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CSMA/CD

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

CSMA/CDCarrier Sense Multiple Access/Collision Detection搬送波はんそうは感知かんち多重たじゅうアクセス/衝突しょうとつ検出けんしゅつ[1])は、有線ゆうせんLAN規格きかくであるイーサネットにおいて初期しょき実装じっそうされた制御せいぎょ方式ほうしきである。

概要がいよう

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10BASE5・10BASE2などの初期しょき同軸どうじくケーブルによるイーサネットにおいて通信つうしんプロトコルとしてひろ普及ふきゅうした。 共有きょうゆうバスじょう複数ふくすうはしまつ同時どうじにデータ送信そうしんして衝突しょうとつしたときの再送さいそう処理しょり手順てじゅんさだめており、これによりイーサネットは多元たげん接続せつぞく可能かのうとなった。

1970年代ねんだいALOHAnetというUHFおびをもちいた通信つうしんネットワーク使つかわれたのが起源きげんで、これを同軸どうじくケーブルじょう使つかえるようにアレンジしたもの。XeroxしゃPalo Alto Research Center(PARC)に所属しょぞくするロバート・メトカーフ博士はかせによって基礎きそ理論りろんがつくられた。DECインテル、Xeroxをあわせて「DIX仕様しよう」とばれ、この3しゃによって1980ねんにイーサネットの通信つうしん手順てじゅんとして公開こうかい提案ていあんされた。

その、1990ねんツイストペアケーブル接続せつぞくによるイーサネットが登場とうじょうし、リピータハブ接続せつぞくにおける半二重はんにじゅう通信つうしん環境かんきょうでもほん機能きのうがれたが、1000BASE-T標準ひょうじゅんされた1999ねん以降いこうぜんじゅう通信つうしんスイッチングハブによる通信つうしん制御せいぎょおこなうことが一般いっぱんてきになっている。そのため、衝突しょうとつ回避かいひする必要ひつようせいがほとんどなくなり、10ギガビット・イーサネットなど後発こうはつ規格きかくではほん機能きのうはサポートされていない。

無線むせんLANでは、同様どうよう方式ほうしきとしてCSMA/CAもちいられている。最大さいだいちがいは、CSMA/CDにおいては送信そうしんちゅう衝突しょうとつ検出けんしゅつしたら即座そくざ通信つうしん中止ちゅうしし、ランダムな時間じかん挿入そうにゅうするのにたいし、CSMA/CAは送信そうしんまえ時間じかん毎回まいかい挿入そうにゅうするてんである。

通信つうしん手順てじゅん

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初期しょきのイーサネット構成こうせいはしまつが1つのバスを共有きょうゆうする

CSMA/CDは、データリンクそう実装じっそうされるMAC機能きのうであり、半二重はんにじゅう通信つうしん環境かんきょう動作どうさする。

初期しょきイーサネットにおける同軸どうじくケーブルによるバスがた構成こうせいでは、複数ふくすうはしまつが1ほん同軸どうじくケーブルに接続せつぞくされる。ひとつの論理ろんりバスないぜん端末たんまつはそれぞれ電気でんきてき等価とうかであるためすべてのフレームを受信じゅしんする。かく端末たんまつはこのうち宛先あてさき自身じしんMACアドレスであるフレームのみを処理しょりし、そうでないものは廃棄はいきする(どういちバスないながされたフレームをモニタリングする機器ききにより他者たしゃ通信つうしん内容ないよう傍聴ぼうちょうすることも可能かのうではある)。多数たすうはしまつつながっている場合ばあいには、任意にんい端末たんまつAとBとの「1たい1」の排他はいたてき通信つうしん不可能ふかのうであり、端末たんまつAから送出おくりだされたデータは、おなじイーサネットの配線はいせんつながっているぜん端末たんまつとどけられる「1たいぜん」の通信つうしん方式ほうしきである。「1たいぜん」の通信つうしんであるため、すで端末たんまつAとBが通信つうしんしているとき端末たんまつCがあらたに送信そうしんしたい場合ばあいは、伝送でんそうきを必要ひつようがある。接続せつぞくされた複数ふくすうはしまつがほぼ同時どうじ送信そうしんおこなった場合ばあい、データが損失そんしつする。これを衝突しょうとつ(コリジョン)ぶ。なお、同軸どうじくケーブルのみならずリピータハブでも半二重はんにじゅう通信つうしんとなり、衝突しょうとつ発生はっせいする。

CSMA/CDは、この衝突しょうとつ対策たいさくのために通信つうしん経路けいろじょうでの信号しんごう発送はっそう手段しゅだん規定きていしており、以下いか内容ないようふくんでいる[2]

  1. Carrier Sense: 通信つうしん開始かいしまえに、現在げんざい通信つうしんちゅうはしまつにいないか確認かくにんする。
  2. Multiple Access: 複数ふくすうはしまつおな通信つうしん共用きょうようできる。
  3. Collision Detection: 複数ふくすうはしまつ同時どうじ送信そうしんおこなったときはそれを検知けんちし、ランダムな時間じかんってから再送さいそうする。
初回しょかい衝突しょうとつでは#0と#1の2つの時間じかん候補こうほからランダムにえらばれる。2かい衝突しょうとつは#0・#1・#2・#3の4つの時間じかん候補こうほからランダムにえらばれる。3かい衝突しょうとつは#0・#1・#2・#3・#4・#5・#6・#7の8つの時間じかん候補こうほからランダムにえらばれる。同様どうように10かい衝突しょうとつは#0・#1・#2・#3 - #1022・#1023の1024時間じかん候補こうほからランダムにえらばれる。10かい以上いじょう衝突しょうとつ回数かいすうすべて1024時間じかん候補こうほからランダムにえらばれる。こうすることで、った場合ばあいかくはしまつ短時間たんじかんなん送信そうしんこころみて衝突しょうとつかえすことを出来できるだけけるように工夫くふうされている。またかく候補こうほは512ビット時間じかんぶんの1スロット時間じかんずつ間隔かんかくけてある。なおどういちセグメントないでの端末たんまつすう上限じょうげんすう「1024」はこの「1024時間じかん候補こうほ」からさだめられたかずであり、もし1024の端末たんまつすべてが再送さいそうちをおこなえばかなら衝突しょうとつ発生はっせいすることからめられた。

それぞれの動作どうさについて以下いか概説がいせつする。

キャリア検知けんち搬送波はんそうは検知けんち
バスじょうすべての端末たんまつ通信つうしん路上ろじょうすべ信号しんごうつね受信じゅしん可能かのうであり、通信つうしん端末たんまつによって使つかわれているかを確認かくにんできる。
多重たじゅうアクセス
端末たんまつ通信つうしんいていることを確認かくにんできたら送信そうしん開始かいしし、完了かんりょうふたたびキャリア検知けんち状態じょうたい復帰ふっきする。これにより複数ふくすう端末たんまつによる共有きょうゆうバスじょうでの通信つうしん可能かのうとなる。
衝突しょうとつ検出けんしゅつ(コリジョン検出けんしゅつ
たまたまほぼ同時どうじ複数ふくすうはしまつ送信そうしん開始かいしすると衝突しょうとつ発生はっせいする。物理ぶつりそう衝突しょうとつによる電気でんき信号しんごうみだれを検出けんしゅつした場合ばあいは、受信じゅしんちゅうのフレームは破棄はきされ、ジャム信号しんごうという特殊とくしゅ信号しんごう伝送でんそう送信そうしんする。送出そうしゅつちゅう端末たんまつ衝突しょうとつによる自身じしん信号しんごうみだれを検出けんしゅつするかジャム信号しんごう検出けんしゅつすれば、ただちに送出そうしゅつ停止ていし送信そうしんちゅうだったフレームは送信そうしんまえ状態じょうたいもどされる[3]
衝突しょうとつ再送さいそう
フレームの送出そうしゅつ中止ちゅうしした端末たんまつは、擬似ぎじ乱数らんすうによるランダムな時間じかんだけったのちに、ふたた受信じゅしんこころみて通信つうしんいていれば、自分じぶんのフレームを送出そうしゅつすることができる。そのさいにもし再度さいど衝突しょうとつ発生はっせいした場合ばあいは、nかい衝突しょうとつたいして2n時間じかん候補こうほなかからランダムに決定けっていされる。この方法ほうほうは「TBEBアルゴリズム」(Truncated binary exponential backoff algorithm) とばれる[4]

フレーム仕様しようへの影響えいきょう

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イーサネットフレームのいくつかの仕様しようは、CSMA/CDによる物理ぶつりてき制約せいやくもとづいてめられているものがある。

フレームあいだギャップ = 96ビット
1つの端末たんまつはフレーム送信そうしんは96ビット時間じかん(10Mbpsでは9600ナノびょう)以上いじょう必要ひつようがある。時間じかん通信つうしんいていればつぎのフレームを通信つうしん送出そうしゅつすることがゆるされる。
送信そうしんのキャリア検知けんちえのための復帰ふっき時間じかんとしてもうけられている[5]
最小さいしょうフレームちょう = 64オクテット
同軸どうじくケーブルの信号しんごう伝送でんそうには遅延ちえんがあるため、送信そうしんちゅう衝突しょうとつ送信そうしん完了かんりょうまえ確実かくじつ検出けんしゅつするにはある程度ていど送信そうしん時間じかん必要ひつようとなる。衝突しょうとつ検出けんしゅつのために最小限さいしょうげん必要ひつよう時間じかんを「スロット時間じかん」とぶ。
その衝突しょうとつ検出けんしゅつもっと時間じかんかる場合ばあい想定そうていし、ここでは500mの同軸どうじくケーブルがリピータで5ほん結合けつごうされた場合ばあい最大さいだいちょう2.5kmを上限じょうげんとして算出さんしゅつされた[6]衝突しょうとつ検出けんしゅつ必要ひつよう最長さいちょう時間じかんは、送信そうしん信号しんごう通信つうしん左端ひだりはしからみぎはし伝播でんぱした瞬間しゅんかんみぎはしべつはしまつ送信そうしん開始かいしした場合ばあいである。この場合ばあいは、信号しんごう通信つうしん全長ぜんちょう伝播でんぱする時間じかんと、衝突しょうとつ発生はっせいした信号しんごうおなどうもど時間じかん合計ごうけいとなり、これは単純たんじゅん全長ぜんちょうばい距離きょり伝播でんぱ時間じかんとなる。5kmの同軸どうじくケーブルにおける伝播でんぱ時間じかんやく26μみゅーSecと、リピータやトランシーバーの処理しょり時間じかんやく20μみゅーSecの合計ごうけいで46.38μみゅーSecと見積みつもられた。これは10メガビット・イーサネットでは464ビットに相当そうとうするため、マージンをって最小さいしょうフレームサイズは512ビット(64オクテット)時間じかん設計せっけいされている[7]

さらに、CSMA/CDは1Gbps半二重はんにじゅう通信つうしんでもサポートされており、オプションとして以下いかの2つが追加ついかされた。

キャリア・エクステンション (Carrier Extension)
衝突しょうとつ検出けんしゅつ時間じかん拡張かくちょうして接続せつぞく距離きょりちょうばすための対策たいさく
1Gbps半二重はんにじゅう通信つうしんにおいては、64オクテット時間じかんではフレーム送出そうしゅつちゅう衝突しょうとつ検出けんしゅつのために接続せつぞく距離きょりちょう非常ひじょうみじか制限せいげんされてしまう。ここで必要ひつようなスロット時間じかんは4096ビット=512オクテット相当そうとうとなる。これを最小さいしょうフレームちょうとして規定きていせずに、フレームちょうが512オクテットにたない場合ばあい穴埋あなうめのために無意味むいみなダミーデータを追加ついかすることで512オクテットとする。この穴埋あなうめをキャリア・エクステンションと[8]。これにより、10M/100Mbps環境かんきょうおなじく、リピータ・ハブまでのケーブルちょう最大さいだい100m、ハブの両方向りょうほうこうのケーブルちょうわせて200mの接続せつぞく距離きょりちょう実現じつげんしている[9]
バースト・モード (Burst mode)
みじかいフレームを連続れんぞくして伝送でんそうするさい伝送でんそう効率こうりつ低下ていか改善かいぜんするための対策たいさく[10]
フレームを大量たいりょう送出おくりだしたい場合ばあいはフレームあいだギャップがおおくなり、ギャップ時間じかんちゅう端末たんまつ通信つうしん開始かいしがあれば伝送でんそう時間じかんえる。さらに、512オクテット未満みまんのフレームがおおければキャリア・エクステンションによる不要ふようデータの送出そうしゅつえ、伝送でんそう効率こうりつひくくなる。
このオプションでは、連続れんぞくするフレームの1つにキャリア・エクステンションを付加ふかし、以後いごのフレームにはキャリア・エクステンションを付加ふかせずに送出そうしゅつする。フレームあいだギャップ時間じかんちゅうもキャリア信号しんごう発信はっしんつづけることで、端末たんまつからの送信そうしん抑制よくせい伝送でんそう占有せんゆうする。伝送でんそう最長さいちょう占有せんゆう時間じかん(最初さいしょのフレーム伝送でんそう開始かいしから最後さいごのフレームの伝送でんそう終了しゅうりょうまで)は8192オクテット時間じかん規定きていされている[11]

特徴とくちょう

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CSMA/CDは1983ねん最初さいしょ策定さくてい規格きかくめいであり、2012ねんに「イーサネット」に改称かいしょうするまでIEEE 802.3規格きかく代名詞だいめいしとなっていた。 CSMA/CDのアルゴリズムでとく注目ちゅうもくすべきてんは、衝突しょうとつ発生はっせいから再送さいそうまでにランダム時間じかんをあけるというてんである。端末たんまつまったおな時間じかんだけ間隔かんかくをあけるかくりつきわめてひくいため、さい衝突しょうとつこることを回避かいひできる。

一方いっぽうで、使用しようりつたかいネットワークにおいては、衝突しょうとつ多発たはつすることはけられず、バスない接続せつぞくはしまつおおすぎる場合ばあい衝突しょうとつ頻度ひんど加速度かそくどてきたかまり、閾値をえたところで急激きゅうげき帯域たいいき飽和ほうわする欠点けってんがある。混雑こんざつ送信そうしんちのはしまつ多数たすうあってもつね時間じかんがあり通信つうしんきがしょうじるため帯域たいいき無駄むだしょうじてしまう。

出典しゅってん

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  1. ^ e-words「CSMA-CD」 2016/9/29閲覧えつらん
  2. ^ IEEE 802.3-2018, 4.1.2
  3. ^ IEEE 802.3-2018, 4.2.3.2.4
  4. ^ IEEE 802.3-2018, 4.2.3.2.5
  5. ^ IEEE 802.3-2018, 4.2.3.2
  6. ^ IEEE 802.3-2018, 8.1.1.2
  7. ^ IEEE 802.3-2018, Annex B.1.2, B.1.3
  8. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 4.2.3.4
  9. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 42.3
  10. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 4.2.3.2.7
  11. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 4.4.2

関連かんれん項目こうもく

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