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パナマ侵攻 - Wikipedia

パナマ侵攻しんこう(パナマしんこう、英語えいご: Invasion of Panama)は、東西とうざい冷戦れいせん時代じだい末期まっき1989ねんから1990ねんにかけてアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくパナマ共和きょうわこくあいだ勃発ぼっぱつした戦争せんそうである[3]軍事ぐんじてきには当時とうじのパナマの事実じじつじょう指導しどうしゃマヌエル・ノリエガ司令しれいかん独裁どくさい政治せいじおこなっていることや、同国どうこくがアメリカにたいして麻薬まやく密輸みつゆしているひとし理由りゆうかかげてアメリカぐんがパナマに軍事ぐんじ侵攻しんこうしたことはじまり、結果けっかてきにはアメリカがわ勝利しょうりわりパナマがわ降伏ごうぶくしノリエガが逮捕たいほされたこと終結しゅうけつした[2]。しかし、他国たこく政府せいふ軍事ぐんじりょく一方いっぽうてき崩壊ほうかいさせる行為こうい国際こくさいほう違反いはんしており、そのことたいしてアメリカを批判ひはんする意見いけん根強ねづよ[3]

べいぐんのパナマ侵攻しんこう

うえからじゅん時計とけいまわりにアメリカぐん装甲車そうこうしゃ破壊はかいされたパナマぐん建物たてもの、パナマぐん軍事ぐんじ基地きち、パナマの食堂しょくどうまえ休憩きゅうけいするアメリカへい、アメリカぐん攻撃こうげき炎上えんじょうするパナマまち
戦争せんそうべいぐんのパナマ侵攻しんこう[1]
年月日ねんがっぴ1989ねん12月20にち1990ねん1がつ[1]
場所ばしょ:パナマ[1]
結果けっか:アメリカがわ勝利しょうり。パナマがわ降伏ごうぶく指導しどうしゃ逮捕たいほ[1]
交戦こうせん勢力せいりょく
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく パナマの旗 パナマ
指導しどうしゃ指揮しきかん
アメリカ合衆国の旗 ジョージ・H・W・ブッシュ
アメリカ合衆国の旗 ディック・チェイニー
アメリカ合衆国の旗 ノーマン・シュワルツコフ
パナマの旗 マヌエル・ノリエガ
戦力せんりょく
駐屯ちゅうとんぐん13,000にん
本土ほんど部隊ぶたい9,500にん[2]
国防こくぼうぐん15,400にん[2]
損害そんがい
23にん戦死せんし[3] 400にん~2,000にん戦死せんし犠牲ぎせい[3]
冷戦れいせん

ノリエガ体制たいせい

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ぐん最高さいこう司令しれいかんマヌエル・ノリエガ1983ねん以来いらい、パナマにおける事実じじつじょう最高さいこう権力けんりょくしゃとなっていた。しかしノリエガ体制たいせいのパナマは民主みんしゅてき政治せいじ体制たいせい原因げんいん中南米ちゅうなんべいなかでも孤立こりつしていただけでなく、中南米ちゅうなんべいにおける麻薬まやくルートの温床おんしょうとなっているとされていた。

ノリエガは冷戦れいせんした1966ねんから中央ちゅうおう情報じょうほうきょく(CIA)のためにはたらいていたこともあきらかになっている[4]。ノリエガはジョージ・H・W・ブッシュがCIA長官ちょうかん時代じだいにその手先てさきとなり、キューバフィデル・カストロ政権せいけんニカラグアサンディニスタ民族みんぞく解放かいほう戦線せんせん政権せいけんなど、中南米ちゅうなんべいカリブ海かりぶかい左派さは政権せいけん攪乱かくらん協力きょうりょくしていた。アメリカの麻薬まやく対策たいさくにも協力きょうりょくしているとかんがえられており、1978ねんから1987ねんまではアメリカの麻薬まやく取締とりしまりきょく(DEA)から毎年まいとし感謝かんしゃじょうおくられていた[5]

麻薬まやく戦争せんそうはんノリエガ運動うんどう

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ところが1986ねん税関ぜいかん主導しゅどうによっておこなわれた「Cチェイス作戦さくせん」(Operation C-Chase)により(映画えいが潜入せんにゅうしゃ」でもえがかれた)、ノリエガがアメリカへの麻薬まやく輸出ゆしゅつならびにマネーロンダリング関与かんよしているといううたがいが浮上ふじょうしてきた。さらに1987ねん6がつには1981ねんオマル・トリホス暗殺あんさつにノリエガが関与かんよしたという疑惑ぎわくがり、はんノリエガがノリエガ排除はいじょうごすという事態じたいとなった[6]

1988ねん2がつにはエリック・アルトロ・デルバイエ英語えいごばんパナマ大統領だいとうりょうはアメリカの支援しえんけてノリエガ解任かいにん発表はっぴょうしたが、かえってノリエガ国会こっかい議員ぎいんによって解任かいにんされ、マヌエル・ソリス教育きょういくしょう大統領だいとうりょう代行だいこうとなった[6]。これをけて3がつにはクーデター未遂みすい事件じけん発生はっせいしている。また3がつにはマイアミ裁判所さいばんしょがノリエガを起訴きそ[6]ロナルド・レーガン大統領だいとうりょうは「パナマに民主みんしゅ主義しゅぎ建設けんせつされるまでは制裁せいさいつづける」とし、パナマの在米ざいべい資産しさん凍結とうけつパナマ運河うんが使用しようりょう支払しはら停止ていし発表はっぴょうした[6]

パナマはこれに対抗たいこうしてすべてのざいパナマ外国がいこく資産しさん凍結とうけつ発表はっぴょうしたが、これにより脆弱ぜいじゃくなパナマの経済けいざいシステムはだい混乱こんらんおちいり、産業さんぎょう稼働かどうりつが40パーセントにんだ[6]。アメリカは裏面りめんでノリエガの引退いんたいによって、訴追そつい免除めんじょするという司法しほう取引とりひきちかけたが、ノリエガはけなかった。またCIAの工作こうさくおこなわれたがノリエガの権力けんりょく影響えいきょうけなかった。このためレーガン政権せいけん末期まっき段階だんかいで「エラボレート・メイズ」作戦さくせんなど、パナマ侵攻しんこう作戦さくせん策定さくていされている[7]

1989ねん1がつだい41だいアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく大統領だいとうりょう就任しゅうにんしたジョージ・H・W・ブッシュは、麻薬まやく撲滅ぼくめつために「麻薬まやく戦争せんそう」とばれる麻薬まやく撲滅ぼくめつ政策せいさくかかげた。ノリエガは1989ねん5月におこなわれた大統領だいとうりょう選挙せんきょカルロス・ドゥケ英語えいごばん出馬しゅつばさせたが、当選とうせんしたのははんノリエガギジェルモ・エンダラ英語えいごばんであった。

しかしノリエガは、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく干渉かんしょうがあったとしてぐんげて選挙せんきょ無効むこう宣言せんげんし、フランシスコ・ロドリゲス英語えいごばん会計かいけい院長いんちょう大統領だいとうりょうとし、権力けんりょく保持ほじはかった。このうごきをけて、5月には暴動ぼうどう発生はっせいしただけでなく、9月30にちにはふたたびクーデター未遂みすい事件じけん発生はっせいした。12月15にち、ノリエガは議会ぎかいによって「最高さいこう政治せいじ指導しどうしゃ」としての地位ちい承認しょうにんさせ、独裁どくさい体制たいせい継続けいぞく誇示こじした[7]。またこのあいだ、ノリエガの「尊厳そんげん大隊だいたい」による反対はんたいへの暴行ぼうこう横行おうこうしていた。

ブッシュは5月の大統領だいとうりょう選挙せんきょ直後ちょくごから、特殊とくしゅ部隊ぶたいのパナマ派遣はけん極秘ごくひうら承認しょうにんした[7]。12月16にちごろからアメリカ軍人ぐんじんたいする殺害さつがい暴行ぼうこう事件じけん発生はっせいしているという報告ほうこくつたえられるようになった。リチャード・ブラウン国防こくぼう次官じかん報告ほうこくによるとべいぐん施設しせつへの武装ぶそう侵入しんにゅうすうじゅうかい、そのうちのいちけん2人ふたりのアメリカぐん兵士へいし殺害さつがいされたとしている[8]

12月20にち深夜しんや045ふんにブッシュはパナマ在住ざいじゅうアメリカじん保護ほごパナマ運河うんが条約じょうやく保全ほぜん・ノリエガの拘束こうそくおも目的もくてきとする「大義名分たいぎめいぶん作戦さくせん」(Operation Just Cause)の発動はつどう命令めいれいした。15ふんまえにはエンダラを大統領だいとうりょうとして宣誓せんせいさせている[7]。ブッシュはこの侵攻しんこうを、ノリエガの煽動せんどうたいするアメリカの自衛じえいけん発動はつどうであると主張しゅちょうしている[9]

侵攻しんこう

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アメリカぐん侵攻しんこう経緯けいい

大義名分たいぎめいぶん作戦さくせん」は当初とうしょ「ブルー・スプーン」と名付なづけられていたが、ジェームズ・L・リンゼイ陸軍りくぐん大将たいしょうから「奇妙きみょう作戦さくせんめいだ」とひょうされたのをきっかけに作戦さくせんめいは「大義名分たいぎめいぶん」とあらためられた。ブッシュは12月20にち未明みめいにパナマに駐留ちゅうりゅうしていたアメリカ南方なんぽうぐんなど空軍くうぐん海軍かいぐん陸軍りくぐんからなる5まん7384にんアメリカぐんをパナマに侵攻しんこうさせ、ノリエガのひきいるパナマ国家こっか防衛ぼうえいぐんとのあいだはげしい戦闘せんとうおこなわれた。

アメリカせい旧式きゅうしき武器ぶき中心ちゅうしんとしたパナマ国家こっか防衛ぼうえいぐんたいして、ロッキードF-117がた戦闘せんとうマクドネル・ダグラスAH-64 アパッチなどのさい新鋭しんえい中心ちゅうしんとした300える航空機こうくうき投入とうにゅうするなど、圧倒的あっとうてき軍事ぐんじりょくったアメリカぐん首都しゅとパナマ占領せんりょうした。

なお、ノリエガはアメリカぐんによる拘束こうそくのがれてバチカン大使館たいしかんのがれたものの、そのアメリカはニフティ・パッケージ作戦さくせんによってノリエガを大使館たいしかんより退去たいきょさせ、1990ねん1がつ3にちにアメリカぐん拘束こうそくされた。

終結しゅうけつ

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ノリエガはそのアメリカ国内こくない身柄みがら移送いそうされ、1992ねん4がつフロリダしゅうマイアミにて麻薬まやく密売みつばい容疑ようぎとうにより禁錮きんこ40ねん判決はんけつけた。のちに30ねん減刑げんけいされ、さらに模範もはんしゅうであったため2007ねん9月9にち釈放しゃくほうされたが、麻薬まやく取引とりひき資金しきんのマネーロンダリングをフランス銀行ぎんこうシステムを悪用あくようしてったとして2010ねん4がつ26にち同国どうこく移送いそうされ[10]禁固きんこ7ねん有罪ゆうざい判決はんけつくだされた[11]2011ねん12月12にちやく22ねんぶりにパナマに帰国きこくし、在任ざいにんちゅう政敵せいてき殺害さつがい関与かんよしたつみ禁錮きんこ20ねんけいふくした[12]

戦後せんごにパナマ国防こくぼうぐん解体かいたいされ、軍事ぐんじてき性格せいかく国家こっか保安ほあんたい国家こっか警察けいさつたい海上かいじょう保安ほあんたい航空こうくう保安ほあんたい構成こうせいされる)に再編さいへんされた。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c d パナマ侵攻しんこう用語ようご”. 月刊げっかん基礎きそ知識ちしき (2002ねん9がつ). 2023ねん5がつ13にち閲覧えつらん
  2. ^ a b c べいぐんのパナマ侵攻しんこう”. 世界せかいまど. 2023ねん5がつ13にち閲覧えつらん
  3. ^ a b c d べいぐんパナマ侵攻しんこう”. コトバンク. 2023ねん5がつ13にち閲覧えつらん
  4. ^ 富田とみたあずか 2003, pp. 165.
  5. ^ 富田とみたあずか 2003, pp. 157–158.
  6. ^ a b c d e 富田とみたあずか 2003, pp. 158.
  7. ^ a b c d 富田とみたあずか 2003, pp. 159.
  8. ^ 柴田しばたいさおぶん 1992, pp. 127.
  9. ^ 柴田しばたいさおぶん 1992, pp. 141.
  10. ^ パナマのノリエガもと将軍しょうぐんべいからほとけ身柄みがらわた
  11. ^ “パナマ・ノリエガもと将軍しょうぐん禁固きんこねん判決はんけつふつ裁判所さいばんしょ (日本語にほんご). 読売新聞よみうりしんぶん. (2010ねん7がつ7にち). https://web.archive.org/web/20100709222829/http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100707-OYT1T00995.htm 2010ねん7がつ7にち閲覧えつらん 
  12. ^ “ノリエガ服役囚ふくえきしゅうがパナマに22ねんぶり帰国きこく、フランスから移送いそう. ロイター. (2011ねん12月12にち). https://www.reuters.com/article/tk0682568-panama-noriega-home-idJPTYE7BB00K20111212 2023ねん4がつ24にち閲覧えつらん 

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 富田とみたあずか「<論説ろんせつ>麻薬まやく対策たいさくとテロ対策たいさくにおける米国べいこくたい国家こっか主体しゅたい外交がいこう : パナマ侵攻しんこうとアフガニスタン戦争せんそう比較ひかく中心ちゅうしんに」(PDF)『四日市よっかいち大学だいがく論集ろんしゅう』16(1)、四日市よっかいち大学だいがく、2003ねん、pp.155-172、NAID 110000481073 
  • 柴田しばたいさおぶんアメリカのパナマ侵攻しんこう自衛じえいけん--満州まんしゅう事変じへんにおける日本にっぽん行動こうどう比較ひかくして」(PDF)『国士舘大学こくしかんだいがく政経せいけい論叢ろんそうだい81ごう国士舘大学こくしかんだいがく政経せいけい学会がっかい、1992ねん、pp.85-109、NAID 40001321781 

関連かんれん項目こうもく

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