XScale

XScale（エックススケール）は、インテルが実装じっそうした第だい五ご世代せだいARMアーキテクチャのRISC マイクロプロセッサであり、v5TE ISAに基もとづいている。

これは、DECのStrongARM マイクロプロセッサおよびマイクロコントローラの後継こうけいであり、StrongARMはDECとの訴訟そしょう問題もんだいの和解わかい案あんとしてDECの半導体はんどうたい部門ぶもんから購入こうにゅうした経緯けいいがある。インテルはStrongARMを同社どうしゃの古ふるくなったRISCプロセッサ(i860、i960)の後継こうけいとして使用しようした。

2006年ねん 6月27日にちのプレスリリースでインテルはマーベル・テクノロジー・グループ（マーベル）にXScaleおよびその周辺しゅうへんチップ事業じぎょうを6億おくドルで譲渡じょうとする事ことを発表はっぴょうした。

アーキテクチャ

全すべてのXScaleプロセッサは、32ビットARM v5TEアーキテクチャであり、32Kバイトのデータキャッシュと32Kバイトの命令めいれいキャッシュを装備そうびしている。これ以外いがいに2Kバイトのミニデータキャッシュも装備そうびしている。第だい1世代せだい、第だい2世代せだいのプロセッサ・コアまでは0.18μみゅーmプロセスで製造せいぞうされ、第だい3世代せだいのプロセッサ・コアは90nmプロセスに変更へんこうされた。

2006年ねん11月にインテルはすべてのPXAプロセッサ事業じぎょうをマーベルへ譲渡じょうとした。しかし、IXPネットワークプロセッサ事業じぎょうやIOPストレージプロセッサ事業じぎょうはそのまま保有ほゆうしているため、XScaleプロセッサ・コア技術ぎじゅつを有ゆうする製品せいひんがマーベルとインテル両方りょうほうから販売はんばいされているという変則へんそく的てきな状況じょうきょうが続つづいている。

ファミリ

インテル製せい

XScaleプロセッサにはいくつかのファミリが存在そんざいする。アプリケーションプロセッサ (PXA) と3G携帯けいたい電話でんわ向むけベースバンドプロセッサ (PXA)、I/Oプロセッサ (IOP)、ネットワークプロセッサ (IXP)、コントロール・プレーン・プロセッサ (IXC) である。その他たにスタンドアロンプロセッサとして80200と80219（PCIデバイス向むけ）がある。 2006年ねん11月にPXAプロセッサ事業じぎょうがマーベルへ譲渡ゆずりわたされた後のちは、マーベルからの販売はんばいサポートが継続けいぞくされている。

以下いかはXScaleアプリケーションプロセッサを列挙れっきょしたものである。

PXA210 (2002年ねん2月がつ)：エントリレベル向むけ、携帯けいたい電話でんわなどをターゲットとしている。動作どうさ周波数しゅうはすうは133MHzと200MHz。
PXA250 (2002年ねん2月がつ)：動作どうさ周波数しゅうはすうは 200MHz, 300MHz, 400MHz。
PXA255 (2003年ねん3月がつ)：バスクロックを倍ばいに強化きょうか(100MHz→200MHz)。低てい電圧でんあつ化か(400MHzで1.3V)。
PXA260 (2003年ねん3月がつ)：パッケージを53%小型こがた化か。
PXA261 (2003年ねん3月がつ)：16ビット StrataFlashメモリ 16Mバイト内蔵ないぞう
PXA262 (2003年ねん3月がつ)：16ビット StrataFlashメモリ 32Mバイト内蔵ないぞう
PXA263 (2003年ねん3月がつ)：32ビット StrataFlashメモリ 32Mバイト内蔵ないぞう
PXA270 (2004年ねん4月がつ)：動作どうさ周波数しゅうはすうは 312MHz, 416MHz, 520MHz, 624MHz
PXA271 (2004年ねん4月がつ)：動作どうさ周波数しゅうはすうは 312MHz, 416MHz。16ビット StrataFlashメモリ 32MB、16ビットSDRAM 32MB内蔵ないぞう
PXA272 (2004年ねん4月がつ)：動作どうさ周波数しゅうはすうは 312MHz, 416MHz, 520MHz。 32ビット StrataFlashメモリ 64MB内蔵ないぞう

インテルはPXA27xファミリにいくつかの新しん技術ぎじゅつを導入どうにゅうしている。

ワイヤレス・スピードステップ：負荷ふかに応おうじて自動的じどうてきにクロックを落おとして電力でんりょく消費しょうひを抑おさえる。
ワイヤレスMMX：43種しゅの新あたらしいSIMD命令めいれい(MMX 命令めいれいセットとSSE命令めいれいとXScale独自どくじ命令めいれい)を追加ついか。マルチメディアコンテンツのデコード、エンコードおよびゲームで使用しよう。
組くみ込こみ用ようグラフィックスコプロセッサ 2700G も同時どうじにリリース。

以下いかはXScaleI/Oプロセッサを列挙れっきょしたものである。

IOP321：PCI-X (64bit/133MHx)インターフェイス。最大さいだいで1GBのDDR200をサポート。動作どうさ周波数しゅうはすうは400と600MHz。
IOP310：PCI (64bit/66MHz)インターフェイス。最大さいだいで512MBのPC100をサポート。動作どうさ周波数しゅうはすうは 400MHzと600MHz。
IOP332：PCI-E to PCI-Xブリッジインターフェイス。最大さいだいで2GBのDDR333又または1GBまでのDDR400をサポート。動作どうさ周波数しゅうはすうは500MHzと667MHzと800MHz。
IOP331：PCI-X (64bit/133MHz)ブリッジインターフェイス。最大さいだいで2GBのDDR333又または1GBまでのDDR400をサポート。動作どうさ周波数しゅうはすうは500MHzと667MHzと800MHz。
IOP333：PCI-E to Dual PCI-Xブリッジインターフェイス。最大さいだいで2GBのDual-Ported DDR333又または1GBまでのDual-Ported DDR400をサポート。動作どうさ周波数しゅうはすうは500MHzと667MHzと800MHz。
IOC340：PCI-E to PCI-Xインターフェイス。最大さいだいで4GBのDDR2 400/533をサポート。動作どうさ周波数しゅうはすうは800MHzと1200MHz。
IOP341：PCI-E & PCI-Xインターフェイス。最大さいだいで4GBのDDR2 400/533をサポート。動作どうさ周波数しゅうはすうは800MHzと1200MHz。
IOP342：PCI-E & PCI-Xインターフェイス。最大さいだいで4GBのDDR2 400/533をサポート。動作どうさ周波数しゅうはすうは800MHzと1200MHz。
IOP348：PCI-E & PCI-Xインターフェイス。最大さいだいで4GBのDDR2 400/533をサポート。動作どうさ周波数しゅうはすうは667MHzと800MHzと1200MHz。

マーベル製せい

PXA3xxシリーズ

2005年ねん8月がつ、インテルは後継こうけいとなるMonahans（コード名めい）を発表はっぴょうした。新しん開発かいはつの第だい三さん世代せだいXScaleプロセッサ・コアを開発かいはつし、その上うえでSoCとしての周辺しゅうへん機能きのうやデータ・スループットを大幅おおはばに改善かいぜんした。当初とうしょはPXA29xシリーズとなる予定よていだったが、XScaleがマーベルに移うつった後のち、仕様しよう変更へんこうを経へて2006年ねん11月にPXA3xx (PXA300/PXA310/PXA320) シリーズとして改あらためて製品せいひん発表はっぴょうが行おこなわれた。動作どうさ周波数しゅうはすうは最大さいだい806MHz。性能せいのう向上こうじょうは例たとえば624MHz同士どうしで比較ひかくした場合ばあい、PXA270に比較ひかくして約やく25%だという。2005年ねん8月がつ時点じてんでは、2700Gの後継こうけいとなる組くみ込こみ用ようグラフィックスコプロセッサ（コード名めいStanwood）も発表はっぴょうしているが、2006年ねん11月のPXA300シリーズ発表はっぴょう時点じてんで発表はっぴょうはされなかった。（写真しゃしんはインテル時代じだいのPXA290試作しさく品ひんの物ものであり、PXA3xxシリーズとは異ことなる。）

PXA300シリーズに採用さいようされた第だい三さん世代せだいXScaleコアは、それまでのXScaleコアと同様どうようARM V5TE互換ごかんであることに変化へんかはない。しかし、性能せいのう向上こうじょうのための根本こんぽん的てきな改良かいりょうが加くわえられている。

PXA320では256KBのL2キャッシュが追加ついかされた。
内部ないぶのローカルバスの本数ほんすうを増ふやし、バススイッチという機能きのうでデータ転送てんそうの多重たじゅう化かを行おこなった。
ワイヤレスMMX系けいの命令めいれいセットを追加ついかした。（ワイヤレスMMX2）
PXA320では最高さいこう806MHz、PXA310/300でも最高さいこう624MHzを仕様しようとした。
DRAMとして、DDR-SDRAMを標準ひょうじゅん対応たいおうとした。
NANDコントローラを内蔵ないぞうし、システムブートをNANDからできるようにして、NORフラッシュメモリが不要ふようになった。（NORメモリ対応たいおう品ひんとNANDメモリ対応たいおう品ひんの2種類しゅるいが存在そんざいする。）

加くわえて、周辺しゅうへん機能きのうとしては、次つぎのような特長とくちょうがある。

PXA320ではVGA16ビットカラー対応たいおうのオンチップ・フレームメモリ(RAM)を内蔵ないぞう（LCDコントローラとしてはSVGA解像度かいぞうどまでを標準ひょうじゅんでサポート）
省しょう電力でんりょく機能きのうを強化きょうか、ワイヤレス・スピードステップ2となった。
LCDコントローラに2Dグラフィック・アクセラレーション機能きのうが追加ついかされた。
USB機能きのうが強化きょうか。デバイス機能きのう（クライアント）ではUSB2.0ハイスピード対応たいおうになった。（ホスト機能きのう・OTGは1.1フルスピードのまま）
クイックカメラ・キャプチャ機能きのうでは、PXA310の場合ばあい最大さいだい500万まん画素がそまで対応たいおうする
PXA310では、MPEG2/4,H.264,JPEGなどのコーデック機能きのうをハードウェアで内蔵ないぞうすることで、消費しょうひ電力でんりょくのピークを抑おさえるように考慮こうりょされている。

製品せいひんは以下いかの通とおり。

PXA300（2006年ねん11月）: エントリレベル向むけまたは低てい消費しょうひ電力でんりょく用途ようと向むけ。16ビット外部がいぶバス。208MHz/624MHz。
PXA310（2006年ねん11月）: 携帯けいたい電話でんわや情報じょうほう端末たんまつ向むけ。16ビット外部がいぶバス。マルチメディア拡張かくちょう機能きのう内蔵ないぞう。セキュリティ機能きのう搭載とうさい。624MHzのみ。
PXA320（2006年ねん11月）: ハイエンド機器きき向むけ。32ビット外部がいぶバス。L2キャッシュ搭載とうさい、624MHz/806MHz。

PXA1xxシリーズ

PXA168（2009年ねん 1月がつ）: 1GHzプロセッサ

使用しよう例れい

PXA2xxシリーズ： IT通信つうしん機器きき関連かんれんでは、国内外こくないがいの携帯けいたい電話でんわやスマートフォン、携帯けいたい情報じょうほう端末たんまつPDAなどで数多かずおおく使つかわれている。有名ゆうめいなところではウィルコムW-ZERO3シリーズ・Windows Mobile機きが知しられている。マルチメディア機器ききとしては、ポータブル・ビデオ・プレイヤーに使つかわれている。組くみ込こみ機器きき関連かんれんでは、プロセッサ名めいが公表こうひょうされないため情報じょうほうが少すくないが、マーベルのデモ展示てんじなどを参考さんこうにすると、ポータブル・ナビゲーション (PND) や、電子でんしPOP、ハンディ端はし末まつ（ハンディPOSなど）を始はじめ産業さんぎょう用よう組くみ込こみプロセッサとしても使用しようされているようである。変かわったところでは、近畿日本鉄道きんきにほんてつどうの運転うんてん支援しえん装置そうちとして電車でんしゃの運転うんてん台だいに設置せっちされた機器ききに搭載とうさいされ、列車れっしゃの運行うんこうを運転うんてん士しに知しらせる機器ききとして使用しようされている。

PXA3xxシリーズ: IT通信つうしん機器きき関連かんれんでは、発表はっぴょう後ご1年ねんを経へて国内外こくないがいのスマートフォンや携帯けいたい情報じょうほう端末たんまつ (PDA) への搭載とうさいが確認かくにんされている。組くみ込こみ機器ききについてはプロセッサ名めいが公表こうひょうされないため情報じょうほうが少すくないが、産業さんぎょう用よう組くみ込こみプロセッサとしても既すでに使用しようされているようである。
IXP4xxシリーズ: プロセッサ名めいが公表こうひょうされることが少すくないため情報じょうほうが少すくないが、国内外こくないがいのブロードバンドルータに搭載とうさいされている。

また、IyonixというデスクトップコンピュータのCPUとしても使用しようされている。XScale IOP33xストレージI/OプロセッサはXeonベースのサーバで使つかわれている。

外部がいぶリンク