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狛犬 - Wikipedia

狛犬こまいぬ

日本にっぽん想像そうぞうじょう生物せいぶつ

狛犬こまいぬ(こまいぬ)とは、獅子しし日本にっぽんししで、想像そうぞうじょう生物せいぶつとされる。ぞうとして神社じんじゃ寺院じいん入口いりくちりょうわき、あるいは本殿ほんでん本堂ほんどう正面しょうめん左右さゆうなどに一対いっついかたち、またはまもるべき寺社じしゃけ、参拝さんぱいしゃただしたいするかたちかれることおおく、またそのさいにはかく獅子ししゆうかく狛犬こまいぬとが一対いっついとされる。

だい避神しゃ兵庫ひょうごけん赤穂あこうかみ門前もんぜん狛犬こまいぬみぎ阿形あがたひだりうんがた
2つの狛犬こまいぬ

飛鳥あすか時代ときよ日本にっぽんつたわった当初とうしょ獅子ししで、左右さゆう姿すがた差異さいはなかったが、平安へいあん時代じだいになってそれぞれことなる外見がいけん獅子しし狛犬こまいぬぞうたいかれるようになり、狭義きょうぎには後者こうしゃのみを「狛犬こまいぬ」としょうすが、現在げんざいでは両者りょうしゃあわせて狛犬こまいぬぶのが一般いっぱんしている。

特徴とくちょう

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起源きげんはペルシャ、インドにおけるライオン(獅子しし)をかたどったぞうであるというせつがある[1]。また、古代こだいエジプトメソポタミアでの神域しんいきまもるライオンのぞうもその源流げんりゅうとされる。明治めいじ神宮じんぐうでは、起源きげん古代こだいオリエント・インドにさかのぼるライオンをかたどったぞうで、古代こだいオリエント諸国しょこくでは、せいなるもの、かみ王位おうい守護神しゅごじんとして、ライオンをもちいる流行りゅうこうがあり、その好例こうれいスフィンクスであるとしている[2]

伝来でんらい

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古代こだいにおいて高句麗こうくりこううらら古名こみょうとして「こま」とまれることがあった[3]明治めいじ神宮じんぐうでは、伝来でんらい時期じきしめしていないが、日本人にっぽんじん異様いようかたちものいぬ勘違かんちがいし、朝鮮ちょうせんから伝来でんらいしたため、こううららいぬばれるようになったとのせつ紹介しょうかいしている[2]。「こまいぬ」の語義ごぎには諸説しょせつあり、魔除まよけけにもちいたところから「こばめ(こま)いぬ」とばれるようになったとするせつなどがある[よう出典しゅってん]奈良ならけん法隆寺ほうりゅうじ五重塔ごじゅうのとうはつじゅう壁面へきめん塑造にられているぞうのように、はじめはふつ仏塔ぶっとう入口いりくちりょうわきかれ、獅子しし左右さゆう共通きょうつう姿すがたであった。

かくつという狛犬こまいぬ由来ゆらいについてはさまざまなせつがあり、『延喜えんぎしきまきだい46「左右さゆう衛門えもんしき」に「およ大儀たいぎ[4]に(左衛門さえもんは)兕(じ)ぞうかいあきらもんひだり(す)ゑ、こと畢(おは)りてほん左衛門さえもん)へかえしおさむせよ。右府うふみぎ衛門えもん)は(かいあきらもんの)みぎえよ」としるされ[5]、この「(じ)」は獣医じゅうい学者がくしゃ吉村よしむら卓三たくぞうによれば、正体しょうたい判然はんぜんとしないが水牛すいぎゅう一角獣いっかくじゅうよろい材料ざいりょうになるほどのかたかわかく酒盃しゅはいもちいたというが、この「兕」が狛犬こまいぬであるというせつもそのひとつである。

変遷へんせん

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阿形あがた獅子しし仁和寺にんなじ
 
うんがた狛犬こまいぬ仁和寺にんなじ

平安へいあん時代じだいはいると、『うつほ物語ものがたり』に記述きじゅつされているように「おおいなる白銀はくぎん(しろがね)の狛犬こまいぬよっつ」に香炉こうろけ、宮中きゅうちゅうとばりとばりだい)の四隅よすみいて使つかわれており、『枕草子まくらのそうし』や『栄花物語えいがものがたり』などにも調度ちょうどひんとして「獅子しし」と「狛犬こまいぬ」のわせが登場とうじょうし、こちらは御簾みす(みす)や几帳きちょう(きちょう)をさえるためのおもし(鎮子ちんし)として使つかわれていたことがしるされている。

獅子しし狛犬こまいぬ配置はいちについては、『きんしょう』と『類聚るいじゅうざつようしょう』に共通きょうつうして獅子ししひだり狛犬こまいぬみぎくとの記述きじゅつがあり[6]、『類聚るいじゅうざつようしょう』ではさらにそれぞれの特徴とくちょうを「獅子ししいろにしてくちひらき、えびすけん狛犬こまいぬ)はいろしろくちひらかず、かくあり」とえがいている。獅子ししまたは狛犬こまいぬ中国ちゅうごく韓国かんこくにも同様どうようものがあるが、おもね(あ)・うん(うん)かたち日本にっぽんおおられる特徴とくちょうであり、仁王におうぞう同様どうよう日本にっぽんにおける仏教ぶっきょうかん反映はんえいしたものとかんがえられている。

一般いっぱんてきに、獅子しし狛犬こまいぬかって右側みぎがわ獅子ししぞうが「阿形あがた(あぎょう)」でくちひらいており、左側ひだりがわ狛犬こまいぬぞうが「うんがた(うんぎょう)」でくちじ、ふるくはかくっていた。鎌倉かまくら時代ときよ後期こうき以降いこうになると様式ようしき簡略かんりゃくされたものが出現しゅつげんしはじめ、昭和しょうわ時代じだい以降いこうつくられたもの左右さゆうともにかくものおおく、くちひらかた以外いがい外見がいけんじょう差異さいがなくなっている。これらは本来ほんらい獅子しし」とぶべきものであるが、今日きょうでは両方りょうほうぞうわせて「狛犬こまいぬ」としょうすることがおおい。

近世きんせいから現代げんだいにかけて、各地かくち寺社じしゃ膨大ぼうだいかずつくられており、形態けいたいにもさまざまなものがある。獅子しし狛犬こまいぬ有無うむ神社じんじゃによりさまざまで、たとえば京都きょうと京都きょうと市内しない神社じんじゃでは狛犬こまいぬがいるところがやく半数はんすうである。現在げんざい各地かくち寺社じしゃ境内けいだいかける狛犬こまいぬにはいしせいのものがおおく、ほかにも金属きんぞくせい陶製とうせいのものがある。前述ぜんじゅつのように宮中きゅうちゅうとばりだいなどで調度ちょうどひんとして使用しようされるものは金属きんぞくせいであったとおもわれるが、一方いっぽう神仏しんぶつ守護しゅご役割やくわりたす獅子ししぞう狛犬こまいぬぞうについては屋内おくないかれたものは木製もくせいおおく、屋外おくがいかれるようになっていし使用しようされるようになった。現存げんそんする木製もくせい獅子しし狛犬こまいぬれいには、奈良ならけん薬師寺やくしじ鎮守ちんじゅきゅうおか八幡宮はちまんぐうや、滋賀しがけん大宝たいほう神社じんじゃ京都きょうと高山寺こうざんじ広島ひろしまけん厳島いつくしま神社じんじゃなどのものがある(いずれも重要じゅうよう文化財ぶんかざい)。いしせいふるれいでは奈良ならけん東大寺とうだいじ南大門なんだいもんかれている一対いっついぞうがあるが、これらはそう様式ようしきあらたに日本にっぽんつたえられ、「唐獅子からじし(からじし)」とばれる種類しゅるいのもので、阿吽あうんがたではなく、両方りょうほう獅子しし姿すがたをしている。

名前なまえ由来ゆらい

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狛犬こまいぬ名前なまえ由来ゆらいには諸説しょせつある。類聚るいじゅうざつようしょうでの表記ひょうきの「えびすけん」は、「えびす」の民族みんぞくあらわし、「」のサンスクリットの「म」のおとうつし使つかわれる文字もじとなっている。

高麗こうらいせつ

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せつぶんかいちゅうによれば「こま」は「貊」とどうであるとされる[7]。また、ツングースけい民族みんぞくあらわすとわれている[8]

「貊」や「高句麗こうくり」の訓読くんよみである「こま」は「ぶたこく」の転化てんかというせつがある[9]一方いっぽう中国ちゅうごく古書こしょちゅうには「東海とうかいこま驪、扶餘、馯貊ぞく云々うんぬんとあり、『あつまりいん』には「こま驪、國名こくめい」とあるため、「こま」()に由来ゆらいする可能かのうせいもある。

隼人はやと遺風いふうせつ

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いぬについては隼人はやといぬほえとの関係かんけい指摘してきされている[10]。また隼人はやと朝廷ちょうてい恭順きょうじゅんしたのちは護衛ごえいにんについており門番もんばんなどもしていたてん狛犬こまいぬ役割やくわりのルーツではないかとするせつもある。一説いっせつによれば、隼人はやとくまかさね同族どうぞくで、くまかさねくにいぬやつこくであったとされる。

なお、日本語にほんごで「こま」はこま)を意味いみ[11]日向ひゅうが隼人はやとこま評判ひょうばんたかかった[12]ものの、狛犬こまいぬ関連かんれんするかは不明ふめい

こませつ

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せつぶんかいによれば、「こま」は「おおかみごとけるひつじ」であるとされる。また、李白りはく一節いっせつには、「天狗てんぐ」の対比たいひとして「こま」とばれるものが登場とうじょうする。

ふくろうひつじおうしか以斃踣,猰貐ほろびせい而墜巓。ある碎腦以折脊, ある歕髓以飛よだれきゅう遐荒,盪林やぶ,扼土こま,殪天いぬだつかくさいいただきさがせきばぞうこう。掃封きつね千里せんりもじ虺之きゅうしゅ。咋騰へび而仰呑,拖奔兕以卻走。

(日本語にほんごやく) ふくろうひつじてることによってたおれさせる、猰貐せいくさせ顛墜させる。あるいはのうくだき脊をる、あるいはずいよだればす。とおれることをきわめ、はやしやぶうごかし、こまめつけ、天狗てんぐたおす。かくはずされたサイのうなじ、きばさがぞうくちきつね千里せんりいて掃封し、虺のきゅうしゅをねじり、たちまちへびあがしておおせいんし、兕をきずりながらまわ退却たいきゃくする。窫窳

 
生田いくた神社じんじゃ兵庫ひょうごけん境内けいだい稲荷いなり神社じんじゃかみ使きつね
 
なまぜんいん熊本くまもとけん球磨くまぐん水上みずかみむら)の山門さんもんまえにはこまねこがいる

神道しんとうでは、かみ使つかい(かみのつかい)、または「かみのつかわしめ」としょうす。まれかず使つかいある場合ばあいもあるが、おおくの神社じんじゃではいちかみいち使つかいとされており、その種類しゅるいは、哺乳類ほにゅうるい鳥類ちょうるい爬虫類はちゅうるい想像そうぞうじょう生物せいぶつなど多様たようである。稲荷いなりしんきつね春日しゅんじつしん鹿しか弁財天べざいてんへび毘沙門天びしゃもんてんとら摩利まりささえてん 八幡やはたしんばとなどがかみ使(しんし)の代表だいひょうてきなものである。 土地とち伝承でんしょうなどにもとづくものもあり、岩手いわてけんつねけんてらでは河童かっぱ伝説でんせつにちなんだ河童かっぱ狛犬こまいぬかれている。京都きょうときょう丹後たんごきむかたな神社じんじゃ境内けいだいしゃ木島きじましゃには狛犬こまいぬならぬこまねこぞうかれ、阿吽あうん配置はいち左右さゆうぎゃくとなっている。大阪おおさか大阪おおさか天王寺てんのうじ大江おおえ神社じんじゃにはこまとらがあり、阪神はんしんタイガース優勝ゆうしょう祈願きがんするがみ木札きふだ阪神はんしんファンからメガホン、とらちいさい置物おきものやぬいぐるみなどがそなえられている。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 狛犬こまいぬ」 - 世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん だいはん平凡社へいぼんしゃ
  2. ^ a b 明治めいじ神宮じんぐうホームページないQ&A”. 明治めいじ神宮じんぐう. 2015ねん8がつ14にち閲覧えつらん
  3. ^ 日本にっぽん国語こくごだい辞典じてん, 精選せいせんばん. “こううららこま(こま)とは? 意味いみ使つかかた”. コトバンク. 2024ねん2がつ6にち閲覧えつらん
  4. ^ 元日がんじつ天皇てんのう即位そくいおよ外国がいこく使からのひょうける
  5. ^ 延喜えんぎ左右さゆう衛門えもんしき』兕像じょう
  6. ^ 天皇てんのう南面なんめんするときの記述きじゅつであるため、かってさいには左右さゆうぎゃくとなる。
  7. ^ せつぶんかい㹮的解釋かいしゃく/せつぶんかい㹮的意思いし/かんてん“㹮”てきせつぶんかい ZDIC
  8. ^ 濊貊 コトバンク
  9. ^ 朝鮮ちょうせん生活せいかつ文化ぶんか P.173 村田むらた懋麿 1924ねん
  10. ^ 近古きんこ文芸ぶんげい 温和おんわ叢書そうしょ だいはちへん 奈良ならしば/猿樂さるがくでん/そぞろ物語ものがたり/望海ぼうかいごとだん/狛犬こまいぬこう/近世きんせい竒跡こう P.244 岸上きしがみみさお 1891ねん
  11. ^ こま コトバンク
  12. ^ 日本書紀にほんしょきうち御製ぎょせいに「うまならば 日向ひなたこま」とある

関連かんれんするよこしまおにばら

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  • はりつけいぬ - 中国ちゅうごくにおけるよこしまおにばらいの伝統でんとう
  • 貔貅 - 狛犬こまいぬのルーツともわれる中国ちゅうごく伝承でんしょうにあるしし

狛犬こまいぬ類似るいじする想像そうぞうじょうしし

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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