BogoMips

BogoMips（"bogus"=「いんちきの」+ MIPS）とは、Linuxカーネルのブート時じにCPU速度そくどをビジーループを使つかって非ひ科学かがく的てきに測定そくていした結果けっかである。その定義ていぎとしてよく言いわれるのは「プロセッサが全まったく無駄むだな処理しょりを1秒間びょうかんに何なん百ひゃく万まん回かいできるか」である。

BogoMipsは、あるプロセッサがクロック周波数しゅうはすうやキャッシュの有無うむから見みて妥当だとうな性能せいのうを示しめしているかを判断はんだんするのに使つかえる。異ことなる種類しゅるいのCPU間あいだでの性能せいのう比較ひかくには使つかえない。

歴史れきし

1993年ねん、ラルス・ビルゼニウスが comp.os.linux にLinuxカーネルにBogoMipsが導入どうにゅうされた理由りゆうを次つぎのように投稿とうこうしている。

MIPSは Millions of Instructions Per Second（百ひゃく万まん命令めいれい毎秒まいびょう）の略りゃくだ。プロセッサの速度そくどを求もとめる手段しゅだんである。そのような測定そくてい法ほうの多おおくと同様どうよう、適切てきせつに利用りようされるより乱用らんようされることが多おおい（異い機種きしゅのコンピュータ間あいだでMIPS値ちを正ただしく比較ひかくするのは非常ひじょうに難むずかしい）。
BogoMipsはリーナス自身じしんの発案はつあんである。Linuxカーネル 0.99.11（1993年ねん7月がつ11日にち）はタイミングループを必要ひつようとしていた（待まち時間じかんが非常ひじょうに短みじかいのでループする以外いがいのウェイト手段しゅだんを採用さいようできなかった）。タイミングループはプロセッサの処理しょり速度そくどの違ちがいを較正こうせいしなければならない。そこでカーネルでブート時じにビジーループを実際じっさいに回まわしてみて、そのコンピュータがどの程度ていどの速度そくどかを測定そくていすることにした。"Bogo" は "bogus"（いんちきの）に由来ゆらいし、それが一種いっしゅのごまかしであることを意味いみしている。BogoMipsの値ねはプロセッサ速度そくどの一種いっしゅの指標しひょうを与あたえるが、あまりにも非ひ科学かがく的てきなので BogoMips 以外いがいに呼よび様さまがない。
ブート時じにその値ねを表示ひょうじする理由りゆうは2つある。第だい一いちにそのコンピュータのキャッシュや加速かそく手段しゅだんが正ただしく機能きのうしているかをチェックするのに使つかえる。第だい二ににリーナスはこのニュースを聞きいて混乱こんらんしている人々ひとびとを見みかけたときにくすくす笑わらうのが大好だいすきである。

BogoMipsの正ただしい比較ひかく

非常ひじょうに大おおまかではあるが、BogoMipsの相対そうたい値ちを計算けいさんする式しきを以下いかの表ひょうで示しめす。この相対そうたい値ちは各かくCPUが使用しようされていた当時とうじのLinuxでのBogoMips値ちに基もとづくものである。clock は、そのCPUのクロック周波数しゅうはすう。インデックスは、クロック周波数しゅうはすう当あたりの BogoMips の係数けいすうが Intel 386DX と同おなじCPUを1とした相対そうたい値ちである。

システム	相対そうたい値ち	インデックス
Intel 8088	clock × 0.004	0.02
Intel/AMD 386SX	clock × 0.14	0.8
Intel/AMD 386DX	clock × 0.18	1 (これを 1 とした値ね)
Motorola 68030	clock × 0.25	1.4
Cyrix/IBM 486	clock × 0.34	1.8
Intel Pentium	clock × 0.40	2.2
Intel486	clock × 0.50	2.8
AMD 5x86	clock × 0.50	2.8
MIPS R4000/R4400	clock × 0.50	2.8
ARM9	clock × 0.50	2.8
Motorola 8081	clock × 0.65	3.6
Motorola 68040	clock × 0.67	3.7
PowerPC 603	clock × 0.67	3.7
Intel StrongARM	clock × 0.66	3.7
NexGen Nx586	clock × 0.75	4.2
PowerPC 601	clock × 0.84	4.7
Alpha 21064/21064A	clock × 0.99	5.5
Alpha 21066/21066A	clock × 0.99	5.5
Alpha 21164/21164A	clock × 0.99	5.5
Intel Pentium Pro	clock × 0.99	5.5
Cyrix Cx5x86/6x86	clock × 1.00	5.6
Intel Pentium II/III	clock × 1.00	5.6
AMD K7/Athlon	clock × 1.00	5.6
Intel Celeron	clock × 1.00	5.6
Intel Itanium	clock × 1.00	5.6
MIPS R4600	clock × 1.00	5.6
Hitachi SH-4	clock × 1.00	5.6
Raspberry Pi (Model B)	clock × 1.00	5.6
Intel Itanium 2	clock × 1.49	8.3
Alpha 21264	clock × 1.99	11.1
VIA Centaur	clock × 1.99	11.1
AMD K5/K6/K6-2/K6-III	clock × 2.00	11.1
AMD Duron/Athlon XP	clock × 2.00	11.1
AMD Sempron	clock × 2.00	11.1
UltraSparc II	clock × 2.00	11.1
Intel Pentium MMX	clock × 2.00	11.1
Intel Pentium 4	clock × 2.00	11.1
Intel Pentium M	clock × 2.00	11.1
Intel Core Duo	clock × 2.00	11.1
Intel Core 2 Duo	clock × 2.00	11.1
Intel Atom N455	clock × 2.00	11.1
Centaur C6-2	clock × 2.00	11.1
PowerPC 604/604e/750	clock × 2.00	11.1
Intel Pentium III Coppermine	clock × 2.00	11.1
Intel Pentium III Xeon	clock × 2.00	11.1
Motorola 68060	clock × 2.01	11.2
Intel Xeon MP (32-bit)（ハイパースレッディング）	clock × 3.97	22.1
IBM S390	データが不十分ふじゅうぶん
Intel ARM	データが不十分ふじゅうぶん

BogoMipsの詳細しょうさいな情報じょうほうと数すう百ひゃくの測定そくてい値ちが BogoMips Mimi-Howto にある。

Linuxカーネル 2.2.14 以降いこう、キャッシュの設定せっていがBogoMipsの計算けいさん前まえに行おこなわれるようになった。BogoMipsの計算けいさん方法ほうほうは変かわっていないので、当時とうじの Pentium 系けいCPU以降いこうではBogoMips値ちが約やく2倍ばいになっている。このBogoMips値ちの変化へんかは実際じっさいのプロセッサ性能せいのうには何なんの効果こうかもない。

BogoMIPSの計算けいさん

Linuxカーネル (2.6.x) での BogoMips は /usr/src/linux/init/calibrate.c というソースファイルで実装じっそうされている。Linuxカーネルが使用しようするタイミングパラメータ loops_per_jiffy （Jiffy についてはジフィを参照さんしょう）を計算けいさんで求もとめている。まず、ソースコードのコメントを示しめす。

 /*
   * A simple loop like
   *  while ( jiffies < start_jiffies+1)
   *    start = read_current_timer();
   * will not do. As we don't really know whether jiffy switch
   * happened first or timer_value was read first. And some asynchronous
   * event can happen between these two events introducing errors in lpj.
   *
   * So, we do
   * 1. pre_start <- When we are sure that jiffy switch hasn't happened
   * 2. check jiffy switch
   * 3. start <- timer value before or after jiffy switch
   * 4. post_start <- When we are sure that jiffy switch has happened
   *
   * Note, we don't know anything about order of 2 and 3.
   * Now, by looking at post_start and pre_start difference, we can
   * check whether any asynchronous event happened or not
   */

loops_per_jiffy はudelay関数かんすう（μみゅー秒びょう単位たんいの遅延ちえん）とndelay関数かんすう（ナノ秒びょう単位たんいの遅延ちえん）の実装じっそうで使つかわれている。これらの関数かんすうは一部いちぶのドライバがハードウェアを待まつのに必要ひつようとしている。これらはビジーウェイトを採用さいようしているので、使用しようするとカーネルは実質じっしつ的てきにブロックされる。i386アーキテクチャの場合ばあい /usr/src/linux/arch/i386/lib/delay.c にて delay_loop が次つぎのように実装じっそうされている。

/* simple loop based delay: */
static void delay_loop(unsigned long loops)
{
  int d0;

  __asm__ __volatile__(
    "\tjmp 1f\n"
    ".align 16\n"
    "1:\tjmp 2f\n"
    ".align 16\n"
    "2:\tdecl %0\n\tjns 2b"
    :"=&a" (d0)
    :"0" (loops));
}

これをCの擬似ぎじコードで書かき直なおすと、次つぎのようになる。

static void delay_loop(long loops)
{
  long d0 = loops;
  do {
    --d0;
  } while (d0 >= 0);
}

BogoMipsのさらなる詳細しょうさいと（ほとんどが古ふるいが）数すう百ひゃくのBogoMips値ちが BogoMips mini-Howto にある。

外部がいぶリンク

• BogoMips についてのよくある質問しつもん
• BogoMips Mini-Howto, V38（英語えいご）
• The Jargon File: BogoMIPS（英語えいご）
• BogoMips cpu rate

この記事きじは2008年ねん11月1日にち以前いぜんにFree On-line Dictionary of Computingから取得しゅとくした項目こうもくの資料しりょうを元もとに、GFDL バージョン1.3以降いこうの「RELICENSING」(再さいライセンス) 条件じょうけんに基もとづいて組くみ込こまれている。