ナミチスイコウモリ (並 なみ 血 ち 吸蝙蝠 かわほり 、Desmodus rotundus )は、チスイコウモリ科 か (ヘラコウモリ科 か に含 ふく めて、チスイコウモリ亜 あ 科 か とする説 せつ もあり)チスイコウモリ属 ぞく に分類 ぶんるい されるコウモリ 。本 ほん 種 しゅ のみでチスイコウモリ属 ぞく を形成 けいせい する。
チスイコウモリ属 ぞく はチスイコウモリ科 か の模 も 式 しき 属 ぞく 。俗 ぞく に「吸血 きゅうけつ 蝙蝠 かわほり 」とも呼 よ ばれる。
体長 たいちょう 7-9cm。体重 たいじゅう 15-50g。背面 はいめん の体毛 たいもう は褐色 かっしょく 、腹 はら 面 めん の体毛 たいもう は白 しろ い。
頭部 とうぶ
鼻 はな は大 おお きく反 そ りあがり、獲物 えもの が出 だ す赤外線 せきがいせん (熱 ねつ )を感知 かんち していると考 かんが えられている。これにより獲物 えもの を探 さが し、また獲物 えもの に取 と り付 つ いたあと、皮膚 ひふ 下 か の暖 あたた かい血 ち の流 なが れる血管 けっかん を探 さぐ る[2] 。歯 は 列 れつ は門歯 もんし が上顎 じょうがく 2本 ほん 、下 しも 顎 あご 4本 ほん 、犬歯 けんし が上下 じょうげ 2本 ほん ずつ、小 しょう 臼歯 きゅうし が上顎 じょうがく 2本 ほん 、下 しも 顎 あご 4本 ほん 、大 だい 臼歯 きゅうし が上顎 じょうがく 2本 ほん 、下 しも 顎 あご 4本 ほん の計 けい 22本 ほん の歯 は を持 も つ。上顎 じょうがく の門歯 もんし や犬歯 けんし は剃刀 かみそり 状 じょう で、獲物 えもの の皮膚 ひふ を切 き り裂 さ くのに適 てき している。また切 き れ味 あじ が鋭 するど いことや、寝 ね ている時 とき に噛 か まれることが多 おお いため噛 か まれた獲物 えもの が痛 いた みを感 かん じることは少 すく ない。そして犬 いぬ のように傷口 きずぐち を舐 な めて流 なが れて落 お ちてきた血 ち を飲 の む。さらに唾液 だえき には血液 けつえき の凝固 ぎょうこ 作用 さよう を妨 さまた げる物質 ぶっしつ が含 ふく まれているため、獲物 えもの の血液 けつえき が固 かた まらず摂取 せっしゅ を続 つづ けることができる。
親指 おやゆび は長 なが く、後肢 あとあし も力強 ちからづよ い。そのため、コウモリとしては例外 れいがい 的 てき に歩行 ほこう が得意 とくい であり、獲物 えもの に接近 せっきん する時 とき や血 ち を吸 す ったあとなどは地上 ちじょう を移動 いどう することが多 おお い[3] 。
頭部 とうぶ の骨格 こっかく
翼 つばさ
歩行 ほこう の様子 ようす
木 き にぶら下 さ がる群 む れ
血液 けつえき を摂取 せっしゅ するナミチスイコウモリ
森林 しんりん に生息 せいそく する。夜行 やこう 性 せい で、昼間 ひるま は洞穴 どうけつ や樹 き 洞 ほら の中 なか で小規模 しょうきぼ な集団 しゅうだん でぶら下 さ がり眠 ねむ る。社会 しゃかい 性 せい が発達 はったつ しており、通常 つうじょう 100匹 ひき 、時 とき として1,000匹 ひき にも及 およ ぶ大 だい 規模 きぼ な群 む れを形成 けいせい することもある[2] 。
食 しょく 性 せい は動物 どうぶつ 食 しょく で、鳥類 ちょうるい や哺乳類 ほにゅうるい 、おもに家畜 かちく (ウシ、ウマ、ブタ等 とう )の血液 けつえき を吸 す う。コウモリ目 め では本 ほん 種 しゅ のみが哺乳類 ほにゅうるい の血液 けつえき も摂取 せっしゅ する。眠 ねむ っている獲物 えもの の近 ちか くで着地 ちゃくち 後 ご 歩 ある いて忍 しの び寄 よ り、鋭 するど い歯 は で獲物 えもの の体毛 たいもう がない部分 ぶぶん に噛 か みついたあと、傷口 きずぐち に舌 した を高速 こうそく で出 だ し入 い れして血液 けつえき を摂取 せっしゅ する。30分 ふん ほどの間 あいだ に、自分 じぶん の体重 たいじゅう の40%もの血液 けつえき を摂取 せっしゅ することができる。本 ほん 種 しゅ は小型 こがた のため血液 けつえき を摂取 せっしゅ したあとは血液 けつえき の重量 じゅうりょう や消化 しょうか のために飛行 ひこう することができなくなり、地面 じめん を飛 と び跳 は ねるようにして移動 いどう する。その後 ご 、水分 すいぶん を大量 たいりょう に摂取 せっしゅ し排泄 はいせつ を行 おこな う。糞 くそ は血液 けつえき のみを摂取 せっしゅ するためか黒 くろ く粘着 ねんちゃく 質 しつ で臭 くさ い。
また、同 おな じねぐらに血液 けつえき を摂取 せっしゅ できなかった個体 こたい がいる場合 ばあい 、他 た の個体 こたい が口移 くちうつ しで血液 けつえき を分 わ け与 あた える。
野生 やせい での寿命 じゅみょう は約 やく 9年 ねん [2] 。繁殖 はんしょく 形態 けいたい は胎生 たいせい で、1度 ど に1頭 とう の幼 よう 獣 じゅう を年 とし 2回 かい 出産 しゅっさん する。
飢餓 きが 状態 じょうたい の仲間 なかま に対 たい して血 っけつ を分 わ け与 あた える「利他 りた 行為 こうい 」の習性 しゅうせい をもつことで知 し られる。過去 かこ にグルーミングをしたことのある仲 なか の良 よ い個体 こたい 間 あいだ などでまれに確認 かくにん されている。また、別 べつ 個体 こたい の子供 こども に乳 ちち を分 わ け与 あた える現象 げんしょう も確認 かくにん されており、種族 しゅぞく における社会 しゃかい 性 せい の高 たか さに研究 けんきゅう の焦点 しょうてん が集 あつ まっている。
吸血鬼 きゅうけつき とよく関連付 かんれんづ けられ、英名 えいめい も「vampire bat」だが、一般 いっぱん 的 てき に知 し られる吸血鬼 きゅうけつき 伝承 でんしょう は東 ひがし ヨーロッパ由来 ゆらい に対 たい し、本 ほん 種 しゅ は南北 なんぼく アメリカ大陸 あめりかたいりく に分布 ぶんぷ する。
『吸血鬼 きゅうけつき ドラキュラ 』でも、原作 げんさく 小説 しょうせつ 中 ちゅう にはドラキュラ伯爵 はくしゃく がコウモリに変身 へんしん できる説明 せつめい と、野生 やせい 動物 どうぶつ としての吸血 きゅうけつ 蝙蝠 かわほり についての説明 せつめい はあるが、伯爵 はくしゃく 自身 じしん がコウモリ形態 けいたい で人 ひと を襲 おそ う描写 びょうしゃ ・説明 せつめい はなく、後者 こうしゃ は「アメリカのパンパス に生息 せいそく し、馬 うま や牛 うし を襲 おそ い衰弱 すいじゃく させる『吸血鬼 きゅうけつき (ヴァンパイア)』と呼 よ ばれる大 おお きいコウモリ」や「大西洋 たいせいよう 諸島 しょとう で昼間 ひるま は木 き にぶら下 さ がっているが、夜 よる になると活動 かつどう を始 はじ めて甲板 かんぱん で寝 ね ている船員 せんいん などを襲 おそ い殺 ころ すこともある巨大 きょだい なコウモリ。」と言 い ったあくまでそういう生 い き物 もの もいるという説明 せつめい になっている[4] 。
本 ほん 種 しゅ は人間 にんげん の血液 けつえき も吸 す うことがあるが、外界 がいかい から遮断 しゃだん された人家 じんか に侵入 しんにゅう することは困難 こんなん であることなどから、人 ひと を襲 おそ うことはまれである。獲物 えもの を死 し に至 いた らしめるほどの大量 たいりょう の血液 けつえき を吸 す うわけではないが、家畜 かちく を複 ふく 数 すう 匹 ひき で襲 おそ って衰弱 すいじゃく させることに加 くわ え、咬 か み傷 きず から狂犬病 きょうけんびょう などのウイルスや伝染 でんせん 病 びょう を媒介 ばいかい することもあるため、害 がい 獣 じゅう とされる[2] 。