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HOPE (宇宙うちゅう往還おうかん)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

HOPE(ホープ、H‐II Orbiting Plane)は、日本にっぽん宇宙開発事業団うちゅうかいはつじぎょうだん (NASDA) と航空宇宙技術研究所こうくううちゅうぎじゅつけんきゅうじょ (NAL) が研究けんきゅう開発かいはつしていた、さい利用りよう可能かのう無人むじん宇宙うちゅう往還おうかんである。

日本にっぽんばんスペースシャトルともばれるが、アメリカ航空こうくう宇宙うちゅうきょく運用うんようしていたスペースシャトルとはことなる。

計画けいかく進展しんてん

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独自どくじ宇宙うちゅう開発かいはつのためさい利用りよう可能かのう宇宙うちゅう往還おうかん計画けいかくアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく以外いがいでも、ソビエト連邦れんぽうブランフランスESAエルメス、そしてアメリカの次世代じせだいスペース・シャトルベンチャースターなどがあったが、いずれも資金しきんなん計画けいかくたおれとなった。

どう時期じき計画けいかくなか最後さいごまでのこった日本にっぽんの「HOPE」は、スペースシャトルとくらべると小型こがたで、完全かんぜん無人むじん操縦そうじゅう[1]自律じりつ飛行ひこうおこなう。H-IIロケットのペイロード(積荷つみに部分ぶぶんえてげる計画けいかくであった。打上うちあげロケットもSRBを6ほんけたH-IIロケットや、LRBをけたH-IIAロケットなどが計画けいかくがされていた。

NALとNASDAでは1990年代ねんだいはじめから独自どくじ宇宙うちゅう往還おうかん開発かいはつおこなはじめ、1994ねんにH-IIロケットの成功せいこうによって実現じつげん見込みこみがたかまり、すうにわたる飛行ひこう実験じっけんおこなった。

OREX (Orbital Reentry Flight Experiment) 軌道きどうさい突入とつにゅう飛行ひこう実験じっけんは、1994ねん2がつH-IIロケット試験しけん1号機ごうきげられ、日本にっぽんはじめて大気圏たいきけんさい突入とつにゅう実験じっけんおこな成功せいこうした。成功せいこうに「りゅうせい」とづけられた。

HYFLEX (Hypersonic Flight Experiment) ごくちょう音速おんそく飛行ひこう実験じっけんは、1996ねん2がつJ-Iロケット1号機ごうきによってげられた。高度こうど110kmでロケットから分離ぶんりし、滑空かっくう飛行ひこうおこなった。重要じゅうようなデータの受信じゅしんにも成功せいこう海面かいめん着水ちゃくすいしたのも確認かくにんした。本来ほんらい予定よていには機体きたい回収かいしゅう計画けいかく実行じっこうしたが、機体きたい発見はっけん出来できず、回収かいしゅう出来できなかった。

ALFLEX (Automatic Landing Flight Experiment 小型こがた自動じどう着陸ちゃくりく飛行ひこう実験じっけんは、1996ねんの7がつから8がつにかけてオーストラリアウーメラ飛行場ひこうじょうで、HOPE実物じつぶつすうぶんいちモデルによる完全かんぜん自律じりつ飛行ひこう実験じっけんおこなった。ヘリコプターによって上空じょうくうはなされた機体きたい無事ぶじ着陸ちゃくりく。1ヶ月かげつあいだに13かいにわたって実験じっけんおこない、すべ成功せいこうした。

実験じっけん順調じゅんちょうすすんだが、1990年代ねんだい後半こうはん不景気ふけいきによって計画けいかく見直みなおされ、HOPE実用じつよう直接ちょくせつ製作せいさくするのでなく、比較的ひかくてき開発かいはつひくおさえられるHOPE-X (H‐II Orbiting Plane Experimental) 実用じつよう実験じっけん製作せいさくうつった。HOPE-Xのサイズは全長ぜんちょう15.2m、はば9.7m、たかさ4.8m、重量じゅうりょうやく14tとなっている[2]。HOPEから実験じっけんとして必要ひつようのない部分ぶぶん省略しょうりゃくして軽量けいりょうした機体きたいで、H2A1024がたげられる予定よていだった。実験じっけん終了しゅうりょう機体きたい改修かいしゅう必要ひつよう機材きざいせることで、HOPEとしての運用うんようもできる設計せっけいだった[3][4]

しかしこのころ、建設けんせつ現実味げんじつみびてきた国際こくさい宇宙うちゅうステーション (ISS) へ荷物にもつはこ使つかての機体きたいHTVH‐II Transfer Vehicleのこうのとり)」の研究けんきゅう1997ねんにはじまり、HOPEの必要ひつようせい疑問ぎもんげかけるこえがあがりはじめた。

それでも2000ねん2がつには、太平洋たいへいようキリバスクリスマスとう土地とちり、帰還きかんよう滑走かっそう追跡ついせき施設しせつ支援しえん施設しせつそなえた宇宙うちゅうセンターを建設けんせつするだいプロジェクトがうごし、ますます実現じつげん期待きたいたかまった。

計画けいかく見直みなお

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1998ねん1999ねんH-IIロケットげに連続れんぞく失敗しっぱいした宇宙開発事業団うちゅうかいはつじぎょうだん組織そしき改革かいかくわれ、2000ねん8がつ宇宙うちゅう計画けいかく全面ぜんめんてき見直みなおしを宣言せんげんした。H-IIロケットげを停止ていしして、新型しんがたH-IIAロケット開発かいはつ全力ぜんりょくそそぐこと、また小型こがたJ-Iロケット計画けいかく凍結とうけつ、そしてHOPE-X実機じっき製作せいさく凍結とうけつと、今後こんごはHOPEにとらわれない航空こうくう宇宙うちゅう実験じっけんおこなむね発表はっぴょうした。NASDAはあくまで中止ちゅうしではないと主張しゅちょうしていたが、その展開てんかいかんがえれば、この時点じてん開発かいはつ中止ちゅうしされたとるのが妥当だとうである。

宇宙うちゅう科学かがく研究所けんきゅうじょ (ISAS) でも2002ねん2がつ、H-IIAロケット2号機ごうきによってげられたISASのさい突入とつにゅう実験じっけんDASH」が、設計せっけいミスによってフェアリングからの分離ぶんり失敗しっぱい実験じっけん中止ちゅうしされた。7月には、NALがオーストラリアのウーメラ飛行場ひこうじょう実験じっけんおこなった小型こがたちょう音速おんそく実験じっけんちょう音速おんそく航空機こうくうきSST実験じっけん)が、やはり設計せっけいミスによって、直後ちょくごにロケットブースターから落下らっか大破たいはするという事態じたい発生はっせい(JAXA統合とうごう実験じっけん成功せいこう)。2ねんまえの2000ねん2がつにはISASのM-Vロケット4号機ごうき異常いじょう燃焼ねんしょうこし、Xせん天文てんもん衛星えいせい「ASTRO-E」の軌道きどう投入とうにゅう失敗しっぱいした。それぞれの事故じこ直接ちょくせつには関連かんれんしていないが、宇宙うちゅう開発かいはつ技術ぎじゅつりょく向上こうじょう体質たいしつ改善かいぜん課題かだいとなった。

悪化あっかした宇宙うちゅう開発かいはつじょうきょうなかいままでの実験じっけん成果せいか実証じっしょうする「HSFD (High Speed Flight Demonstration)」高速こうそく飛行ひこう実証じっしょう2002ねんから翌年よくねんにかけてった。

2002ねん9がつから11がつまで、離陸りりく飛行ひこう着陸ちゃくりくすべ自律じりつしておこな自律じりつ飛行ひこう実証じっしょうフェーズI」をクリスマスとう飛行場ひこうじょうおこなった。つきいち飛行ひこうさんおこない、すべての飛行ひこう実証じっしょう成功せいこうした。2003ねん7がつこう高度こうど(20kmから30km)からちょう音速おんそく滑空かっくう飛行ひこうする高速こうそく飛行ひこう実証じっしょうフェーズII」をフランス共同きょうどうスウェーデンおこなった。「フェーズII」は接地せっちさい機体きたい破損はそんしたが、ほとんどの実証じっしょう成功せいこうした。しかし、HSFDの成果せいか役立やくだてることのできる計画けいかくはなかった。

長期ちょうき計画けいかく

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2003ねん10月1にち宇宙うちゅう航空こうくう3機関きかん統合とうごうし、宇宙うちゅう航空こうくう研究けんきゅう開発かいはつ機構きこう (JAXA) が発足ほっそくした。しかし11月には、統合とうごうはじめてのげとなったH-IIAロケット6号機ごうきがSRB-A(固体こたいロケットブースター)が分離ぶんり出来できずにげに失敗しっぱいし、12月には、火星かせい探査たんさのぞみ火星かせい到達とうたつ目前もくぜん機体きたい故障こしょう克服こくふく出来できずに断念だんねんふたた宇宙うちゅう開発かいはつ停滞ていたいした。そして、H-IIAは2005ねん2がつにようやくげの再開さいかいげた。

2005ねん3がつにはHOPE-Xの着陸ちゃくりくじょうとする予定よていだったクリスマスとう土地とちをキリバス政府せいふ返還へんかんする方針ほうしん決定けっていした。滑走かっそう使用しようしたのは「HSFD」フェーズIの離着陸りちゃくりくさんのみであった。

一方いっぽうでこのとし4がつ、JAXAは今後こんご20年間ねんかん見通みとお長期ちょうき計画けいかく発表はっぴょうした。2015ねんまでは有人ゆうじん宇宙うちゅう計画けいかくなどはたずに、基礎きそ技術ぎじゅつ研究けんきゅうなどをおこなうとしているが、2025ねんごろ目処めど有人ゆうじん宇宙うちゅう計画けいかく実行じっこうすることとなっている。また、2006ねん発売はつばいされた科学かがく雑誌ざっし『サイエンスウェブ』3がつごうにおいて、計画けいかくしている有人ゆうじん宇宙船うちゅうせんについての概要がいよう掲載けいさいした。それによれば、新型しんがた宇宙船うちゅうせんにはHOPE開発かいはつつちかった技術ぎじゅつ流用りゅうようするとしている。

HOPE-Xが頓挫とんざしたのち、JAXAではこれまでの実験じっけん成果せいか反映はんえいさせることを計画けいかくしていたが、将来しょうらいさい使用しようがた宇宙うちゅう往還おうかんにおいてはつばさ小型こがた必要ひつようとされ、機体きたい形状けいじょう自体じたい浮揚ふよう特性とくせいたせたリフティングボディ理想りそうであることから、2006ねんにリフティングボディ飛行ひこう実験じっけん計画けいかくLIFLEX (LIfting‐body FLight EXperiment) が開始かいしした[5]2007ねん8がつには北海道ほっかいどう大樹たいきまち多目的たもくてき航空公園こうくうこうえんにて飛行ひこう実験じっけんがおこなわれた[6]が、飛行ひこう実験じっけん実施じっし凍結とうけつとなり、当初とうしょ計画けいかくされていた、自動じどう着陸ちゃくりく実験じっけんにはいたらなかった[7]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 初期しょきのイラストでは有人ゆうじんをうかがわせるまどえがかれているものもあった。宇宙うちゅうステーションにドッキングしたHOPE
  2. ^ HOPE_X 開発かいはつから将来しょうらい宇宙うちゅう輸送ゆそうけいけて”. 三菱重工みつびしじゅうこうわざほう. 三菱重工みつびしじゅうこう (2002ねん1がつ). 2012ねん6がつ6にち閲覧えつらん
  3. ^ HOPE-X打上うちあ想像そうぞう”. jaxaデジタルアーカイブス. jaxa. 2012ねん10がつ6にち閲覧えつらん
  4. ^ HOPE-X(宇宙うちゅう往還おうかん技術ぎじゅつ試験しけん”. 宇宙うちゅう用語ようごしゅう. jaxa. 2012ねん10がつ6にち閲覧えつらん
  5. ^ LIFLEX飛行ひこう実験じっけん計画けいかくについて(PDF)
  6. ^ 番外ばんがいへん LIFLEXだい1かいかかつるし飛行ひこう試験しけん北海道ほっかいどう大樹たいきまち 実験じっけん1にち 実験じっけんよう航空機こうくうきレポート、JAXA、閲覧えつらん2017ねん7がつ21にち
  7. ^ 宇宙うちゅう航空こうくう研究けんきゅう開発かいはつ機構きこう研究けんきゅう開発かいはつ報告ほうこく、リフティングボディ飛行ひこう実験じっけん(LIFLEX)システム開発かいはつ、LIFLEX チーム、2010ねん9がつ、JAXA、閲覧えつらん2017ねん7がつ21にち

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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