愛宕山あたごやま (東京とうきょう都と港みなと区く)

愛宕山あたごやま（あたごやま）は、東京とうきょう都と港みなと区く愛宕あたごにある丘陵きゅうりょうである。一帯いったいの愛宕あたご神社じんじゃ境内けいだいには、三さん等とう三角さんかく点てんがあり、25.7mの標高ひょうこうが記録きろくされている。天然てんねんの山やまとしては東京とうきょう23区く内うち最高峰さいこうほう。

愛宕山あたごやま
愛宕山あたごやま（中央ちゅうおうはNHK放送ほうそう博物館はくぶつかん）
標高ひょうこう	25.69 m
所在地しょざいち	東京とうきょう都と港みなと区く愛宕あたご一いち丁目ちょうめ5番ばん3号ごう
位置いち	北緯ほくい35度ど39分ふん53秒びょう 東経とうけい139度ど44分ふん55秒びょう
山系さんけい	独立どくりつ峰ほう
OpenStreetMap
プロジェクト 山やま

愛宕山あたごやまより撮影さつえいした江戸えどのパノラマ（1865〈慶応けいおう元年がんねん〉〜1866〈慶応けいおう2年ねん〉年頃としごろ、フェリックス・ベアト撮影さつえい）。愛宕山あたごやまの東ひがし一帯いったいは愛宕あたごノ下したと呼よばれていた。奥おくの広ひろい緑地りょくちが現在げんざいの浜離宮はまりきゅう恩賜おんし庭園ていえんで、その右みぎには江戸えど湾わんを臨のぞむことができた。築地つきじ本願寺ほんがんじ、台場だいばなども見みえる。

明治めいじの頃ころの男坂おとこざかと女坂おんなざか

愛宕あたご神社じんじゃ (東京とうきょう都と港みなと区く)と出世しゅっせの石段いしだん

愛宕山あたごやまの東京とうきょう放送ほうそう局きょく。昭和しょうわ初期しょき

NHK放送ほうそう博物館はくぶつかん

歌川うたがわ広重ひろしげの「芝しば愛宕山あたごやま」。1857年ねん。正月しょうがつに行おこなわれる「強飯こわいい式しき」と愛宕山あたごやまからの眺望ちょうぼうを描えがいたもの。正月しょうがつ飾かざりの橙だいだい、昆布こぶ、御幣ごへいのついたザルを被こうむった「毘沙門びしゃもんの使つかい」が手てに棍棒こんぼうとしゃもじを持もって門もんをくぐるところ。

歴史れきし

愛宕山あたごやまは自然しぜん形成けいせいによって成立せいりつしたものであると地質ちしつ学がく的てきに立証りっしょうされているが、周辺しゅうへんの低地ていちとの兼かね合あいから、形成けいせいのメカニズムははっきりしていない。

江戸えど時代じだいから愛宕山あたごやまは信仰しんこうと、山頂さんちょうからの江戸えど市街しがいの景観けいかんの素晴すばらしさで有名ゆうめいな場所ばしょであった。『鉄道てつどう唱歌しょうか』の第だい1番ばんにも「愛宕あたごの山やま」と歌うたわれている。

山上さんじょうにある愛宕あたご神社じんじゃは、もとは1603年ねんにこれから建設けんせつされる江戸えどの防火ぼうかのために徳川とくがわ家康いえやすの命いのちで祀まつられた神社じんじゃであったが、「天下取てんかとりの神かみ」、「勝利しょうりの神かみ」としても知しられ、各かく藩はんの者ものたちは地元じもとへ祭神さいじんの分霊ぶんれいを持もち帰かえり各地かくちで愛宕あたご神社じんじゃを祀まつった。桜田さくらだ門外もんがいの変へんで井伊いい直弼なおすけを襲おそった水戸みと藩はんの浪士ろうし達たちも、ここで成功せいこうを祈願きがんしてから江戸城えどじょうへ向むかったとされる｡

また、NHKの前身ぜんしんの一ひとつである社団しゃだん法人ほうじん東京放送とうきょうほうそう局きょく（JOAK）は、この愛宕山あたごやまに放送ほうそう局きょくを置おき、1925年ねん（大正たいしょう14年ねん）7月がつの本ほん放送ほうそうから1938年ねん（昭和しょうわ13年ねん）のNHK東京とうきょう放送ほうそう会館かいかんへの移行いこうまで、ここから発信はっしんされた。

太平洋戦争たいへいようせんそう敗戦はいせん直後ちょくごの1945年ねん8月がつ17日にち、降伏ごうぶくに反対はんたいする「尊攘そんじょう同志どうし会かい」の会員かいいんらが山やまに篭城ろうじょう、全国ぜんこくに決起けっきを呼よびかけたが失敗しっぱいに終おわった（愛宕山あたごやま事件じけん）。 同年どうねん8月がつ22日にち、尊攘そんじょう同志どうし会員かいいんら12人にんは集団しゅうだん自殺じさつした。うち10人にんが死亡しぼう。

1950年ねん（昭和しょうわ25年ねん）2月がつ1日にちからVHF3chでNHKテレビの試験しけん放送ほうそう電波でんぱを送信そうしん開始かいし。1952年ねん12月5日にちにサービス放送ほうそうを開始かいし。1953年ねん2月がつ1日にちに本ほん放送ほうそうが開始かいしされ、1958年ねん12月23日にちまでNHK東京とうきょうテレビの送信そうしん所しょとして使つかわれた。

現在げんざいは周囲しゅういに高層こうそうビルが林立りんりつしたため、かつてのような見晴みはらしはなくなったが、大木たいぼくなどによる緑みどりの豊ゆたかさは変かわらない。歴史れきしある曹洞宗そうとうしゅう青松寺せいしょうじ・愛宕あたご神社じんじゃ・NHK放送ほうそう博物館はくぶつかんと、それらを取とり囲かこむ超ちょう高層こうそうビル群ぐん（例たとえば青松寺せいしょうじを挟はさんで建たつ愛宕あたごグリーンヒルズツインタワーや、虎ノ門とらのもん・神谷かみや町まち・霞かすみが関せきや汐留しおどめなどのビル群ぐん）が同時どうじに存在そんざいする、現在げんざいの東京とうきょうを象徴しょうちょうする風景ふうけいを見みせている。

トンネル東側ひがしがわの伝つて叟院付近ふきんに愛宕山あたごやまエレベーターがあり、山頂さんちょう（NHK放送ほうそう博物館はくぶつかん付近ふきん）まで楽らくに行いくことができる。

「愛宕山あたごやまの愛宕あたご塔とう」 愛宕山あたごやまは標高ひょうこう26メートル。武蔵野台むさしのだい地ち末まつ端はしの小しょう丘おか。山上さんじょうに愛宕あたご神社じんじゃがあり、正面しょうめんの男坂おとこざかは講談こうだん、浪曲ろうきょくの「寛永かんえい三さん馬術ばじゅつ」の舞台ぶたいで知しられる。明治めいじ5年ねん（1872）、山下やましたの海岸かいがんに鉄道てつどうが通とおり、「鉄道てつどう唱歌しょうか」の第だい一番いちばんで「愛宕あたごの山やま」と歌うたわれた。22年ねん（1889）、旅館りょかんと西洋せいよう料理りょうり屋やを兼かねた愛宕あたご館かんが完成かんせいし、その隣となりに煉瓦れんが造づくり、八角はっかく形がた、五ご階かい建だての愛宕あたご塔とうが建たてられた。塔とうには望遠鏡ぼうえんきょうが設置せっちされ、東京とうきょうの街まち中ちゅうのながめを堪能かんのうできた。「東京とうきょう愛宕あたご塔とう登とう覽らん券けん金きん四よん錢ぜに」と書かかれた登とう覧らん券けん（切符きっぷ）が書かき写うつされている。 — 清水しみず晴はれ風ふう著ちょ『東京とうきょう名物めいぶつ百ひゃく人にん一いち首しゅ』明治めいじ40年ねん8月がつ「愛宕山あたごやまの愛宕あたご塔とう」より抜粋ばっすい

出世しゅっせの石段いしだん

現在げんざいでも「男坂おとこざか」の急きゅうな石段いしだんは「出世しゅっせの石段いしだん」と呼よばれている。これは、江戸えど時代じだいの1634年ねん2月がつ25日にち（寛永かんえい11年ねん1月がつ28日にち）、徳川とくがわ秀忠ひでただの三さん回かい忌きとして増上寺ぞうじょうじ参拝さんぱいの帰かえり、徳川とくがわ家光いえみつが山上さんじょうにある梅うめが咲さいているのを見みて、「梅うめの枝えだを馬うまで取とってくる者ものはいないか」と言いったところ、讃岐さぬき丸亀まるがめ藩はんの家臣かしん（曲きょく垣かき平たいら九郎くろう）が見事みごと馬ばで石段いしだんを駆かけ上あがって枝えだを取とってくることに成功せいこうし、その者ものは馬術ばじゅつの名人めいじんとして全国ぜんこくにその名なを轟とどろかせた、という逸話いつわから来きている（講談こうだんや浪曲ろうきょくの定番ていばん、「寛永かんえい三さん馬術ばじゅつ」で今いまも伝つたわる）。

以降いこう、出世しゅっせの石段いしだんを馬うまで登のぼった成功せいこう例れいは今いままでに3例れい存在そんざいする。1例れい目めは仙台せんだい藩はんで馬術ばじゅつ指南しなん役やくを務つとめ、廃はい藩はん後ご曲馬きょくば師しをしていた石川いしかわ清きよし馬ばで、師しの四戸しのへ三平さんぺいが挑いどみ、果はたせなかった出世しゅっせの石段いしだん登頂とうちょうを1882年ねんに自みずからが成功せいこうさせ、これにより石川いしかわ家かは徳川とくがわ慶喜よしのぶより葵あおいの紋もんの使用しようを許ゆるされた。

2例れい目めは参謀さんぼう本部ほんぶ馬丁ばていの岩木いわき利夫としおで、1925年ねん11月8日にち、愛馬あいば平形ひらかたの引退いんたい記念きねんとして挑戦ちょうせんし、観衆かんしゅうが見守みまもる中なか成功せいこうさせた。上のぼりは1分ふんほどで駆かけ上あがったが、下くだりは45分ふんを要ようした。この模様もようは山頂さんちょうの東京放送とうきょうほうそう局きょくによって中継ちゅうけいされ（日本にっぽん初はつの生なま中継ちゅうけいとされる）、昭和しょうわ天皇てんのうの耳みみにも入はいり、結局けっきょく平形ひらがたは陸軍りくぐん騎兵きへい学校がっこうの将校しょうこう用よう乗馬じょうばとして使つかわれ続つづけることとなった。

3例れい目めは馬術ばじゅつのスタントマン、渡辺わたなべ隆たかし馬ばである。1982年ねん、日本にほんテレビの特別とくべつ番組ばんぐみ『史実しじつに挑戦ちょうせん』において、安全あんぜん網もうや命綱いのちづな、保護ほご帽ぼうなどの安全あんぜん策さくを施ほどこした上うえで32秒びょうで登頂とうちょうした。

関連かんれん項目こうもく

• 愛宕山あたごやま (曖昧あいまいさ回避かいひ) - 同名どうめいの山やま
• 愛宕あたごグリーンヒルズ
• 箱根山はこねやま (新宿しんじゅく区く) - 人工じんこうの山やまを含ふくめて23区く内ないで最高峰さいこうほう
• 愛宕山あたごやま事件じけん

外部がいぶリンク

• 国土こくど地理ちり院いん 地図ちず閲覧えつらんシステム 2万まん5千せん分ふん1地形ちけい図ず名めい：東京とうきょう西南せいなん部ぶ （北東ほくとう）
• 愛宕あたご神社じんじゃホームページ
• 愛宕あたご神社じんじゃホームページ（旧きゅう）
• 愛宕あたご神社じんじゃトリビア
• 錦絵にしきえで楽たのしむ江戸えどの名所めいしょ　愛宕山あたごやま（あたごやま）国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん