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このコラムは隔週で締め切りがやってくる。テーマがすんなり決まることもあるが、どちらかといえば何を書こうか直前まで悩むことが多い。
最近は「プログラムコードを生成できるAI(人工知能)の登場で、プログラマーは必要なくなるのではないか」という話題をよく取り上げている気がする。ただ、同じような論調ばかりでは読者も飽きてしまうだろう。AIを取り上げるにしても、何か別の視点で書けないだろうか。
そんなことを考えていたとき、あるプレスリリースが目に留まった。「AI社長」の正式リリースだという。反射的に「犬や猫を社長や店長に抜てきして話題づくりをするように、AIを社長に見立てて目立とうとしているだけではないか」と思った。
しかしプレスリリースの内容を読んでみると、意外に真面目なサービスのようだ。AIを利用して社長の分身をつくるサービスだという。たしかに中小企業の社長が「忙しすぎて自分の分身が欲しい」と言っているという話はよく聞く。ニーズがありそうだし、AIの有効な活用法かもしれない。そう思い、このサービスの提供企業であるTHAを取材してきた。
既に6社の中小企業が導入済み
THAの西山朝子社長は、新卒で大手人材企業に就職。マーケティングやWebサイト改善などITに関連する業務を手掛けた。そうしたITのスキルをさらに高めたいと2019年にDeNAに転職した。DeNAでは副業が認められているため、様々な中小企業のWebサイト作成や広告運用を個人事業主として手伝っていた。
そんなとき対話型AI「ChatGPT」に出会って衝撃を受けた。早速、中小企業にも勧めてみたが、反応がよくない。多くの中小企業は独自の価値観や技術といったその企業だけが持つ強みで勝負している。一方、ChatGPTで得られるのは平均的な模範解答だ。そのままでは強みを生かせない。また、中小企業ではデスクワークよりも現場に行ってスマートフォンでやり取りするといった働き方が多いため、ChatGPTによる業務効率化はあまりなじまない。
「中小企業のコアはやっぱり社長」(西山社長)。そこで思いついたのが、社長の知識を実装したAIサービスの提供だ。社内のコミュニケーションに利用されているLINEやChatworkなどのツールに仮想的な社長をチャットボットとして実装すれば、社員が自然にAIを利用できる。