「初夏しょかの新派しんぱ祭さい」出演しゅつえん者しゃが仲良なかよしトーク、波なみ乃久里子さとごと渡辺わたなべえりは“推おし”を明あかす

「初夏しょかの新派しんぱ祭さい」の取材しゅざい会かいが本日ほんじつ5月がつ15日にちに東京とうきょう都内とないで行おこなわれ、波なみ乃久里子さとご、渡辺わたなべえり、喜多村きたむら緑郎ろくろう、河合かわい雪ゆき之の丞すすむ、瀬戸せと摩ま純じゅんが出席しゅっせきした。

本ほん公演こうえんでは久保田くぼた万太郎まんたろう作さくの「螢ぼたる」と、川口かわぐち松太郎まつたろう作さくの「お江戸えどみやげ」を上演じょうえん。「螢ぼたる」では浅草あさくさ鳥越とりごえを舞台ぶたいに、酒さけに溺おぼれる錺職人じん・鈴木すずき重一しげかず（緑郎ろくろう）と、そのかつての女房にょうぼうとき（雪ゆき之の丞すすむ）、現げん女房にょうぼうのよし子こ（瀬戸せと）らの葛藤かっとうが描えがかれる。また「お江戸えどみやげ」では、呉服ごふくの行商ぎょうしょうに来きていた、大だいらかな性格せいかくのおゆう（久ひさ里子さとご）と倹約けんやく家かのお辻つじ（渡辺わたなべ）が、江戸えどの土産みやげ話ばなしにと阪ばん東栄とうえい紫むらさき（緑郎ろくろう）らの芝居しばいを見物けんぶつをしたことから始はじまる人情にんじょう物語ものがたりが展開てんかいする。

「螢ぼたる」の重一しげかずが念願ねんがんだったという緑郎ろくろうは「出演しゅつえんできることは青天せいてんの霹靂へきれき」と言いい、「映像えいぞうで大矢おおや市次郎いちじろう先生せんせいの重一しげかずを観みたら素晴すばらしかった。近付ちかづけるとは思おもいませんが、とにかく魂たましいだけは絶対ぜったい負まけないように演えんじたい」と意気込いきごむ。渡辺わたなべとの稽古けいこについて緑郎ろくろうは「稽古けいこ初日しょにちだけでチケット代だいを1万まん5000円えん取とれそうなほど素晴すばらしかった。毎日まいにち感動かんどうしているし、本番ほんばんが楽たのしみです」と期待きたいを口くちにした。

両りょう作品さくひんに出演しゅつえんする雪ゆき之の丞すすむは「螢ぼたる」については「昭和しょうわ初期しょきの庶民しょみんの話はなし方かたや服装ふくそう、使つかっていた道具どうぐなどがよく表現ひょうげんされている。新派しんぱには“目めで見みる歴史れきしの教科書きょうかしょ”という側面そくめんがあると思おもうので、当時とうじの雰囲気ふんいきを大切たいせつに作つくっていきたいです」と語かたる。また「お江戸えどみやげ」については「お稽古けいこでも本番ほんばんでも、えりさんのお芝居しばいを観みられるのが楽たのしみ。一緒いっしょに出でる場面ばめんで笑わらわないように気きを付つけます」と笑わらい交まじりに話はなす。

「螢ぼたる」でよし子役こやくを担になう瀬戸せとは「久保田くぼた万太郎まんたろう先生せんせいならではの間あいだが多おおく、よし子こにはほとんどセリフがありません。沈黙ちんもくの芝居しばいが多おおいですが、彼女かのじょの心しんには言葉ことばがあふれている。難役なんやくですが、当時とうじの下町したまちの風情ふぜいや雰囲気ふんいき、人情にんじょうを表現ひょうげんし、お客様きゃくさまに何なにかを感かんじて帰かえっていただけたら」と言葉ことばに力ちからを込こめた。

「お江戸えどみやげ」で共演きょうえんする渡辺わたなべと久ひさ里子さとごは、久ひさ里子さとごの弟おとうとである故こ・十じゅう八はち代目だいめ中村なかむら勘三郎かんざぶろうの紹介しょうかいをきっかけに出会であい、長年ながねん交流こうりゅうしてきた。久ひさ里子さとごは「父ちちが演えんじるお辻つじの写真しゃしんをえりさんに見みせたら、涙なみだぐんで『こういうお辻つじをやりたい』と言いってくれた」とエピソードを紹介しょうかいし、「えりさんは本当ほんとうに良よいお友達ともだち。台本だいほんの読よみ合あわせから笑わらいっぱなしで、緑郎ろくろうさんも雪ゆき之の丞すすむさんも肩かたを震ふるわせていました。それに私わたしは舞台ぶたいを70年ねん以上いじょうやっていますが、どうしても型かたが身体しんたいに入はいっているからパターン化かしてしまうことがある。でも、えりさんが稽古けいこ場じょうで投なげかける質問しつもん1つひとつで目めからうろこが落おちています。70年ねんともなると私わたしも稽古けいこが面倒めんどうなときがあるけど（笑）、今いまは本当ほんとうに稽古けいこが楽たのしい」と渡辺わたなべに笑顔えがおを向むけた。

歌舞伎かぶきの演目えんもくでもある「お江戸えどみやげ」に挑戦ちょうせんすることについて、渡辺わたなべは「お辻つじは勘三郎かんざぶろうさんのお父とうさん（故こ・十じゅう七なな代目だいめ中村なかむら勘三郎かんざぶろう）に当あて書がきされた役やく。お父とうさんは生前せいぜん『理屈りくつっぽく考かんがえちゃダメ』とよく話はなしていたので、理屈りくつでなく気持きもちで演えんじたい」と述のべる。

記者きしゃから「稽古けいこ場じょうでは演出えんしゅつ家かとどんなやり取とりをしているのか」と尋たずねられると、渡辺わたなべはそろばんや矢立やたての使つかい方かた、行商ぎょうしょうのお辻つじが扱あつかう着物きものの産地さんちや色味いろみ、当時とうじの人々ひとびとの所作しょさなどを知しろうと、演出えんしゅつ家かに逐一ちくいち尋たずねていることを明あかす。またお辻つじを演えんじるうえで渡辺わたなべは、“推おし”を応援おうえんする現代げんだいのファンたちの姿すがたも重かさねていると言いい、「お辻つじは栄さかえ紫むらさきが本当ほんとうに好すきなのに、自分じぶんは身みを引ひいて彼かれの幸しあわせのために大金たいきんを渡わたすのが切せつない。普通ふつう“推おし”にはめったに会あえないけど、お辻つじは会あえちゃったうえに、さっきまで彼かれが着きていた小袖こそでももらってしまう。ここを大事だいじに演えんじたい」と熱弁ねつべんを振ふるって共演きょうえん者しゃたちを笑わらわせつつ、「でもお辻つじのその姿すがたを演えんじるための細こまかいことがまだまだわからない。決きまりごとを短期間たんきかんで身みに付つける必要ひつようがあるので、地獄じごくです（笑）」と率直そっちょくに胸むねの内うちを語かたった。

取材しゅざい会かいは終始しゅうし、笑わらいに包つつまれて進行しんこう。「お金かねを払はらっても良よいと思おもえる“推おし”はいるか」と質問しつもんされると、渡辺わたなべは「やっぱりジュリー（沢田さわだ研二けんじ）ね。それからカザフスタンの歌手かしゅのディマシュ・クダイベルゲンと、平野ひらの紫むらさき耀」と即座そくざに答こたえる。初はじめは「いない」と言いっていた久ひさ里子さとごだが、渡辺わたなべに「お辻つじの気持きもちになってみて。困こまっていたら助たすけたい人ひとです！」と促うながされると「小栗おぐり旬しゅんかな。あと高橋たかはし一生かずお」と回答かいとう。これを聞きいた緑郎ろくろうが「いるじゃないですか!!」とツッコミを入いれ、会見かいけん場じょうにはひと際ぎわ大おおきな笑わらいが起おきた。

公演こうえんは6月がつ1日にちから23日にちまで東京とうきょう・三越みつこし劇場げきじょうで行おこなわれる。