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FM-PAC

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
FM-PAC(SW-M004)
カートリッジ外観がいかん

FM-PAC(エフエムパック)は、松下電器産業まつしたでんきさんぎょうげん:パナソニック)より1988ねん7がつ25にち[1]発売はつばいされた、MSXコンピュータよう拡張かくちょうカートリッジである。正式せいしき名称めいしょうは「FM Pana Amusement Cartridge」。パナアミューズメントカートリッジ同様どうよう一部いちぶのゲームなどに対応たいおうしたバッテリーバックアップメモリ、ならびにYM2413搭載とうさいし、MSXに9じゅう和音わおん、もしくは6じゅう和音かずね + ドラムセット5おと演奏えんそう機能きのうと、対応たいおうゲームにたいするデータのセーブを実現じつげんする。希望きぼう小売こうり価格かかくは7800えん

概要がいよう

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FM-PACは「FM Pana Amusement Cartridge」を省略しょうりゃくしたかたである。そのほか、「FM PAC」または「FM P.A.C.」とりゃくされる[2]使用しようさいしてはMSX本体ほんたいRAMが32KB以上いじょう必要ひつようである[3]

カートリッジの形態けいたい供給きょうきゅうされ、パナアミューズメントカートリッジ同様どうよう、8KBSRAM搭載とうさいしており、8つのセグメントにけてゲームソフトなどのセーブデータを記録きろくすることが可能かのう[4]であり、パナアミューズメントカートリッジとことなり後述こうじゅつのパックコマンダーとしょうするユーティリティーが内蔵ないぞうされており、単体たんたいのカートリッジをふくむセーブデータの管理かんり可能かのうとなっている。

後述こうじゅつのMSX-MUSICに対応たいおうしたハードウェアでもあり、標準ひょうじゅんではPSGが3チャンネルと1ビットサウンドポートのみの出力しゅつりょくしかっていなかったMSXに、2オペレータ、モノフォニック、9和音わおんまたは6和音わおん+リズム5和音わおん発声はっせい拡張かくちょうすることも可能かのうである。

たて210mm、はば108mm、あつさ17mmと[3]一般いっぱんてきなMSXようカートリッジにくらべてややだかのサイズとなっている。FM音源おんげん出力しゅつりょく拡張かくちょうスロットのSUNDIN端子たんし接続せつぞくされ、本体ほんたい音声おんせい出力しゅつりょく合成ごうせいされる。本体ほんたい音源おんげんとのミキシングバランスはMSX規格きかくがわ定義ていぎされていないため調整ちょうせいできるようカートリッジ上部じょうぶのスライドスイッチによってさん段階だんかいえることが可能かのう[5][6]となっている。

MSXの標準ひょうじゅん拡張かくちょう音源おんげん規格きかくとしてMSX2の策定さくていMSX-AUDIO定義ていぎされていたが、実際じっさいにMSXのオプション機器ききとして製品せいひんされたFS-CA1が34,800えん高価こうかうえにほとんど普及ふきゅうしなかったため、ていコストばんとして開発かいはつされた[7]。 MSX-AUDIO規格きかくくらべてFM音源おんげんチップが廉価れんかなものになったほか、PCMようのRAMなどを必要ひつようとせず、拡張かくちょうハードウェアとして発売はつばいされたFM-PACでは音声おんせい出力しゅつりょく拡張かくちょうスロットの音声おんせい入力にゅうりょく使用しようするなど大幅おおはばにコストダウンされている。

音源おんげんチップとして「YM2413」、ソフトウェアとして「拡張かくちょうBASIC」と「FM BIOS」で構成こうせいされ、のMSXの拡張かくちょうハードウェアとことなり拡張かくちょうBIOSは提供ていきょうされずスロットにFM BIOSをマッピングしたうえ直接ちょくせつエントリアドレスをコールする実装じっそうになっている。

拡張かくちょうBASICはMSX-AUDIOのサブセットになっているが、おとめいおなじであってもMSX-MUSICではハードウェアプリセットおんおおふくまれ、おと出力しゅつりょくされるもののおなおん発声はっせいされるわけではない。また、ハードウェアプリセットおん該当がいとうする音色ねいろはROMないにはMSX-AUDIOとおなじパラメータがセットされているものの、拡張かくちょうBASICで該当がいとうする音色ねいろみだそうとした場合ばあいにはIllegal function callが発生はっせいするようになっている。

後述こうじゅつのMMLぶしにあるとおり、通常つうじょう利用りようされる平均へいきんりつ以外いがい音律おんりつ指定していできることも、純正じゅんせいMMLや、音源おんげんドライバにはられない特徴とくちょうである。

なお、FMPACの発売はつばい時期じきがMSX2とMSX2+のあいだで、MSX2+の規格きかく一緒いっしょ資料しりょうていることからメーカーオプションとして発売はつばいされたものが規格きかくとしてまれたと認識にんしきされることがおおいが、対応たいおうするソフトウェアのパッケージには当初とうしょより「MSX-MUSIC対応たいおう」とはちふん音符おんぷのロゴとともかれており、規格きかく定義ていぎほうさき初期しょきのソフトウェアであっても存在そんざいしなかったMSX-MUSIC内蔵ないぞう本体ほんたいでもバグがないかぎりは正常せいじょう対応たいおうしている。最大さいだい2ほん実装じっそうされるよう考慮こうりょされた実装じっそうのMSX-AUDIOとことなり、MSX規格きかくのI/Oポートに定義ていぎされたポートは1つぶんであり、公式こうしきのドキュメントであるMSX Datapackの該当がいとう[8]では、MSX-MUSIC内蔵ないぞう機器ききにFMPACを追加ついかしたときれいに、どういちアドレスに複数ふくすうどういち音源おんげん接続せつぞくされることで音量おんりょうばいになることをげ、内蔵ないぞう機器きき検出けんしゅつうえ存在そんざいしない場合ばあいにカートリッジがわのI/Oポートを有効ゆうこうにするように明示めいじしている。また、商用しょうようアプリケーションについては直接ちょくせつ制御せいぎょ禁止きんしし、FMBIOSをして制御せいぎょすることを要求ようきゅうしている。内蔵ないぞう機器きき増設ぞうせつ機器ききでは識別子しきべつし電源でんげん投入とうにゅう初期しょき状態じょうたいことなっており、前者ぜんしゃ無条件むじょうけんにI/Oポートに接続せつぞくされているが、後者こうしゃ明示めいじてき接続せつぞくしてやる必要ひつようがある。直接ちょくせつ制御せいぎょをおこなう場合ばあいは、内蔵ないぞう機器きき検索けんさくし、存在そんざいしなければ増設ぞうせつ機器きき検索けんさくし、存在そんざいした場合ばあい該当がいとうスロットのフラグとなるアドレスをんだじょうでフラグをててむという処理しょり必要ひつようとなる。FMBIOSのINIOPLをコールした場合ばあいはFMBIOSをふく初期しょき設定せっていおこなわれるが、INIOPLを場合ばあい該当がいとうスロットのページ1の状態じょうたいわるため、メモリマップによっては注意ちゅうい必要ひつようである。 初期しょき状態じょうたいでは音源おんげん無効むこうであるため後述こうじゅつのユーティリティーの利用りようふくめ、バックアップメモリカートリッジとしてのFMPACの複数ふくすう接続せつぞく利用りよう問題もんだいはなく、ユーティリティーも各々おのおの認識にんしきすることができる。

このようにシステムとしては複数ふくすう音源おんげんをサポートしないものの、MSX-AUDIOとはべつのリソースがられているため共存きょうぞん可能かのうで、moonblasterなどのソフトウェアが同時どうじ使用しようをサポートしているほか、 MSX CLUB GHQのdawn of timeなどのデモプログラムなどで、ステレオでの再生さいせい実現じつげんしているものなどがある。

ドライバにあたるFM BIOSは、当時とうじT&E SOFTに在籍ざいせきしていた前述ぜんじゅつ富田とみたしげるによる設計せっけいとコーディングである[9]

1989ねん11月に発売はつばいされた、『マイコンBASICマガジン』の別冊べっさつである『MSX/MSX2/MSX2+ ゲーム・ミュージック・プログラムだい全集ぜんしゅう』では、おおくの使用しようきょく収録しゅうろくされた。

最初さいしょ商品しょうひんされた実装じっそうであるFM-PACは爆発ばくはつてきなヒットを記録きろくし、機種きしゅのゲームをもふくめたヒットチャートでベスト3りを記録きろくしたうえ、パーソナルコンピュータ全般ぜんぱんあつかう『マイコンBASICマガジン』誌上しじょう音楽おんがくプログラム投稿とうこうコーナーへの投稿とうこうの8わりがMSX-MUSICようのデータでめられたとされ[10]、また1989ねん5がつから1990ねん4がつまでに実際じっさい掲載けいさいされた音楽おんがくプログラム61ほんのうち、15ほんがMSX-MUSICのものであった。[11]

ほん製品せいひん発売はつばい、リリースされたMSX2ようのアプリケーションにおいてもおおくのソフトウェアが対応たいおうした。MSX2+ではオプションあつかいの規格きかくであるが、MSX2+実際じっさいにMSX-MUSICを搭載とうさいしなかった機種きしゅ松下まつした「FS-A1FX」などごく一部いちぶかぎられており、事実じじつじょう標準ひょうじゅん搭載とうさい機能きのうとなっている。のち制定せいていされたMSXturboRにて正式せいしき標準ひょうじゅん仕様しようふくまれた。使用しようするにはMSX本体ほんたいRAMが32KiB以上いじょう必要ひつようである[2]

ハードウェアの直接ちょくせつ制御せいぎょによるこころ

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前述ぜんじゅつのようにMSX-MUSICのシステムは複数ふくすうのYM2413が存在そんざいしてもどれかひとつを使用しようするよう定義ていぎされており、ソフトウェアてきなサポートも存在そんざいしないが、MSXの拡張かくちょう機器きき実装じっそうとして推奨すいしょうされているメモリマップドI/Oの存在そんざいや、スロットの仕組しくみ、ならびにカートリッジない音源おんげん有効ゆうこう無効むこう選択せんたく可能かのうになっている仕様しようから独立どくりつ制御せいぎょ可能かのうである。 音声おんせい出力しゅつりょくがスロットの端子たんし経由けいゆする出力しゅつりょくのみのFM-PAC以外いがい商品しょうひんがなかったため用途ようと限定げんていされるものの、内蔵ないぞうデバイスはI/Oポート、FMPACはデバイスの有効ゆうこう無効むこう、スロットのえとメモリマップドI/Oの併用へいようによってハードウェアをダイレクトに制御せいぎょすることで最大さいだい10のYM2413を制御せいぎょするこころみも存在そんざい[12][13][14]している。

また、YM2413をDACとして利用りようするこころ[15][16]も、制御せいぎょのシステムとしてMSX-MUSICのハードウェアをもちいている。

パックコマンダー

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ほん製品せいひんは、パナアミューズメントカートリッジの上位じょうい機種きしゅとしての側面そくめんもあり、どう製品せいひん相当そうとうするいち電池でんちによりバックアップされるSRAMが搭載とうさいされている。

ハードウェアてきなバックアップメモリと、スロットにマッピングするための仕組しくみのみであった前身ぜんしんとなる製品せいひんことなり、ほん製品せいひんでは「パックコマンダー」というデータ管理かんりようユーティリティソフトがROMに内蔵ないぞうされており、BASICうえから「CALL FMPAC」と入力にゅうりょくすることで、起動きどうできた[17]

ユーティリティーを起動きどうすると音源おんげんのテストとサンプルをねたBGMがながれ、コピー、クリア、チェンジ、ファイルさくじょ、スロット、BGMのメニューが表示ひょうじされた。「スロット」のメニューのみ接続せつぞくスロットとの対応たいおう確認かくにんする機能きのうのため、単体たんたい接続せつぞくされた状態じょうたい実行じっこうする必要ひつようがあるが、それ以外いがいのメニューは電源でんげん投入とうにゅう接続せつぞくされているPACならびに、FMPAC、フロッピーディスクを対象たいしょうとしたデータのコピー、削除さくじょ移動いどうなどのマネジメントをおこなうことが可能かのうになっている。

取扱とりあつかい説明せつめいしょ、ユーティリティーないのメッセージはコマンドを呪文じゅもんなぞらえ、ゲームにした独特どくとく表現ひょうげんとなっている。

BGMは5きょく選択せんたくできるものの、YM2413のみで構成こうせいされたきょくになっているため、音量おんりょうバランスの基準きじゅんにすることはできず、おとめることも可能かのうになっている。BGM1は松下電器産業まつしたでんきさんぎょう発売はつばいT&E SOFT開発かいはつによるMSX2ようゲームソフト「アシュギーネ 虚空こくう牙城がじょう」のステージ1、BGM2はオープニングデモのきょくをFM音源おんげんアレンジしたものになっている。T&E SOFTのコンポーザーで、MBIOSの設計せっけいしゃである冨田とみたしげるによると、FM-PACサンプルきょくのうち1きょく富田とみた担当たんとうとのことである[9]

また、かくしコマンドとして、BGM選択せんたくメニューをひらいているときにTABキーをすことによってキーボード鍵盤けんばん楽器がっき見立みたてて演奏えんそうできるようになっていた。

BASICからのMSX-MUSICの使用しよう

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FM音源おんげん制御せいぎょ命令めいれいはCALL命令めいれいのセットとして拡張かくちょうされている。以下いかおも命令めいれいとその使用しようほうべる。

基本きほん仕様しようはMSX-AUDIOの記述きじゅつ準拠じゅんきょし、内蔵ないぞう音色ねいろなどはことなるものの、おとめい、パラメータなどは、互換ごかんせい意識いしきしたつくりとなっている。

CALL MUSIC(1,0,1,1,1,1,1,1)
FM音源おんげんBIOS起動きどうする。左端ひだりはし(0/1)でFM9チャンネル、FM6チャンネル+リズム5チャンネルのモードをえる。上記じょうきように1とした場合ばあいはリズムモードとなり、PLAY #2命令めいれいかくチャンネルにFM音源おんげん1チャンネルをてる。CALL MUSIC(1,0,2) などとして、複数ふくすうチャンネルをてることもできる。だい2パラメータの0はMSX-AUDIOの「CALL AUDIO」命令めいれいとの表記ひょうきじょう互換ごかんせいのためにのこされているものであり、MSX-MUSICじょうではつねに0を設定せっていする[18][19]
CALL VOICE(@0,@12)
FM音源おんげんかくチャンネルに音色ねいろ設定せっていする。チップ内蔵ないぞうの15の音色ねいろ以外いがい自作じさく音色ねいろあつかいとなり、1セットしかない自作じさく音色ねいろようレジスタを占有せんゆうしてしまうため、同時どうじに1種類しゅるいしか使用しようできない。BASICのかく命令めいれい実行じっこうと、音源おんげん演奏えんそう標準ひょうじゅん設定せっていでは同期どうきしておらず、このコマンドはおも演奏えんそう開始かいしまえ使用しようされ、きょくちゅうでの音色ねいろ変更へんこうには通常つうじょうMMLの@コマンドをもちいる[20]
CALL TEMPER(9)
音律おんりつ設定せっていできる[21]
CALL VOICE COPY(@63, tone%)
音色ねいろデータエリアと任意にんい配列はいれつ変数へんすうあいだでデータをコピーする。データサイズは32バイトMSX-BASICでは整数せいすうがたが2バイトなので、dim tone%(15) と定義ていぎされるのが一般いっぱんてきである。上記じょうきれいでは音色ねいろ番号ばんごう63に配列はいれつ変数へんすうtone%の内容ないようをコピーしているが、ぎゃく動作どうさなども可能かのうである。MSX-MUSICでは@0から@62まではプリセットの音色ねいろがあり、慣例かんれいてき自作じさく音色ねいろは63から使用しようされることがおおかった。一般いっぱんてきには音色ねいろ設定せってい以下いかのようにおこなわれる。
DIM TONE%(15):FOR I=0 TO 15:READ A$:TONE%(I) = VAL("&H" + A$):NEXT
DATA 0000,0000,0000,0000
DATA 0000,0000,0000,0000
DATA 0000,0000,0000,0000
DATA 0000,0000,0000,0000
CALL VOICE COPY(TONE%, @63)
きょくちゅう複数ふくすう音色ねいろ使用しようするときは、PLAYぶん合間あいまに CALL VOICE COPY ぶんはさむことでおこなう。
音色ねいろ設定せっていにはFM音源おんげんのパラメータを直接ちょくせつ人間にんげんにとって自然しぜんに)表記ひょうきして上記じょうきの32バイト配列はいれつにコンバートする手法しゅほうや、FM音源おんげんチップのレジスタに直接ちょくせつむコマンドの「Yコマンド」をMMLちゅうもちいる手法しゅほうもあった。前者ぜんしゃ変換へんかんプログラムは比較ひかくてき複雑ふくざつなものになる[22]後者こうしゃでは演奏えんそうちゅう臨機応変りんきおうへん音色ねいろ変化へんかさせることができる。
PLAY #2, "C", "D", A$
MMLにしたが演奏えんそうおこなう。従来じゅうらいの「PLAY」ぶん拡張かくちょうされたものである。上記じょうきみぎはしれいとお文字もじれつ変数へんすう使用しよう可能かのうであり、むしろそのほう一般いっぱんてきである。どのけたがFM/PSGのどのチャンネルを演奏えんそうするかは、CALL MUSICでの設定せっていによる。従来じゅうらいのPLAYぶんちがい、32ふん音符おんぷもある程度ていどズレなく演奏えんそうさせることができる。標準ひょうじゅん設定せっていでは演奏えんそうはBASICの実行じっこうとは非同期ひどうきに(自動的じどうてきに)演奏えんそうされる。なお、1のPLAYぶんながめるMMLのながさはMSX-BASICにより制限せいげんされる。だい1パラメータからじゅんに、FM音源おんげんチャンネル(0~6)、リズムチャンネル(0~1個いっこ)、PSGチャンネル(3)となっている。
CALL PITCH(440) / CALL TRANSPOSE(n)
MSX-MUSICでは、チューニングの変更へんこう可能かのうで、CALL PITCHではA4おと周波数しゅうはすう指定していする。デフォルトでは440となっている[23]。また、CALL TRANSPOSE をもちいて、1セント(半音はんおんの1/100)単位たんいでプラスマイナス12799セントの移調いちょう可能かのう[24]

MML一般いっぱんてきなものと大差たいさない。MSX-MUSICでの方言ほうげん特徴とくちょうとして、以下いかのようなものがある。

  • オクターブ変更へんこうは > で上昇じょうしょう、 < で下降かこう当時とうじとしては一般いっぱんてき記法きほうである。
  • { } で音譜おんぷくくことれんとなる。
  • @Vコマンドで音量おんりょうを128段階だんかいこまかく設定せっていできる。実際じっさい内部ないぶでは16段階だんかい変換へんかんされるが、変数へんすう処理しょりなどで有益ゆうえきである。
  • Qコマンドをもちいることでスタッカートレガート表現ひょうげんできる。8段階だんかい調整ちょうせい可能かのう同様どうよう表現ひょうげんおこなうのに2000年代ねんだい現在げんざいデスクトップミュージック(DTM)ではゲートタイムばれることがおおい。
  • Tコマンドでテンポが設定せっていされる。MSXのタイマは1/60びょう単位たんいでしか発生はっせいしないため、おとながさが n(整数せいすう)/60びょうあらわせないときには、テンポにずれがしょうじる。計算けいさんじょう、14400÷テンポ÷使用しようしたい音譜おんぷ(1-64)のかい整数せいすうであれば、問題もんだいはない。Music Macro Language#システムじょう制約せいやく対策たいさく参照さんしょうされたし。

もっとおおきなてんは、リズム音源おんげん演奏えんそう専用せんようMMLの存在そんざいである。これは一般いっぱんてきなMMLとはまったことなり、たとえば典型てんけいてき8ビートであれば、

B!H8H8SH8H8 B!H8BH8SH8H8

となる。B:バスドラム S:スネアドラム H:ハイハット M:タムタム C:シンバル となっており、可読かどくせいなんはあるものの、1まとまりのMMLで複数ふくすう打楽器だがっきらせる仕様しようとなっている。なお、!はアクセントとして、音量おんりょう通常つうじょうのものとはことなる変化へんかさせる修飾しゅうしょくコマンドである[25]かならずしも音量おんりょうがるわけではない。

BASICでの演奏えんそう限界げんかい

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BASICでの演奏えんそうではポルタメントおこなえない、ビブラート再現さいげんできない、という問題もんだいがあった。直接ちょくせつレジスタを制御せいぎょするYコマンドで実現じつげん可能かのうであるが、直接ちょくせつおくむデータを列挙れっきょするため、非常ひじょう煩雑はんざつでMMLの可読かどくせいいちじるしくそこなう。

MSX-MUSICのパーカッションの音色ねいろは、よく出来できているとはがたく、多用たようされるスネアドラムとうたいしては、音色ねいろ加工かこうする方法ほうほうとしてPSGのノイズをかさねたり、PSGにるなどし、音階おんかい存在そんざいしなかったタムタムたいしては、Yコマンドにより、直接ちょくせつチップにたいして音程おんてい指定していするひとし試行錯誤しこうさくごられた[26]電波でんぱ新聞しんぶんしゃかん、『MSX2/2+ ゲーム・ミュージックプログラムだい全集ぜんしゅう』(1989, 電波でんぱ新聞しんぶんしゃ)および『MSX2/2+ ゲーム・ミュージックプログラムだい全集ぜんしゅうII』(1990, 電波でんぱ新聞しんぶんしゃ)では実際じっさいに、掲載けいさいされているFM-PAC対応たいおう演奏えんそうプログラムのおおくで、ドラムスの演奏えんそうにこのような工夫くふうられる。

さらにBASICじょうでFM音源おんげんBIOSのワークエリア直接ちょくせつみ、周波数しゅうはすうのわずかにことなる2おとかさデチューン効果こうか方法ほうほう確立かくりつされている。[27]

なお、PSGパートでは、タイマみとPSGのレジスタの直接ちょくせつ変更へんこう(MSXの場合ばあいはBIOSでおこなえる[28])をもちいたビブラート、コーラス、ソフトウェアエンベロープシンセタムなどの技法ぎほうはFM-PAC発売はつばい以前いぜんからおこなわれている。これらについても『マイコンBASICマガジン』(1988ねん以降いこう)、『ゲーム・ミュージック・プログラムだい全集ぜんしゅうIII』(1988, 電波でんぱ新聞しんぶんしゃ)、『MSX2/2+ゲーム・ミュージックプログラムだい全集ぜんしゅう』(1989, 電波でんぱ新聞しんぶんしゃ)および『MSX2/2+ゲーム・ミュージックプログラムだい全集ぜんしゅう』(1990, 電波でんぱ新聞しんぶんしゃ)などでおおくの実例じつれいられる。

チップ内蔵ないぞう音色ねいろ

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音色ねいろようレジスタを占有せんゆうする音色ねいろふくめると、MSX-MUSICでは64しゅ(無音むおんふくむ)[29]音色ねいろ用意よういされている。以下いかのものは制限せいげん使つかえるチップ内蔵ないぞう音色ねいろである。何分なにぶんこのほかには同時どうじに1音色ねいろしか使用しようできないため、ほとんどのMSX-MUSICよう演奏えんそうデータはそのほとんどの部分ぶぶんがこの15しゅ音色ねいろだけで演奏えんそうされている。なおチップないでは音色ねいろ番号ばんごうは0 - 15のっており、下記かき音色ねいろ番号ばんごうはMSX-MUSICがわ独自どくじったものである。また、取扱とりあつかい説明せつめいしょp.44によれば、音色ねいろめいについては「参考さんこうのためにけたもので音色ねいろによっては、実際じっさい楽器がっきおとことなることがあります。」ということになっている。

FM音源おんげんBIOS内蔵ないぞう音律おんりつ

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メジャーはMと、マイナーはmと略記りゃっきした。取扱とりあつかい説明せつめいしょ p.45を参考さんこうとした。

  • 0 ピタゴラス
  • 1 ミーントーン
  • 2 ヴェルクマイスター
  • 3 ヴェルクマイスター(修正しゅうせい
  • 4 ヴェルクマイスター(べつ
  • 5 キルンベルガー
  • 6 キルンベルガー(修正しゅうせい
  • 7 ヴァロッティ・ヤング
  • 8 ラモー
  • 9 完全かんぜん平均へいきんりつ(デフォルト)
  • 10 純正じゅんせいりつ c M (a m)
  • 11 純正じゅんせいりつ cis M (b m)
  • 12 純正じゅんせいりつ d M (h m)
  • 13 純正じゅんせいりつ es M (c m)
  • 14 純正じゅんせいりつ e M (cis m)
  • 15 純正じゅんせいりつ f M (d m)
  • 16 純正じゅんせいりつ fis M (es m)
  • 17 純正じゅんせいりつ g M (e m)
  • 18 純正じゅんせいりつ gis M (f m)
  • 19 純正じゅんせいりつ a M (fis m)
  • 20 純正じゅんせいりつ b M (g m)
  • 21 純正じゅんせいりつ h M (gis m)

MSXようのその音源おんげん関係かんけいオプション

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  • MSX-AUDIO - 先発せんぱつ規格きかく国内こくないひろ普及ふきゅうすることはかった。
  • FM Sound Synthesizer Unit II - SFG-05 YAMAHAから発売はつばいされた拡張かくちょう音源おんげんユニット。YM2151(OPM)を搭載とうさいし、MIDI端子たんし装備そうび希望きぼう小売こうり価格かかく29,800えん。ただし通常つうじょうのカートリッジスロットとはことなる独自どくじ形式けいしきち、YAMAHAしゃビクターしゃせいのMSX以外いがいでは別売べつばいのアダプターが必要ひつようだった。ミュージックシーケンサー拡張かくちょうBASICも供給きょうきゅうされた。MSX項目こうもく参照さんしょう
  • MIDIサウルス - 1990ねんBIT2より発売はつばいされた、MIDIインターフェイス。ミュージックシーケンサーがFDで付属ふぞく。メロディー8トラック、リズム1トラック、最大さいだい16おとポリフォニック[11]四分しぶ音符おんぷ分解能ぶんかいのうは96または48[11]希望きぼう小売こうり価格かかく19800えんMSX項目こうもく参照さんしょう
  • SCCカートリッジ - コナミから発売はつばいされたMSX2ようアドベンチャーゲーム『スナッチャー』『SDスナッチャー』にどうこりされた拡張かくちょう音源おんげんカートリッジ。SCC音源おんげん搭載とうさいされている。単体たんたいでの使用しよう想定そうていされておらず単体たんたい発売はつばいもなかったが、MSXマガジンマイコンBASICマガジンとう仕様しよう独自どくじ解析かいせきされらすためのツールが提供ていきょうされた。
  • MoonSound - 1994ねんにオランダのSunriseしゃより発売はつばいされた拡張かくちょう音源おんげんカートリッジ。国内こくない発売はつばい。OPL4音源おんげんYMF278B」、GM音源おんげんようWave Table ROM「YRW-801」、波形なみかたデータようRAMを搭載とうさいしている。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 『MSX・FAN』1988ねん10がつごう P.114
  2. ^ a b 『FM音楽おんがくかん』p.4
  3. ^ a b 取扱とりあつかい説明せつめいしょ p.46
  4. ^ 取扱とりあつかい説明せつめいしょ p.7
  5. ^ 『FM音楽おんがくかん』 p5
  6. ^ 取扱とりあつかい説明せつめいしょ p.9
  7. ^ はやすぎた迷オプション MSX-AUDIO」『MSX MAGAZINE 永久えいきゅう保存ほぞんばん 2』アスキー書籍しょせき編集へんしゅう編著へんちょ、アスキー、2003ねん、pp.148-151。
  8. ^ MSX Datapack 73.1.2 I/Oの構成こうせい
  9. ^ a b 富田とみたのサイト、「TOMMYs'HomePage」
  10. ^ 『MSX/MSX2/MSX2+ ゲーム・ミュージック・プログラムだい全集ぜんしゅう』p.218 また『マイコンBASICマガジン』誌上しじょうでは、89ねん1がつごう p.208 に、投稿とうこう作品さくひんの6 - 7わりがFM-PACようだとの言及げんきゅうがある。
  11. ^ a b c 『マイコンBASICマガジン』1990ねん5がつごう
  12. ^ MSXでOPLLを3つ同時どうじ使つかってみるテスト - YouTube
  13. ^ MSXのFM音源おんげん(OPLL)を同時どうじにいっぱい使つかって演奏えんそうしてみた(IppaiOPLL) - YouTube
  14. ^ MSXようFM音源おんげんドライバ「いっぱいOPLL」
  15. ^ FM PCM Player: Playing samples on the YM2413 OPLL - YouTube
  16. ^ Limitations with MSX-Music
  17. ^ 取扱とりあつかい説明せつめいしょ pp.10-11
  18. ^ 『FM音楽おんがくかん』p141
  19. ^ 取扱とりあつかい説明せつめいしょ p.36
  20. ^ 取扱とりあつかい説明せつめいしょ p.40
  21. ^ 取扱とりあつかい説明せつめいしょ pp.39, 45
  22. ^ 『MSX/MSX2/MSX2+ ゲーム・ミュージック・プログラムだい全集ぜんしゅう』p.224
  23. ^ 取扱とりあつかい説明せつめいしょ p.37
  24. ^ 取扱とりあつかい説明せつめいしょ p.39
  25. ^ 取扱とりあつかい説明せつめいしょ p.43
  26. ^ だい全集ぜんしゅうII』 p.173
  27. ^ 1990ねん3がつごうp.191。または『MSX2/2+ ゲーム・ミュージックプログラムだい全集ぜんしゅう』p.112
  28. ^ 『MSX2 テクニカルハンドブック』だい5「BIOS」 1986, アスキー
  29. ^ 『MSX/MSX2/MSX2+ ゲーム・ミュージック・プログラムだい全集ぜんしゅう

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 『YM2413 FM Operator Type-LL (OPLL) Application Manual』 YAMAHA [1] OPLLについての詳細しょうさい仕様しようしょ
  • 1990ねん、『マイコンBASICマガジン』、電波でんぱ新聞しんぶんしゃ pp. 73-75
  • 1989ねん、『マイコンBASIC Magazine DELUXE MSX/MSX2/MSX2+ ゲーム・ミュージック・プログラムだい全集ぜんしゅう』、電波でんぱ新聞しんぶんしゃ - MSX-BASICじょうでのMSX-MUSICプログラミングの実例じつれい多数たすう紹介しょうかいされている。若干じゃっかん入門にゅうもん講座こうざもある。
  • 横川よこかわさとし彦、1989、『FM音楽おんがくかん』、徳間書店とくましょてん ISBN 4-19-723969-6 - MSX-BASICじょうでのMSX-MUSICによるプログラミング手法しゅほう、および拡張かくちょう命令めいれい詳細しょうさい解説かいせつされているほか、音楽おんがく基礎きそ知識ちしきについても解説かいせつがなされている。
  • 徳間書店とくましょてんインターメディア(へん)、1988、『ゲーム十字軍じゅうじぐん』、徳間書店とくましょてん

関連かんれん文献ぶんけん

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  • 1987、『MSX-U』、コナミ出版しゅっぱん ISBN 4-87655-006-9 - MSX-MUSICとは直接ちょくせつ関係かんけいいが、その拡張かくちょう音源おんげんたいしての記述きじゅつがある。

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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