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光円錐 - Wikipedia

特殊とくしゅおよび一般いっぱん相対性理論そうたいせいりろんにおいて、ひかり円錐えんすい(こうえんすい えい: light cone)とはある事象じしょう英語えいごばん時空じくうじょういちてん)からあらゆる方向ほうこうけてはっせられた閃光せんこうえが時空じくううえ軌跡きせきをいう。 ある次元じげん平面へいめんうえめられたひかりかんがえてみれば、事象じしょう E ではっせられたこう同心円どうしんえんじょうひろがっていき、時間じかんあらわすたてじくくわえれば、ひかり軌跡きせき円錐えんすいえがく。これを来光らいこう円錐えんすいぶ。過去かこひかり円錐えんすいは、これを時間じかん反転はんてんしたものであり、えん半径はんけい光速こうそくちぢまり、事象じしょう E においていちてん収縮しゅうしゅくする。空間くうかん次元じげんは3であるので、こうは2次元じげん平面へいめんじょうえんではなく3次元じげん空間くうかんじょう球面きゅうめんえがいてひろがっていく4次元じげん時空じくうじょうちょう円錐えんすい英語えいごばん(3次元じげん空間くうかんじょう円錐えんすい断面だんめん次元じげん平面へいめんじょうえんとなるのと同様どうよう)である。しかし、この概念がいねん可視かししわかりやすくするため、2次元じげん空間くうかんかんがえる。

2+1次元じげん時空じくうにおけるひかり円錐えんすい

数式すうしきあらわせば座標ざひょう (x,y,z,t)下記かきしきたす事象じしょう集合しゅうごうである。

信号しんごうその因果いんが関係かんけい伝播でんぱ光速こうそくえることができないため(特殊とくしゅ相対性理論そうたいせいりろんおよび量子りょうしもつれこう参照さんしょうのこと)、ひかり円錐えんすい因果律いんがりつ定義ていぎするじょう重要じゅうよう役割やくわりたす。ある事象じしょう E について、E の過去かこ円錐えんすいないふくまれる事象じしょうぐん信号しんごうおくって E になんらかの影響えいきょうあたえることが可能かのうである。たとえば、E のじゅうねんまえにおいて E に将来しょうらい影響えいきょうあたえうるような事象じしょうをすべてあつめると、 E が将来しょうらいこることになる位置いち中心ちゅうしんとする球体きゅうたい(2次元じげんならば円盤えんばん)をす。したがって、この球面きゅうめんじょうおよびその内側うちがわにあるてん光速こうそくあるいはそれよりおそ速度そくど伝播でんぱする信号しんごうおくり、事象じしょう E に影響えいきょうおよぼすのに十分じゅうぶん時間じかんがあるということになる。ぎゃくに、その瞬間しゅんかんにこの球面きゅうめん外側そとがわにあるてんけっして E に影響えいきょうおよぼすことはできない。同様どうように、事象じしょう E の「未来みらいひかり円錐えんすいふくまれる事象じしょうは E の位置いち時刻じこくから信号しんごうることができるすべてのてんふくむので、来光らいこう円錐えんすいには E から相対そうたいろんてき因果律いんがりつしたがって影響えいきょうける可能かのうせいのある事象じしょうすべふくまれている。

数学すうがくてき構成こうせい

編集へんしゅう

特殊とくしゅ相対性理論そうたいせいりろんにおいて、ひかり円錐えんすい(もしくはヌル円錐えんすい えい: null cone)はミンコフスキー時空じくううえにおいて閃光せんこう時間じかん発展はってんするめん記述きじゅつする。これをさん次元じげん空間くうかんじょう可視かしするためには、ふたつの水平すいへいじくふたつの空間くうかん次元じげんに、ひとつのたてじく時間じかんにわりあてればよい[1]

ひかり円錐えんすいつぎのように構成こうせいできる。事象じしょう p を時刻じこく t0 における閃光せんこうひかりパルス)とすると、この  p からはっしたパルスが到達とうたつできるすべての事象じしょうは p の来光らいこう円錐えんすい形成けいせいし、ぎゃくに p にひかりパルスをおくることのできるすべての事象じしょうp過去かこひかり円錐えんすい形成けいせいする。

ある事象じしょう E について、時空じくうじょうすべての事象じしょうつぎの5つのカテゴリーにけることができる。

  • E の来光らいこう円錐えんすいじょうにある事象じしょう
  • E の過去かこひかり円錐えんすいじょうにある事象じしょう
  • E の来光らいこう円錐えんすい内側うちがわにあり、E からはっした物質ぶっしつ粒子りゅうしから影響えいきょう事象じしょう
  • E の過去かこひかり円錐えんすい内側うちがわにあり、そこからはっした物質ぶっしつ粒子りゅうしが E でなにこるかに影響えいきょうあた事象じしょう
  • これ以外いがいすべての事象じしょうは E の(絶対ぜったい他所よそ (elsewhere)[訳語やくご疑問ぎもんてん] にあり、E の影響えいきょうけることも E に影響えいきょうあたえることも不可能ふかのうである。

うえ分類ぶんるいはどのような基準きじゅんけいもちいてもわらない。つまり、ある観測かんそくしゃがある事象じしょうひかり円錐えんすい内側うちがわにあると判断はんだんしたならば、すべての観測かんそくしゃからても、基準きじゅんけいかかわらずどうこう円錐えんすい内側うちがわにあるということである。これがこの概念がいねん強力きょうりょくさの理由りゆうである。

ここまでは特定とくてい位置いち特定とくてい時刻じこくこる事象じしょうについてべてきた。ある事象じしょうがもうひとつの事象じしょう影響えいきょうおよぼすことができないということは、ひかりがある位置いちからべつ位置いちに「あたえられた時間じかんないに」到達とうたつすることができないということである。それらの事象じしょうからはっするひかり究極きゅうきょくてきにはべつ事象じしょうの「以前いぜんの」位置いちには到達とうたつするが、それがその事象じしょうこってしまった「」になるということである。

時間じかんすすむにつれ、ある事象じしょう来光らいこう円錐えんすいはよりおおくの位置いちかこむことになる(いいかえれば、4次元じげん時空じくうじょうひかり円錐えんすいのある時刻じこくにおける断面だんめんである3次元じげん空間くうかんじょう球面きゅうめんは、時刻じこくのちになるにつれておおきくなる)。同様どうように、ある事象じしょうから時間じかんさかのぼることをかんがえると、その事象じしょう過去かこひかり円錐えんすい来光らいこう円錐えんすいおなじように時間じかんさかのぼるにつれてよりおおくの事象じしょうかこむことになる。よりとお位置いち当然とうぜんより時間じかんってからになる。今日きょう地球ちきゅうこる事象じしょう過去かこひかり円錐えんすいれいにとれば、いちまん光年こうねんはなれたほしいちまんねん以上いじょうさかのぼらなければひかり円錐えんすいなかふくまれない。 今日きょう地球ちきゅうこるある事象じしょう過去かこひかり円錐えんすいは、そのはしほうでは非常ひじょうとお物体ぶったいをも(観測かんそく宇宙うちゅう存在そんざいするすべてをも)ふくむことになるが、非常ひじょうむかし宇宙うちゅうわかかったころの姿すがたることになる。

ことな場所ばしょで(ある基準きじゅんけいで)おな時刻じこくこるふたつの事象じしょうつね相手あいて過去かこひかり円錐えんすいにも来光らいこう円錐えんすいにもふくまれない。ひかり瞬時しゅんじつたわることはできないからである。もちろん、観測かんそくしゃにはこれらふたつの事象じしょうべつ時刻じこくべつ場所ばしょこるようにえるだろうが、どちらにせよどちらのひかり円錐えんすいにもはいらないことはおなじなのである。

真空しんくうなか光速こうそくを1とするような単位たんいけい使つかえば、たとえば距離きょり単位たんいひかりびょうとし時間じかん単位たんいびょうとすれば、こうは1びょうのうちに真空しんくうちゅうを1ひかりびょうだけすすむので、ひかり円錐えんすいかたむきは 45° となる。特殊とくしゅ相対性理論そうたいせいりろんにおいては光速こうそくすべての慣性かんせいけいにおいて不変ふへんであるから、すべての観測かんそくしゃひかり円錐えんすいおなじく 45° のかたむきをつ。ローレンツ変換へんかん性質せいしつあらわすには一般いっぱんてきミンコフスキーダイアグラム英語えいごばんもちいられる。ある事象じしょうひかり円錐えんすい外側そとがわの、いちつながりの部分ぶぶん他所よそ (elsewhere)[訳語やくご疑問ぎもんてん]ぶ。たがいに他所よそ関係かんけいにある事象じしょう相互そうご観測かんそく不可能ふかのうであり、因果律いんがりつてきつながることはできない。

(45° という数字すうじ空間くうかんてき意味いみしかたない。実際じっさい時空じくう性質せいしつ理解りかいするために空間くうかんおとしていているためである。空間くうかんてきかたむきは角度かくどはかられ、三角さんかく関数かんすう計算けいさんされる。これにたいして、時空じくうてきかたむきはラピディティによってはかられ、双曲線そうきょくせん関数かんすうにより計算けいさんされる。)

一般いっぱん相対性理論そうたいせいりろんにおけるひかり円錐えんすい

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重力じゅうりょく崩壊ほうかいこしほしがブラックホールとなる瞬間しゅんかん近傍きんぼうにおけるひかり円錐えんすい紫色むらさきいろ破線はせん重力じゅうりょく崩壊ほうかいしつつあるほし表面ひょうめんからはっせられるひかり軌跡きせきしめす。緑色みどりいろいちてん鎖線させん特異とくいてんへとちるひかり軌跡きせきしめす。

平坦へいたん時空じくうにおいては、ある事象じしょう来光らいこう円錐えんすいはその因果いんがてき未来みらい英語えいごばん境界きょうかいであり、 過去かこひかり円錐えんすいはその因果いんがてき過去かこ英語えいごばん境界きょうかいである。

がった時空じくうでは、大域たいいきそうきょく時空じくう英語えいごばん仮定かていした場合ばあいはある事象じしょう来光らいこう円錐えんすいがその因果いんがてき未来みらい境界きょうかいふくことまではつ(過去かこ同様どうよう)。しかし、重力じゅうりょくレンズ効果こうかによりひかり円錐えんすい一部いちぶ自身じしん内側うちがわまれ、ひかり円錐えんすい一部いちぶ因果いんがてき未来みらい(もしくは過去かこ)の境界きょうかいではなくその厳密げんみつ内側うちがわとなることもありうる。

また、すべてのひかり円錐えんすい平行へいこうかたむきをつことはなくなる。このことは時空じくうがっておりミンコフスキー空間くうかんとは本質ほんしつてきことなっていることを反映はんえいしている。真空しんくう領域りょういきちゅう物質ぶっしつ存在そんざいしない時空じくう領域りょういき)においては、すべてのひかり円錐えんすい平行へいこうでないことはワイルテンソル英語えいごばんれいとなることを意味いみする。

関連かんれん項目こうもく

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出典しゅってん

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  1. ^ Penrose, Roger (2005). The Road to Reality. London: Vintage Books. ISBN 0-09-944068-7 

外部がいぶリンク

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