旧きゅう朝鮮半島ちょうせんはんとう出身しゅっしん労働ろうどう者しゃ問題もんだい

旧きゅう朝鮮半島ちょうせんはんとう出身しゅっしん労働ろうどう者しゃ問題もんだい（きゅうちょうせんはんとうしゅっしんろうどうしゃもんだい）とは、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中なか日本にっぽんの統治とうち下かにあった朝鮮ちょうせんでの日本にっぽん企業きぎょうによる募集ぼしゅう（自由じゆう募集ぼしゅう）、朝鮮ちょうせん総督そうとく府ふが応募おうぼ者しゃを募集ぼしゅうした官かん斡旋あっせん、1944年ねん9月がつから総督そうとく府ふが対象たいしょう者しゃ個人こじんに直接ちょくせつ「徴用ちょうよう令状れいじょう」を発給はっきゅうして労務者ろうむしゃをあつめた徴用ちょうようによる動員どういんの三種さんしゅによる元もと労働ろうどう者しゃ及およびその遺族いぞくによる訴訟そしょう問題もんだい。メディアでは単たんに徴用ちょうよう工こう問題もんだいという。

概要がいよう

1961年ねん5月がつ10日とおかに日本にっぽんの外務省がいむしょうで日にち韓かん両国りょうこくの当局とうきょく者しゃが徴用ちょうよう被害ひがい者しゃへ補償ほしょう問題もんだいを協議きょうぎした。日本にっぽん側がわが被害ひがい者しゃへの個別こべつ支給しきゅうを主張しゅちょうしたのに対たいし、経済けいざい建設けんせつの資金しきんを必要ひつようとしていた韓国かんこく側がわは政府せいふへの一括いっかつ支給しきゅうを主張しゅちょうした。交渉こうしょうは日本にっぽんが無償むしょうで提供ていきょうする3億おくドルに含ふくめることで妥結だけつし、1965年ねんの請求せいきゅう権けん協定きょうてい第だい2条じょうでは「両国りょうこくは請求せいきゅう権けん問題もんだいが完全かんぜんかつ最終さいしゅう的てきに解決かいけつされたことになることを確認かくにんする」とされた。韓国かんこく政府せいふは1970年代ねんだいに一人ひとりあたり30万まんウォン支給しきゅうしたが、盧武鉉のむひょん政権せいけん時代じだいの2005年ねんに「韓かん日にち会談かいだん文書ぶんしょ公開こうかい後続こうぞく対策たいさく関連かんれん官民かんみん共同きょうどう委員いいん会かい」は保証ほしょうが不十分ふじゅうぶんだったとの結論けつろんを下くだした。韓国かんこく政府せいふは特別とくべつ法ほうをつくり、遺族いぞくに2000万まんウォン（約やく200万まん円えん）、1970年代ねんだいに30万まんウォンを受うけ取とっていた人ひと・遺族いぞくには234万まん分ふん減額げんがくした金額きんがくを支給しきゅうしている。

「韓かん日にち請求せいきゅう権けん協定きょうていとその後ごの政府せいふ補償ほしょう措置そちで個人こじん請求せいきゅう権けんは消滅しょうめつした」「賠償ばいしょうを含ふくめた責任せきにんは韓国かんこく政府せいふが持もつべきだ」というのが政府せいふ見解けんかいであるとの結論けつろんを下くだした盧武鉉のむひょん政権せいけんに後のちには文ぶん在ざい寅とらも大統領だいとうりょう首席しゅせき秘書官ひしょかんとして決定けっていに加くわわっていた。2012年ねんや2018年ねんに個人こじん請求せいきゅう権けんは消滅しょうめつしていないため個人こじんは責任せきにん企業きぎょうになお請求せいきゅうできるとの判決はんけつが韓国かんこくの最高裁さいこうさい(大法たいほう院いん)から下くだされた際さい、大統領だいとうりょうになっていた文ぶんは、英国えいこく・米国べいこく・フランスのように「外交がいこう問題もんだいは司法しほう府ふが政府せいふの立場たちばを尊重そんちょうする」という司法しほう自制じせいの原則げんそくを持もち出だすといった措置そちはとらなかった。

2018年ねん（平成へいせい30年ねん）11月1日にち以降いこうから日本国にっぽんこく政府せいふは、募集ぼしゅう工こうや官かん斡旋あっせん工こうの存在そんざいを無視むしした「徴用ちょうよう工こう」という表現ひょうげんから「旧きゅう朝鮮半島ちょうせんはんとう出身しゅっしん労働ろうどう者しゃ」という表現ひょうげんを使つかっている。安倍あべ首相しゅしょう（当時とうじ）は国家こっか総動員そうどういん法ほう（1938年ねん制定せいてい）の下したで国民こくみん徴用ちょうよう令れいには募集ぼしゅう、官かん斡旋あっせん、徴用ちょうようがあり、2018年ねん10月がつ30日にちの大法たいほう院いんでの原告げんこく4名めいはいずれも「募集ぼしゅう」に応おうじた人ひとたちであることを指摘してきしている。韓国かんこく政府せいふは国家こっか総動員そうどういん法ほう以降いこうならば募集ぼしゅう工こうによる労働ろうどう者しゃも含ふくめ、「日にち帝みかど強きょう占うらない期き強制きょうせい徴用ちょうよう被害ひがい者しゃ」、「日にち帝みかど強きょう占うらない期き強制きょうせい動員どういん被害ひがい者しゃ」との表現ひょうげんを用もちいている。そのため、池上いけがみ彰あきらは、募集ぼしゅう主ぬしの差さはあれど希望きぼう者しゃを集あつめた募集ぼしゅう工こうと官かん斡旋あっせんまでも1944年ねん9月がつ以降いこうの徴用ちょうよう労働ろうどう者しゃであるかのように誤解ごかいを招まねく表現ひょうげんを用もちいることへ苦言くげんを呈ていしている。これに対たいし、むしろ韓国かんこくでは、植民しょくみん地ち時代じだいの募集ぼしゅうと官かん斡旋あっせんによる動員どういんも事実じじつ上じょうは朝鮮ちょうせん総督そうとく府ふによる強制きょうせい的てきなものであり、安倍あべ発言はつげんは、その強制きょうせい性せいを希薄きはくにさせるための思惑おもわくか、朝鮮ちょうせん人じんを強制きょうせい動員どういんしたという事実じじつを否定ひていないし規模きぼを縮小しゅくしょうしようとする策略さくりゃくのように受取うけとるむきもあるという。

2022年ねん6月がつ時点じてんで、原告げんこく数すうは延のべ1000人にん超ちょう、被告ひこく企業きぎょうは計けい115社しゃにのぼる。韓国かんこくで同様どうようの訴訟そしょうが進行しんこう中ちゅうの日本にっぽんの企業きぎょうは、三菱重工業みつびしじゅうこうぎょう、不二越ふじこし、IHIなど70社しゃを超こえる。2022年ねん6月がつ末まつで30数すう件けんが係属けいぞく中ちゅうで、うち9件けんは大法たいほう院いん（最高裁さいこうさい）の審理しんり中ちゅう。大法たいほう院いんで日本にっぽん企業きぎょうの賠償ばいしょう判決はんけつが確定かくていしたのは計けい3件けん（2018年ねん10月がつ確定かくていの日本にっぽん製鉄せいてつ（旧きゅう新日鉄しんにってつ住金すみきん）訴訟そしょう1件けんと同年どうねん11月がつ確定かくていの三菱重工業みつびしじゅうこうぎょう訴訟そしょう2件けん）。

日本にっぽんの旧きゅう朝鮮半島ちょうせんはんとう出身しゅっしん労働ろうどう者しゃへの補償ほしょうについて、韓国かんこく政府せいふは1965年ねんの日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていで「解決かいけつ済ずみ」としてきたが、大法たいほう院いんは日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていで個人こじんの請求せいきゅう権けんは消滅しょうめつしていないとしたため、日本にっぽん政府せいふは日にち韓かん関係かんけいの「法的ほうてき基盤きばんを根本こんぽんから覆くつがえすもの」だとして強つよく反発はんぱつした。当時とうじの首相しゅしょうであった安倍晋三あべしんぞう首相しゅしょうは「本件ほんけんは1965年ねん（昭和しょうわ40年ねん）の日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていで完全かんぜんかつ最終さいしゅう的てきに解決かいけつしている。今般こんぱんの判決はんけつは国際こくさい法ほうに照てらしてあり得えない判断はんだんだ。日本にっぽん政府せいふとしては毅然きぜんと対応たいおうする」と強調きょうちょうした。この安倍あべの発言はつげん内容ないようの当否とうひについては、日本にっぽんの法律ほうりつ家かからも異ことを唱となえる声こえも多おおい。

日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていには、両国りょうこくに紛争ふんそうが起おきた際さいは協議きょうぎによる解決かいけつを図はかり、解決かいけつしない場合ばあいは「仲裁ちゅうさい」という手続てつづきが定さだめられている。2019年ねんに日本にっぽん政府せいふはこの手続てつづきにより解決かいけつしない場合ばあい、国際司法裁判所こくさいしほうさいばんしょへの提訴ていそも視野しやに入いれていることが報道ほうどうされた。

旧きゅう朝鮮半島ちょうせんはんとう出身しゅっしん労働ろうどう者しゃ問題もんだいは、2018年ねんに韓国かんこくの最高裁さいこうさいである大法たいほう院いんの原告げんこくを勝訴しょうそさせる判決はんけつから始はじまり、革新かくしん系けい最大さいだい与党よとう（当時とうじ）の「共ともに民主党みんしゅとう」の支持しじ層そうに近ちかい人々ひとびとが反日はんにちに火ひを付つけ、同どう党とう支持しじ系けいメディアの報道ほうどうで加熱かねつした問題もんだいだったため、韓国かんこくにおいても保守ほしゅ系けい最大さいだい野党やとう「自由じゆう韓国かんこく党とう」の支持しじ層そうの中なかには国際こくさい裁判所さいばんしょでは日本にっぽんの勝訴しょうそが予想よそうされると主張しゅちょうする者ものもいた。逆ぎゃくに、日本にっぽんにおいては、主おもに法律ほうりつ家かから日本にっぽんの主張しゅちょうに否定ひてい的てきな者ものも多おおかった。

2022年ねんに大統領だいとうりょうに就任しゅうにんした尹いん錫すず悦えつは、2023年ねん3月がつ6日にちに韓国かんこく政府せいふとしての旧きゅう朝鮮半島ちょうせんはんとう出身しゅっしん労働ろうどう者しゃ問題もんだいの解決かいけつ案あんを表明ひょうめいした。この内容ないように関かんして、日本にっぽん政府せいふ・岸田きしだ文雄ふみお首相しゅしょうから評価ひょうかする旨むねが示しめされた。

訴訟そしょうの原告げんこくたちの来歴らいれき

旧きゅう「日本にっぽん製鉄せいてつ」に対たいする訴訟そしょう（1997-2003，2005-2018）の原告げんこくたち

呂りょ運うん澤さわ (募集ぼしゅう工こう→現員げんいん徴用ちょうよう)

• 1923年ねん、全羅北道ぜんらほくどう益山ますやまで生うまれる。
• 1939-1941年ねん、日本人にっぽんじん経営けいえいの雑貨ざっか店てんに勤務きんむ。
• 1941-42年ねん、朝鮮ちょうせん無煙炭むえんたん株式会社かぶしきがいしゃ（平壌ぴょんやん）に転職てんしょく。
• 1942-43年ねん、理髪りはつ店てんに転職てんしょく。
• 1943年ねん、理髪りはつ店てんの客きゃくから日本にっぽん製鉄せいてつの工員こういん募集ぼしゅうの話はなしを聞きき、新聞しんぶん広告こうこくでも確認かくにん。募集ぼしゅう条件じょうけんは「技術ぎじゅつを学まなべ、二に年ねん後ごには技術ぎじゅつ者しゃとしての待遇たいぐうを受うけることも可能かのう」。平壌ぴょんやん職業しょくぎょう紹介しょうかい所しょを通つうじてこの募集ぼしゅうに応募おうぼ。
• 1943年ねん9月がつ、定員ていいん100名めいに対たいし、500名めいの応募おうぼ。知しり合あいの日本人にっぽんじん校長こうちょうに推薦すいせん文ぶんを記しるした名刺めいしをもらい、面接めんせつ官かんに提出ていしゅつ。面接めんせつ試験しけんに合格ごうかく。
• 「日本にっぽんで技術ぎじゅつを習得しゅうとくすることに大おおきな期待きたいをかけていたため、日本にっぽんまで移動いどうする間あいだ、逃亡とうぼうするつもりはなかった」
• 日本にっぽん製鉄せいてつの大阪おおさか製鉄せいてつ所しょに配属はいぞく。日本にっぽんに出発しゅっぱつ前まえに1〜3か月げつ、団体だんたい行動こうどうの訓練くんれん。大阪おおさかへ配属はいぞく後ごは午前ごぜん中ちゅうに軍事ぐんじ訓練くんれん、午後ごごに作業さぎょう訓練くんれん。
• 試験しけんをうけて合格ごうかく、日本人にっぽんじん工員こういんの指導しどう下かで起重機きじゅうきを操作そうさし、銑鉄せんてつと古鉄ふるかねを平炉へいろに投入とうにゅうする作業さぎょうに従事じゅうじ。
• 1944年ねん2月がつ、現員げんいん徴用ちょうようをうける。
• 1945年ねん3月がつ、大阪おおさか空襲くうしゅうにより大阪おおさか製鉄せいてつ所しょが焼失しょうしつ。
• 1945年ねん6月がつ、日本にっぽん製鉄せいてつが朝鮮ちょうせん人じん労働ろうどう者しゃを朝鮮ちょうせん・咸鏡北道ほくどう清きよし津つ製鉄せいてつ所しょに配置はいち転換てんかんしたのにともない、六ろく月がつ末まつに清きよし津つに移動いどう。一いちか月げつあまり製鉄せいてつ所しょ建設けんせつのための土木どぼく工事こうじに従事じゅうじ。
• 1945年ねん8月がつ9日にち、清きよし津つにソ連それん軍ぐんが上陸じょうりく開始かいし、清きよし津つ製鉄せいてつ所しょの日本人にっぽんじん・朝鮮ちょうせん人じん職員しょくいんは山中さんちゅうに避難ひなんした後のち、茂山しげやま、城しろ津つへと移動いどう。呂りょ運うん澤さわは城しろ津つで一いち行ぎょうとは別べつ行動こうどうを取とり、歩あるいて京きょう城しろに到達とうたつ。約やく二に年間ねんかん勤務きんむした給与きゅうよ総額そうがく（推定すいてい）約やく2,400円えんのうち、貯金ちょきん445円えん、賃金ちんぎん50円えん52銭ぜにを受うけ取とることができなかった。
• 1997-2003年ねん、申さる千せん洙とともに、日本にっぽんの裁判所さいばんしょにおいて「強制きょうせい連行れんこうと強制きょうせい労働ろうどうに対たいする慰謝いしゃ料りょうと未払金みはらいきんの支給しきゅう」を求もとめる訴訟そしょう。敗訴はいそ。
• 2005-2018年ねん、申さる千せん洙、李り春はる植うえ、金きむ圭けい洙とともに、韓国かんこくの裁判所さいばんしょにて訴訟そしょう。勝訴しょうそ。

申さる千せん洙(募集ぼしゅう工こう→現員げんいん徴用ちょうよう)

• 1926年ねん、全羅南道ぜんらなんどう長城ちょうじょうで生うまれる。
• 1942-43年ねん、京きょう城じょうの酒場さかばで働はたらく。
• 1943年ねん、平壌ぴょんやんの日本人にっぽんじんの食堂しょくどうで羊羹ようかんの製造せいぞうに従事じゅうじ。
• 1943年ねん9月がつ、食堂しょくどうの前まえに平壌ぴょんやん職業しょくぎょう紹介しょうかい所しょによる日本にっぽん製鉄せいてつの工員こういん募集ぼしゅうの張はり紙がみが掲示けいじされる。
• 1943年ねん9月がつ、定員ていいん100名めいに対たいし、500名めいの応募おうぼ。面接めんせつ試験しけんに合格ごうかく。
• 「日本にっぽんで技術ぎじゅつを習得しゅうとくすることに大おおきな期待きたいをかけていたため、日本にっぽんまで移動いどうする間あいだ、逃亡とうぼうするつもりはなかった」
• 日本にっぽん製鉄せいてつの大阪おおさか製鉄せいてつ所しょに配属はいぞく。日本にっぽんに出発しゅっぱつ前まえに1〜3か月げつ、団体だんたい行動こうどうの訓練くんれん。大阪おおさかへ配属はいぞく後ごは午前ごぜん中ちゅうに軍事ぐんじ訓練くんれん、午後ごごに作業さぎょう訓練くんれん。
• 試験しけんをうけるも不ふ合格ごうかく、石炭せきたんを焚たいて熱あついガスを溶鉱炉ようこうろに送おくる仕事しごとに従事じゅうじ。
• 1944年ねん2月がつ、現員げんいん徴用ちょうようをうける。
• 1945年ねん3月がつ、大阪おおさか空襲くうしゅうにより大阪おおさか製鉄せいてつ所しょが焼失しょうしつ。
• 1945年ねん6月がつ、日本にっぽん製鉄せいてつが朝鮮ちょうせん人じん労働ろうどう者しゃを朝鮮ちょうせん・咸鏡北道ほくどう清きよし津つ製鉄せいてつ所しょに配置はいち転換てんかんしたのにともない、六ろく月がつ末まつに清きよし津つに移動いどう。一いちか月げつあまり製鉄せいてつ所しょ建設けんせつのための土木どぼく工事こうじに従事じゅうじ。
• 1945年ねん8月がつ9日にち、清きよし津つにソ連それん軍ぐんが上陸じょうりく開始かいし、清きよし津つ製鉄せいてつ所しょの日本人にっぽんじん・朝鮮ちょうせん人じん職員しょくいんは山中さんちゅうに避難ひなんした後のち、茂山しげやま、城しろ津つへと移動いどう。申さる千せん洙は茂山しげやまから汽車きしゃに乗のって京きょう城しろに到達とうたつし、日本にっぽん製鉄せいてつの支社ししゃを訪おとずれたが、皆みな去さった後のちだった。約やく二に年間ねんかん勤務きんむした給与きゅうよ総額そうがく（推定すいてい）約やく2,400円えんのうち、貯金ちょきん410円えん、賃金ちんぎん57円えん44銭ぜにを受うけ取とることができなかった。
• 1997-2003年ねん、呂りょ運うん澤さわとともに、日本にっぽんの裁判所さいばんしょにおいて「強制きょうせい連行れんこうと強制きょうせい労働ろうどうに対たいする慰謝いしゃ料りょうと未払金みはらいきんの支給しきゅう」を求もとめる訴訟そしょう。敗訴はいそ。
• 2005-2018年ねん、呂りょ運うん澤さわ、李り春はる植うえ、金きむ圭けい洙とともに、韓国かんこくの裁判所さいばんしょにて訴訟そしょう。勝訴しょうそ。

李り春はる植うえ(募集ぼしゅう工こう)

• 1924年ねん、全羅南道ぜんらなんどう羅ら州しゅうで生うまれる。
• 1941年ねん、大田おおた市しが募集ぼしゅうした国民こくみん勤労きんろう報国ほうこく隊たいに応募おうぼ。本人ほんにんはのちの裁判さいばんで「報国ほうこく隊たいとして日本にっぽんに連つれて行いかれた」と主張しゅちょうしているものの、当時とうじの法令ほうれいを背景はいけいに否定ひていされている。
• 「日本にっぽんで技術ぎじゅつを習得しゅうとくすることに大おおきな期待きたいをかけていたため、日本にっぽんまで移動いどうする間あいだ、逃亡とうぼうするつもりはなかった」
• 日本にっぽん製鉄せいてつの釜石かまいし製鉄せいてつ所しょに配属はいぞく。日本にっぽんに出発しゅっぱつ前まえに1〜3か月げつ、団体だんたい行動こうどうの訓練くんれん。釜石かまいしへ配属はいぞく後ごは午前ごぜん中ちゅうに軍事ぐんじ訓練くんれん、午後ごごに作業さぎょう訓練くんれん。
• 1944年ねん、釜石かまいし製鉄せいてつ所しょを辞職じしょく。その後ごに徴兵ちょうへいされて軍事ぐんじ訓練くんれんを受うけた後のち、神戸こうべ地域ちいきで米べい軍ぐん捕虜ほりょの監視かんし員いんとなる。
• 約やく三さん年間ねんかん勤務きんむした給与きゅうよのうち、賃金ちんぎん23円えん80銭ぜに分ぶんを受うけ取とることができなかった。
• 2005-2018年ねん、呂りょ運うん澤さわ、申さる千せん洙、金きむ圭けい洙とともに、韓国かんこくの裁判所さいばんしょにて訴訟そしょう。「（日本にっぽん製鉄せいてつでは）三さん年間ねんかん働はたらいたが、月給げっきゅうをもらったことがない」と主張しゅちょう。勝訴しょうそ。

金きむ圭けい洙(募集ぼしゅう工こう)

• 1929年ねん、全羅北道ぜんらほくどうで生うまれる。
• 1943年ねん、全羅北道ぜんらほくどう群ぐん山やまで行おこなわれた日本にっぽん製鉄せいてつの募集ぼしゅうに応募おうぼ、採用さいようされ、工員こういんとして選抜せんばつされた。
• 「日本にっぽんで技術ぎじゅつを習得しゅうとくすることに大おおきな期待きたいをかけていたため、日本にっぽんまで移動いどうする間あいだ、逃亡とうぼうするつもりはなかった」
• 北九州きたきゅうしゅうの八幡やはた製鉄せいてつ所しょに配属はいぞく。日本にっぽんに出発しゅっぱつ前まえに1〜3か月げつ、団体だんたい行動こうどうの訓練くんれん。八幡やはたへ配属はいぞく後ごは午前ごぜん中ちゅうに軍事ぐんじ訓練くんれん、午後ごごに作業さぎょう訓練くんれん。
• 約やく二に年間ねんかん勤務きんむした給与きゅうよのうち、給料きゅうりょう40円えん、退職たいしょく手当てあて10円えん20銭ぜにを受うけ取とることができなかった。
• 2005-2018年ねん、呂りょ運うん澤さわ、申さる千せん洙、李り春はる植うえとともに、韓国かんこくの裁判所さいばんしょにて訴訟そしょう。勝訴しょうそ。

旧きゅう朝鮮半島ちょうせんはんとう出身しゅっしん労働ろうどう者しゃ訴訟そしょうの経緯けいい

2005年ねん以前いぜん

韓国かんこく政府せいふや韓国かんこくメディアは、戦後せんご補償ほしょうについて「完全かんぜんかつ最終さいしゅう的てきに解決かいけつした」と、1965年ねんの日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていを当時とうじ韓国かんこく国民こくみんに積極せっきょく的てきに周知しゅうちを行おこなうことがなかったため、民間みんかんレベルではその後ごも日本にっぽん政府せいふへの戦後せんご補償ほしょうを求もとめる訴うったえや抗議こうぎ活動かつどうを行おこない続つづけていた。

1997年ねん、呂りょ運うん澤さわと申さる千せん洙は日本にっぽん政府せいふと新しん日本にっぽん製鉄せいてつ（旧きゅう新しん日本にっぽん製鉄せいてつ，のち新日鉄しんにってつ住金すみきん）に対たいして「強制きょうせい連行れんこうと強制きょうせい労働ろうどうに対たいする慰謝いしゃ料りょうと未払金みはらいきんの支給しきゅう」を求もとめて日本にっぽんの大阪おおさか地方裁判所ちほうさいばんしょに訴訟そしょうを起おこした。この提訴ていそは大阪おおさかの地方裁判所ちほうさいばんしょ・高等こうとう裁判所さいばんしょを経へて、2003年ねん、最高裁さいこうさいの判決はんけつがくだり、原告げんこくの請求せいきゅうは棄却ききゃくされた。

ただし戦後せんご補償ほしょうがこの協定きょうていにより完全かんぜん解決かいけつしていることは、政府せいふレベルでは韓国かんこく側がわ議事ぎじ録ろくでも確認かくにんされ、日本にっぽん政府せいふもこの協定きょうていにより日にち韓かん間あいだの請求せいきゅう権けん問題もんだいが解決かいけつしたとしてきた。

盧武鉉のむひょん政権せいけんによる政策せいさく変更へんこう（2005年ねん）

日本にっぽん国こくに対たいして新あらたな賠償ばいしょう請求せいきゅうを主張しゅちょうしだした盧武鉉のむひょん大統領だいとうりょう

しかしながら、2005年ねんの盧武鉉のむひょん政権せいけんから、韓国かんこく政府せいふは慰安いあん婦ふ、サハリン残留ざんりゅう韓国かんこく人じん、韓国かんこく人じん原爆げんばく被害ひがい者しゃの問題もんだいについては日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていの対象たいしょう外がいだったと主張しゅちょうし始はじめた。

また2005年ねん4月がつ21日にち、韓国かんこくの与野党よやとう議員ぎいん27人にんが、1965年ねんの日にち韓かん基本きほん条約じょうやくが屈辱くつじょく的てきであるとして破棄はきし、同時どうじに日本にっぽん統治とうち下かに被害ひがいを受うけた個人こじんへの賠償ばいしょうなどを義務付ぎむづける内容ないようの新あたらしい条約じょうやくを改あらためて締結ていけつするよう求もとめる決議けつぎ案あんを韓国かんこく国会こっかいに提出ていしゅつするとともに、日にち韓かん両りょう政府せいふが日にち韓かん基本きほん条約じょうやく締結ていけつの過程かていを外交がいこう文書ぶんしょですべて明あきらかにした上うえで韓国かんこく政府せいふが日本にっぽんに謝罪しゃざいさせるよう要求ようきゅうした。

日にち韓かん会談かいだん文書ぶんしょ公開こうかい直後ちょくごの2005年ねん8月がつに韓国かんこくは「韓かん日にち会談かいだん文書ぶんしょ公開こうかいの後続こうぞく対策たいさく官民かんみん共同きょうどう委員いいん会かい」を設もうけ、日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていは両国りょうこくの財政ざいせい的てき・民事みんじ的てき債務さいむ関係かんけいを解決かいけつするためのもので、反はん人道的じんどうてき違法いほう行為こういは解決かいけつされたわけではないとの公式こうしき立場たちばを表明ひょうめいした。その一方いっぽうで、日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていを通つうじ日本にっぽんから受うけ取とった3億おくドルは、個人こじん財産ざいさん権けんと強制きょうせい動員どういん被害ひがい補償ほしょう問題もんだい解決かいけつの性格せいかくを帯おびた資金しきんなどが包括ほうかつ的てきに勘案かんあんされたとみるべきであるため、政府せいふが相当そうとう額がくを被害ひがい者しゃ救済きゅうさいに使つかわなければならない道義どうぎ的てき責任せきにんがあると、あいまいな立場たちばを堅持けんじした。

これを基もとに韓国かんこく政府せいふは、「太平洋戦争たいへいようせんそう強制きょうせい動員どういん犠牲ぎせい者しゃ支援しえん法ほう」を制定せいていし、2008年ねんから人道的じんどうてきレベルで苦痛くつうを慰労いろうするとの名目めいもくで、未払みはらい賃金ちんぎん被害ひがい者しゃらに1円えん当あたり2,000大韓民国だいかんみんこくウォンに換算かんさんして慰労いろう金きんを支給しきゅうしている。しかし、被害ひがい者しゃらは物価ぶっか上昇じょうしょう分ぶんが十分じゅうぶんに反映はんえいされていない上じょう、日本にっぽんであれ韓国かんこく政府せいふであれ加害かがい者しゃの謝罪しゃざいがないと反発はんぱつし、一部いちぶは受うけ取とりを拒否きょひしている。

但ただし、官民かんみん共同きょうどう委いは、「交渉こうしょう過程かていにおいて韓かん日にち両国りょうこくがサンフランシスコ協定きょうていにより法的ほうてき根拠こんきょのある権利けんりだけを議論ぎろんすることを明確めいかくにしたこと、不法ふほう行為こういについて全まったく議論ぎろんがなかったこと等とうを勘案かんあんすると、不法ふほう行為こういは請求せいきゅう権けん協定きょうていの物的ぶってき範囲はんいに含ふくまれない。 したがって、軍ぐん慰安いあん婦ふ、徴用ちょうようの過程かていにおける暴力ぼうりょく的てき行為こういなどに関かんする被害ひがい者しゃ個人こじんの不法ふほう行為こうい賠償ばいしょう請求せいきゅう権けんは消滅しょうめつしておらず、必要ひつような場合ばあい、国家こっかの外交がいこう保護ほご権けんの行使こうしも可能かのう」と、軍ぐん慰安いあん婦ふ、徴用ちょうようの過程かていにおける暴力ぼうりょく的てき行為こういなど不法ふほう行為こういに対たいする賠償ばいしょう請求せいきゅう権けんは請求せいきゅう権けん協定きょうていに含ふくまれないと結論けつろん付つけた。（韓かん日にち国交こっこう正常せいじょう化か交渉こうしょう文書ぶんしょ公開こうかいなど対策たいさく企画きかく団だん活動かつどう白書はくしょp68）

韓国かんこく政府せいふが元もと徴用ちょうよう工こうの対たい日にち補償ほしょう請求せいきゅうはできないと表明ひょうめい（2009年ねん）

2009年ねん8月がつ14日にち、ソウル行政ぎょうせい裁判所さいばんしょは、大韓民国だいかんみんこく外交がいこう通商つうしょう部ぶが裁判所さいばんしょに提出ていしゅつした書面しょめんを通つうじ「日本にっぽんに動員どういんされた被害ひがい者しゃ（未払みはらい賃金ちんぎん）供託きょうたく金きんは請求せいきゅう権けん協定きょうていを通つうじ、日本にっぽんから無償むしょうで受うけ取とった3億おくドルに含ふくまれているとみるべきで、日本にっぽん政府せいふに請求せいきゅう権けんを行使こうしするのは難むずかしい」と明あきらかにした。韓国かんこく政府せいふがこのような見解けんかいを示しめしたのは1965年ねんに日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていが締結ていけつされて以降いこう、初はじめてになる。韓国かんこく政府せいふは過去かこ数すう十じゅう年間ねんかんこの問題もんだいに対たいし戦略せんりゃく的てきにあいまいな態度たいどを示しめしてきたが、外交がいこう通商つうしょう部ぶのこの表明ひょうめいは旧きゅう朝鮮半島ちょうせんはんとう出身しゅっしん労働ろうどう者しゃらに還付かんぷされるべき賃金ちんぎんを韓国かんこくが日本にっぽんから代かわりに受うけ取とり、韓国かんこく国民こくみん個人こじんの権利けんりを消滅しょうめつさせたことを公式こうしきに認みとめたものとなった。

日本にっぽんの厚生省こうせいしょうは終戦しゅうせん翌年よくねんの1946年ねん、日本にっぽん企業きぎょうに対たいして朝鮮ちょうせん人じんに対たいする未払みはらい額がくを供託きょうたく所しょに供託きょうたくするよう指示しじしており、ソウル行政ぎょうせい裁判所さいばんしょは、2009年ねん8月がつ現在げんざい、日本にっぽんに供託きょうたく形態けいたいで保管ほかんされたままとなっている韓国かんこく・朝鮮ちょうせん人じんへの不払ふばらい賃金ちんぎん額がくは、強制きょうせい動員どういん労務者ろうむしゃ2億おく1500万まん円えん、軍人ぐんじん・軍属ぐんぞく9100万まん円えんなどで総額そうがく3億おく600万まん円えんとなっているとした。

韓国かんこく大法たいほう院いん、日本にっぽん企業きぎょうの徴用ちょうよう者しゃに対たいする賠償ばいしょう責任せきにんを認みとめる（2012年ねん）

詳細しょうさいは「新日鉄しんにってつ株かぶ金きん強制きょうせい徴用ちょうよう訴訟そしょう/朝鮮ちょうせん語ご版ばんページ」を参照さんしょう

韓国かんこく政府せいふは元もと徴用ちょうよう工こうの対たい日にち補償ほしょう請求せいきゅうはできないと表明ひょうめいしていたが、韓国かんこく大法たいほう院いんは2012年ねん5月23日にち、日にち韓かん併合へいごう時どきの日本にっぽん企業きぎょうによる徴用ちょうよう者しゃの賠償ばいしょう請求せいきゅうを初はじめて認みとめた。元もと徴用ちょうよう工こう8人にんが三菱重工業みつびしじゅうこうぎょうと新しん日本にっぽん製鉄せいてつを相手あいてに起おこした損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう訴訟そしょうの上告じょうこく審しんで、原告げんこく敗訴はいそ判決はんけつの原審げんしんを破棄はきし、原告げんこく勝訴しょうその趣旨しゅしで事案じあんをそれぞれ釜山ぷさん高だか法ほうとソウル高だか法ほうに差さし戻もどした。韓国かんこく大法たいほう院いんは「1965年ねんに締結ていけつされた日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていは日本にっぽんの植民しょくみん地ち支配しはいの賠償ばいしょうを請求せいきゅうするための交渉こうしょうではないため、日にち帝みかどが犯おかした反はん人道的じんどうてき不法ふほう行為こういに対たいする個人こじんの損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう権けんは依然いぜんとして有効ゆうこう」とし、「消滅しょうめつ時効じこうが過すぎて賠償ばいしょう責任せきにんはないという被告ひこくの主張しゅちょうは信義しんぎ誠実せいじつの原則げんそくに反はんして認みとめられない」と主張しゅちょうした。また、元もと徴用ちょうよう工こうが日本にっぽんで起おこした同どう趣おもむきの訴訟そしょうで敗訴はいそ確定かくてい判決はんけつが出でたことに対たいしても、「日本にっぽんの裁判所さいばんしょの判決はんけつは植民しょくみん地ち支配しはいが合法ごうほう的てきだという認識にんしきを前提ぜんていとしたもので、強制きょうせい動員どういん自体じたいを不法ふほうと見みなす大韓民国だいかんみんこく憲法けんぽうの核心かくしん的てき価値かちと正面しょうめんから衝突しょうとつするため、その効力こうりょくを承認しょうにんすることはできない」と主張しゅちょうした。

相次あいつぐ旧きゅう朝鮮半島ちょうせんはんとう出身しゅっしん労働ろうどう者しゃと遺族いぞくによる裁判さいばん

韓国かんこくの下級かきゅう裁判所さいばんしょでは旧きゅう朝鮮半島ちょうせんはんとう出身しゅっしん労働ろうどう者しゃと遺族いぞくが日本にっぽん企業きぎょう3社しゃ（新しん日本にっぽん製鉄せいてつ、三菱重工業みつびしじゅうこうぎょう、不二越ふじこし）に損害そんがい賠償ばいしょうを求もとめる裁判さいばんを相次あいついで起おこしている。

2013年ねん2月がつ、富山とやま市しの機械きかいメーカー不二越ふじこしによる戦時せんじ中ちゅうの動員どういんに対たいして、13人にんと遺族いぞくが計けい17億おくウォン（約やく1億おく5000万まん円えん）の賠償ばいしょうを求もとめる訴訟そしょうをソウル中央ちゅうおう地裁ちさいに起おこした。

2013年ねん3月がつ、旧きゅう・日本にっぽん製鐵せいてつの釜石かまいし製鉄せいてつ所しょ（岩手いわて県けん）と八幡やはた製鉄せいてつ所しょ（福岡ふくおか県けん）に強制きょうせい動員どういんされた元もと朝鮮ちょうせん人じん労務者ろうむしゃら8人にんが、新しん日本にっぽん製鉄せいてつ（当時とうじ・新日鉄しんにってつ住金すみきん）に8億おくウォン（約やく7000万まん円えん）支払しはらいを要求ようきゅうしてソウル中央ちゅうおう地裁ちさいに損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう訴訟そしょうをおこした。2013年ねん7月がつ10日とおか、ソウル高裁こうさいは判決はんけつで新日鉄しんにってつ住金すみきんに賠償ばいしょうを命めいじたが、その後ご新日鉄しんにってつ住金すみきんは上告じょうこくした。菅かん義よし偉えら 官房かんぼう長官ちょうかんは「日にち韓かん間あいだの財産ざいさん請求せいきゅう権けんの問題もんだいは解決かいけつ済ずみという我わが国くにの立場たちばに相あいいれない判決はんけつであれば容認ようにんできない」とコメントした。

2013年ねん11月8日にちにソウルで行おこなわれた日にち韓かん外務がいむ次官じかん級きゅう協議きょうぎでは、日本にっぽんの外務がいむ審議しんぎ官かんの杉山すぎやま晋すすむ輔が韓国かんこくの外務がいむ第だい1次官じかんである金きむ奎顕（キム・ギュヒョン）に対たいし、元もと徴用ちょうよう工こう問題もんだいで韓国かんこく大法たいほう院いんで日本にっぽん企業きぎょうの敗訴はいそが確定かくていした場合ばあい、日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていに基もとづき韓国かんこく側がわに協議きょうぎを求もとめる方針ほうしんを伝つたえた。また韓国かんこく側がわが協議きょうぎに応おうじなかったり、協議きょうぎが不調ふちょうに終おわった場合ばあいは国際司法裁判所こくさいしほうさいばんしょへの提訴ていそのほか、第三国だいさんごくの仲裁ちゅうさい委員いいんを入いれた処理しょりを検討けんとうすると表明ひょうめいした。

2015年ねん12月24日にち現在げんざい、確認かくにんされただけで係争けいそう中ちゅうの裁判さいばんが13件けんあり、このうち5件けんで日本にっぽん企業きぎょう側がわに損害そんがい賠償ばいしょうを命めいじる判決はんけつが出でており、3件けんが韓国かんこく大法たいほう院いんの判断はんだんを待まつ状態じょうたいになっている。

韓国かんこく憲法けんぽう裁判所さいばんしょ、「日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていは違憲いけん」の訴うったえを却下きゃっか（2015年ねん）

韓国かんこく憲法けんぽう裁判所さいばんしょは2015年ねん12月23日にち、1965年ねんに締結ていけつされた日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていは違憲いけんだとする元もと徴用ちょうよう工こうの遺族いぞくの訴うったえを審判しんぱんの要件ようけんを満みたしていないとして却下きゃっかした。原告げんこくである元もと徴用ちょうよう工こうの遺族いぞくは、韓国かんこく政府せいふによる元もと徴用ちょうよう工こうへの支援しえん金きん支給しきゅうの金額きんがくの算定さんてい方法ほうほうや対象たいしょう範囲はんいを不服ふふくとして、支給しきゅうを定さだめた韓国かんこくの国内こくない法ほうと日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていが財産ざいさん権けんなどを侵害しんがいしているとし、韓国かんこくの憲法けんぽうに違反いはんしていると告訴こくそしていた。韓国かんこく憲法けんぽう裁判所さいばんしょの決定けっていは国内こくない法ほうの不備ふびを認みとめず、支援しえん金きん支給しきゅうに関かんして日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていが「適用てきようされる法律ほうりつ条項じょうこうだとみるのは難むずかしい」とした。また日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていが仮かりに違憲いけんであっても原告げんこくの請求せいきゅうには影響えいきょうしないとし、審判しんぱんの要件ようけんを満みたしていないと却下きゃっかした。

中国ちゅうごくで三菱みつびしマテリアルによる謝罪しゃざいと賠償ばいしょうによる和解わかい（2016年ねん）

1972年ねん、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくと日本にっぽんは、国交こっこう正常せいじょう化かにおいて日にち中ちゅう共同きょうどう声明せいめいを発表はっぴょう、中国ちゅうごくは「日にち中ちゅう両りょう国民こくみんの友好ゆうこうのために、日本にっぽんに対たいする戦争せんそう賠償ばいしょうの請求せいきゅうを放棄ほうきする」と宣言せんげんした。2016年ねん6月1日にち、中国人ちゅうごくじんによる損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう訴訟そしょうにおいて、三菱みつびしマテリアルは謝罪しゃざいと一人ひとり当あたり10万まん元もと（約やく170万まん円えん）の支払しはらいを行おこなう内容ないようで、北京ぺきん市しで原告げんこくと和解わかいを行おこなった。総額そうがくで約やく64億おく円えんとなり第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後こう最大さいだい規模きぼの和解わかいとなった。

韓国かんこく下級かきゅう裁判所さいばんしょにおける判決はんけつ

2016年ねん8月がつ23日にち、ソウル中央ちゅうおう地方裁判所ちほうさいばんしょは新日鉄しんにってつ住金すみきんに対たいし元もと徴用ちょうよう工こう遺族いぞくらに計けい約やく1億おくウォン（約やく890万まん円えん)の支払しはらいを命めいじる判決はんけつを出だした。

2016年ねん8月がつ25日にち、ソウル中央ちゅうおう地方裁判所ちほうさいばんしょは三菱重工業みつびしじゅうこうぎょうに対たいし元もと徴用ちょうよう工こう遺族いぞくら64人にんに被害ひがい者しゃ1人にんあたり9000万まんウォン（約やく800万まん円えん）ずつ賠償ばいしょうするよう命めいじる判決はんけつを出だした。

2016年ねん11月23日にち、ソウル中央ちゅうおう地方裁判所ちほうさいばんしょは不二越ふじこしに対たいし元もと女子じょし勤労きんろう挺身ていしん隊たいの5人にんに1人ひとりあたり1億おくウォン(約やく950万まん円えん)の支払しはらいを命めいじる判決はんけつを出だした。

大法たいほう院いん及および法ほう院いん行政ぎょうせい所しょ

韓国かんこく大法たいほう院いんは2018年ねんまでの約やく5年間ねんかん徴用ちょうよう工こう訴訟そしょうについて判決はんけつを出だしていなかったが、2018年ねんに韓国かんこくの検察けんさつ当局とうきょくは朴ほお槿むくげ恵めぐみ政権せいけん期きに大法たいほう院いんが大統領だいとうりょう府ふや外交がいこう省しょうと協議きょうぎし故意こいに判決はんけつを先送さきおくりしてきた疑うたがいがあるとし法ほう院いん行政ぎょうせい所しょの元もと幹部かんぶなどを起訴きそ。2018年ねん12月3日にちには職権しょっけん乱用らんようなどの容疑ようぎで当時とうじ大だい法官ほうかん（最高裁さいこうさい判事はんじ）だった朴ほお炳大の逮捕たいほ状じょうをソウル中央ちゅうおう地裁ちさいに請求せいきゅうしたが、ソウル中央ちゅうおう地裁ちさいは12月7日にちに逮捕たいほ状じょうの請求せいきゅうを棄却ききゃくした。

大法たいほう院いんが新日鉄しんにってつ住金すみきんに対たいし損害そんがい賠償ばいしょうを命めいじる（2018年ねん）

2018年ねん10月30日にち、韓国かんこくの最高裁さいこうさいにあたる大法たいほう院いんは差さし戻もどし審しんで新しん日本にっぽん製鉄せいてつ（当時とうじ・新日鉄しんにってつ住金すみきん）に対たいし韓国かんこく人じん4人にんへ1人ひとりあたり1億おくウォン（約やく1000万まん円えん）の損害そんがい賠償ばいしょうを命めいじた。徴用ちょうよう工こう訴訟そしょうにおいて大法たいほう院いんで結審けっしんしたのは初はじめて。これにより、新日鉄しんにってつ住金すみきんの韓国かんこく内ないの資産しさん差さし押おさえの可能かのう性せいがでてきた。韓国かんこくで同様どうようの訴訟そしょうが進行しんこう中ちゅうの日本にっぽんの企業きぎょうは、三菱重工業みつびしじゅうこうぎょう、不二越ふじこし、IHIなど70社しゃを超こえており、この判決はんけつ以降いこう韓国かんこくの政府せいふ機関きかんや支援しえんする財団ざいだんに「訴訟そしょうを起おこしたい」という問とい合あわせの電話でんわが鳴なり止やまない状況じょうきょうが続つづいている。

2018年ねん10月がつ30日にちの大法たいほう院いんの判決はんけつでは提訴ていそ期限きげんの基準きじゅんを示しめしておらず控訴こうそ審しんの裁判所さいばんしょの判断はんだんは分わかれている。韓国かんこく側がわは提訴ていそ期限きげんの起算きさん点てんを、1965年ねん（国交こっこう正常せいじょう化か時じ）、2005年ねん8月（韓国かんこくが請求せいきゅう権けん協定きょうていに関かんする見解けんかいを表明ひょうめいした時とき）、2012年ねん5月（大法たいほう院いんが個人こじん的てき請求せいきゅう権けんに関かんする判断はんだんを行おこなった時とき）、2018年ねん10月がつ（大法たいほう院いんが損害そんがい賠償ばいしょうを命めいじる判決はんけつを行おこなった時とき）などを想定そうていしており、日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていで全すべて解決かいけつ済ずみだとする日本にっぽんとの損害そんがい賠償ばいしょう訴訟そしょうをめぐる新あらたな争そう点てんとして浮上ふじょうしている。

韓国かんこく政府せいふに対たいする集団しゅうだん訴訟そしょう

2018年ねん12月、戦時せんじ中ちゅうに日本にっぽん企業きぎょうに徴用ちょうようされたとする韓国かんこく人じんとその遺族いぞくが、1965年ねんの日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていで日本にっぽん政府せいふから3億おくドルの無償むしょう支援しえんを受うけ取とった韓国かんこく政府せいふに補償ほしょう責任せきにんがあるとして、韓国かんこく政府せいふに対たいして1人ひとり当あたり1億おくウォン（約やく1千せん万まん円えん）の補償ほしょう金きんの支払しはらいを求もとめる集団しゅうだん訴訟そしょうを提起ていきすることが明あきらかになった。

韓国かんこく政府せいふの提案ていあん

2020年ねん10月がつ31日にち、韓国かんこく政府せいふが日本にっぽん政府せいふに「企業きぎょうが賠償ばいしょうに応おうじれば、後のちに韓国かんこく政府せいふが全額ぜんがくを穴埋あなうめする」という案あんを非公式ひこうしきに日本にっぽん政府せいふに打診だしんして拒否きょひされていたことが判明はんめいした。

韓国かんこく下級かきゅう裁判所さいばんしょが大法たいほう院いん判決はんけつを否定ひていする（2021年ねん）

2021年ねん6月7日にち、日本にっぽん企業きぎょう16社しゃを相手取あいてどり損害そんがい賠償ばいしょうを求もとめた元もと徴用ちょうよう工こうらの訴訟そしょうでソウル中央ちゅうおう地方裁判所ちほうさいばんしょは原告げんこくの訴うったえを却下きゃっかする判決はんけつをい渡いわたした。判決はんけつは、日本にっぽんが1965年ねんの日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていに基もとづいて提供ていきょうした計けい5億おくドルの支援しえんが「『漢江かんこうの奇跡きせき』と評ひょうされる輝かがやかしい経済けいざい成長せいちょうに寄与きよした」とした。日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていは、日にち韓かんの請求せいきゅう権けん問題もんだいは「完全かんぜんかつ最終さいしゅう的てきに解決かいけつされる」としているが、元もと徴用ちょうよう工こうらは日本にっぽんの経済けいざい協力きょうりょくが少すくないことなどを根拠こんきょに、日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていで元もと徴用ちょうよう工こうの請求せいきゅう権けんは解決かいけつされなかったと主張しゅちょうしており、判決はんけつが日本にっぽんの「寄与きよ」に言及げんきゅうしたのは、こうした主張しゅちょうを否定ひていする根拠こんきょの一ひとつとしたためである。2018年ねんの大法たいほう院いん判決はんけつは、賠償ばいしょう命令めいれいは日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていに違反いはんしないとしたが、今回こんかいの判決はんけつは、賠償ばいしょうを命めいじれば国際こくさい法ほうである日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていに違反いはんしかねないと判断はんだんした。判決はんけつは日本にっぽん企業きぎょうに賠償ばいしょうを命めいじた2018年ねんの韓国かんこく大法たいほう院いん判決はんけつとは正せい反対はんたいとなったが、保守ほしゅ系けい『朝鮮日報ちょうせんにっぽう』は「前例ぜんれいのない混乱こんらんだ。歴史れきし問題もんだいを政治せいじ的てきに利用りようしてきた文ぶん在ざい寅とら政権せいけんと、超ちょう法規ほうき的てきな判決はんけつを出だした大法たいほう院いんの責任せきにんだ」と文ぶん在ざい寅とら大統領だいとうりょうと大法たいほう院いんを批判ひはんした。

日本にっぽんの対応たいおう

2018年ねん11月1日にち、自由民主党じゆうみんしゅとうは日本にっぽん政府せいふに対たいし日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていに基もとづく協議きょうぎや仲裁ちゅうさいの速すみやかな開始かいしを韓国かんこくに申もうし入いれるよう求もとめる決議けつぎをまとめた。

原告げんこく代理人だいりにん弁護士べんごしが新日鉄しんにってつ住金すみきん本社ほんしゃへ

2018年ねん11月12日にち、原告げんこく代理人だいりにんの韓国かんこく人じん弁護士べんごしが東京とうきょう都と千代田ちよだ区くの新日鉄しんにってつ住金すみきん本社ほんしゃに入館にゅうかんしようとしたが、警備けいび員いんから遺憾いかんの意いを伝達でんたつされ出入でいりを阻止そしされた。原告げんこく代理人だいりにん弁護士べんごしは、2018年ねん12月4日にちにも再ふたたび新日鉄しんにってつ住金すみきん本社ほんしゃを訪おとずれたが、面会めんかいを拒こばまれたため、進藤しんどう孝生たかお社長しゃちょうに対たいする要請ようせい書しょを受付うけつけに残のこして帰かえったのち、日本外国特派員協会にほんがいこくとくはいんきょうかいで記者きしゃ会見かいけんを開ひらき、差押さしおさえの手続てつづきを開始かいしする用意よういがあることを明あきらかにした。

同月どうげつには日本にっぽんの外務省がいむしょうの金杉かなすぎ憲治けんじアジア大洋たいよう州しゅう局きょく長ちょうが大韓民国だいかんみんこく外交がいこう部ぶを訪おとずれ、差さし押おさえに対たいする遺憾いかんの意いを伝つたえると共ともに問題もんだいの解決かいけつに向むけ協議きょうぎを行おこなった。

日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていに基もとづく日本にっぽん政府せいふの対応たいおう

韓国かんこく政府せいふは司法しほうの判断はんだんには介入かいにゅうできないとの立場たちばで、日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていで解決かいけつ済ずみとする日本にっぽん政府せいふとの間あいだで協議きょうぎが全まったく進展しんてんしないため、2019年ねん1月がつ9日にち日本にっぽん政府せいふは日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていに基もとづく2国こく間あいだ協議きょうぎを韓国かんこく政府せいふに要請ようせいした。しかし韓国かんこく政府せいふは、司法しほうが徴用ちょうよう工こうの個人こじん賠償ばいしょう請求せいきゅう権けんは日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていの効力こうりょく範囲はんいに含ふくまれないとしているとして全まったく応おうじないため、5月20日にち日本にっぽん政府せいふは日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていに基もとづき日にち韓かんと第三国だいさんごくの委員いいんを加くわえる形式けいしきによる仲裁ちゅうさい委員いいん会かい開催かいさいを要請ようせい。これにも応おうじないため、6月19日にち第三国だいさんごくに委員いいんの人選じんせんを委ゆだねる形式けいしきの仲裁ちゅうさい委員いいん会かい開催かいさいを要請ようせい。1か月げつ後ごの7月がつ18日にちに第三国だいさんごくを選定せんていする期限きげんが来きても韓国かんこく政府せいふは応おうじなかった。現在げんざい、日本にっぽん政府せいふは韓国かんこくに対たいし国際こくさい法ほうを遵守じゅんしゅするよう強つよく要請ようせいしている。

個人こじん請求せいきゅう権けんの解釈かいしゃく

1965年ねんの日にち韓かん請求せいきゅう権けん並ならびに経済けいざい協力きょうりょく協定きょうてい（日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうてい）によって、日にち韓かんの財産ざいさん及および請求せいきゅう権けん問題もんだいに関かんする外交がいこう的てき保護ほご権けんが放棄ほうきされた。

韓国かんこく政府せいふは条約じょうやく締結ていけつ以降いこう2000年ねん頃ころまでは請求せいきゅう権けん協定きょうていによって個人こじん請求せいきゅう権けんが消滅しょうめつしたという立場たちばであったが、その立場たちばを変遷へんせんさせ2000年ねんには放棄ほうきされたのは外交がいこう保護ほご権けんであり個人こじんの請求せいきゅう権けんは消滅しょうめつしていないとの趣旨しゅしの外交がいこう通商つうしょう部ぶ長官ちょうかんの答弁とうべんがなされた。

旧きゅう朝鮮半島ちょうせんはんとう出身しゅっしん労働ろうどう者しゃの訴訟そしょうは当初とうしょ日本にっぽんの裁判所さいばんしょで争あらそわれたが、最高裁判所さいこうさいばんしょは日本にっぽんにおける韓国かんこく民みんの財産ざいさん請求せいきゅう権けんは「日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうてい協定きょうてい第だい二に条じょうの実施じっしに伴ともなう大韓民国だいかんみんこく等とうの財産ざいさん権けんに対たいする措置そちに関かんする法律ほうりつ」（財産ざいさん措置そち法ほう）により消滅しょうめつしているとし、個人こじん請求せいきゅう権けんはあるが請求せいきゅうを認みとめる権能けんのうがないと認みとめなかった。そのため、今度こんどは韓国かんこくの裁判所さいばんしょで争あらそわれるようになった。2018年ねん10月30日にち、韓国かんこくの大法たいほう院いんは徴用ちょうよう工こうの個人こじん賠償ばいしょう請求せいきゅう権けんを認みとめ、裁判官さいばんかんの多おおくが徴用ちょうよう工こうの個人こじん賠償ばいしょう請求せいきゅう権けんは日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていの効力こうりょく範囲はんいに含ふくまれないと判断はんだんした。

韓国かんこくの対たい日にち請求せいきゅうに関かんする問題もんだいには、徴用ちょうよう工こう訴訟そしょうのほか、慰安いあん婦ふ問題もんだい、サハリン残留ざんりゅう韓国かんこく人じん、韓国かんこく人じん原爆げんばく被害ひがい者しゃの問題もんだい、日本にっぽんに略奪りゃくだつされたと主張しゅちょうされる文化財ぶんかざいの返還へんかん問題もんだいがある。

日本にっぽん政府せいふ

日本にっぽん政府せいふは、1965年ねんの日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていについてその締結ていけつの当初とうしょから個人こじん請求せいきゅう権けんは消滅しょうめつしていないと解釈かいしゃくしていた。日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうてい締結ていけつ時じの外務省がいむしょうの内部ないぶ文書ぶんしょには日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうてい第だい二に条じょうの意味いみは外交がいこう保護ほご権けんを行使こうししないと約束やくそくしたもので、個人こじんが相手あいて国こくに請求せいきゅう権けんを持もたないということではないと書かかれていた。このような日本にっぽん政府せいふの解釈かいしゃくは日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうてい締結ていけつ前まえから一貫いっかんしたものであった。というのも、原爆げんばくやシベリア抑留よくりゅうの被害ひがい者しゃが、日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていに先立さきだって締結ていけつされたサンフランシスコ平和へいわ条約じょうやくや日にちソ共同きょうどう宣言せんげんの請求せいきゅう権けん放棄ほうき条項じょうこうにより賠償ばいしょう請求せいきゅうの機会きかいを奪うばわれたと主張しゅちょうし、日本にっぽんに補償ほしょうを求もとめる訴訟そしょうを提起ていきしたからである。この訴訟そしょうにおいて、日本にっぽんはそれらの請求せいきゅう権けん放棄ほうき条項じょうこうによって個人こじんの請求せいきゅう権けんは消滅しょうめつしないから、賠償ばいしょう請求せいきゅうの機会きかいは奪うばわれていないと主張しゅちょうした。韓国かんこくとの関係かんけいに関かんしても戦後せんご韓国かんこくに残のこる資産しさんを失うしなった日本にっぽん国民こくみんが韓国かんこくに対たいして訴訟そしょうを提起ていきする可能かのう性せいがあるため、日本にっぽんは当初とうしょから請求せいきゅう権けん放棄ほうき条項じょうこうによっては個人こじんの請求せいきゅう権けんは消滅しょうめつしないという立場たちばに立たっていた。請求せいきゅう権けん協定きょうてい締結ていけつの1年ねん後ごである1966年ねんに、協定きょうていの交渉こうしょう担当たんとう者しゃの外務がいむ事務じむ官かん谷田たにだ正ただし躬は、協定きょうていで放棄ほうきされるのは外交がいこう保護ほご権けんにすぎないから、日本にっぽん政府せいふは朝鮮半島ちょうせんはんとうに資産しさんを残のこしてきた日本人にっぽんじんに補償ほしょう責任せきにんを負おわないと解説かいせつした。

1991年ねん8月がつ27日にち、柳井やない俊二しゅんじ外務省がいむしょう条約じょうやく局長きょくちょうが参議院さんぎいん予算よさん委員いいん会かいで、「（日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていは）いわゆる個人こじんの請求せいきゅう権けんそのものを国内こくない法的ほうてきな意味いみで消滅しょうめつさせたというものではない。日にち韓かん両国りょうこく間あいだで政府せいふとしてこれを外交がいこう保護ほご権けんの行使こうしとして取とり上あげることができないという意味いみだ」と答弁とうべんしたため、それ以降いこう韓国かんこくの個人こじん請求せいきゅう権けんを根拠こんきょにした日本にっぽんへの訴訟そしょうが相次あいつぐようになった。

1992年ねん2月がつ26日にち、柳井やないは、請求せいきゅう権けん協定きょうてい2条じょう3項こうにより「国くに及および個人こじんの財産ざいさん、権利けんり及および利益りえきに対たいする措置そち」及および「請求せいきゅう権けん」に対たいする外交がいこう保護ほご権けんが消滅しょうめつしたと答弁とうべんした。そしてこの「財産ざいさん、権利けんり及および利益りえき」は協定きょうてい時じの合意ごうい議事ぎじ録ろくで「法律ほうりつ上じょうの根拠こんきょにより実体じったい法的ほうてき価値かちを認みとめられるすべての種類しゅるいの実体じったい的てき権利けんり」であることが合意ごういされていて、条約じょうやくが直接ちょくせつ外交がいこう保護ほご権けんを消滅しょうめつさせた「請求せいきゅう権けん」は実体じったい法ほう上じょうの根拠こんきょのないクレームに過すぎないと述のべた。そして、実体じったい法ほう上じょうの根拠こんきょがある「財産ざいさん、権利けんり及および利益りえき」についてはそれ自体じたいの外交がいこう保護ほご権けんが放棄ほうきされたわけではないものの、「財産ざいさん、権利けんり及および利益りえきに対たいする措置そち」として国内こくない法ほうたる1965年ねんの「財産ざいさん措置そち法ほう」によって韓国かんこく民みんの財産ざいさん権けんは消滅しょうめつしていることを明あきらかにした。

さらに、1992年ねん3月がつ9日にちの予算よさん委員いいん会かいにおいて柳井やないは「請求せいきゅう権けんの放棄ほうきということの意味いみは外交がいこう保護ほご権けんの放棄ほうきであるから、個人こじんの当事とうじ者しゃが裁判所さいばんしょに提訴ていそする地位ちいまで否定ひていするものではない」と答こたえた。また、内閣ないかく法制ほうせい局きょく長官ちょうかんの工藤くどう敦夫あつおは「外交がいこう保護ほご権けんについての定さだめが直接ちょくせつ個人こじんの請求せいきゅう権けんの存否そんぴに消長しょうちょうを及およぼすものではない」とし、「訴うったえた場合ばあいにそれらの訴訟そしょうが認みとめられるかどうかまで裁判所さいばんしょが判断はんだんする」と述のべた。

1993年ねん5月26日にちの衆議院しゅうぎいん予算よさん委員いいん会かい 丹波たんば實みのる外務省がいむしょう条約じょうやく局長きょくちょう答弁とうべんでは、日本にっぽん国内こくないにおいては韓国かんこく民みんの「財産ざいさん、権利けんり及および利益りえき」は日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていの請求せいきゅう権けん放棄ほうき条項じょうこう及および日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていを日本にっぽん国内こくないで施行しこうするための財産ざいさん措置そち法ほうによって外交がいこう的てき保護ほご権けんのみならず実体じったい的てきにその権利けんりも消滅しょうめつしているが、「請求せいきゅう権けん」は外交がいこう的てき保護ほご権けんの放棄ほうきということにとどまり個人こじんの請求せいきゅう権けんを消滅しょうめつさせるものではないとしている。

*この第だい二に条じょうの一いち項こうで言いっておりますのは、財産ざいさん、権利けんり及および利益りえき、請求せいきゅう権けんのいずれにつきましても、外交がいこう的てき保護ほご権けんの放棄ほうきであるという点てんにつきましては先生せんせいのおっしゃるとおりでございますが、しかし、この一いち項こうを受うけまして三さん項こうで先さきほど申もうし上あげたような規定きていがございますので、日本にっぽん政府せいふといたしましては国内こくない法ほうをつくりまして、財産ざいさん、権利けんり及および利益りえきにつきましては、その実体じったい的てきな権利けんりを消滅しょうめつさせておるという意味いみで、その外交がいこう的てきな保護ほご権けんのみならず実体じったい的てきにその権利けんりも消滅しょうめつしておる。ただ、請求せいきゅう権けんにつきましては、外交がいこう的てき保護ほごの放棄ほうきということにとどまっておる。個人こじんのいわゆる請求せいきゅう権けんというものがあるとすれば、それはその外交がいこう的てき保護ほごの対象たいしょうにはならないけれども、そういう形かたちでは存在そんざいし得えるものであるということでございます。

2003年ねんに参議院さんぎいんに提出ていしゅつされた小泉こいずみ総理そうりの答弁とうべん書しょでも、同どう条約じょうやくを受うけて日本にっぽん国内こくないで成立せいりつした財産ざいさん措置そち法ほうによって請求せいきゅうの根拠こんきょとなる韓国かんこく国民こくみんの財産ざいさん権けんは国内こくない法ほう上じょう消滅しょうめつした。

この財産ざいさん措置そち法ほうで消滅しょうめつしているのは韓国かんこく民みんの財産ざいさん権けんのみであるから、日本にっぽんと外国がいこくとの請求せいきゅう権けん放棄ほうき条項じょうこうにより日本にっぽん政府せいふが日本にっぽん国民こくみんより賠償ばいしょう請求せいきゅうの機会きかいを奪うばわれたとして訴訟そしょうを提起ていきされることはない。また、日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていに伴ともなう財産ざいさん措置そち法ほうは外交がいこう保護ほご権けんの放棄ほうきにより韓国かんこくから外交がいこうルートで抗議こうぎされることもない。実際じっさいに日本にっぽんの裁判所さいばんしょで争あらそわれた旧きゅう日本にっぽん製鉄せいてつ大阪おおさか訴訟そしょうにおいて、大阪おおさか高裁こうさいは2002年ねん11月19日にちの判決はんけつで協定きょうていの国内こくない法的ほうてき措置そちである財産ざいさん措置そち法ほうによる財産ざいさん権けん消滅しょうめつを根拠こんきょに一いち審しん原告げんこくの控訴こうそを棄却ききゃくしている。この裁判さいばんはその後ご上告じょうこくを棄却ききゃくされ確定かくていした。

しかし、旧きゅう朝鮮半島ちょうせんはんとう出身しゅっしん労働ろうどう者しゃの韓国かんこくでの訴訟そしょうについては、韓国かんこくは日本にっぽんの財産ざいさん措置そち法ほうを準拠じゅんきょ法ほうとしていないので、韓国かんこくの裁判所さいばんしょではこれを適用てきようしていない。1990年代ねんだい後半こうはんには日本にっぽん政府せいふに一部いちぶ不利ふりな判断はんだんが出でるようになったため、日本にっぽん政府せいふは次第しだいに戦後せんご補償ほしょうは請求せいきゅう権けん放棄ほうき条項じょうこうで解決かいけつ済ずみであるとの主張しゅちょうをするようになった。日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていに関かんしても韓国かんこく人じん個人こじんの請求せいきゅう権けんも含ふくめ協定きょうていによって一切いっさい解決かいけつ済ずみとの立場たちばを取とっている。

現在げんざいの日本にっぽん政府せいふの見解けんかいは、旧きゅう朝鮮半島ちょうせんはんとう出身しゅっしん労働ろうどう者しゃの損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう権けんについての実体じったい的てき権利けんりは消滅しょうめつしていないが、これを裁判さいばん上じょう訴求そきゅうする権利けんりが失うしなわれたというものになっている。ただし、日本にっぽん政府せいふの立場たちばを肯定こうていした2007年ねん 最高裁さいこうさい 西松建設にしまつけんせつ裁判さいばんの判決はんけつは、司法しほう上じょうの救済きゅうさいはできないとする一方いっぽうで被害ひがい者しゃ救済きゅうさいに向むけた関係かんけい者しゃの自発じはつ的てき努力どりょくを促うながした。これを受うけて、西松建設にしまつけんせつは実際じっさいに被害ひがい者しゃに対たいする謝罪しゃざいと賠償ばいしょうを行おこなった。この2007年ねんの最高裁さいこうさい判決はんけつは、判断はんだんを左右さゆうする条約じょうやく解釈かいしゃく上じょうの対立たいりつ点てんに関かんする日本にっぽん政府せいふの立場たちばを肯定こうていしつつ、同時どうじに被害ひがい者しゃ救済きゅうさいの必要ひつよう性せいを指摘してきしている。

韓国かんこく政府せいふ

一方いっぽうの韓国かんこくは日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうてい締結ていけつ当初とうしょは協定きょうていによって個人こじんの請求せいきゅう権けんが消滅しょうめつしたとの立場たちばに立たっていた。そもそも韓国かんこく政府せいふは日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうてい締結ていけつ前まえの交渉こうしょうにおいて、徴用ちょうよう工こうの未払金みはらいきん及および補償ほしょう金きんは国内こくない措置そちとして韓国かんこく側がわで支払しはらうので日本にっぽん側がわで支払しはらう必要ひつようはないと主張しゅちょうしていた。しかし、1991年ねん日本にっぽんの外務省がいむしょう条約じょうやく局長きょくちょう柳井やない俊二しゅんじによる答弁とうべんが大おおきく報道ほうどうされ日本にっぽんで個人こじんの請求せいきゅう権けんを主張しゅちょうする訴訟そしょうなども提起ていきされたため、日本にっぽんでは個人こじん請求せいきゅう権けんは外交がいこう保護ほご権けん放棄ほうき条項じょうこうに含ふくまれていないことが広ひろく知しられるようになる。すると韓国かんこくはその立場たちばを変遷へんせんさせ、2000年ねんに韓国かんこくにおいても放棄ほうきされたのは外交がいこう保護ほご権けんであり個人こじんの請求せいきゅう権けんは消滅しょうめつしていないとの趣旨しゅしの外交がいこう通商つうしょう部ぶ長官ちょうかん答弁とうべんがなされるに至いたった。また韓国かんこく政府せいふは2005年ねんに官民かんみん共同きょうどう委員いいん会かいにおいて日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていの効力こうりょく範囲はんい問題もんだいを検討けんとうし、植民しょくみん地ち支配しはい賠償金ばいしょうきんや慰安いあん婦ふ問題もんだい等ひとしの日本にっぽん政府せいふの国家こっか権力けんりょくが関与かんよした反はん人道的じんどうてき不法ふほう行為こういについては請求せいきゅう権けん協定きょうていによっては解決かいけつしておらず日本にっぽん政府せいふの法的ほうてき責任せきにんが残のこっていると結論けつろんした。ただし、徴用ちょうよう工こうについては同どう委員いいん会かいは明示めいじ的てきに日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていの効力こうりょく範囲はんい外がいに位置付いちづけず、請求せいきゅう権けん協定きょうていによって日本にっぽんから受うけ取とった資金しきんに韓国かんこく政府せいふが強制きょうせい動員どういん被害ひがい者しゃに対たいする補償ほしょう問題もんだいを解決かいけつするための資金しきんが包括ほうかつ的てきに勘案かんあんされているとし、韓国かんこく政府せいふは受うけ取とった資金しきんの相当そうとう額がくを強制きょうせい動員どういん被害ひがい者しゃに使用しようすべき道義どうぎ的てき責任せきにんがあると判断はんだんした。但ただし、徴用ちょうようの過程かていにおける暴力ぼうりょく的てき行為こういなど不法ふほう行為こういに関かんする賠償ばいしょう請求せいきゅう権けんは請求せいきゅう権けん協定きょうていの物的ぶってき範囲はんいに含ふくまれないと判断はんだんした。

旧きゅう日本にっぽん製鉄せいてつ大阪おおさか訴訟そしょうにおいては、前述ぜんじゅつのように日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていには韓国かんこく民みんの財産ざいさん権けんを消滅しょうめつさせた財産ざいさん措置そち法ほうがあるため、韓国かんこく政府せいふが日本にっぽんから受うけ取とった資金しきんを充あてるか否ひかの判断はんだんの対象たいしょうにならなかった。しかし、日本にっぽんの国内こくない法ほうである措置そち法ほうの効力こうりょくが及およばない韓国かんこくではこれらの点てんが大おおきな争点そうてんになった。

大法たいほう院いん

2012年ねん5月がつ24日にち、旧きゅう朝鮮半島ちょうせんはんとう出身しゅっしん労働ろうどう者しゃが、日本にっぽん企業きぎょうに損害そんがい賠償ばいしょう及および未み払はらい賃金ちんぎんの支払しはらいを求もとめた訴訟そしょうにおいて大法たいほう院いんが初はじめて「個人こじんの請求せいきゅう権けんは 消滅しょうめつしていない」と判決はんけつした。原告げんこく敗訴はいその原げん判決はんけつを破棄はきし、事件じけんを高等こうとう裁判所さいばんしょに差さし戻もどした。東亜日報とうあにっぽうによると当時とうじの判事はんじであった金きむ能のう煥が「建国けんこくする心情しんじょうで判決はんけつを書かいた」と語かたったという。2018年ねん10月30日にちの韓国かんこく大法たいほう院いん判決はんけつの多数たすう意見いけんは、徴用ちょうよう工こうの個人こじん賠償ばいしょう請求せいきゅう権けんは日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていの効力こうりょく範囲はんいに含ふくまれないと判断はんだんした。14人にんの裁判官さいばんかんの内うち3人にんの個別こべつ意見いけんは、徴用ちょうよう工こうの個人こじん賠償ばいしょう請求せいきゅう権けんは請求せいきゅう権けん協定きょうていの効力こうりょく範囲はんいに含ふくまれるが、両国りょうこく間あいだで外交がいこう上じょうの保護ほご権けんが放棄ほうきされたに過すぎないとした。この中なかでサンフランシスコ平和へいわ条約じょうやくについても言及げんきゅうし、個人こじん損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう権けんの放棄ほうきを明確めいかくに定さだめたサンフランシスコ平和へいわ条約じょうやくと「完全かんぜんかつ最終さいしゅう的てきな解決かいけつ」を宣言せんげんしただけの請求せいきゅう権けん協定きょうていを同おなじに解げすることは出来できないとしている。また、2人ふたりの裁判官さいばんかんの反対はんたい意見いけんは、徴用ちょうよう工こうの個人こじん賠償ばいしょう請求せいきゅう権けんは請求せいきゅう権けん協定きょうていの効力こうりょく範囲はんいに含ふくまれ、かつ、請求せいきゅう権けん協定きょうていによって日にち韓かん両りょう国民こくみんが個人こじん損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう権けんを裁判さいばん上じょう訴求そきゅうする権利けんりが失うしなわれたとした。その意見いけんによれば、個人こじん損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう権けん自体じたいは消滅しょうめつしていないものの、日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていによって外交がいこう上じょうの保護ほご権けんが放棄ほうきされただけでなく、日にち韓かん両りょう国民こくみんが個人こじん損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう権けんを裁判さいばん上じょう訴求そきゅうする権利けんりも制限せいげんされたため、個人こじん損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう権けんの裁判さいばん上じょうの権利けんり行使こうしは許ゆるされないとのことである。今回こんかいの大法たいほう院いん判決はんけつは「原告げんこくの損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう権けんは、日本にっぽん政府せいふの朝鮮半島ちょうせんはんとうに対たいする不法ふほうな植民しょくみん地ち支配しはい及および侵略しんりゃく戦争せんそうの遂行すいこうと直結ちょっけつした日本にっぽん企業きぎょうの反はん人道的じんどうてきな不法ふほう行為こういを前提ぜんていとする強制きょうせい動員どういん被害ひがい者しゃの日本にっぽん企業きぎょうに対たいする慰謝いしゃ料りょう請求せいきゅう権けんである」とし、従したがって「原告げんこくが被告ひこくに対たいして主張しゅちょうする損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう権けんは、請求せいきゅう権けん協定きょうていの適用てきよう対象たいしょうに含ふくまれると見みることはできない」としている。

その他た

• 元もと最高裁さいこうさい判事はんじで外務省がいむしょう条約じょうやく局きょくの担当たんとう者しゃとして日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていの交渉こうしょうに参加さんかした福田ふくだ博ひろしは、読売新聞よみうりしんぶんへの寄稿きこうで、当時とうじの日本にっぽん側がわ関係かんけい者しゃは請求せいきゅう権けんをめぐる問題もんだいについて、韓国かんこく側がわとの間あいだでいかなる禍根かこんも残のこさないことを考かんがえ交渉こうしょうにあたったとする。請求せいきゅう権けん協定きょうていは両国りょうこく間あいだ及およびその国民こくみんの間あいだのその請求せいきゅう権けんに関かんする問題もんだいは「完全かんぜんかつ最終さいしゅう的てきに解決かいけつ」されており、「いかなる主張しゅちょうもすることはできない」と定さだめている。これは請求せいきゅう権けんに関かんして、いずれの締約ていやく国こくでどのような根拠こんきょに基もとづいて請求せいきゅうしようとも、相手あいて国こく及およびその国民こくみんはこれに応おうじる法的ほうてき義務ぎむはないことを規定きていしたものであるというのが当時とうじの条約じょうやく起草きそう者しゃの意図いとであったとしている。日本にっぽんの企業きぎょうに当時とうじの損害そんがい賠償ばいしょうを命めいずるということは、協定きょうていの交渉こうしょう経緯けいいに反はんする解釈かいしゃくであり協定きょうてい締結ていけつのために積つみ重かさねられた日にち韓かん両国りょうこくの関係かんけい者しゃの努力どりょくを水泡すいほうに帰きすものと言いわざるを得えないとしている。
• 秦はた郁いく彦は、この判決はんけつについて「協定きょうてい上じょう、賠償金ばいしょうきんを支払しはらう義務ぎむは全まったくない。日本にっぽん政府せいふは経済けいざい政策せいさくの中なかで揺ゆさぶりをかけ、韓国かんこく内ないでの問題もんだい解決かいけつを迫せまるべきだ」「痛いたみを伴ともなわずに問題もんだいを解決かいけつさせる妙案みょうあんはない。現状げんじょうでは日本にっぽん企業きぎょう側がわが命めいじられた賠償ばいしょうは高額こうがくでなく、韓国かんこく内ないの資産しさん差さし押おさえがあっても影響えいきょうは限定げんてい的てきといえるため、企業きぎょう側がわにも『我慢がまん』が求もとめられる。個人こじん請求せいきゅう権けんをなし崩くずしに認みとめてしまえば同様どうように請求せいきゅう権けん放棄ほうきが確認かくにんされている中国ちゅうごくでも問題もんだいが再燃さいねんしかねない」と主張しゅちょうした。
• 橋下はしもと徹とおるは上記じょうきのような問題もんだい点てんを指摘してきした上うえで、結論けつろんとしては日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうていによってもはや個人こじん請求せいきゅう権けんは認みとめられないとの考かんがえを明あきらかにしている。

国際こくさい法ほうの解釈かいしゃく

• 国際こくさい法ほうが専せん門もんの東京大学とうきょうだいがく 名誉めいよ教授きょうじゅ 大沼おおぬま保たもつ昭あきらは、請求せいきゅう権けん協定きょうてい2条じょうの解釈かいしゃくについて、これまでの国際こくさい法ほうの一般いっぱん的てき解釈かいしゃくからすると個々ここの国民こくみんの権利けんりや利益りえきに関かかわるものを含ふくめて全すべての問題もんだいが包括ほうかつ的てきに解決かいけつされたと解釈かいしゃくでき、日本にっぽん政府せいふだけでなく、かつての韓国かんこく政府せいふや、米国べいこくの政府せいふ及および裁判所さいばんしょも同おなじ立場たちばだったとする。また、徴用ちょうよう工こうに関かんする2010年代ねんだいの一連いちれんの韓国かんこく裁判所さいばんしょの判断はんだんについては、人権じんけんへの考慮こうりょが他たの価値かちとそれに関かかわる判断はんだんへの考慮こうりょに優越ゆうえつして扱あつかわれるという流ながれに沿そったものではあるが、このような流ながれが拡大かくだいしていくとそもそも国家こっか間あいだで条約じょうやくを締結ていけつして問題もんだいを解決かいけつする意義いぎが揺ゆらいでしまうと指摘してきしている。
• 国際こくさい法学ほうがく者しゃで立命館大りつめいかんだい名誉めいよ教授きょうじゅの山手やまて治之はるゆきは、外交がいこう上じょうの保護ほご権けんが失うしなわれた場合ばあいの司法しほう救済きゅうさいの可否かひについて、かつての日本にっぽん政府せいふの見解けんかいを前提ぜんていとすれば韓国かんこくにおける司法しほう的てき救済きゅうさいの可否かひは韓国かんこくの国内こくない法ほうの問題もんだいとなるとしている。この場合ばあい、個々ここのかつての責任せきにん企業きぎょうは、韓国かんこく進出しんしゅつにあたって、この問題もんだいを自社じしゃの法務ほうむリスクの一ひとつとして捉とらえるべきこととなる。
• 神戸大学こうべだいがく大学院だいがくいん教授きょうじゅでアジア学術がくじゅつ総合そうごうセンター長ちょうの木村きむら幹みきは「韓国かんこくで請求せいきゅう権けん協定きょうていが無視むしされる事態じたいが続つづけば、両国りょうこく間あいだの戦後せんご処理しょりが全般ぜんぱん的てきに崩壊ほうかいするだろう。政府せいふ間あいだの対話たいわで解決かいけつできる段階だんかいは過すぎた。協定きょうていは解釈かいしゃく上じょうの問題もんだいが生しょうじた場合ばあいに仲裁ちゅうさい機関きかんを設置せっちすると定さだめており、これを韓国かんこく側がわに提案ていあんし解決かいけつにあたるべきだ。国際こくさい法ほうの専門せんもん家かが精査せいさすれば、今回こんかいの判決はんけつに問題もんだいが多おおいことは十分じゅうぶんに理解りかいされるはず。韓国かんこく内ないでの政治せいじ情勢じょうせいなどに絡からんで解決かいけつがさらに先さき延のばしにされる恐おそれもあり、日本にっぽん側がわからの積極せっきょく的てきな働はたらきかけが必要ひつようだ」と述のべた。

「徴用ちょうよう工こう像ぞう」

詳細しょうさいは「徴用ちょうよう工こう像ぞう」を参照さんしょう

2019年ねん8月がつ、大田おおた市し庁舎ちょうしゃ前まえの公園こうえんに韓国かんこくの労働ろうどう組合くみあいなどでつくる市民しみん団体だんたいがあばら骨ぼねが浮うき出でるほどやせた男性だんせいの像ぞうが「徴用ちょうよう工こう像ぞう」として設置せっちされた。一方いっぽう、韓国かんこくの大田おおた市議しぎの一人ひとりがフェイスブックを通つうじて像ぞうのモデルは日本人にっぽんじんであると主張しゅちょう、像ぞうの制作せいさく者しゃが名誉めいよ毀損きそんを受うけたとして訴訟そしょうを起おこした。2021年ねん5月28日にち、地裁ちさいは1926年ねんに日本にっぽんの新聞しんぶんに掲載けいさいされた日本人にっぽんじん労働ろうどう者しゃの写真しゃしんを引ひき合あいに出だし、像ぞうと写真しゃしんの労働ろうどう者しゃが似にており日本人にっぽんじんがモデルと信しんじる相当そうとうの理由りゆうがあるとして、徴用ちょうよう工こう像ぞう製作せいさく者しゃの訴うったえを棄却ききゃくした。

参考さんこう文献ぶんけん

資料しりょう

一いち次じ史料しりょう

• 大法たいほう院いん「大法たいほう院いん判決はんけつ 二に〇一いち三さんダ六ろく一いち三さん八はち一いち 損害そんがい賠償ばいしょう」二に〇一いち八はち年ねん一いち〇月がつ三さん〇日にち(日本語にほんご訳やく(権けん南みなみ希まれ訳やく)、要旨ようし)

編纂へんさん史料しりょう

• 국사편찬위원회, 한일역사공동연구위원회 학국측위원회 편집(国史こくし編纂へんさん委員いいん会かい、韓かん日にち歴史れきし共同きょうどう委い韓国かんこく側がわ委員いいん会かい)『국사편찬위원회(日本にっぽん製鉄せいてつ強制きょうせい動員どういん訴訟そしょう記録きろく)』1-3,2005.4

文献ぶんけん目録もくろく

研究けんきゅう

• 古庄ふるしょう正ただし「日本にっぽん製鉄せいてつ株式会社かぶしきがいしゃの朝鮮ちょうせん人じん強制きょうせい連行れんこうと戦後せんご処理しょり -「朝鮮ちょうせん人じん労務ろうむ関係かんけい」を主おもな素材そざいとして-」『駒沢大学こまざわだいがく経済けいざい学がく論集ろんしゅう』第だい25巻かん第だい1号ごう、駒沢大学こまざわだいがく経済けいざい学会がっかい、1993年ねん6月がつ、1-84頁ぺーじ、CRID 1050564288182409472。 
• 李り炳澯「いわゆる「2018年ねん徴用ちょうよう工こう判決はんけつ」に対たいする国際こくさい法ほう上じょうの考察こうさつ : 条約じょうやく解釈かいしゃくを中心ちゅうしんに」『立たて命いのち館かん国際こくさい地域ちいき研究けんきゅう= 立たて命いのち館かん国際こくさい地域ちいき研究けんきゅう』第だい50巻かん、立命館大学りつめいかんだいがく国際こくさい地域ちいき研究所けんきゅうじょ、2019年ねん9月がつ、41-59頁ぺーじ、hdl:10367/12549、ISSN 0917-2971、CRID 1050564289221320320。 

一般いっぱん

• 朱しゅ益えき鍾,2020.「強制きょうせい動員どういん賠償ばいしょうを請求せいきゅうした原告げんこくたちの行跡ぎょうせき」（李り栄さかえ薫かおる,2020,pp.118-133.)
• 李り宇衍,2020.「働はたらいても賃金ちんぎんが貰もらえなかったという嘘うそ」（李り栄さかえ薫かおる,2020,pp.106-117.)
• 李り栄さかえ薫かおる編へん『反日はんにち種族しゅぞく主義しゅぎとの闘争とうそう』(文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう,2020),ISBN 978-4-16-391259-2

• 山手やまて治之はるゆき「日本にっぽんの戦後せんご処理しょり条約じょうやくにおける賠償ばいしょう・請求せいきゅう権けん放棄ほうき条項じょうこう(一いち) : 戦後せんご補償ほしょう問題もんだいとの関連かんれんにおいて」『京都きょうと学園がくえん法学ほうがく』第だい35巻かん、京都学園大学きょうとがくえんだいがく法ほう学会がっかい、2001年ねん12月、1-100頁ぺーじ、ISSN 09164715、CRID 1050564288369461376。 
• 山手やまて治之はるゆき「日本にっぽんの戦後せんご処理しょり条約じょうやくにおける賠償ばいしょう・請求せいきゅう権けん放棄ほうき条項じょうこう(2) : 戦後せんご補償ほしょう問題もんだいとの関連かんれんにおいて」第だい43巻かん、2004年ねん3月がつ、CRID 1050282813392761216。 
• 五十嵐いがらし正博まさひろ「日本にっぽんの『戦後せんご補償ほしょう裁判さいばん』と国際こくさい法ほう」『国際こくさい法ほう外交がいこう雑誌ざっし』第だい105巻かん第だい1号ごう、国際こくさい法ほう学会がっかい、2006年ねん5月がつ、1-28頁ぺーじ、hdl:20.500.14094/90001028、ISSN 00232866、CRID 1050294045371717888。 
• 山手やまて治之はるゆき「日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうてい2条じょうの解釈かいしゃくについて(1)」第だい54/55巻かん、2008年ねん3月がつ、CRID 1050282813392771200。 
• 関本せきもと克かつ良りょう「国際こくさい法ほうと国家こっかの法的ほうてき責任せきにんに関かんする考察こうさつ : 日本にっぽん軍ぐん「慰安いあん婦ふ」問題もんだいと被害ひがい者しゃの損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう権けんを焦点しょうてんとして」『天理大学てんりだいがく学がく報ほう』第だい63巻かん第だい2号ごう、天理大学てんりだいがく学術がくじゅつ研究けんきゅう委員いいん会かい、2012年ねん2月がつ、109-130頁ぺーじ、ISSN 0387-4311、CRID 1050564288383769856。 
• 出で石直いしじき「戦後せんご補償ほしょう訴訟そしょうにおける元もと徴用ちょうよう工こう問題もんだいと日にち韓かん関係かんけい」（PDF）『現代げんだい韓国かんこく朝鮮ちょうせん研究けんきゅう』第だい15号ごう、新書しんしょ館かん、2015年ねん11月、30-50頁ぺーじ、ISSN 18846491、CRID 1520009409203848448。 

関連かんれん項目こうもく

• 1953年ねん問題もんだい - 一いち国こくの行政府ぎょうせいふが示しめした法令ほうれい解釈かいしゃくを同おなじ国こくの最高さいこう司法しほう府ふ（最高裁判所さいこうさいばんしょ）が否定ひていしたこと、（行政府ぎょうせいふが関与かんよせずに）外国がいこく法人ほうじんと自国じこく人じんとの間あいだで争あらそわれた訴訟そしょうであったこと、確定かくてい判決はんけつの結果けっかとして外国がいこく法人ほうじんが敗訴はいそして自国じこく人じんが勝訴しょうそしたことなど、徴用ちょうよう工こう訴訟そしょうと多おおくの類似るいじ点てんがある、日本にっぽんの最高さいこう裁判所さいばんしょによる確定かくてい裁判さいばん。
• 司法しほう自制じせいの原則げんそく- 日本にっぽんなど諸しょ外国がいこくは「外交がいこう政策せいさくに影響えいきょうする判決はんけつは控ひかえる」のに対たいし、朝鮮日報ちょうせんにっぽうや中央日報ちゅうおうにっぽうによると2018年ねんの韓国かんこく大法たいほう院いんや文ぶん在ざい寅とら政権せいけんは国際こくさい的てきには通用つうようしない反日はんにち理論りろんを優先ゆうせんし、この原則げんそくを無視むしした。
• 朝鮮ちょうせん併合へいごう
• 日本にっぽん統治とうち時代じだいの朝鮮ちょうせん人じん徴用ちょうよう/国民こくみん徴用ちょうよう令れい - 徴用ちょうよう
• 女子じょし挺身ていしん勤労きんろう令れい - 女子じょし挺身ていしん隊たい
• 日にち韓かん基本きほん条約じょうやく - 日にち韓かん請求せいきゅう権けん協定きょうてい-ポスコ
• カントリーリスク - 日にち韓かん貿易ぼうえき紛争ふんそう
• 李り宇衍 - 強制きょうせい動員どういんよりも自主じしゅ的てきに応募おうぼした朝鮮ちょうせん人じんが大だい多数たすうと国連こくれん人権じんけん委員いいん会かいで発言はつげん。
• 加藤かとう康子やすこ - 朝鮮半島ちょうせんはんとう出身しゅっしんの徴用ちょうよう工こうについて「聞きいた事こともない」と否定ひていする“軍艦ぐんかん島とう”の住民じゅうみんの証言しょうげんを採用さいようし、産業さんぎょう遺産いさん情報じょうほうセンターの展示てんじで紹介しょうかいしている。

脚注きゃくちゅう