足利あしかが家か氏し

凡例はんれい 足利あしかが 家か氏し
時代じだい	鎌倉かまくら時代ときよ中期ちゅうき
生誕せいたん	不明ふめい
死没しぼつ	不明ふめい
改名かいめい	家いえ氏し→蓮はちす阿おもね
別名べつめい	通称つうしょう：三郎さぶろう→太郎たろう 足利あしかが判官ほうがん大夫たいふ・足利あしかが尾張おわり入道にゅうどう
官位かんい	従したがえ五ご位い下か・中務なかつかさ大輔だいすけ・検非違使けびいし 左衛門さえもん大尉たいい・尾張おわり守もり
幕府ばくふ	鎌倉かまくら幕府ばくふ
主君しゅくん	藤原ふじわら頼よりゆき経けい→頼よりゆき嗣→宗尊親王むねかたしんのう
氏族しぞく	足利あしかが氏し・斯波しば氏し
父母ちちはは	父ちち：足利あしかが泰やすし氏し、母はは：名越なごし朝あさ時ときの娘むすめ
兄弟きょうだい	家いえ氏し・兼けん氏し（義ぎ顕あらわ）・頼よりゆき氏し・公おおやけ深ふか他た
妻つま	正室せいしつ：阿蘇あそ為ため時じの娘むすめ
子こ	義利よしとし・貞さだ数すう・宗家そうけ

足利あしかが 家か氏し（あしかが いえうじ、生なま没年ぼつねん不明ふめい）は、鎌倉かまくら時代ときよ中期ちゅうきの御家人ごけにん。足利あしかが泰やすし氏しの長男ちょうなんで、足利あしかが尾張おわり家か（足利あしかが尾張おわり守もり家か）の初代しょだい。子こに義利よしとし・貞さだ数すう・宗家そうけ。子孫しそんは斯波しば氏し・大崎おおさき氏し・最上もがみ氏し・石橋いしばし氏しなど。弟おとうとに兼けん氏し（義ぎ顕あらわ・渋川しぶかわ氏し祖そ）・頼よりゆき氏し（足利あしかが5代だい当主とうしゅ）・公おおやけ深ふか（一色いっしき氏し祖そ）・頼よりゆき茂しげる（石塔せきとう氏し祖そ）・義ぎ弁べん（上野うえの氏し祖そ）・賢けん宝たから（小俣おまた氏し祖そ）、基氏もとうじ（加古かこ氏しの祖そ）等ひとし多数たすう。

生涯しょうがい

鎌倉かまくら幕府ばくふの有力ゆうりょく御家人ごけにん足利あしかが泰やすし氏しと北条ほうじょう（名越なごし）朝あさ時ときの娘むすめの間あいだに長男ちょうなんとして生うまれる。寛ひろし元もと3年ねん（1245年ねん）の鶴岡つるおか八幡宮はちまんぐう放生会ほうじょうえにおける将軍しょうぐん近侍きんじ（供奉ぐぶ人中ひとなか後陣ごじん随ずい兵へいの筆頭ひっとう）に任にんじられた足利あしかが三郎さぶろう家か氏しの記載きさいを初はつ見みとして以降いこう『吾妻あづま鏡きょう』にその活動かつどうを見みせ始はじめる。

母ははは名越なごし流りゅう北条ほうじょう氏しの出身しゅっしんで、家いえ氏しの誕生たんじょう時じには泰やすし氏しの正室せいしつであった。「三郎さぶろう」は足利あしかが氏し代々だいだいの家督かとく継承けいしょう者しゃの称しょうと考かんがえられ、家いえ氏しも当初とうしょは嫡子ちゃくしとして「三郎さぶろう」を名乗なのったが、のちに泰やすし氏しが北条ほうじょう得とく宗家そうけの女性じょせい（北条ほうじょう時じ氏しの娘むすめ）を正室せいしつに迎むかえ、その間あいだに生うまれた利とし氏し（のち頼よりゆき氏し）を嫡子ちゃくしに立たて家か氏しを廃嫡はいちゃくしたものと思おもわれる。『吾妻あづま鏡きょう』における建けん長ちょう4年ねん（1252年ねん）の段階だんかいで｢三さん郎ろう｣を称しょうする人物じんぶつが利とし氏しに変かわり、家いえ氏しの通称つうしょうが「大だい郎ろう（太郎たろう）」となっていることがその根拠こんきょとされる。

もっとも時とき氏しの子こ北条ほうじょう時じ定じょう（阿蘇あそ為ため時じ）の娘むすめを正室せいしつに迎むかえたこともあり、建けん長ちょう5年ねん（1253年ねん）に中務なかつかさ大輔だいすけに任官にんかんしたのをはじめ、弘ひろ長ちょう元年がんねん（1261年ねん）には検非違使けびいし・左衛門さえもん大尉たいいに任官にんかんするなど重用じゅうようされ、足利あしかが判官ほうがん大夫たいふと称しょうされた。その後ごもたびたび将軍しょうぐんの供奉ぐぶ人じんを務つとめるなどしており、弘ひろ長ちょう3年ねん（1263年ねん）1月がつには旬しゅん御ご鞠きく奉行ぶぎょう（蹴鞠けまり儀式ぎしき担当たんとう）、同年どうねん8月がつに定さだめられた将軍しょうぐん上洛じょうらくの供奉ぐぶ人じんでは、水干すいかん着用ちゃくようの御家人ごけにん中ちゅう、連署れんしょ北条ほうじょう政まさし村むら、執権しっけん赤橋あかばし長ちょう時じ、大仏だいぶつ朝あさ直じき、名越なごし時じ章あきら（朝あさ時じの子こで家いえ氏しの伯父おじ）、金沢かなざわ実みのる時ときの北条ほうじょう一門いちもん重鎮じゅうちんの5名めいに次つぎ、普恩寺ふおんじ業ぎょう時じ（極楽寺ごくらくじ流りゅう北条ほうじょう氏し）の前まえに記載きさいされるような有力ゆうりょく御家人ごけにんになっている。

以後いごの動向どうこうは『吾妻あづま鏡きょう』の記述きじゅつが途切とぎれてしまうこともあり不明ふめいな点てんが多おおいが、足利あしかが本家ほんけを相続そうぞくした弟おとうとの頼よりゆき氏しが早はやくに死去しきょし、その跡あとを継ついだ家時いえときが幼少ようしょうであったため、かつて嫡男ちゃくなんであった家いえ氏しは一門いちもんの重鎮じゅうちんとしてその後見こうけん役やくを務つとめ、文ぶん永ひさし6年ねん（1269年ねん）頃ごろまで当主とうしゅの職務しょくむを代行だいこうするなど、事実じじつ上じょうの惣領そうりょうであったともいえる。その間あいだ文ぶん永なが2年ねん（1265年ねん）4月がつには尾張おわり守もりとなり、晩年ばんねんに出家しゅっけして蓮はちす阿おもねと号ごうしたとされる。

斯波しば氏しの祖そ

家いえ氏しの母はは・正室せいしつの血筋ちすじ、また経歴けいれき・幕府ばくふ内ないの地位ちいなどから、その子孫しそんは「足利あしかがの苗字みょうじを称しょうする別家べっけ」として足利あしかが一門いちもん諸家しょかの中なかでも特とくに本家ほんけに並ならぶ家格かかく意識いしきを持もち続つづけた。 家いえ氏しは陸奥みちのく国こく斯波しば郡ぐん（紫波しわ郡ぐん、しわぐん）を領りょうし（家いえ氏しが実際じっさいに斯波しば郡ぐん高水寺こうすいじ城じょうに在ざい城しろしたという伝承でんしょうもある）、後世こうせい斯波しば家か氏しと呼よばれることが多おおいが、家いえ氏し自身じしんは足利あしかが姓せいを通とおし続つづけた。室町むろまち時代ときよ初期しょきの子孫しそんである高経たかつね・義ぎ将しょう親子おやこの頃ころまでは代々だいだい足利あしかがを名乗なのり尾張おわり守もりに任官にんかんしたことから足利あしかが尾張おわり守もりと呼よばれたが、のちには本家ほんけである足利あしかが将軍家しょうぐんけの執事しつじ・管領かんりょうに就ついて斯波しば氏しを称しょうし、室町むろまち幕府ばくふの有力ゆうりょく守護しゅご大名だいみょうとして続つづいた。

子女しじょ

母はは：家いえ女房にょうぼう

• 広沢ひろさわ義利よしとし …… 広沢ひろさわ太郎たろう。石橋いしばし氏しの祖そ。

母はは：保科ほしな氏し

• 大板おおいた貞さだ数すう …… 大板おおいた次じ郎ろう。

母はは：阿蘇あそ為ため時じ女おんな

• 足利あしかが宗家そうけ…… 尾張おわり三郎さぶろう。足利あしかが尾張おわり家か第だい2代だい当主とうしゅ。

官かん歴れき

• 建けん長ちょう5年ねん（1253年ねん）中務なかつかさ大輔だいすけ
• 弘ひろ長ちょう元年がんねん（1261年ねん）検非違使けびいし・左衛門さえもん大尉たいい
• 文ぶん永ひさし2年ねん（1265年ねん）尾張おわり守もり

参考さんこう文献ぶんけん

• 小川おがわ信しん『足利あしかが一門いちもん守護しゅご発展はってん史しの研究けんきゅう』吉川弘文館よしかわこうぶんかん、1980年ねん。 
• 今谷いまたに明あきら; 藤枝ふじえだ文忠ふみただ 編へん『室町むろまち幕府ばくふ守護しゅご職しょく家か事典じてん』 下した、新人物往来社しんじんぶつおうらいしゃ、1988年ねん。 
• 七宮ななみや涬三『陸奥みちのく・出羽でわ斯波しば・最上もがみ一族いちぞく』新人物往来社しんじんぶつおうらいしゃ、2005年ねん。 
• 『歴史れきしと旅たび　増刊ぞうかん「守護しゅご大名だいみょうと戦国せんごく大名だいみょう」』 秋田あきた書店しょてん、1997年ねん。
• 安田やすだ元久もとひさ 編へん『鎌倉かまくら・室町むろまち人名じんめい事典じてん』（コンパクト）新人物往来社しんじんぶつおうらいしゃ、1990年ねん。 
• 田中たなか大喜だいぎ 編へん『下野しもの足利あしかが氏し』戎えびす光ひかり祥さち出版しゅっぱん〈シリーズ・中世ちゅうせい関東かんとう武士ぶしの研究けんきゅう 第だい九きゅう巻かん〉、2013年ねん。ISBN 978-4-86403-070-0。 
• 山野やまの龍太郎りゅうたろう 著ちょ「鎌倉かまくら期き武士ぶし社会しゃかいにおける烏帽子えぼし親子おやこ関係かんけい」、山本やまもと隆志たかし 編へん『日本にっぽん中世ちゅうせい政治せいじ文化ぶんか論ろんの射程しゃてい』思文閣出版しぶんかくしゅっぱん、2012年ねん。ISBN 978-4-7842-1620-8。 
• 紺戸こんと淳あつし「武家ぶけ社会しゃかいにおける加冠かかんと一いち字じ付与ふよの政治せいじ性せいについて」『中央ちゅうおう史学しがく』2号ごう、1979年ねん。