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中華人民共和国法 - Wikipedia

中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくほう

中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくほう制度せいど概観がいかんする項目こうもく
中国ちゅうごくほうから転送てんそう

中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくほう(ちゅうかじんみんきょうわこくほう)は、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくほう制度せいど概観がいかんする項目こうもくである。一般いっぱんには中国ちゅうごくほうということがおおい。同国どうこく実効じっこう支配しはいは、社会しゃかい主義しゅぎほうけい中国ちゅうごく本土ほんどえいべいほうけいイングランドほう影響えいきょうつよ香港ほんこん大陸たいりくほうけいポルトガルほう影響えいきょうつよマカオという、複数ふくすう法域ほういきかれているが、本稿ほんこうでは、中国ちゅうごく本土ほんどほう制度せいど中心ちゅうしんあつかう。

ほう発展はってん

編集へんしゅう

中国ちゅうごくでのほう制度せいど起原きげんさだかでないが、春秋しゅんじゅう戦国せんごく時代じだいには、ていすすむで「けいしょ」や「けいかなえ」が制定せいていされたとされている[1]たかしかつが「ほうけい」を編纂へんさんし、はたしょうりつ改称かいしょうしたとつたわる。かんにおいてもはたほう継受けいじゅされたが、しょうなにによって、9しょうからなるりつ編纂へんさんされ、これとはべつに3へんれいがまとめられた[2]。これが律令りつりょうこりである。西にしすすむたけみかどにより、りつ刑罰けいばつ法典ほうてんれい行政ぎょうせい法典ほうてんという範疇はんちゅうてき分化ぶんか確立かくりつし、ただしれい補充ほじゅうするほうとして、「故事こじ」が制定せいていされた[3]。この故事こじのち格式かくしきとなり、律令りつりょう格式かくしき体系たいけいととのい、ずいとう継受けいじゅされていく。かく当初とうしょ律令りつりょう修正しゅうせいになったが、とうひらきもと25ねん以降いこうは、律令りつりょう格式かくしき編纂へんさんおこなわれなくなり、かくもが固定こていするようになる[4]。そして既存きそん法典ほうてん修正しゅうせいするために、「かくみことのり」が別途べっと制定せいていされるようになり、五代ごだい時代ときよには「へんみことのり」に姿すがたえる。

そうにおいては、かみはじめまでから以来いらい律令りつりょう格式かくしきへんみことのり主要しゅよう法典ほうてんとされていたが、げんゆたかさかいに、「みことのりれい格式かくしき」へと姿すがたえる。みことのり刑罰けいばつ法典ほうてんを、れいきょうれいてき法典ほうてんを、かくしょうかくふくしきしき書式しょしき意味いみえ、りつ適用てきようみことのり規定きていのない場合ばあい限定げんていされるようになる[5]

もとはいると、みことのりれい格式かくしき法典ほうてん放棄ほうきされ、とうだいふう法典ほうてんへんさんこころみられるようになるが、挫折ざせつし、行政ぎょうせい法典ほうてんたる「じょうかく」と刑罰けいばつ法典ほうてんたる「だんれい」に収斂しゅうれんしていく。じょうかくだんれい律令りつりょうのようなほう命題めいだいではなく、個別こべつ具体ぐたいてき事例じれいそくした判例はんれいほう性質せいしつゆうした[6]

民族みんぞく王朝おうちょうであるもとたおしたあきらは、復古ふっこ主義しゅぎてき態度たいどり、律令りつりょう法典ほうてん形式けいしき復活ふっかつ意図いとしたが、編目あみめ刑事けいじほう基本きほんを「条例じょうれい」がになったてんなどで、もとだい影響えいきょうつよけた。明代あきよ法典ほうてん基本きほんてきにはきよしがれていくことになる。

しんだいにおいても明代あきよ同様どうよう国家こっかほうもっぱ公法こうほう分野ぶんやかぎられた。もっと行政ぎょうせいほう分野ぶんやかんしてとうれいのような法典ほうてん編纂へんさん作業さぎょうおこなわれることはなく、行政ぎょうせい組織そしきほうたる「かいてん」、行政ぎょうせい機関きかんごとの先例せんれいをまとめた「かいてん事例じれい」、あらたに発生はっせいした先例せんれい行政ぎょうせい機関きかんごとにまとめた「のりれい」などの書物しょもつにまとめる形式けいしきった。刑事けいじほう明代あきよつづき「りつ」と「条例じょうれい」が主要しゅよう法典ほうてんをなし、後者こうしゃ前者ぜんしゃ補充ほじゅうする関係かんけいち、修正しゅうせい臣下しんか上奏じょうそうし、皇帝こうてい裁可さいかするかたちおこなわれた。皇帝こうてい意思いし表示ひょうじは「ろん」「むね」「そうじゅん」「だいじゅん」などの形式けいしきおこなわれ、このうち将来しょうらいこうゆうするものを「通行つうこう」としょうした。このほかほうげんとして過去かこ事例じれい成案せいあん)やだいせいただし輯註などの注釈ちゅうしゃくしょ参照さんしょうされた[7]

清朝せいちょう末期まっき

編集へんしゅう

アヘン戦争せんそう太平たいへい天国てんごくらんアローごう事件じけんといっただい規模きぼ内憂ないゆう外患がいかん直面ちょくめんした清朝せいちょう政府せいふは、どうみかどしたようつとむ運動うんどう展開てんかいし、国力こくりょく増大ぞうだいはかろうとした。清朝せいちょう政府せいふ対応たいおうすべき喫緊きっきん課題かだい西欧せいおう列強れっきょうとのあいだ個別こべつ条約じょうやくであったが、その過程かていで、近代きんだいてき西欧せいおうほう制度せいどまなんだものあらわれていった。

にちしん戦争せんそう敗北はいぼくしたのち清朝せいちょう政府せいふ内部ないぶではへんほう運動うんどう展開てんかいされ、つちのえいぬ政変せいへんというもどしをて、義和よしかずだんらんのちひかりいとぐち新政しんせい開始かいしされた。清朝せいちょう政府せいふは、岡田おかだちょう太郎たろう松岡まつおか義正よしまさ小河おがわしげる次郎じろう志田しだ鉀太ろうの4にん日本人にっぽんじん協力きょうりょく西欧せいおうほう制度せいど手本てほんとした近代きんだいてきほう制度せいど構築こうちくすとともに、科挙かきょ制度せいど廃止はいし(1905ねん)、「立憲りっけん大綱たいこう」(同年どうねん)、「憲法けんぽう大綱たいこう」(1908ねん)、「じゅうきゅう信条しんじょう」(1911ねん)、「だいしんけいりつ草案そうあん」(同年どうねん)といった立憲りっけん政治せいじ確立かくりつけた努力どりょくかさねた。こうした経過けいかが、のち中国ちゅうごく大陸たいりくほうけん伝統でんとういだほう制度せいど確立かくりつする下地したじとなった。

からし革命かくめいから中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく成立せいりつまで

編集へんしゅう

からし革命かくめい中華民国ちゅうかみんこく政府せいふは、「だいきよし現行げんこうけいりつ」などの清朝せいちょう時代じだい法令ほうれいや「だいしんけいりつ草案そうあん」を援用えんようして急場きゅうばをしのぐことにした。きた完了かんりょう国民党こくみんとう政府せいふは、「くん政綱せいこうりょう」(1928ねん)、「国民こくみん政府せいふ組織そしきほう」(同年どうねん)をはじめとする各種かくしゅ法令ほうれい整備せいび着手ちゃくしゅした。1943ねんには、各種かくしゅ不平等ふびょうどう条約じょうやく撤廃てっぱいされた。しかし、中国共産党ちゅうごくきょうさんとう中共ちゅうきょう)は、1949ねん2がつに「国民党こくみんとう六法全書ろっぽうぜんしょ廃棄はいきし、解放かいほう司法しほう制度せいど確定かくていすることにかんする指示しじ」をはっし、同年どうねん10がつには中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく共和きょうわこく政府せいふ成立せいりつした。国民党こくみんとう政府せいふ整備せいびしたほう制度せいどは、台湾たいわんのがれた中華民国ちゅうかみんこく政府せいふによってがれた。

建国けんこく以降いこう文化ぶんかだい躍進やくしん運動うんどうまで

編集へんしゅう

共和きょうわこく政府せいふは、中国ちゅうごく本土ほんど全域ぜんいきにおける実効じっこう支配しはい確立かくりつしたのち、1954ねんソビエト連邦れんぽうなどの共産きょうさんけん先行せんこうれい参照さんしょうして最初さいしょの「憲法けんぽう」(54ねん憲法けんぽう)を制定せいていするなど、ソビエト連邦れんぽうほう大陸たいりくほうけんぞくする)を手本てほんとしたほう制度せいど整備せいびすすめた。建国けんこく当初とうしょは、解放かいほう中華民国ちゅうかみんこく共産党きょうさんとう実効じっこう支配しはいしていた地域ちいき)で実践じっせんされていたほう制度せいどぐ、さんだい立法りっぽう婚姻こんいんほう土地とち改革かいかくほう労働ろうどう組合くみあいほう)に代表だいひょうされる立法りっぽうおこなわれた[8]全体ぜんたいてきには社会しゃかい主義しゅぎほうソ連それんほう影響えいきょうつよけた立法りっぽう司法しほうおよ法学ほうがく志向しこうされた[8]。しかし、その急進きゅうしんてき社会しゃかい主義しゅぎ改造かいぞうはん右派うは闘争とうそうだい躍進やくしんとう政治せいじ運動うんどう翻弄ほんろうされた結果けっかさんだい立法りっぽうと1954ねん憲法けんぽう制定せいていのぞいて目立めだった成果せいかげられなかった[8]

だい躍進やくしん以降いこう文化ぶんかだい革命かくめいまで

編集へんしゅう

この時期じき経済けいざい調整ちょうせいといわれ、1950年代ねんだい中期ちゅうき以降いこう急進きゅうしんてき社会しゃかい主義しゅぎ運動うんどうのリバウンドでもあり、民法みんぽう刑法けいほう刑事けいじ訴訟そしょうほうとう起草きそう作業さぎょう活発かっぱつおこなわれたもののいずれも成果せいかむすかなかった[8]

文化ぶんかだい革命かくめい以降いこうその終結しゅうけつまで

編集へんしゅう

1957ねん6がつはん右派うは闘争とうそうはじまる文化ぶんか革命かくめいには、「プロレタリアート独裁どくさい」の理念りねんからみちびかれた「中共ちゅうきょう国家こっかたいする優位ゆうい」が強調きょうちょうされ、ほう秩序ちつじょよりも中共ちゅうきょう政策せいさく優先ゆうせんされた[8]。「政策せいさくほうかたまりである」「無法むほうてん」「造反ぞうはん有理ゆうり革命かくめい無罪むざいとうのスローガンに代表だいひょうされる徹底てっていしたほうニヒリズムが蔓延まんえんした[8]。「大衆たいしゅう独裁どくさい」ののもとに如何いかなる司法しほう手続てつづきむことなく人身じんしん自由じゆう侵害しんがいされたり、裁判所さいばんしょ検察けんさついん警察けいさつ廃止はいしされて「軍事ぐんじ管制かんせい委員いいんかい」に統合とうごうされたりするひとし司法しほう制度せいど全体ぜんたいいちじるしく破壊はかいされた[8]大学だいがく封鎖ふうさされ法学ほうがく教育きょういく法学ほうがく研究けんきゅうも10年間ねんかん空白くうはく時期じきむかえた[8]

文化ぶんかだい革命かくめい終結しゅうけつ改革かいかく開放かいほう路線ろせん

編集へんしゅう

1976ねん文化ぶんかだい革命かくめい終結しゅうけつとともに、一転いってんしてだつ文化ぶんかだい革命かくめいはかられ、国防こくぼう農業のうぎょう工業こうぎょう科学かがく技術ぎじゅつのいわゆる「よっつの近代きんだい」や「民主みんしゅ法制ほうせい」が強調きょうちょうされはじめる[8]。1978ねん中共ちゅうきょうだい11さんちゅう全会ぜんかいで「改革かいかく開放かいほう政策せいさくすなわち経済けいざい体制たいせい改革かいかく計画けいかく経済けいざいから商品しょうひん経済けいざい市場いちば経済けいざいへ)と市場いちば開放かいほう外資がいし導入どうにゅう)がされた[8]。1978ねん3がつに3度目どめの「憲法けんぽう」(78ねん憲法けんぽう)が制定せいていされたのちは、「ひと」にわる「法治ほうち」の必要ひつようせいひろかれるようになり,共和きょうわこく政府せいふは,「刑法けいほう」(1979ねん),「刑事けいじ訴訟そしょうほう」(同年どうねん)をはじめとするほう制度せいど整備せいびふたたすすはじめた。1982ねん12月には4度目どめの「憲法けんぽう」(82ねん憲法けんぽう)が制定せいていされ、1999ねん憲法けんぽう改正かいせいでは社会しゃかい主義しゅぎてき法治ほうち国家こっか建設けんせつがうたわれた。

ほうげん

編集へんしゅう

共和きょうわこくにおけるほうげんには、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく憲法けんぽう頂点ちょうてんとして、法律ほうりつ行政ぎょうせい法規ほうき地方ちほうせい法規ほうき自治じち条例じょうれい単行たんこう条例じょうれい行政ぎょうせい規則きそくなどがある。立法りっぽうほうは、これらのほうげん序列じょれつ相互そうご抵触ていしょく場合ばあい処理しょり規定きていする。

立法りっぽうほうは、国家こっか主権しゅけん国家こっか組織そしき形成けいせい組織そしき権限けんげん犯罪はんざい刑罰けいばつ民事みんじ基本きほんてき制度せいど訴訟そしょう仲裁ちゅうさい制度せいどなどは原則げんそくとして法律ほうりつによって規定きていすべきものとしている。「基本きほんてき法律ほうりつ」(この概念がいねん明確めいかく定義ていぎした規定きていはない)は全国ぜんこく人民じんみん代表だいひょう大会たいかい全人代ぜんじんだい)が制定せいていし、それ以外いがい法律ほうりつ全人代ぜんじんだい常務じょうむ委員いいんかい制定せいていする。

行政ぎょうせい法規ほうきは、国務こくむいん制定せいていするもので、法律ほうりつ細則さいそく行政ぎょうせい管理かんりについて、憲法けんぽうおよ法律ほうりつ抵触ていしょくしないかぎりで、制定せいていする。行政ぎょうせい法規ほうきは、「○△条例じょうれい」という名称めいしょうのときがおおいが、「○△べんほうまたは「○△規定きてい」という名称めいしょうのときもある。税制ぜいせい改革かいかく経済けいざい制度せいど改革かいかく対外たいがい開放かいほうかかわる事項じこうについては、国務こくむいんは、暫定ざんてい条例じょうれいまた暫定ざんていべんほう制定せいていする権限けんげんゆうする。

地方ちほうせい法規ほうきは、一級いっきゅう行政ぎょうせいまた主要しゅよう都市とし人民じんみん代表だいひょう大会たいかいひとだいおよびその常務じょうむ委員いいんかいが、憲法けんぽう法律ほうりつおよ行政ぎょうせい法規ほうき抵触ていしょくしないかぎりで、制定せいていする。

自治じち条例じょうれい単行たんこう条例じょうれいは、自治じち自治じちしゅうまた自治じちけん制定せいていするもので、当該とうがい地方ちほう基本きほんほうとなるものが自治じち条例じょうれい個別こべつ分野ぶんや規律きりつするものが単行たんこう条例じょうれいである。家族かぞくほう分野ぶんや中心ちゅうしんに、当該とうがい地方ちほう実情じつじょうわせた「変通へんつう規定きてい」が制定せいていされている。

行政ぎょうせい規則きそく行政ぎょうせいぶんまわしあきら)は、国務こくむいんかく部門ぶもんまたいちきゅう行政ぎょうせいしくは主要しゅよう都市とし人民じんみん政府せいふが、法律ほうりつまた国務こくむいん行政ぎょうせい法規ほうき決定けってい命令めいれいもとづいて、制定せいていする。行政ぎょうせい規則きそく裁判さいばん規範きはんではない(人民法院じんみんほういん行政ぎょうせい規則きそくとはことなるルールを使つかって事件じけん結論けつろんすことができる)が、参照さんしょうされる。

人民法院じんみんほういん判例はんれいは、法的ほうてき拘束こうそくりょくゆうしないが、最高さいこう人民法院じんみんほういん裁判さいばんれい下級かきゅう人民法院じんみんほういん事件じけん処理しょり指針ししんとなっている。さらに、最高さいこう人民法院じんみんほういんおよ最高さいこう人民じんみん検察けんさついんしめ司法しほう解釈かいしゃくが、判例はんれい以上いじょうに、裁判さいばん実務じつむ検察けんさつ実務じつむ重要じゅうよう指針ししんとなっている。

立法りっぽう憲法けんぽう適合てきごうせい審査しんさする権限けんげん全人代ぜんじんだいまたはその常務じょうむ委員いいんかいにあり、人民法院じんみんほういんにはない(人民じんみん民主みんしゅ主義しゅぎ理念りねんによれば、人民法院じんみんほういん全人代ぜんじんだい対等たいとう機関きかんではなく、その裁判さいばん部門ぶもんにすぎない)。国務こくむいん中央ちゅうおう軍事ぐんじ委員いいんかい最高さいこう人民法院じんみんほういん最高さいこう人民じんみん検察けんさついんまたいちきゅう行政ぎょうせいひとだい常務じょうむ委員いいんかいは、全人代ぜんじんだい常務じょうむ委員いいんかいたいし、行政ぎょうせい法規ほうき地方ちほうせい法規ほうき自治じち条例じょうれい単行たんこう条例じょうれい憲法けんぽう法律ほうりつ適合てきごうせい審査しんさ要求ようきゅうすることができる。

司法しほう組織そしき裁判さいばん制度せいど

編集へんしゅう

共和きょうわこく司法しほう組織そしきは、人民法院じんみんほういん組織そしきほうおよ人民じんみん検察けんさついん組織そしきほう規定きていしている。また、訴訟そしょう手続てつづきは、民事みんじ訴訟そしょうほう刑事けいじ訴訟そしょうほうおよ行政ぎょうせい訴訟そしょうほう規定きていしている。

共和きょうわこく裁判さいばん制度せいどは、一般いっぱんに、よんきゅうしんせい採用さいようしている。すなわち、人民法院じんみんほういんは、最高さいこう人民法院じんみんほういん頂点ちょうてんとして組織そしきされる。下級かきゅうほういんとしては、まず、軍事ぐんじ事件じけんあつか人民じんみん解放かいほうぐん軍事ぐんじほういん大軍たいぐんきゅう軍事ぐんじほういんぐんきゅう軍事ぐんじほういんからなる軍事ぐんじほういん系列けいれつがある。また、軍事ぐんじ関係かんけい以外いがい事件じけんあつかさい上位じょうい下級かきゅうほういんとして、かくいちきゅう行政ぎょうせい高級こうきゅう人民法院じんみんほういんかれ、そのしたには、海事かいじ事件じけんあつか海事かいじほういんおよ鉄道てつどう運輸うんゆ事件じけんあつか鉄道てつどう運輸うんゆ中級ちゅうきゅうほういん鉄道てつどう運輸うんゆ基層きそうほういんという特別とくべつほういんのほか、通常つうじょう事件じけんあつか地区ちくきゅう中級ちゅうきゅう人民法院じんみんほういんけんきゅう基層きそう人民法院じんみんほういんという系列けいれつがある。

民事みんじ刑事けいじ行政ぎょうせい事案じあんだいいちしんでは、人民じんみん陪審ばいしんいん制度せいど[ちゅう 1][ちゅう 2]採用さいようされている。

共和きょうわこくでは、憲法けんぽうおよほういん組織そしきほう人民法院じんみんほういん裁判さいばんけん独立どくりつして行使こうしするむね規定きていがあるが、実際じっさいには、ほういん内部ないぶでも院長いんちょうとう幹部かんぶ職員しょくいん裁判さいばん委員いいんかいによる審査しんさ承認しょうにん・「助言じょげん」という制度せいどがあるし、共産党きょうさんとうによる「指導しどう」、予算よさんにぎかくきゅう人民じんみん政府せいふからの影響えいきょうといった、日米にちべいおう先進せんしん諸国しょこく観念かんねんされる「司法しほう独立どくりつ」とは異質いしつ要素ようそ存在そんざい数多かずおお指摘してきされている。[よう出典しゅってん]

人民じんみん検察けんさついんは、かくきゅう人民法院じんみんほういん対応たいおうして設置せっちされている。そのしゅたる任務にんむは、逮捕たいほ起訴きそ可否かひ決定けってい公訴こうそ提起ていき維持いじ刑事けいじ事件じけん判決はんけつ執行しっこうである。また、人民じんみん検察けんさついんは、刑事けいじ事件じけんかぎらず、だいいちしん判決はんけつあやまりがあるとみとめるときは、その判決はんけつすで効力こうりょくしょうじた[ちゅう 3]かをわず、上訴じょうそ手続てつづきこう訴)をとることができる。

ほう分野ぶんや

編集へんしゅう

主要しゅようほう分野ぶんやとしては、憲法けんぽう行政ぎょうせいほう民事みんじほう共和きょうわこくには独立どくりつしょう法典ほうてんはない《みんしょう合一ごういつ》)、経済けいざいほう刑事けいじほう訴訟そしょうほうといった分野ぶんやがある。中国ちゅうごくにおける昨今さっこん法典ほうてん整備せいびは、ドイツほう直接ちょくせつ参考さんこうにしているほか、ドイツほう継受けいじゅした日本にっぽんほう日本にっぽんほう影響えいきょうつよ台湾たいわんほう参考さんこうにしているという間接かんせつてき意味いみでも、ドイツほう影響えいきょうけているといえる[9]

民法みんぽうてん

編集へんしゅう

民事みんじほうについては2020ねん民法みんぽうてん成立せいりつした。どう法律ほうりつ総則そうそく物権ぶっけん契約けいやく人格じんかくけん婚姻こんいん家庭かてい相続そうぞく権利けんり侵害しんがい責任せきにんの7つのへんおよ附則ふそく合計ごうけい1260じょうによって構成こうせいされている。民法みんぽうてん成立せいりつ以前いぜん中国ちゅうごくには民法みんぽう存在そんざいせず個別こべつ法律ほうりつがあったが民法みんぽうてん成立せいりつともな廃止はいしされた[10]

1970年代ねんだいまでは企業きぎょうあいだ紛争ふんそう人民法院じんみんほういん管轄かんかつからはずされており、「婚姻こんいん家族かぞくほう」を中心ちゅうしんとする家族かぞくほう比較的ひかくてき整備せいびされていたほかは、各種かくしゅ行政ぎょうせい法規ほうき行政ぎょうせい規則きそく司法しほう解釈かいしゃく関係かんけい規定きてい点在てんざいするのみというのが実情じつじょうであった[11]

改革かいかく開放かいほうはじまり、共和きょうわこく政府せいふ財産ざいさんほう体系たいけいてき整備せいび開始かいししたが、1980年代ねんだい前半ぜんはんには「経済けいざい法論ほうろん[ちゅう 4]通説つうせつないし有力ゆうりょくになり、これにもとづく「技術ぎじゅつ契約けいやくほう」が制定せいていされた。

しかし、共和きょうわ国政こくせい府内ふないにも、市場いちば経済けいざい規律きりつするには取引とりひき主体しゅたい自主じしゅせい平等びょうどうせい重視じゅうしするべきであるというかんがかた浸透しんとうし、1986ねん採択さいたくされた「中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく民法みんぽう通則つうそく」では、「平等びょうどう主体しゅたいである公民こうみんあいだ法人ほうじんあいだ公民こうみん法人ほうじんとのあいだ財産ざいさん関係かんけい人身じんしん関係かんけい」という表現ひょうげんもちいられるにいたった。そのも、「中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく物権ぶっけんほう」、「中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく担保たんぽほう」、「中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく契約けいやくほう」が制定せいていされ、経済けいざい法論ほうろん民事みんじほう立法りっぽう指導原理しどうげんりとしての地位ちいうしなった。

2021ねん民法みんぽうてん施行しこうともな個別こべつにあった、民法みんぽう通則つうそく物権ぶっけんほう担保たんぽほう契約けいやくほう権利けんり侵害しんがい責任せきにんほう婚姻こんいんほう養子ようし縁組えんぐみほう相続そうぞくほう廃止はいしとなった。

商事しょうじほう分野ぶんやには、「ぜん人民じんみん所有しょゆうせい工業こうぎょう企業きぎょうほう」、「中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく公司こうしほう会社かいしゃほう)」、「さと鎮企業法ぎょうほう」、「組合くみあい企業きぎょうほう」、「手形てがた小切手こぎってほう」、「保険ほけんほう」、「証券しょうけんほう」などの法律ほうりつがあり、商法しょうほうがく民法みんぽうがくから独立どくりつした学問がくもん分野ぶんやとして認知にんちされるにいたっている。もっとも、しょう法典ほうてん民法みんぽうてんとは独立どくりつ制定せいていしようといううごきは支配しはいてきとはなっていない。

倒産とうさんほう分野ぶんやでは、「企業きぎょう破産はさんほう試行しこう)」が制定せいていされているが、共和きょうわこく政府せいふ企業きぎょう法的ほうてき整理せいり実施じっしすることには消極しょうきょくてきであり、個人こじん倒産とうさん法制ほうせいについては、法律ほうりつすら制定せいていされていない。

知的ちてき財産ざいさんけんほう分野ぶんやでは、「商標しょうひょうほう」が1950年代ねんだい制定せいていされたほかは、21世紀せいき初頭しょとうまでおおきな進展しんてんがなかった。2001ねん以降いこう発明はつめい実用じつよう新案しんあん意匠いしょう包括ほうかつして規律きりつする「中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくせんほう」、「著作ちょさくけんほう」が制定せいていされた。

国際こくさい私法しほうについては、「民法みんぽう通則つうそくとう若干じゃっかん規定きていがあるが、体系たいけいてき法規ほうき制定せいていされていない。「民法みんぽう通則つうそく」によれば、共和きょうわこく加盟かめい調印ちょういんした条約じょうやく国内こくないほうとが抵触ていしょくするときは、条約じょうやく優先ゆうせんする。共和きょうわこくほう条約じょうやく存在そんざいしないときは、国際こくさい慣習かんしゅうによるが、共和きょうわこく社会しゃかい公共こうきょう利益りえきはんすることはできない。

民事みんじ紛争ふんそう処理しょり制度せいど

編集へんしゅう

中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく民事みんじ訴訟そしょうほうは、ほういん民事みんじ事件じけんについて判決はんけつをするまえ調停ちょうていおこなうという調停ちょうていまえおけ主義しゅぎ採用さいようしている。また、民事みんじ訴訟そしょうほうは、職権しょっけん探知たんち主義しゅぎ採用さいようし、当事とうじしゃ収集しゅうしゅう不可能ふかのう証拠しょうこ事件じけん審理しんり必要ひつようみとめる証拠しょうこ人民法院じんみんほういんみずか調査ちょうさ収集しゅうしゅうする。また、うったえのしたには人民法院じんみんほういん許諾きょだく必要ひつようであり、処分しょぶんけん主義しゅぎ徹底てっていされていない。

村民そんみん委員いいんかいなどは、人民じんみん調停ちょうてい委員いいんかい設置せっちすることができ、この人民じんみん調停ちょうてい委員いいんかいによる人民じんみん調停ちょうてい民間みんかん紛争ふんそう処理しょりおおきな役割やくわりたしている。また、基層きそう人民じんみん政府せいふも「司法しほうじょいん」とばれる専従せんじゅう職員しょくいんき、民間みんかん紛争ふんそう調停ちょうていたっている。その弁護士べんごし事務所じむしょさと法律ほうりつサービス事務所じむしょ調停ちょうていおこなっている。ただ、基層きそう人民じんみん政府せいふによる調停ちょうていのぞき、調停ちょうてい成立せいりつしても、その当事とうじしゃ翻意ほんいすれば人民法院じんみんほういんへのだし訴等はさまたげられないのが一般いっぱんである。

仲裁ちゅうさいについては、「仲裁ちゅうさいほう」が制定せいていされている。どうほうは、家族かぞく関係かんけいかんする民事みんじ紛争ふんそう行政ぎょうせい争訟そうしょう労働ろうどう紛争ふんそうべつ仲裁ちゅうさい制度せいどさだめるものとしている)、農業のうぎょう集団しゅうだん経済けいざい組織そしき内部ないぶ農業のうぎょう請負うけおい契約けいやく紛争ふんそうべつ仲裁ちゅうさい制度せいどさだめるものとしている)については、適用てきようされない。どうほう適用てきようがある民事みんじ紛争ふんそうについては、当事とうじしゃは、仲裁ちゅうさい合意ごういもとづいて、一級行政区人民政府所在市の人民じんみん政府せいふかれた仲裁ちゅうさい委員いいんかいに、仲裁ちゅうさい申請しんせいをすることができる(仲裁ちゅうさい合意ごういがあるのに人民じんみん政府せいふ提訴ていそしても、受理じゅりされない)。仲裁ちゅうさいは、仲裁ちゅうさい委員いいんかい事件じけんごとに任命にんめいする仲裁ちゅうさいじんおこなう。仲裁ちゅうさい裁定さいていは、いちしんかぎりの終局しゅうきょく判断はんだんとされ、手続てつづき瑕疵かし理由りゆうとして人民法院じんみんほういん取消とりけしをもとめることができるほかは、不服ふふくもうてることができない。

中国ちゅうごく民事みんじ訴訟そしょうほう231じょうは、訴訟そしょう解決かいけつまでのあいだ外国がいこくじん当事とうじしゃたいして人民法院じんみんほういんによる出国しゅっこく停止ていし処分しょぶんみとめている。近年きんねん日本にっぽん企業きぎょうたいして従業じゅうぎょういん取引とりひきさき訴訟そしょうをおこし、企業きぎょう責任せきにんしゃなどが出国しゅっこく停止ていし処分しょぶんけるれい急増きゅうぞうし、問題もんだいとなっている。(チャイナリスク参照さんしょうのこと)

刑事けいじほう

編集へんしゅう

共和きょうわこくでは、1979ねんに「中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく刑法けいほう」が制定せいていされるまでは、単行たんこう法令ほうれい各種かくしゅ司法しほう解釈かいしゃく共産党きょうさんとう文書ぶんしょなどに刑罰けいばつ規定きていかれていた。79ねん刑法けいほう」は、犯罪はんざいを「社会しゃかい危害きがいくわえる行為こういで、法律ほうりつにより刑罰けいばつけるべきもの」と定義ていぎ[ちゅう 5]類推るいすい解釈かいしゃく公認こうにんしていた。

1997ねんに「刑法けいほう」は全面ぜんめんてき改正かいせいされた(その全人代ぜんじんだい常務じょうむ委員いいんかいによるおおくの改正かいせいがある)。97ねん刑法けいほう」は、類推るいすい解釈かいしゃく禁止きんしし、罪刑法定ざいけいほうてい主義しゅぎ採用さいようした。日本にっぽんをはじめとする大陸たいりくほうけん刑法けいほう比較ひかくしたときのおおきな特色とくしょくとしては、共犯きょうはんろんについて、正犯せいはん従犯じゅうはんという構成こうせい要件ようけん中心ちゅうしんとした枠組わくぐみえて、主犯しゅはん従犯じゅうはんという犯罪はんざい経緯けいい着目ちゃくもくした枠組わくぐみもちいられていることである。しゅけいには管制かんせい公安こうあん機関きかん監督かんとく生活せいかつさせること)、かかわやく労働ろうどう改造かいぞうけい)、有期ゆうき懲役ちょうえき無期むき懲役ちょうえき死刑しけいの5種類しゅるいがあり、付加ふかけいには罰金ばっきん政治せいじてき権利けんり剥奪はくだつ財産ざいさん没収ぼっしゅうがある。死刑しけいにも執行しっこう猶予ゆうよ制度せいどがある(猶予ゆうよ期間きかん経過けいかすれば無期むき懲役ちょうえきげんけいされる)のも特徴とくちょうである。

刑事けいじ訴訟そしょうほう」も、1996ねん全面ぜんめんてき改正かいせいされた。公安こうあん機関きかんによる捜査そうさは、立案りつあん[ちゅう 6]はじまり、証拠しょうこ収集しゅうしゅうて、人民じんみん検察けんさついん起訴きそ意見いけんしょ提出ていしゅつすることで終了しゅうりょうする。犯罪はんざい嫌疑けんぎじん身柄みがら拘束こうそく期間きかん原則げんそくとして2かげつであるが、所定しょてい手続てつづき延長えんちょうすることができる。起訴きそ意見いけんしょ受理じゅりした人民じんみん検察けんさついんは、公訴こうそ提起ていき決定けってい事件じけん取消とりけし決定けっていまた起訴きそ決定けっていをする。人民法院じんみんほういんは、公訴こうそ受理じゅりすると、原則げんそくとして1かげつ~1かげつはん判決はんけつをする、無罪むざい推定すいてい明示めいじてきには採用さいようされていない。訴弁取引とりひきべん取引とりひきひかえべん取引とりひきとも。司法しほう取引とりひきのこと。)は、実例じつれいはあるが、制度せいどとしては採用さいようされていない。

社会しゃかい危害きがいせいはあるが犯罪はんざいとするにあたいしない行為こういについては、公安こうあん機関きかんが、「治安ちあん管理かんり処罰しょばつほう」にもとづき、警告けいこくばっ款(日本にっぽんほう過料かりょう相当そうとうする)、行政ぎょうせい拘留こうりゅう許可きょかしょう取消とりけし、外国がいこくじんたいする国外こくがい退去たいきょといった治安ちあん管理かんり処罰しょばつす。治安ちあん管理かんり処罰しょばつ決定けっていは、行政ぎょうせい不服ふふく審査しんさ申立もうしたてや行政ぎょうせい訴訟そしょうによってあらそうことができる。その、かつての共和きょうわこくでは、ほう根拠こんきょがない行政ぎょうせい処罰しょばつや、法定ほうてい手続てつづき遵守じゅんしゅしない行政ぎょうせい処罰しょばつ公布こうふされていない法令ほうれいもとづく行政ぎょうせい処罰しょばつがみられたが、「行政ぎょうせい処罰しょばつほう」は、このような行政ぎょうせい処罰しょばつ明文めいぶんをもって禁止きんしした。

共和きょうわこくでは、正業せいぎょうかないもの麻薬まやく中毒ちゅうどくしゃとうたいする労働ろうどう矯正きょうせいおこなわれている。労働ろうどう矯正きょうせい期間きかん最長さいちょうで4ねんにもおよび、その手続てつづき運用うんようかんする批判ひはん[ちゅう 7]たかまっている。

行政ぎょうせいほう

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共和きょうわこくにおいても、「法治ほうち」とか「ほう行政ぎょうせい」(ほうによる行政ぎょうせい)という言葉ことば使つかわれるが、これは、日本にっぽんでいう「法治ほうち主義しゅぎ」とはことなり、「ひと」や「とう」に対応たいおうする概念がいねんにすぎない。共和きょうわこくにおいては、ぜん近代きんだいてきな「かん錯」(国家こっかこたえせめ法理ほうり参照さんしょう)というほう意識いしき社会しゃかい主義しゅぎてきな「人民じんみん政府せいふ人民じんみんあいだ利益りえき対立たいりつはありない」という発想はっそうが、行政ぎょうせい法的ほうてき統制とうせい行政ぎょうせい救済きゅうさい発展はってんおくれる要因よういんとなっていた。

治安ちあん管理かんり処罰しょばつ条例じょうれい[ちゅう 8]施行しこうにより、行政ぎょうせい処罰しょばつたいする不服ふふくうったえが急増きゅうぞうし、行政ぎょうせい事件じけん全般ぜんぱん適用てきようされる統一とういつてき訴訟そしょう手続てつづき整備せいび必要ひつようせい認識にんしきされた。その結果けっか、「行政ぎょうせい訴訟そしょうほう」が制定せいていされた。どうほうは、人民法院じんみんほういん司法しほう審査しんさ対象たいしょうを「具体ぐたいてき行政ぎょうせい行為こうい」(日本にっぽんほう行政ぎょうせい処分しょぶんにおおむね相当そうとうする)に限定げんていしている。その行為こうい根拠こんきょ条規じょうき上位じょうい法令ほうれいへの適合てきごうせいについては、原則げんそくとして司法しほう審査しんさおよばない。裁量さいりょう行為こういについては、裁量さいりょう逸脱いつだつ有無うむについては司法しほう審査しんさおよぶが、とう不当ふとうにはこれがおよばない。ただし、人民法院じんみんほういんは、いちじるしく公正こうせいしっする行政ぎょうせい処罰しょばつについては、変更へんこう判決はんけつをすることができる。行政ぎょうせい訴訟そしょう事件じけん認容にんようりつは、日本にっぽん同様どうようひくい。

行政ぎょうせい不服ふふく審査しんさについては「行政ぎょうせいふくほう」が規定きていする。どうほうそれ自体じたい行政ぎょうせい不服ふふく審査しんさ行政ぎょうせい訴訟そしょうとの自由じゆう選択せんたく主義しゅぎ[ちゅう 9]採用さいようしているが、個別こべつ法令ほうれい行政ぎょうせい不服ふふく審査しんさまえおけ規定きていするれいおおい。行政ぎょうせい不服ふふく審査しんさでは、具体ぐたいてき行政ぎょうせい行為こういたいする不服ふふく審査しんさ付帯ふたいして、その行為こうい根拠こんきょ条規じょうきたいする不服ふふく審査しんさをももうてることができるのが特徴とくちょうである。

行政ぎょうせい作用さようともな損害そんがい補填ほてんは、包括ほうかつして、「国家こっか賠償ばいしょう」(日本にっぽんほう国家こっか補償ほしょう相当そうとうする)とばれる。「国家こっか賠償ばいしょう」には、違法いほう行政ぎょうせい作用さようもとづく損害そんがい補填ほてんする「行政ぎょうせい賠償ばいしょう」(日本にっぽんでいう国家こっか賠償ばいしょうたるが、「工作こうさく人員じんいん」の故意こい過失かしつ要件ようけんとはされていない)と、適法てきほう行政ぎょうせい作用さようもとづく損害そんがい補填ほてんする「行政ぎょうせい補償ほしょう」(日本にっぽんほうでいうとがあるが、「国家こっか賠償ばいしょうほう」には、これらのほかに、「刑事けいじ賠償ばいしょう」(日本にっぽんでいう刑事けいじ補償ほしょうたる)も規定きていされている。

法学ほうがく教育きょういく法曹ほうそう養成ようせい

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共和きょうわこく法学ほうがく教育きょういくは、文化ぶんかだい革命かくめい終結しゅうけつ再建さいけんされるまで、ソビエト連邦れんぽう教材きょうざい翻訳ほんやくして細々こまごまおこなわれているにぎなかったが、改革かいかく開放かいほう進展しんてんともなってほう社会しゃかいてき役割やくわり向上こうじょうし、法学ほうがく一躍いちやく受験生じゅけんせい人気にんきあつめる専攻せんこうとなった。従来じゅうらい共和きょうわこくでは、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく法科ほうか大学院だいがくいん法学ほうがく教育きょういく資源しげん集中しゅうちゅうしているのとはことなり、学部がくぶレベルの法学ほうがく教育きょういくおこなわれてた。近年きんねんはアメリカの法務ほうむ博士はかせ課程かていにならった法律ほうりつせき課程かてい導入どうにゅうされるにいたっている。教育きょういく科目かもくは、幅広はばひろ総花そうかてきであるのが特徴とくちょうであるといわれる。教育きょういく方法ほうほうは、伝統でんとうてき講義こうぎ形式けいしき中心ちゅうしんである。共和きょうわこくでは、専門せんもんてき法学ほうがく教育きょういくけていないものを「裁判さいばんいん」や「検察けんさついん」に登用とうようしてきた経緯けいいもあって、法律ほうりつ実務じつむたいする法学ほうがく教育きょういくさかんにおこなわれている。

法曹ほうそう資格しかくは、原則げんそくとして、国家こっか統一とういつ司法しほう試験しけん合格ごうかくしたものにのみあたえられる。「裁判さいばんいん」や「検察けんさついん」に任命にんめいされるには、さら公務員こうむいん試験しけんにも合格ごうかくしなければならないため、新人しんじん登用とうよう支障ししょうきたしているといわれている。日本にっぽん司法研修所しほうけんしゅうしょのような、法曹ほうそうさんしゃ横断おうだんてき養成ようせい制度せいど存在そんざいしない。


脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 陪審ばいしんいん」といっても「裁判さいばんいん」(職業しょくぎょう裁判官さいばんかん)と同等どうとう権限けんげんって審理しんり参加さんかするものであり、また人民じんみん陪審ばいしんいんだけの合議ごうぎたい裁判さいばんをするわけではなく、実態じったいは「さんしんいん」である。
  2. ^ 制度せいど設計せっけいとしては日本にっぽんで2009ねんから実施じっしされた裁判さいばんいん制度せいどとほぼ同等どうとうであるが、日本にっぽん裁判さいばんいん案件あんけんごとに有権者ゆうけんしゃ名簿めいぼから選任せんにんされるのにたいして、中国ちゅうごく人民じんみん陪審ばいしんいん任期にんきせいであり任期にんきは5ねん選任せんにんかく管轄かんかつ地区ちく人民じんみん代表だいひょう大会たいかいから選定せんていされ人民じんみん陪審ばいしんいん任命にんめいされる方式ほうしきである。
  3. ^ 判決はんけつの「確定かくてい」という発想はっそうがないため、効力こうりょく発生はっせい有無うむ問題もんだいとするわけである。
  4. ^ 社会しゃかい主義しゅぎ社会しゃかいにおいては、企業きぎょうあいだ関係かんけい国家こっかによる経済けいざい計画けいかく管理かんりとも一体いったい不可分ふかぶん特殊とくしゅほう関係かんけいであるのにたいして、民法みんぽうわたし人間にんげん純粋じゅんすいに(国家こっか経済けいざいには影響えいきょうのない)私的してき行為こうい規律きりつするほうであるから、企業きぎょうあいだ関係かんけい民法みんぽう適用てきようされない、というかんがかた
  5. ^ ソビエト連邦れんぽう刑法けいほう伝統でんとういだものである。後述こうじゅつの97ねん刑法けいほう」にもがれている。
  6. ^ 公安こうあん機関きかん告訴こくそ告発こくはつ自首じしゅ審査しんさし、捜査そうさあたいする事件じけん存在そんざいすると判断はんだんすること。
  7. ^ 中国共産党ちゅうごくきょうさんとう体制たいせいにとって不都合ふつごう市民しみん不正ふせい糾弾きゅうだんする陳情ちんじょうしゃ法輪ほうりんこう信者しんじゃなどを収容しゅうようしょおく手段しゅだんとしている。
  8. ^ 前掲ぜんけいの「治安ちあん管理かんり処罰しょばつほう」の前身ぜんしんたる。
  9. ^ 行政ぎょうせい訴訟そしょう提起ていきするまえ行政ぎょうせい不服ふふく審査しんさ申立もうしたてをしてもしなくてもよい、という制度せいど

出典しゅってん

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  1. ^ 小口おぐち彦太『伝統でんとう中国ちゅうごくほう制度せいど』10ぺーじ 成文せいぶんどう 2012ねん ISBN 4792332958
  2. ^ 小口こぐち2012 11ぺーじ
  3. ^ 小口こぐち2012 12ぺーじ
  4. ^ 小口こぐち2012 14ぺーじ
  5. ^ 小口こぐち2012 14-15ぺーじ
  6. ^ 小口こぐち2012 15ぺーじ
  7. ^ 小口こぐち2012 16-19ぺーじ
  8. ^ a b c d e f g h i j 宇田川うだがわ(2009ねん)12ページ
  9. ^ [1]
  10. ^ ちゅう国民こくみん法典ほうてんについて(日本にっぽん民法みんぽうとの比較ひかく中心ちゅうしんに)”. ざい中国ちゅうごく日本国にっぽんこく大使館たいしかん. 2021ねん7がつ29にち閲覧えつらん
  11. ^ たとえば「中国ちゅうごくにおける物件ぶっけん行為こういろん展開てんかい」(小田おだ美佐子みさこ たていのちかん法学ほうがく 2004/03)[2]PDF-P.6以降いこうくわしい

参考さんこう文献ぶんけん

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  • あいだ正道せいどう鈴木すずきけん高見澤たかみざわみがく宇田川うだがわ幸則ゆきのり現代げんだい中国ちゅうごくほう入門にゅうもんだい4はん]』(有斐閣ゆうひかく東京とうきょう、2006ねんISBN 4-641-04798-7
  • あゆきょう正訓せいくんへん『アジアほうガイドブック』(2009ねん名古屋大学出版会なごやだいがくしゅっぱんかい宇田川うだがわ幸則ゆきのりだい1しょう中国ちゅうごく

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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みん商事しょうじ実体じったいほう

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民事みんじ訴訟そしょうほう

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司法しほう制度せいど

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