屋外おくがい排泄はいせつ

屋外おくがい排泄はいせつ（おくがいはいせつ）とは、屋外おくがいにおいて便所べんじょが無ないところで排泄はいせつすること。野外やがい排泄はいせつ（やがいはいせつ）とも呼よばれる。特とくに尿にょう（排尿はいにょう）の場合ばあいは立たち小便しょうべん^[1]、俗ぞくに立たちション（たちション）、野のション（や・のション）などと呼よばれ、糞くそ（排便はいべん）の場合ばあいは野の糞くそ（のぐそ）と呼よばれる^[2]。

便所べんじょがどこにでもあるわけではない時代じだいや地域ちいきにおいてはごく自然しぜんなことであるが、公衆こうしゅう衛生えいせい（疫病えきびょうの防止ぼうし）の観点かんてん、尿にょうに含ふくまれる塩分えんぶんと酸さんによって建物たてものが腐食ふしょくすることから^[3]、先進せんしん国こくを中心ちゅうしんに多おおくの地域ちいきで屋外おくがいでの排便はいべんが禁止きんしされている。日本にっぽんでは軽犯罪法けいはんざいほうにて取とり締しまられている。

傾向けいこう

一般いっぱん

一般いっぱん的てきにトイレが近ちかくになくて我慢がまんできない時ときに行おこなわれることが多おおい。羞恥心しゅうちしん汚けがす箇所かしょを最小限さいしょうげんにとどめ、目立めだたなくするといった理由りゆうで、隅すみの方ほうや、目立めだたない場所ばしょ、ドブなどの溝みぞ、元々もともと汚よごれている所ところで行おこなわれることが多おおい。植物しょくぶつによる目隠めかくしや、分解ぶんかいされることを期待きたいして、自然しぜんの中なかで排尿はいにょうが行おこなわれることも多おおい。

子供こどものトイレトレーニングの一環いっかんで行おこなわせることもある。かつての日本にっぽんでも、庭にわで幼児ようじに排尿はいにょうさせることは当あたり前まえに行おこなわれてきた。当時とうじは布ぬのおむつが使つかわれていたため洗あらう手間てまを省はぶくためでもある。子供こどもがトイレやおまるで排泄はいせつすることに恐怖きょうふ心しんを抱だいているときに、行おこなわせることもあった。

ドライブ中ちゅうに便意べんいを催もよおし、渋滞じゅうたいに巻まき込こまれるなどして、パーキングエリア（サービスエリア）のトイレまで持もたないときには、緑地りょくち帯たいや、路肩ろかた、駐車ちゅうしゃ場じょうで行おこなわれることもある。

屋外おくがい排泄はいせつは、登山とざんまたはハイキングをしていてトイレが見当みあたらない時ときや、トイレのない場所ばしょでキャンプをしているときで、なおかつ携帯けいたいトイレを持もち合あわせていない時ときに行おこなわれる。隠語いんごとして、男性だんせいは「キジ撃うち」、女性じょせいは「花はな摘つまみ」が用もちいられる。森林しんりんでは樹木じゅもくが生おい茂しげっており、奥おくへ入はいれば目隠めかくしになるために行おこなわれる。

地域ちいき性せい

国くにや地域ちいきによって考かんがえ方かたは異ことなる。多おおくの先進せんしん国こくの街まち中ちゅうでは禁止きんしされる。都会とかいではより強つよくタブー視しされ、田舎いなかでは寛容かんような傾向けいこうがある。

排泄はいせつ物ぶつ

尿にょうの方ほうが回数かいすうが多おおく液体えきたいであり、乾燥かんそうして蒸発じょうはつするなどして跡あとが残のこりにくいことから、罪悪ざいあく感かんも少すくなく行おこなわれ、排泄はいせつ物ぶつを処理しょりせずに放置ほうちする傾向けいこうにある。糞くそは固体こたいであり、跡形あとかたや臭においが残のこりやすいことから滅多めったに行おこなわれない。

その他た

自分じぶんの性的せいてき欲求よっきゅうを満みたすため、他者たしゃの羞恥心しゅうちしんを煽あおるために行おこなうこともある。

海外かいがい

中国ちゅうごく

中国ちゅうごくは、田舎いなか、街まち中ちゅう、公共こうきょうの場所ばしょ問とわず、子供こどもの排泄はいせつには寛容かんような傾向けいこうにある。その象徴しょうちょうたるものが股また割われズボンで、しゃがみこむだけで用ようが足たせるようになっている。ただし、中国ちゅうごく政府せいふは2008年ねん北京ぺきん五輪ごりんを前まえにマナー向上こうじょうの一環いっかんで街まち中ちゅうでの用足ようたしをやめるよう周知しゅうちしたため、人々ひとびとの意識いしきも変かわりつつある。

モンゴル

モンゴルの遊牧ゆうぼく生活せいかつをしている人々ひとびとは、パオまたはゲルと呼よばれる移動いどう式しき住居じゅうきょに住すんでいるが、その住居じゅうきょにトイレはなく、大地だいちに用ようを足たしている。

インド

インドは宗教しゅうきょう上じょうの理由りゆうからトイレを設もうけない家屋かおくが多おおく、2015年ねんの段階だんかいで5億おく2,300万まん人にんが屋外おくがい排泄はいせつを行おこなっている推計すいけいがあり、世界せかい最大さいだいの屋外おくがい排泄はいせつ大国たいこくとなっている。これにより特とくに都市とし部ぶでは衛生えいせい状況じょうきょうの悪化あっかが深刻しんこく化かしており、インド政府せいふや国際こくさい機関きかんなどがその習慣しゅうかんをやめるよう促うながしている^[4]。

ナイジェリア

ナイジェリアでは、人口じんこうの約やく4分ぶんの1に当あたる約やく4600万まん人にん超ちょうが屋外おくがいで用ようを足たしていると推計すいけいされている。2019年ねん、ムハンマド・ブハリ大統領だいとうりょうは、屋外おくがいでの排便はいべんの撲滅ぼくめつキャンペーンを宣言せんげん。学校がっこうやホテル、給油きゅうゆ所しょ、礼拝れいはい所しょ、市場いちば、病院びょういん、オフィスなど公共こうきょうの場所ばしょにトイレ設置せっちを進すすめるとしている^[5]。

強つよく禁止きんしされる場所ばしょ

神社じんじゃ、仏閣ぶっかく、墓地ぼち、地蔵じぞうなどの宗教しゅうきょう施設しせつの様ように神聖しんせいな場所ばしょは汚よごしてはならぬとの考かんがえ方かたから、上水道じょうすいどう（生活せいかつ用水ようすいとして使つかっている川かわ、井戸いどなど）や、公園こうえんの砂場すなばは（抵抗ていこう力りょくの弱よわい幼児ようじが遊あそぶ事ことが多おおい場所ばしょであるため）疫病えきびょう予防よぼうの観点かんてんから、高山たかやまは気温きおんが低ひくく、排泄はいせつ物ぶつを分解ぶんかいする微生物びせいぶつの活動かつどうが落おちるため行いってはならないとされる。

野外やがい排泄はいせつに関かんする日本にっぽんの法ほう規定きてい

屋外おくがいで排泄はいせつすることは、予想よそうできない渋滞じゅうたいの発生はっせい時じやトイレの無ない山中さんちゅうなどでは緊急きんきゅう避難ひなんとして許ゆるされることもあるが基本きほん的てきには軽犯罪法けいはんざいほう違反いはんである。すなわち、同どう法ほう第だい1条じょうに、「次つぎの各号かくごうのひとつに該当がいとうする者ものは、拘留こうりゅうまたは科料かりょうに処しょする」。そして第だい26号ごうに「街路がいろ又または公園こうえんその他た公衆こうしゅうの集合しゅうごうする場所ばしょで、たんつばを吐はき、または大だい小便しょうべんをし、もしくはこれをさせた者もの」とある。

また、場所ばしょによっては刑法けいほう第だい142条じょうの「浄水じょうすい汚染おせん」(付近ふきんに飲料いんりょう水すいとして使用しようされている井戸いどや水源すいげん地ちなどがあった場合ばあい)、同どう第だい261条じょう「器物きぶつ損壊そんかい等とう」(他人たにんの所有しょゆう物ぶつが汚染おせんされた場合ばあい)、同どう第だい174条じょう「公然こうぜんわいせつ」(人々ひとびとが集合しゅうごうしたり往来おうらいのある場所ばしょなどで陰部いんぶを露出ろしゅつして排泄はいせつした場合ばあい)によって処断しょだんされたケースもあり、更さらに公衆こうしゅう衛生えいせい上うえも好このましくないため認みとめられる行為こういではない。男女だんじょの性別せいべつも問とわれない。

科学かがく的てき見地けんちから

「小便しょうべんは樹木じゅもく類るいの肥料ひりょうとなる」との理由りゆうで他人たにんの野外やがい排尿はいにょうを擁護ようごする人ひともいるが誤あやまりである。日本にっぽんでは昭和しょうわ時代じだい中期ちゅうきまで人ひとの糞尿ふんにょうを農耕のうこうの肥料ひりょうとして用もちいてきたため、このような誤解ごかいが広ひろまったと推測すいそくされる。むしろ、草花くさばなに定期ていき的てきに放尿ほうにょうしているとその植物しょくぶつは逆ぎゃくに枯かれてしまうことが多おおい。小便しょうべんを肥料ひりょうとして用もちいるには、肥溜こえだめのような施設しせつに一定いってい期間きかん放置ほうちし、発酵はっこうを待まつ必要ひつようがある。大便だいべんは窒素ちっそやリン酸さんなどを含有がんゆうしており、脱糞だっぷん直後ちょくごの状態じょうたいでもある程度ていどは肥料ひりょうになりうるが、本来ほんらいは小便しょうべんと同様どうよう、肥溜こえだめ等とうで発酵はっこうさせてから用もちいられたものである。

なお、昆虫こんちゅう採集さいしゅう家いえが野外やがいで採集さいしゅうする際さいに、野の糞くそを行おこなうことがある。すると、動物どうぶつの糞くそを好このむ昆虫こんちゅう　つまり糞虫くそむしやハエ類るいが集あつまってくる。もし採集さいしゅう家かがこの類るいの採集さいしゅうを求もとめる場合ばあい、時間じかんをおいて立たち戻もどり、集あつまった昆虫こんちゅうを採集さいしゅうする。昆虫こんちゅう採集さいしゅうの方法ほうほうとして、このような虫むしを捕とるために糞くそを用意よういしておいて、それを置おいて集あつめる方法ほうほうがあり、これはトラップのひとつとされる。そこから、このような自分じぶんの糞くそで虫むしを集あつめることをセルフトラップと呼よぶ。南方みなかた熊楠くまぐすもこれを行おこなっていた記録きろくがある。

脚注きゃくちゅう

^ 「立たて小便しょうべん」『デジタル大辞泉だいじせん』。コトバンクより2022年ねん2月がつ5日にち閲覧えつらん。
^ 「野の糞くそ」『精選せいせん版ばん日本にっぽん国語こくご大だい辞典じてん』。コトバンクより2022年ねん2月がつ5日にち閲覧えつらん。
^ “立たち小便しょうべんに悩なやむドイツの大だい聖堂せいどう建物たてものが腐食ふしょく”. BBCニュース. 2023年ねん12月18日にち閲覧えつらん。
^ 「家いえから離はなせ」ヒンドゥーの教おしえ　トイレが遠とおいインド朝日新聞あさひしんぶん（2017年ねん11月27日にち）2017年ねん12月3日にち閲覧えつらん
^ “ナイジェリア、屋外おくがいでの排便はいべん撲滅ぼくめつキャンペーンを開始かいし 4600万まん人にんが屋外おくがいで排はいせつ”. AFP (2019年ねん11月23日にち). 2019年ねん11月23日にち閲覧えつらん。