大気たいき浄化じょうか法ほう

大気たいき浄化じょうか法ほう（たいきじょうかほう、英語えいご: Clean Air Act of 1963）は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくで1963年ねん12月に制定せいていされた大気たいき汚染おせん防止ぼうしのための法律ほうりつ。日本語にほんご訳やくにおいては、大気たいき清浄せいじょう法ほう（たいきせいじょうほう）と訳やくされる場合ばあいもある。

酸性さんせい雨う対策たいさくやオゾン層そうの保護ほごが目的もくてきであり、自動車じどうしゃの排出はいしゅつガスの削減さくげんや、二酸化にさんか硫黄いおう排出はいしゅつ量りょうの削減さくげん、フロン、四よん塩化えんか炭素たんその全廃ぜんぱいが主おもな内容ないようとなっている。1970年ねん、1977年ねん及および1990年ねんに大幅おおはばな改正かいせいがなされている。

マスキー法ほう（1970年ねん改正かいせい法ほう）

1970年ねんに改正かいせいされた大気たいき浄化じょうか法ほうは、通称つうしょうマスキー法ほう（Muskie Act）と呼よばれる。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく上院じょういん議員ぎいん、エドマンド・マスキーの提案ていあんによるためこの通称つうしょうが付つけられた。特とくに、自動車じどうしゃ排出はいしゅつガス規制きせいに関かんしてこの用語ようごは引ひき合あいに出だされることが多おおい。

1971年ねん7月がつ2日にち、アメリカ環境かんきょう保護ほご局きょく（EPA）が官報かんぽうに告示こくじした内容ないようとしては

• 1975年ねん以降いこうに製造せいぞうする自動車じどうしゃの排気はいきガス中なかの一酸化いっさんか炭素たんそ(CO)、炭化たんか水素すいそ(HC)の排出はいしゅつ量りょうを1970-1971年ねん型かたの1/10以下いかにする
• 1976年ねん以降いこうに製造せいぞうする自動車じどうしゃの排気はいきガス中ちゅうの窒素ちっそ酸化さんか物ぶつ(NOx)の排出はいしゅつ量りょうを1970-1971年ねん型がたの1/10以下いかにする

ことをそれぞれ義務付ぎむづけ、達成たっせいしない自動車じどうしゃは期限きげん以降いこうの販売はんばいを認みとめないという内容ないようであった。

1972年ねんには1976年ねん型がたの基準きじゅんが定さだまった。窒素ちっそ酸化さんか物ぶつに対たいしては0.4g/マイルと規定きていされている。自動車じどうしゃの排気はいきガス規制きせい法ほうとして当時とうじ世界一せかいいち厳きびしいといわれ、クリアするのは不可能ふかのうとまで言いわれたものであった。実際じっさいにはレシプロエンジンでは1972年ねんに日本にっぽん車しゃメーカーの本田技研工業ほんだぎけんこうぎょう（ホンダ）がCVCCを開発かいはつしてクリア、翌よく1973年ねんには東洋工業とうようこうぎょう（現げん・マツダ）のロータリーエンジンもサーマルリアクターの改良かいりょうによりクリアしているが、“ビッグスリー”側がわ（ゼネラルモーターズ、フォードモーター、クライスラー）からの反発はんぱつも激はげしく、73年ねん4月がつにマスキー法ほうは1年間ねんかんの実施じっし延期えんきとなり、翌よく1974年ねん6月がつには1970年ねん改正かいせい法ほう修正しゅうせい法ほうが成立せいりつし、マスキー法ほうの正規せいき規制きせい値ちは実質じっしつ的てきな廃案はいあんとされた上うえに、修正しゅうせい規制きせい値ちの適用てきようも更さらに2年間ねんかんの延期えんきとなった。1975年ねんにはEPAが更さらに1年ねんの実施じっし延期えんきを発表はっぴょうするなどの紆余曲折うよきょくせつを辿たどった。

しかしながら排気はいきガス規制きせい自体じたいは徐々じょじょに進すすみ、アメリカ本土ほんどにおいては1995年ねんにはマスキー法ほうで定さだめられた基準きじゅんに達たっしたが、スモッグチェック制度せいどを独自どくじに制定せいていするカリフォルニア州しゅうを除のぞいて、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく連邦れんぽう政府せいふには日本にっぽんの車検しゃけん制度せいどのような強制きょうせい力りょくを持もった排はいガス検査けんさ制度せいどがない為ため、新車しんしゃ登録とうろくを済すませてしまえば後のちは違法いほう改造かいぞうされてもまず検挙けんきょされることはなく、ざる法ほうであるという意見いけんもある。

一方いっぽう、日本にっぽんでは、1973年ねん（昭和しょうわ48年ねん）の昭和しょうわ48年ねん排出はいしゅつガス規制きせい制定せいていと同時どうじに、中央ちゅうおう公害こうがい対策たいさく審議しんぎ会かいでの審議しんぎによりマスキー法ほうにおける1976年ねん型がたまでの排出はいしゅつ量りょう目標もくひょうを直接ちょくせつの下敷したじきにする形かたちで、以後いごの排はいガス規制きせいの基準きじゅん値ちを制定せいていする事ことも同時どうじ決定けっていした日本にっぽんにおいては、CO・HCの大幅おおはば強化きょうかを図はかった1975年ねん（昭和しょうわ50年ねん）の昭和しょうわ50年ねん排出はいしゅつガス規制きせい、NOxの大幅おおはば強化きょうかを図はかった1976年ねん（昭和しょうわ51年ねん）の昭和しょうわ51年ねん排出はいしゅつガス規制きせいを経へて、1978年ねん（昭和しょうわ53年ねん）の昭和しょうわ53年ねん排出はいしゅつガス規制きせいにてNOxベースで昭和しょうわ48年ねん4月がつ以前いぜん使用しよう過程かてい車しゃ比ひ8%まで縮減しゅくげん、マスキー法ほうの目標もくひょう値ちを完全かんぜん達成たっせいする事こととなった。

その後ごも対象たいしょう形式けいしき全すべてに対たいして1～3年ねん置おきに排はいガス検査けんさを義務付ぎむづけ、クリアできない使用しよう過程かてい車しゃは公道こうどう走行そうこうを許ゆるされない車検しゃけん制度せいども相あいまって、昭和しょうわ53年ねん規制きせいは2000年ねん（平成へいせい12年ねん）に更さらに基準きじゅん値ちが強化きょうかされた平成へいせい12年ねん排出はいしゅつガス規制きせいが成立せいりつするまで、名実めいじつ共どもに「世界せかいで最もっとも厳きびしい規制きせい」と言いわれた。

大気たいき浄化じょうか法ほうに基もとづく制裁せいさい

1998年ねん、ホンダは排はいガス制御せいぎょシステムを無効むこうにした車両しゃりょうを販売はんばいし、同どう法ほうを違反いはんしたとして、2億おく6,700万まんドルを支払しはらうことで和解わかいしたとアメリカ司法省しほうしょう、環境かんきょう保護ほご局きょく、カリフォルニア環境かんきょう当局とうきょくが発表はっぴょうした。和解わかい金きんの金額きんがくは同どう法ほうにおける史上しじょう最高さいこうを記録きろくした。また、この和解わかい金きんには1,260万まんドルの民事みんじにおける史上しじょう最大さいだいの制裁せいさい金きんの金額きんがくも含ふくまれる。

2012年ねん、大韓民国だいかんみんこくの現代げんだい自動車じどうしゃと傘下さんかの起亜きあ自動車じどうしゃが、アメリカ国内こくないで販売はんばいしたヒュンダイ・サンタフェなどで燃費ねんぴの偽装ぎそう（過大かだい）表示ひょうじを行おこなっていたことが発覚はっかく（詳細しょうさいは、燃費ねんぴ水増みずまし問題もんだいと北米ほくべいでの集団しゅうだん訴訟そしょうの項こうを参照さんしょうのこと）。2014年ねん11月3日にち、アメリカ司法省しほうしょうと環境かんきょう保護ほご局きょくは、両りょう自動車じどうしゃ会社かいしゃが大気たいき浄化じょうか法ほう違反いはんの制裁せいさい金きんとして過去かこ最高さいこう額がくとなる1億おくドルを支払しはらうことで和解わかいしたと発表はっぴょうした。

脚注きゃくちゅう

関連かんれん項目こうもく

• CVCC
• 二に次じ空気くうき導入どうにゅう装置そうち
• 三さん元げん触媒しょくばい
• Encyclopedia of Earth