銀河ぎんが円盤えんばん左上ひだりうえにあるとも銀河ぎんがM32は アンドロメダ銀河ぎんが潮汐ちょうせきりょくうでえた。

銀河ぎんが潮汐ちょうせきりょく銀河ぎんが同士どうしちかづくほどつよくなるため、ばん銀河ぎんがだいいち影響えいきょうおおきくける。潮汐ちょうせきりょくけたばん銀河ぎんが回転かいてん方向ほうこう速度そくど質量しつりょう光度こうど関係かんけい異常いじょうなどを観測かんそくできる異常いじょう現象げんしょうしめ[3]ばん銀河ぎんが恒星こうせい気体きたいとなり銀河ぎんがうつることもある。アンドロメダ銀河ぎんがとも銀河ぎんがであるM32外側そとがわ渦状かじょううでをアンドロメダ銀河ぎんがうしなって、銀河ぎんが中心ちゅうしん分子ぶんしくも圧縮あっしゅくされ恒星こうせい形成けいせい促進そくしんされた[4]

渦状かじょううでうしな過程かてい基本きほんてき潮汐ちょうせきのできる過程かていおなじだが、質量しつりょうおおきいため実質じっしつてき片方かたがた銀河ぎんがにのみ影響えいきょうあらわれる。とも銀河ぎんががとてもちいさい場合ばあいには潮汐ちょうせき模様もよう対称たいしょうあらわれて、ばん銀河ぎんがうしろにつづ模様もようになる[5]。ただし、ばん銀河ぎんが質量しつりょう中心ちゅうしん銀河ぎんが質量しつりょうの1まんぶんの1以上いじょうなら、ばん銀河ぎんが自体じたい重力じゅうりょく潮汐ちょうせき影響えいきょうあたえ、潮汐ちょうせき非対称ひたいしょう様々さまざま方向ほうこうひろがっていく。最終さいしゅうてき形成けいせいされる構造こうぞうとも銀河ぎんが質量しつりょう軌道きどう中心ちゅうしん銀河ぎんが周辺しゅうへんダークマターハロー英語えいごばん質量しつりょう構造こうぞう両方りょうほう依存いぞんしており、銀河ぎんが暗黒あんこく物質ぶっしつ位置いちエネルギー研究けんきゅうする方法ほうほうとして脚光きゃっこうびている[6]

もし 矮小わいしょう銀河ぎんがおおきな銀河ぎんが接近せっきんしすぎたり、ながあいだ1つの銀河ぎんが周回しゅうかいしたら、銀河ぎんが形態けいたい完全かんぜんくずれて中心ちゅうしん銀河ぎんがつつ線形せんけいにかわることもある。また、アンドロメダ銀河ぎんがなどの一部いちぶ銀河ぎんが銀河ぎんが円盤えんばんは、いくつかの矮小わいしょう銀河ぎんががこの過程かてい完全かんぜん吸収きゅうしゅうされた結果けっかできたものとみなされることもある[7]

銀河ぎんがない天体てんたい影響えいきょう[編集へんしゅう]

銀河ぎんがないにある天体てんたいにも銀河ぎんが潮汐ちょうせきりょく影響えいきょうおよぼすが、とく恒星こうせい惑星わくせいけい形成けいせいもっとおおきな影響えいきょうあたえる。普通ふつう惑星わくせいけいでは、ちかくにある恒星こうせいあいだとおりすぎるときのぞき、中心ちゅうしん恒星こうせいだけが実質じっしつてき重力じゅうりょくてき影響えいきょうりょく発揮はっきするが、恒星こうせいけいさい外郭がいかくでは恒星こうせい重力じゅうりょくよわくなり銀河ぎんが潮汐ちょうせきりょく影響えいきょうおおきくなる。太陽系たいようけい場合ばあいちょう周期しゅうき彗星すいせいみなもと推定すいていされるオールトのくもがまさにこの地域ちいきぞくする。

オールトのくもやく1光年こうねん距離きょりにある、太陽系たいようけい巨大きょだい天体てんたいぐんである。太陽たいようとは距離きょりとおいため、銀河系ぎんがけい自体じたい潮汐ちょうせきりょく相当そうとう影響えいきょう行使こうしして、オールトのくも模様もよう銀河ぎんが中心ちゅうしん方向ほうこうつぶしている。この程度ていど距離きょりでは太陽たいよう重力じゅうりょくよわく、銀河ぎんが潮汐ちょうせきりょくだけでもほろ惑星わくせい撹乱かくらんされて太陽系たいようけいかうようになる[8]。オールトのくもほろ惑星わくせいおも岩石がんせきこおりざった天体てんたいで、太陽系たいようけい進入しんにゅうすると、こおり蒸発じょうはつして彗星すいせいになる。

カイパーベルトとオールトのくもしき

また、銀河ぎんが潮汐ちょうせきりょく太陽系たいようけい外側そとがわほろ惑星わくせいをより外側そとがわきずりだし、オールトのくも形成けいせい自体じたい促進そくしんした可能かのうせい提起ていきされている[9]。このように、銀河ぎんが潮汐ちょうせきりょく影響えいきょう相当そうとう複雑ふくざつで、全体ぜんたいてき作用さようよりはくだりほしかいにあるかく天体てんたいがどのように反応はんのうするかが重要じゅうようである。しかし、長時間ちょうじかん効果こうか累積るいせきされるとなると相当そうとう部分ぶぶんをしめるが、現在げんざいでは、オールトのくもから彗星すいせいのうち90%ほどが銀河ぎんが潮汐ちょうせきりょく原因げんいんだと推定すいていしている[10]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b Toomre A.; Toomre J. (1972). “Galactic Bridges and Tails”. The Astrophysical Journal 178: 623–666. Bibcode1972ApJ...178..623T. doi:10.1086/151823. 
  2. ^ Wehner E.H. (2006). “NGC 3310 and its tidal debris: remnants of galaxy evolution”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 371 (3): 1047–1056. arXiv:astro-ph/0607088. Bibcode2006MNRAS.371.1047W. doi:10.1111/j.1365-2966.2006.10757.x. 
  3. ^ Piatek S.; Pryor C. (1993). “Can Galactic Tides Inflate the Apparent M/L's of Dwarf Galaxies?”. Bulletin of the American Astronomical Society 25: 1383. Bibcode1993AAS...183.5701P. 
  4. ^ Bekki, Kenji; Couch, Warrick J.; Drinkwater, Michael J.; Gregg, Michael D. (2001). “A New Formation Model for M32: A Threshed Early-Type Spiral Galaxy?”. The Astrophysical Journal 557 (1): Issue 1, pp. L39–L42. arXiv:astro-ph/0107117. Bibcode2001ApJ...557L..39B. doi:10.1086/323075. http://espace.library.uq.edu.au/view/UQ:37514/UQ37514_OA.pdf. 
  5. ^ Johnston, K.V.; Hernquist, L.; Bolte, M. (1996). “Fossil Signatures of Ancient Accretion Events in the Halo”. The Astrophysical Journal 465: 278. arXiv:astro-ph/9602060. Bibcode1996ApJ...465..278J. doi:10.1086/177418. 
  6. ^ Choi, J.-H.; Weinberg, M.D.; Katz, N. (2007). “The dynamics of tidal tails from massive satellites”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 381 (3): 987–1000. arXiv:astro-ph/0702353. Bibcode2007MNRAS.381..987C. doi:10.1111/j.1365-2966.2007.12313.x. 
  7. ^ Peñarrubia J.; McConnachie A.; Babul A. (2006). “On the Formation of Extended Galactic Disks by Tidally Disrupted Dwarf Galaxies”. The Astrophysical Journal 650 (1): L33–L36. arXiv:astro-ph/0606101. Bibcode2006ApJ...650L..33P. doi:10.1086/508656. 
  8. ^ Fouchard M. (2006). “Long-term effects of the Galactic tide on cometary dynamics”. Celestial Mechanics and Dynamical Astronomy 95 (1–4): 299–326. Bibcode2006CeMDA..95..299F. doi:10.1007/s10569-006-9027-8. 
  9. ^ Higuchi A., Kokubo E.; Mukai, T. (2005). “Orbital Evolution of Planetesimals by the Galactic Tide”. Bulletin of the American Astronomical Society 37: 521. Bibcode2005DDA....36.0205H. 
  10. ^ Nurmi P.; Valtonen M.J.; Zheng J.Q. (2001). “Periodic variation of Oort Cloud flux and cometary impacts on the Earth and Jupiter”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 327 (4): 1367–1376. Bibcode2001MNRAS.327.1367N. doi:10.1046/j.1365-8711.2001.04854.x.