LLC

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リミテッド・ライアビリティ・カンパニー英語えいご: Limited Liability Company)、 LLC(エルエルシー、有限ゆうげん責任せきにん会社かいしゃ)は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくかくしゅう法律ほうりつもとづいて設立せつりつされる会社かいしゃ形態けいたいの1つである。

歴史れきし[編集へんしゅう]

LLCは、1977ねんワイオミングしゅうはじめて法制ほうせいされた。1988ねんキントナー規則きそく導入どうにゅうされて、LLCをふくコーポレーションの会社かいしゃたいたいする連邦れんぽう税法ぜいほうじょう取扱とりあつかいがある程度ていど明確めいかくされたこともあり、それ以降いこう急速きゅうそく各州かくしゅう普及ふきゅうした。さらに1997ねんIRSチェック・ザ・ボックス規則きそく導入どうにゅうし、税務ぜいむじょう構成こうせいいん課税かぜい選択せんたくできることとされたことにより、会社かいしゃたいレベルとその構成こうせいいんレベルでのじゅう課税かぜい回避かいひできる使つか勝手がってのよい企業きぎょう形態けいたいとして認識にんしきされるようになった。

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

LLCの法的ほうてき特徴とくちょうは、設立せつりつ州法しゅうほうによりことなる。LLCにかんする法律ほうりつ統一とういつこころみの一環いっかんとして、1996ねん統一とういつリミテッド・ライアビリティ・カンパニーほう制定せいていされたが、その採用さいよう各州かくしゅう自由じゆうまかされており、現在げんざいでも全米ぜんべい各州かくしゅうのLLCほう統一とういつされているわけではない。以下いか主要しゅようしゅうにある程度ていど共通きょうつうてき規定きていもとづく説明せつめいである。

設立せつりつ[編集へんしゅう]

LLCは、発起人ほっきにん(organizer(s))が原始げんし定款ていかん(articles of organization, certificate of formationとうばれる)をしゅうつとむちょう(Department of State)にとどることにより設立せつりつされる[1]原始げんし定款ていかんには、社名しゃめい住所じゅうしょ送達そうたつ代理人だいりにんとう一定いってい必要ひつようてき記載きさい事項じこうがあるほか、しゅうによってはひろ任意にんいてき記載きさい事項じこうみとめるところがある。なお、LLCの会社かいしゃめいには、省略しょうりゃくのない「Limited Liability Company」か「Limited Company」(この場合ばあい、「Limited」は「Ltd.」に、「Company」は「Co.」に省略しょうりゃく)、あるいは「LLC」、「L.L.C.」、「LC」、ないしは「L.C.」などの文言もんごんもちいるものとされている[2]

能力のうりょく[編集へんしゅう]

LLCほうによれば、原始げんし定款ていかんことなるさだめをかないかぎり、LLCは、その事業じぎょうまた事務じむ遂行すいこうするために必要ひつようまた便宜べんぎすべてのことをおこなうための個人こじんおな能力のうりょくゆうするものとされている。

有限ゆうげん責任せきにん[編集へんしゅう]

LLCへの出資しゅっししゃ社員しゃいん(members)とばれるが、コーポレーションの株主かぶぬし(shareholders)と同様どうよう全員ぜんいん有限ゆうげん責任せきにんとされている[3]。すなわち、出資しゅっししゃは、出資しゅっしがく限度げんどとしてのみ責任せきにんい、LLCの債務さいむたいして直接ちょくせつ責任せきにんうことはない。このてん株式会社かぶしきがいしゃ出資しゅっししゃ有限ゆうげん責任せきにんとまったく同一どういつである。したがって、事業じぎょう失敗しっぱいのリスクから隔離かくりされている。

経営けいえい[編集へんしゅう]

社員しゃいん同士どうし関係かんけい権利けんり義務ぎむは、運営うんえい契約けいやく(operating agreement)により規定きていされる[4]運営うんえい契約けいやくはコーポレーションにおける附属ふぞく定款ていかん(bylaws)にあたるものといえるが、LLCほう会社かいしゃほうよりもはるかにメンバーによる自治じち裁量さいりょうみとめている。LLCにはおおきくけて、社員しゃいん直接ちょくせつ経営けいえいがた(member-managed LLC)と経由けいゆ経営けいえいがた(manager-managed LLC)の種類しゅるいがある[5]前者ぜんしゃにおいては、ひとりないし複数ふくすう社員しゃいん直接ちょくせつLLCを代表だいひょうしてLLCを経営けいえいする。後者こうしゃにおいては、社員しゃいんから選任せんにんされたマネジャーがメンバーの一般いっぱんてき監視かんし管理かんりのもとでLLCを代表だいひょうし、経営けいえいする。

出資しゅっし利益りえき配当はいとう[編集へんしゅう]

社員しゃいんは、金銭きんせんのみならず、金銭きんせん以外いがい財産ざいさん役務えきむ提供ていきょう将来しょうらい金銭きんせん財産ざいさん役務えきむ提供ていきょう約束やくそくによっても出資しゅっしすることができる。[6]利益りえき配当はいとうは、別途べっとさだめのないかぎ出資しゅっし割合わりあいおうじてなされる[7]が、運営うんえい契約けいやく別途べっと合意ごういすることにより、社員しゃいん同意どういにより出資しゅっし割合わりあい拘束こうそくされない自由じゆう配分はいぶん利益りえき配当はいとう決定けっていすることができる。

上記じょうき#歴史れきしのとおり、現在げんざいではすべてのLLCは、構成こうせいいん課税かぜい選択せんたくすることができる。この場合ばあい、LLCの所得しょとくたいしては、企業きぎょうたいとしてのLLCは課税かぜいされず、その構成こうせいいん所得しょとくとして構成こうせいいん課税かぜいされる(いわゆるパススルー課税かぜい)。これにたいして、コーポレーションの場合ばあいには、コーポレーションの所得しょとくたいして法人ほうじんぜいせられ、さらに、株主かぶぬしたいする配当はいとう株主かぶぬし所得しょとくとして課税かぜいされる(じゅう課税かぜい)。[8]

日本にっぽん法人ほうじん税法ぜいほうじょう取扱とりあつか[編集へんしゅう]

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのLLCは原則げんそくとして、日本にっぽん私法しほうじょうおよ税法ぜいほうじょう外国がいこく会社かいしゃ該当がいとうするものである。

類似るいじ形態けいたい[編集へんしゅう]

アメリカにおけるLLCと同様どうよう機能きのうたしている企業きぎょう組織そしき形態けいたいとして、イギリスLLP(Limited Liability Partnership、2000ねん導入どうにゅう)、ドイツGmbHフランスSAS単純たんじゅんがた株式かぶしき資本しほん会社かいしゃ)がある。

日本にっぽんでは、従来じゅうらい、アメリカのLLCに完全かんぜん相当そうとうする制度せいど用意よういされていなかった。形態けいたいのものは、会社かいしゃほう施行しこう以降いこう新規しんき設立せつりつみとめられなくなったきゅう有限ゆうげん会社かいしゃ特例とくれい有限ゆうげん会社かいしゃ)がもっとちかかった。しかし、現在げんざいほう改正かいせいにより有限ゆうげん会社かいしゃ存続そんぞくのみがみとめられ、新設しんせつみとめられていない。

一方いっぽう会社かいしゃほう」(平成へいせい17ねん(2005ねん)7がつ26にち公布こうふ、2006ねん5がつ1にち施行しこう)にきゅう有限ゆうげん会社かいしゃにかわるものとして「合同ごうどう会社かいしゃ」が導入どうにゅうされた。しかし日本にっぽん税法ぜいほうでは米国べいこくのLLCのように構成こうせいいんたいするパススルー課税かぜいみとめられていないなど米国べいこくのLLCとはことなるものとなっている。なお、米国べいこく税法ぜいほうじょう日本にっぽん有限ゆうげん会社かいしゃおよ合同ごうどう会社かいしゃ米国べいこくワイオミングしゅうなどいくつかのしゅうにおいては特例とくれいとして米国べいこくのLLC同様どうよう、チェック・ザ・ボックスによる選択せんたくによりパススルー課税かぜい対象たいしょうとなる。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ ULLCA202じょう、203じょう
  2. ^ ULLCAだい105じょう
  3. ^ ULLCAだい303じょう
  4. ^ ULLCAだい103じょう
  5. ^ ULLCAだい404じょう
  6. ^ ULLCAだい401じょう
  7. ^ ULLCAだい405じょう
  8. ^ 米国べいこく有限ゆうげん責任せきにん会社かいしゃ(LLC)の特徴とくちょう”. 2021ねん1がつ2にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]