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軍国主義 - Wikipedia

軍国ぐんこく主義しゅぎ

戦争せんそう外交がいこうしゅたる手段しゅだんかんがえ、軍事ぐんじりょくさい優先ゆうせんするかんがかたないしイデオロギー

軍国ぐんこく主義しゅぎ(ぐんこくしゅぎ、えい: militarism, どく: Militarismus)または軍事ぐんじ主義しゅぎ(ぐんじしゅぎ)もしくはミリタリズム[1]とは、外交がいこう手段しゅだんとして戦争せんそう重視じゅうしし、政治せいじ経済けいざい教育きょういく文化ぶんかなどのあらゆる活動かつどうは、軍事ぐんじりょく強化きょうかのためにおこなわなければならないとする国家こっか体制たいせい思想しそうをいう[2]

ミャンマーぐん軍事ぐんじパレード

軍国ぐんこく主義しゅぎ人物じんぶつを「軍国ぐんこく主義しゅぎしゃ」という。

概説がいせつ

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北朝鮮きたちょうせんプロパガンダ

軍国ぐんこく主義しゅぎ国家こっかにおいては、ぐん国家こっか中心ちゅうしんとなるため、軍人ぐんじん国民こくみんから尊敬そんけいあつめるようになる[2]。また、社会しゃかい全体ぜんたい軍事ぐんじてき編成へんせいされ、社会しゃかいのすみずみに軍隊ぐんたいてきかんがかた浸透しんとうし、国家こっか全体ぜんたいがまるで兵営へいえいのようになる[3]。よって、軍国ぐんこく主義しゅぎ国家こっかは「兵営へいえい国家こっか」ともばれる[3]

軍国ぐんこく主義しゅぎは、さかのぼれば古代こだいから存在そんざいし、たとえば古代こだいギリシアではスパルタ[3]中世ちゅうせいカロリングあさなど様々さまざまれいがあるが[4]世界せかいてき流行りゅうこうし、その害悪がいあくがひどいものだと自由じゆう主義しゅぎものなどから批判ひはんされるようになったのは、19世紀せいきなか以降いこうであるとられる[3][5]

19世紀せいきなかばに社会しゃかい主義しゅぎもの共和きょうわ主義しゅぎものフランスナポレオン3せいだい帝政ていせい批判ひはんする言葉ことばとして使つかったのが最初さいしょ使用しようれいられている[6]。「帝国ていこく主義しゅぎ」という言葉ことばもこの時期じき使用しようされるようになったとられる[6]

国際こくさいてき次元じげんでは「平和へいわおどかした国家こっか」という他国たこく批判ひはん材料ざいりょうとなってきた言葉ことばである[4]だいいち世界せかい大戦たいせんなか戦後せんごドイツ帝国ていこくだい帝国ていこく)が軍国ぐんこく主義しゅぎ批判ひはんされてヴェルサイユ体制たいせいした国際こくさい社会しゃかいから戦争せんそう責任せきにん追及ついきゅうされ[4]同様どうようだい世界せかい大戦たいせんのちにはドイツだいさん帝国ていこく)と日本にっぽん軍国ぐんこく主義しゅぎ批判ひはんされて国際こくさい社会しゃかいから戦争せんそう責任せきにん追及ついきゅうされてきた[3][7]

2024ねん現在げんざいにおいては、さきぐん政治せいじかかげる北朝鮮きたちょうせんウクライナ侵攻しんこう国家こっか総動員そうどういん手法しゅほうったロシア軍国ぐんこく主義しゅぎとみなして非難ひなんしようとするきがある。

日本にっぽんにおける事例じれい

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1937ねんから日本にっぽんにおいて実施じっしされた、国民こくみん精神せいしん総動員そうどういん運動うんどうのスローガンのひとつ「ぜいたくはてき」の広告こうこく国民こくみん戦争せんそう協力きょうりょくさせるために、節制せっせいびかけている。

日本にっぽん政府せいふにおける定義ていぎ

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1973ねんとき内閣ないかく官房かんぼうふく長官ちょうかん大村おおむらじょうは、軍国ぐんこく主義しゅぎ思想しそうとは「いちこく政治せいじ経済けいざい法律ほうりつ教育きょういくなどの組織そしき戦争せんそうのために準備じゅんびし、戦争せんそうをもって国家こっか威力いりょく発現はつげんかんがえ、そのため、政治せいじ経済けいざい外交がいこう文化ぶんかなどのめん軍事ぐんじ従属じゅうぞくさせる思想しそうをいう」と定義ていぎづけた[8]

内閣ないかく総理そうり大臣だいじんおよび閣僚かくりょうの「軍国ぐんこく主義しゅぎしゃ規定きてい

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なお、1973ねん段階だんかいでは、日本にっぽん首相しゅしょう国務大臣こくむだいじん閣僚かくりょう)は「軍国ぐんこく主義しゅぎしゃであってはならない」と、(政府せいふ内部ないぶで)いちおう認識にんしきされていた[9]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 精選せいせんばん 日本にっぽん国語こくごだい辞典じてん「ミリタリズム」の解説かいせつ コトバンク、2021/12/27閲覧えつらん
  2. ^ a b だいはん,世界せかいだい百科ひゃっか事典じてんない言及げんきゅう, 日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ),ブリタニカ国際こくさいだい百科ひゃっか事典じてん しょう項目こうもく事典じてん,百科ひゃっか事典じてんマイペディア,旺文社おうぶんしゃ日本にっぽん事典じてん さんていばん,精選せいせんばん 日本にっぽん国語こくごだい辞典じてん,デジタル大辞泉だいじせん,世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん. “軍国ぐんこく主義しゅぎとは”. コトバンク. 2021ねん8がつ28にち閲覧えつらん
  3. ^ a b c d e ブリタニカ国際こくさいだい百科ひゃっか事典じてん
  4. ^ a b c ファークツ 1かん 13ページ
  5. ^ ファークツ 1かん 12-13ページ
  6. ^ a b ファークツ 1かん 12ページ
  7. ^ 2015ねんのロシアのたいドイツ戦勝せんしょう70ねん記念きねん式典しきてんプーチン演説えんぜつでも、「ナチズム日本にっぽん軍国ぐんこく主義しゅぎたたかった国々くにぐに代表だいひょう特別とくべつ感謝かんしゃ表明ひょうめいする」と表明ひょうめいされた。 [1]
  8. ^ 1973ねん昭和しょうわ48ねん)12月19にち(72かい国会こっかい)の衆議院しゅうぎいん建設けんせつ委員いいんかいにおいて、政府せいふ委員いいんとして答弁とうべんった大村おおむらは「軍国ぐんこく主義しゅぎ思想しそうとは、いちこく政治せいじ経済けいざい法律ほうりつ教育きょういくなどの組織そしき戦争せんそうのために準備じゅんびし、戦争せんそうをもって国家こっか威力いりょく発現はつげんかんがえ、そのため、政治せいじ経済けいざい外交がいこう文化ぶんかなどのめん軍事ぐんじ従属じゅうぞくさせる思想しそうをいうものとかんがえられるのでございまして、この思想しそうふかまっているひととは、そのような思想しそうがそのひと日常にちじょう行動こうどう発言はつげんなどからあきらかにくみとれる程度ていど軍国ぐんこく主義しゅぎ思想しそうまっているひといかえれば、たん内心ないしん軍国ぐんこく主義しゅぎ思想しそういだくだけではなく、これを鼓吹こすい普及ふきゅうをはかるひとし外的がいてき行為こういまでその思想しそう発現はつげんられるようなひとをさすものと理解りかいしております。」とべた。
  9. ^ 日本国にっぽんこく憲法けんぽう66じょう2こうは、「内閣ないかく総理そうり大臣だいじんその国務大臣こくむだいじんは、文民ぶんみんでなければならない。」とさだめている。どう条項じょうこうにいう「文民ぶんみん」の解釈かいしゃくには論争ろんそうはあるものの、政府せいふ見解けんかいでは、つぎかかげるもの以外いがいものすとかいしていた。 1973ねん昭和しょうわ48ねん12月19にちだい72かい国会こっかい)の衆議院しゅうぎいん建設けんせつ委員いいんかいにおいて、大村おおむらじょう政府せいふ委員いいん内閣ないかく官房かんぼうふく長官ちょうかん)は「政府せいふといたしましては、憲法けんぽうだいろくじゅうろくじょうだいこうの『文民ぶんみん』につきましては、『きゅう陸海りくかいぐん職業しょくぎょう軍人ぐんじん経歴けいれきゆうするものであって、軍国ぐんこく主義しゅぎてき思想しそうふかまっているとかんがえられるもの』、それから『自衛じえいかんしょくもの』、このふたつを判断はんだん基準きじゅんにいたしているわけでございます。」と答弁とうべんした。
    1. きゅうりく海軍かいぐん職業しょくぎょう軍人ぐんじん経歴けいれきゆうするものであって、軍国ぐんこく主義しゅぎてき思想しそうふかまっているとかんがえられるもの
    2. 自衛じえいかんしょくもの

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 小寺こでら さとし (編集へんしゅう), 浜井はまい おさむ倫理りんり用語ようごしゅう しん課程かていよう』 山川やまかわ出版しゅっぱんしゃ
  • 邉正ぎょう編著へんちょ防衛ぼうえい用語ようご辞典じてん』(2000ねん,国書刊行会こくしょかんこうかい,ISBN 9784336042521
  • 井上いのうえきよし井上いのうえ清史きよし論集ろんしゅう〈3〉日本にっぽん軍国ぐんこく主義しゅぎ』(2004ねん,岩波書店いわなみしょてん/岩波いわなみ現代げんだい文庫ぶんこ,ISBN 4006001134
  • ジョエル・アンドレアス『戦争せんそう中毒ちゅうどく ―アメリカが軍国ぐんこく主義しゅぎせない本当ほんとう理由りゆう―』(原題げんだいAddicted to War」)合同ごうどう出版しゅっぱん ISBN 4772602992
  • アルフレート・ファークツ『軍国ぐんこく主義しゅぎ歴史れきし 1かん 封建ほうけん騎士きしから大衆たいしゅう軍隊ぐんたいへ』もち田幸たこうおとこやく(1973ねん(昭和しょうわ48ねん)、福村ふくむら出版しゅっぱん
  • 伊藤いとう智央ともおTomohide Ito: Militarismus des Zivilen in Japan 1937–1940: Diskurse und ihre Auswirkungen auf politische Entscheidungsprozesse, (Reihe zur Geschichte Asiens; Bd. 19), München: Iudicium Verlag 2019 ISBN 978-3862052202

関連かんれん項目こうもく

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