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電気でんきめっき

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電気でんきめっき(でんきめっき、英語えいご: electroplating)または電鍍でんと(でんと)とは、電流でんりゅう使つかめっきほうで、めっきしたい物質ぶっしつふく溶液ようえき溶融ようゆうしお、または、固体こたい電解でんかいしつからその物質ぶっしつ還元かんげんさせ、電導でんどうせいのある物体ぶったいにその物質ぶっしつ金属きんぞくなど)のうすそう形成けいせいさせる。電気でんきめっきは、めっき対象たいしょう物体ぶったいけている特性とくせいたい摩耗まもうせいたい腐食ふしょくせい潤滑じゅんかつせい見栄みばえなど)をおぎなうことができる。また、ちいさすぎる物体ぶったいあつさを増加ぞうかさせる目的もくてきおこなうこともある。

電気でんきめっきで使つかっているプロセスをでん (electrodeposition) とぶ。ちょうどガルバニ電池でんちぎゃく作用さようさせたものにている。めっき対象たいしょう物体ぶったい回路かいろカソードとする。

工程こうてい[編集へんしゅう]

ある技法ぎほうでは、めっきしたい物質ぶっしつアノードもちいる。これらを電解でんかいえきばれる溶液ようえきとうひたす。電流でんりゅうアノード供給きょうきゅうし、アノードを形成けいせいしている金属きんぞく原子げんし酸化さんかし、電解でんかいえきさせる。カソードでは、電解でんかいえき溶解ようかいした金属きんぞくイオンが電解でんかいえきとカソードのせっするめん還元かんげんされ、カソードの表面ひょうめんにめっきされる。このようにして、めっきしたい物質ぶっしつがアノードから電解でんかいそうない継続けいぞくてき補給ほきゅうされる[1]

また、技法ぎほうとして、溶解ようかいしないアノードを使つか電気でんきめっきほうもある。この場合ばあい、めっきしたい物質ぶっしつ電解でんかいそうない補給ほきゅうする必要ひつようがある[2]

黄銅こうどうはんだといった合金ごうきん電気でんきめっきすることも可能かのうである。

電解でんかいそうないにはめっきする金属きんぞく化合かごうぶつだけでなく、遊離ゆうりさんしるべでんしおふくまれていることがおおい。これらはアノードの溶解ようかい容易よういにするためや、伝導でんどうりつげるために役立やくだつ。

部分ぶぶんめっき[編集へんしゅう]

めっき対象たいしょう物体ぶったい一部いちぶにめっきをほどこしたくない場合ばあい、めっき防止ぼうしざい使つかって、その部分ぶぶん電解でんかいえき接触せっしょくしないようにする。めっき防止ぼうしざいとしては、感光かんこうせい樹脂じゅし、テープ、ホイル、ラッカーろうなどがある[3]

ストライク[編集へんしゅう]

最初さいしょに、「ストライク (strike)」とばれるめっきほう非常ひじょううすいめっき(あつさ0.1マイクロメートル以下いか)をほどこすことで、そののめっきそうこう品質ひんしつ形成けいせいされる。これはそのにおけるめっき処理しょり基盤きばんとして役立やくだつ。ストライクめっきには、たか電流でんりゅう密度みつどていイオン濃度のうど電解でんかいそう使つかう。必要ひつようあつさまでめっきがほどこされたら、通常つうじょうのめっきほう移行いこうする。

ことなる金属きんぞくのめっきをわせる場合ばあいにもストライクめっきを使つかう。たい腐食ふしょくせい強化きょうかするためにある金属きんぞくをめっきしたいが、土台どだいとなる材質ざいしつとの密着みっちゃくりょくよわ場合ばあい両方りょうほうとの相性あいしょう金属きんぞくでストライクめっきをほどこ場合ばあいがある。たとえば、亜鉛あえん合金ごうきんニッケルをめっきしようとしても密着みっちゃくせいよわいため、どうをストライクめっきしてからニッケルめっきをほどこ[2]

電流でんりゅう密度みつど[編集へんしゅう]

電流でんりゅう密度みつど単位たんい面積めんせきたりの電流でんりゅう)は、めっきの進行しんこう速度そくどとめっきの品質ひんしつおおきく影響えいきょうする。電流でんりゅう密度みつどたかいとめっきの形成けいせいはやくなるが、あまりにもはやすぎると密着みっちゃくせいわるくなり、品質ひんしつ低下ていかする。また、めっき対象たいしょう物体ぶったい形状けいじょうにより、かく部分ぶぶん電流でんりゅう密度みつどことなる。一般いっぱんに、外側そとがわした部分ぶぶんほど電流でんりゅう密度みつどたかい。めっき金属きんぞく物体ぶったいとつったかくせられることの解決かいけつさくとしては、アノードを複数ふくすうもうけたり、物体ぶったい形状けいじょう真似まね特別とくべつなアノードを使つかうなどの方法ほうほうがある[4]

パルスめっき[編集へんしゅう]

通常つうじょう平坦へいたん直流ちょくりゅう電流でんりゅうでめっきをおこなうが、電流でんりゅう停止ていしかえ技法ぎほうもある。これを「パルスめっき」ほうび、こう電流でんりゅう密度みつど使つかいつつ、品質ひんしつ低下ていかさせないという特徴とくちょうがある。

PRめっき[編集へんしゅう]

めっき対象たいしょう物体ぶったい場所ばしょによって電流でんりゅう密度みつどことなるという問題もんだい対処たいしょするため、「PRめっき」ほうという電流でんりゅう時々ときどき逆転ぎゃくてんさせてながし、めっきのあつ部分ぶぶんから金属きんぞく電解でんかいえきふたたもど技法ぎほうもある。こうすると、った部分ぶぶんのめっきをあつくしすぎずに、へこみ部分ぶぶんにめっきできる。これは、表面ひょうめんあら部品ぶひんでも鏡面きょうめん仕上しあげが必要ひつよう場合ばあいでも共通きょうつうである[3]。PRめっきほうでは、反転はんてん電流でんりゅう密度みつど通常つうじょう電流でんりゅう密度みつどの3ばいとし、反転はんてんパルスはば通常つうじょうパルスはばの4ぶんの1未満みまんとする。

ふでめっきほう[編集へんしゅう]

密接みっせつ関連かんれんするプロセスとして「ふでめっきほう (brush electroplating)」がある。この場合ばあい、めっき金属きんぞくイオンをふく電解でんかいえきひたしたふでで、めっき対象たいしょう物体ぶったい一部いちぶまたは全体ぜんたいにめっきをほどこす。ふでめっきほう使つかふでは、一般いっぱんステンレスこう電極でんきょく本体ほんたい繊維せんいせい素材そざいけ、電極でんきょくがめっき対象たいしょう物体ぶったい直接ちょくせつれないようにするとともに、その繊維せんい電解でんかいえき保持ほじするようになっている。これをてい電圧でんあつ電源でんげんのプラスきょく接続せつぞくし、めっき対象たいしょう物体ぶったいをマイナスきょく接続せつぞくする。ふで電解でんかいえきひたしてめっき対象たいしょう物体ぶったいるようにうごかし、めっきが均等きんとう形成けいせいされるようにする。ふではアノードとして作用さようするが、ふで本体ほんたいはめっき金属きんぞくふくまないことがおおい。ただし、電解でんかいえき寿命じゅみょうばすため、めっき金属きんぞくふで使用しようする場合ばあいもある。

ふでめっきほう利点りてんは、装置そうち小型こがたできるてん電解でんかいそう場所ばしょがなくとも電気でんきめっきでき、建築けんちくぶつ一部いちぶにめっきするなどの用途ようとがある)、めっき防止ぼうしざいがほとんど不要ふようてん電解でんかいえきすくなくててんなどがある。その一方いっぽう欠点けってんとしては作業さぎょうしゃ技量ぎりょう左右さゆうされるてんあついめっきそう形成けいせいできないてんげられる。

洗浄せんじょう[編集へんしゅう]

電気でんきめっきを成功せいこうさせるには、めっき対象たいしょう物体ぶったい表面ひょうめん油膜ゆまくなどがあるとめっきの密着みっちゃくせいうしなわれるため、事前じぜん洗浄せんじょう重要じゅうようである。ASTM B322 は電気でんきめっきにおける金属きんぞく洗浄せんじょう工業こうぎょう規格きかくである。洗浄せんじょうプロセスには、溶剤ようざい洗浄せんじょう、アルカリ洗浄せんじょう電解でんかい洗浄せんじょうさんあらいなどの工程こうていがある。洗浄せんじょう度合どあいを調しらべる試験しけんほうとして水切みずぎ試験しけん (waterbreak test) がある。物体ぶったい表面ひょうめんみずですすぎ、その表面ひょうめん垂直すいちょくたもつ。あぶらなどの疎水そすいせい汚染おせんぶつがあるとみずをはじくので、みずまくやぶれやすい。完全かんぜん洗浄せんじょうされた金属きんぞく表面ひょうめん親水しんすいせいがあり、みずまくがずっとたもたれる。ASTM F22 にはこの試験しけんほう詳述しょうじゅつされている。この試験しけんほうでは親水しんすいせいよごれを検出けんしゅつできないが、電解でんかいえきみずをベースにしているため、親水しんすいせいよごれはあまり問題もんだいにはならない。石鹸せっけんなどの界面かいめん活性かっせいざい試験しけん信頼しんらいせいそこなうため、完全かんぜんにすすぐ必要ひつようがある。

効果こうか[編集へんしゅう]

電気でんきめっきをほどこすことで、その物体ぶったい化学かがくてき性質せいしつ物理ぶつりてき性質せいしつ機械きかいてき性質せいしつ変化へんかする。化学かがくてき性質せいしつ変化へんかとはたとえば、ニッケルめっきたい腐食ふしょくせい強化きょうかされることである。物理ぶつりてき性質せいしつ変化へんかとは、外見がいけん変化へんかなどをす。機械きかいてき性質せいしつ変化へんかれいとしては、強度きょうど表面ひょうめんかた強化きょうかがある[5]

歴史れきし[編集へんしゅう]

確認かくにんされたわけではないが、バグダッド電池でんち電気でんきめっきよう装置そうちだというせつもある。

近代きんだい電気でんき化学かがくから電気でんきめっきほう発明はつめいしたのはイタリアの薬剤師やくざいし発明はつめいだったルイジ・ヴァレンティノ・ブルニャテッリで、1805ねんのことである。ブルニャテッリは同僚どうりょうアレッサンドロ・ボルタが5ねんまえ発明はつめいしたボルタ電池でんち使つかい、世界せかいはつでんおこなった。ブルニャテッリの発明はつめいフランス科学かがくアカデミー秘匿ひとくしたため、やく30年間ねんかん産業さんぎょうかいひろまらなかった。

1839ねんイギリスロシア科学かがくしゃがそれぞれ独自どくじにブルニャテッリとおな電気でんきめっきほう考案こうあんし、印刷いんさつようはんどうめっきに使用しようした。まもなくイングランドバーミンガムむジョン・ライトが、きむめっきやぎんめっきの電解でんかいえきとしてシアン化カリウムしあんかかりうむてきしていることを発見はっけんした。1840ねん、ライトはジョージ・リチャーズ・エルキントンとヘンリー・エルキントンととも世界せかいはつ電気でんきめっきほう特許とっきょ取得しゅとくした。かれらはバーミンガムにめっき工場こうじょうつくり、そこから世界中せかいじゅう電気でんきめっきがひろまっていった。

ハンブルクの Norddeutsche Affinerie は世界せかいはつ現代げんだいてきめっき工場こうじょうで、1876ねん生産せいさん開始かいしした[6]

電気でんき化学かがく学問がくもんとして発展はってんするとともに、電気でんきめっきほうとの関係かんけい理解りかいされるようになり、装飾そうしょく以外いがい用途ようと電気でんきめっきプロセスが開発かいはつされるようになった。1850年代ねんだいまでに、ニッケル、真鍮しんちゅうスズ亜鉛あえん商用しょうよう電気でんきめっきほう開発かいはつされた。エルキントンらの特許とっきょもとづく電解でんかいそう電気でんきめっき装置そうちは、様々さまざま大型おおがた物体ぶったいへの電気でんきめっきを実現じつげんするために大型おおがたされ、特定とくてい産業さんぎょうやエンジニアリング用途ようと使つかわれるようになっていった。

19世紀せいき後半こうはん、めっき産業さんぎょう発電はつでん開発かいはつによってさらに発展はってんした。よりおおきな電流でんりゅうにより、大量たいりょう金属機械きんぞくきかい部品ぶひん自動車じどうしゃ部品ぶひんたい腐食ふしょくせいたい磨耗まもうせい付与ふよできるようになった。

2世界せかい大戦たいせん航空こうくう業界ぎょうかい発展はってんにより電気でんきめっきはさらに発展はってんし、改良かいりょうおこなわれていった。たとえば、かたクロムめっき青銅せいどう合金ごうきんめっき、スルファミンさんニッケルめっきなどである。タールをった木製もくせい電解でんかいそうでの手作業てさぎょうによるものが、1あいだすうせんキログラム部品ぶひんをめっきできる自動じどう装置そうちへとうつわっていった。

アメリカの物理ぶつり学者がくしゃリチャード・P・ファインマンがけた初期しょきのプロジェクトの1つは、合成ごうせい樹脂じゅしへの金属きんぞく電気でんきめっきほう開発かいはつだった。ファインマンは同僚どうりょうのアイデアを発明はつめいへとみちびき、やとぬし商業しょうぎょうてき約束やくそくまもった[7]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ Dufour, IX-1.
  2. ^ a b Dufour, IX-2.
  3. ^ a b Dufour, IX-3.
  4. ^ Degarmo, E. Paul; Black, J. T.; Kohser, Ronald A. (2003), Materials and Processes in Manufacturing (9th ed.), Wiley, p. 794, ISBN 0-471-65653-4 .
  5. ^ Todd, pp. 454–458.
  6. ^ Stelter, M. (2004). “Process Optimization in Copper Electrorefining”. Advanced Engineering Materials 6: 558. doi:10.1002/adem.200400403. 
  7. ^ Richard Feynman, Surely You're Joking, Mr. Feynman! (1985), in chap. 6: "The Chief Research Chemist of the Metaplast Corporation"

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]