隷変

隷変（れいへん、簡体字かんたいじ: 隶变; 繁体字はんたいじ: 隸變; 拼音: lìbiàn; 英語えいご: clerical change）とは、漢かん代だい初期しょきに中国語ちゅうごくごの表記ひょうきが篆書てんしょ体たいから隷書れいしょ体たいに移行いこうすると共ともに、書かきやすくするためにある字じの絵画かいが的てき形態けいたいの省略しょうりゃくや付つけ加くわえ、変形へんけいを行おこなう過程かていを通つうじて紀元前きげんぜん第だい2世紀せいきの間あいだに時ときとともに起おこった自然しぜんで漸進ぜんしん的てきで体系たいけい的てきな漢字かんじの簡略かんりゃく化かを指さす。隷変は、もう1つの隷定と共ともに、新あらたな隷書れいしょ字体じたいを指向しこうする2つの転換てんかん過程かていの1つであり、文字もじ形がたの正則せいそく化かと線形せんけい化かをも巻まき起おこした。

隷変
秦はたの篆書てんしょ（左ひだり）と漢かんの隷書れいしょ（右みぎ）で書かかれた「馬うま」の字じ、相互そうごに比較ひかくするために隣となり同士どうしに並ならべた。篆書てんしょ体たいのほうがいっそう現代げんだいの漢字かんじに近似きんじしている。
各種かくしゅ表記ひょうき
繁体字はんたいじ：	隸變
簡体字かんたいじ：	隶变
拼音：	lìbiàn
注ちゅう音符おんぷ号ごう：	ㄌㄧˋㄅㄧㄢˋ
ラテン字じ：	li4pien4
発音はつおん：	リーピエン
日本語にほんご読よみ：	れいへん
英文えいぶん：	clerical change

過程かてい

より早期そうきの篆書てんしょは煩雑はんざつで筆写ひっしゃに不便ふべんだった。結果けっかとして下級かきゅう役人やくにんと書記しょき（すなわち、隷（れい）; 隸; 隶; 隸; lì）は次第しだいに筆画ひっかくを単純たんじゅん化かし、弓ゆみなりにした筆ふでで書かくことから真まっ直すぐにした筆ふでづかいへ移行いこうし、両者りょうしゃとも書かきやすさを向上こうじょうさせた。

字じの複雑ふくざつ性せいは、以下いかの4つの方法ほうほうのどれか1つで減少げんしょうさせられる。――

 • 調ちょう変へん (Modulation)

字じの構成こうせい要素ようその無関係むかんけいの要素ようそでの置おき換かえ。例たとえば、射い（shè、「矢やを射いる」）の金文きんぶん形がたはと書かいたが、隷書れいしょへの移行いこう中ちゅうに左側ひだりがわの要素ようそが身み（「からだ」）に置おき換かえられるようになった。

 • 突変 (Mutation)

ある字じが調しらべ変へんをこうむり、それがあまりにも突然とつぜんで、元もとの形かたちを示唆しさする何なんの手てがかりも新あたらしい形かたちの中なかに見みられないことがある。例たとえば、篆書てんしょの（「春はる」）から隷書れいしょの（ひいては現代げんだいの）形かたちである春はるへの移行いこうである。本来ほんらいの要素ようそ芚のいかなる暗示あんじも完全かんぜんに喪失そうしつし、代かわりにそれを本来ほんらいの要素ようそとの関係かんけい性せいに根拠こんきょがないように見みえる𡗗と入いれ替かえた。

 • 省しょう変へん (Omission)

文字もじ要素ようその完全かんぜんな脱落だつらく。例たとえば、書しょ（shū、上古じょうこ中国語ちゅうごくご：/*hlja/、「書かく」）の隷書れいしょ体たいは、篆書てんしょ体たいの下部かぶにある音符おんぷ者もの（上古じょうこ中国語ちゅうごくご：/*tjaːʔ/）を完全かんぜんに省略しょうりゃくしている。

 • 簡変 (Reduction)

字じの構成こうせい要素ようそをより少すくない筆画ひっかくをもつ形かたちに単純たんじゅん化かする。例たとえば、古代こだいの形かたちである/僊（xiān、上古じょうこ中国語ちゅうごくご：/*sen/、「仙人せんにん」）は複雑ふくざつな音符おんぷである䙴（上古じょうこ中国語ちゅうごくご：/*sʰen/）を山やま（上古じょうこ中国語ちゅうごくご：/*sreːn/）に単純たんじゅん化かさせ、隷書れいしょ形がた仙せんを創出そうしゅつした。

隷変という移行いこう過程かていの1つの帰結きけつは、篆文中ちゅうの複雑ふくざつな構成こうせい要素ようそ（例たとえば、情じょうや恨に見みられるように、「心しん」/心しんをその片側かたがわに含ふくむ字じがその構成こうせい要素ようそを忄に単純たんじゅん化かさせた）の単純たんじゅん化かの結果けっかとして多おおくの部首ぶしゅが形成けいせいされたことである。これらの新あらたに形成けいせいされた部首ぶしゅは、いまだ漢字かんじの構成こうせいと分類ぶんるい整理せいりの根本こんぽん原理げんりとして現在げんざいの漢字かんじにも用もちいられている。

実例じつれい

字義じぎ	古文こぶん/古代こだいの形かたち	隷変形へんけい	漢語かんご拼音	概要がいよう
年とし、収穫しゅうかく（稔みのる）	秊	年とし	nián	元来がんらい、古代こだいの金文きんぶん形がたでは（秂）であるこの字じは、背中せなかで穀物こくもつ（禾）を運はこぶ人ひと（人ひと）の会意かいい文字もじであった。すなわち、収穫しゅうかく。人ひともまた、上古じょうこ中国語ちゅうごくご：/*njin/への音声おんせい標識ひょうしき（音符おんぷ）としての機能きのうを与あたえられている。西にし周あまね時代じだいの後のち、古代こだいの金文きんぶん形がたは人ひとに付加ふか的てきな1画かくを加くわえ、千せんをもたらし、/*sn̥ʰiːn/への音符おんぷとして機能きのうし続つづけながら、を生うみ出だし、篆書てんしょ形がた（秊）の基盤きばんを形作かたちづくった。隷変の簡略かんりゃく化かののち、その結果けっか、生しょうじた隷書れいしょ形がたは（年とし）となった。
かみなり	靁	雷かみなり	léi	元来がんらい、義よし符ふ雨あめ（「雨あめ」）＋声こえ符ふ畾（上古じょうこ中国語ちゅうごくご：/*ruːl/）、下したの要素ようそは、隷変中なかに田たに簡変されるようになった。
死者ししゃに供そなえ物ものをする		奠	diàn	元来がんらいは、莚むしろ（一いち）の上うえに載のせられた酒樽さかだるの象形しょうけい文字もじ（酉とり）、より後ごの形かたちには溢あふれ出だす酒さけを表あらわす2つの筆画ひっかく（八はち）が加くわえられ、次ついで更さらに2つの筆画ひっかく（八はち）がその莚むしろに加くわえられ、2本ほんの脚あし（丌）を持もつ台だいを形作かたちづくった。隷変中なかに、丌は、結局けっきょく、隷書れいしょ形がたとなる大だいに突変した。
もって、よって、～で、ので、だから、したがって、他た	㠯	以	yǐ	元来がんらいは物ものを運はこぶ人ひと（人ひと）の象形しょうけい文字もじ、篆書てんしょ形がたは、隷変の間あいだ、調しらべ変へんされて隷書れいしょ形がた以を創つくり出だした。
得える	𢔶	得とく	dé	篆書てんしょ形がた、この貝かいが、より早期そうきの隷書れいしょの異体いたい字じへの隷変のさ中ちゅう、早々そうそうに目めに単純たんじゅん化かし、より後ごの異体いたい字じは更さらにこの構成こうせい要素ようそを旦だんにまで崩くずし、その隷書れいしょ形がたは現代げんだいの字形じけいに受うけ継つがれた。
納おさめる	圅	函はこ	hán	篆書てんしょ形がた：。
変更へんこう	㪅	更さら	gèng	篆書てんしょ形がたは、声こえ符ふ丙へい（上古じょうこ中国語ちゅうごくご：/*pqraŋʔ)/）＋義よし符ふ攴（「叩たたく」）からなる。
盤上ばんじょう遊戯ゆうぎ	棊	棋	qí	篆書てんしょ形がたは、義よし符ふ木き（「樹木じゅもく、材木ざいもく」）＋声こえ符ふ其（上古じょうこ中国語ちゅうごくご：/*kɯ/、/*ɡɯ/）からなる。この構成こうせい要素ようそ木きは、隷変中なかに左側ひだりがわに再さい配置はいちされた。
無む	橆	無む	wú	古代こだいの金文きんぶん形がたは、元来がんらい、踊おどりながら両手りょうてに2つの物体ぶったいをささげる人ひとの象形しょうけい文字もじで、篆書てんしょ形がたはとなった。隷変の間あいだ、その構成こうせい要素ようそ木きが調しらべ変へんされ、結果けっか、字じは無むになった。この字じは「無む」のための音声おんせい的てきな借用しゃくよう（仮借かしゃく）であり、一方いっぽうで/舞まい（声こえ符ふ無む/*ma/＋義よし符ふ舛ます、「足取あしどり」からなる）が、元来がんらいの「踊おどり」という意味いみを保持ほじしている。
思考しこう	恖	思おもえ	sī	篆書てんしょ形がたは、声こえ符ふ囟（上古じょうこ中国語ちゅうごくご：/*snɯns/）＋義よし符ふ心しん（「心しん」）からなり、その構成こうせい要素ようそ囟が、隷変中なか、完全かんぜんに無関係むかんけいな字じ田たにまで崩くずれた。
前まえ、先さき	歬	前まえ	qián	篆書てんしょ形がたは、元来がんらい、小舟こふね（舟ふね）の上うえで前進ぜんしんする足あし（止とめ）を描写びょうしゃしている。隷変中なか、止とめは䒑に、同時どうじに舟ふねは月つきに簡変された。前まえの中なかの刂（「小刀こがたな」）の追加ついかは、/𣦃/𠝣に見みられるように、元来がんらい、「切きる」（上古じょうこ中国語ちゅうごくご：/*ʔslenʔ/）の意味いみを表あらわすのに使つかわれたためである。しかし、前まえが、歬の代かわりに使つかわれるようになったので、「切きる」のための字じを表現ひょうげんする目的もくてきで、追加ついかの刀かたな（「小刀こがたな」）が加くわえられたのが剪である。
並ならんで、一斉いっせいに、そのうえ	竝なみ	並なみ	bìng	篆書てんしょ形がたは、立だて（立たっている人ひと）の重複じゅうふくであり、隷変の推移すいい中ちゅうに調しらべ変へんをこうむった。
丘おか	丠	丘おか	qiū	篆書てんしょ形がた：、北きた（「北きた」）を表あらわすと比較ひかくせよ。
のぼる	椉	乘の	chéng	篆書てんしょ形がたは、元来がんらい、明あきらかに足あし（/舛ます）で木き（木き）に登のぼることを表あらわすが、後のちに、隷変中なか、禾＋北きたに単純たんじゅん化かされた。
ぐるりと回転かいてんする	𠄢	亘わたる	xuān	篆書てんしょ形がたは、二に（「2」）＋囘（「転回てんかい」）の会意かいい文字もじからなる。
十二支じゅうにしの4番目ばんめ	戼	卯う	mǎo	元来がんらい、篆書てんしょ形がたに見みられるように、生贄いけにえを真まっ二ぷたつに割さく商しょう朝あさの儀式ぎしきを描写びょうしゃした。
死し	𣦸	死し	sǐ	元来がんらい、篆書てんしょ形がたに見みられるように、/歹（人ひとの亡骸なきがら）＋/人ひと（人ひと）からなる会意かいい文字もじである。
（取とり）去さる	㚎	去さ	qù	篆書てんしょ形がた：。上うえの構成こうせい要素ようそが土どに単純たんじゅん化かし、下したの構成こうせい要素ようそが厶に単純たんじゅん化かした。起源きげんは激はげしく議論ぎろんされており、『説せつ文ぶん解かい字じ』は、義よし符ふ大だい（「人ひと」）＋声こえ符ふ𠙴（/*kʰaʔ/か/*kʰas/）を持もつ形声けいせい文字もじであると提案ていあんするが、一方いっぽうで、Schuessler （2007）は、人ひとの下したの肛門こうもんを描写びょうしゃして「一掃いっそうする」を表あらわしていると提案ていあんする。別べつの解釈かいしゃくには、洞穴どうけつから出でて来くる人ひとや互たがいに出でて来くる唇くちびる（呿、「口くちを開ひらく」からの再さい借用しゃくよう）、器物きぶつの上うえの覆おおいを表あらわす大だい（盍、「覆おおいかぶせる」からの再さい借用しゃくよう）などがある。
～も、また、句く末まつ強つよ勢いきおい助詞じょし		也	yě	『説せつ文ぶん解かい字じ』はこの字じを女性じょせいの陰部いんぶの象形しょうけい文字もじと説明せつめいする。隷変形かたちは原形げんけいから著いちじるしく単純たんじゅん化かされている。
夏なつ、夏なつ王朝おうちょう	夓	夏なつ	xià	隷変形かたちは、その篆書てんしょ形がたからの構成こうせい要素ようそである𦥑と頁ぺーじ（頭あたま）の脚あしを取とり除のぞく。
何なに（疑問ぎもん詞し）、はなはだしい	𠥄	甚	shèn, shén	隷変形かたちは、篆書てんしょ形がたの上部じょうぶの構成こうせい要素ようそを調しらべ変へんするが、元来がんらい、甘あま＋匹ひきの会意かいい文字もじである。
生いきる、生うまれる、生なま（なま）	𤯓	生せい	shēng	篆書てんしょ形がた は、地面じめんから出現しゅつげんする芽生めばえ（屮）表あらわす。
用もちいる	𤰃	用よう	yòng	篆書てんしょ形がた（上古じょうこ中国語ちゅうごくご：/*loŋs/、異体いたい字じ：𠂦、𤰆、𠂵）は、元来がんらい、水みず桶おけの象形しょうけい文字もじを描写びょうしゃした。桶おけ（上古じょうこ中国語ちゅうごくご：/*l̥ʰoːŋʔ/、「桶おけ」）と比較ひかくせよ。
同盟どうめい	𥂗	盟めい	méng	篆書てんしょ形がたは、囧（「窓まど」）を持もつが、隷変中ちゅうに日ひ（「太陽たいよう」）に単純たんじゅん化かされた。朙は、明あきら（上古じょうこ中国語ちゅうごくご：/*mraŋ/、「明あかるい」）の古代こだいの形かたちであった。
花はな	𠌶	花はな	huā	篆書てんしょ形がた：。𠌶と華はな（/𦻏）の字じは、元来がんらい、同おなじ字じであったが、『説せつ文ぶん解かい字じ』の中なかで誤あやまって2つの別個べっこの見出みだし語ごに分割ぶんかつされた。華はな（上古じょうこ中国語ちゅうごくご：/*ɡʷraː/、動詞どうし「花はな咲さく」）は、𠌶（上古じょうこ中国語ちゅうごくご：/*hʷraː/、名詞めいし「花はな」）の派生はせいである。
冬ふゆ葵あおい、蒲葵びろう、蔠葵	𦮙	葵あおい	kuí	篆書てんしょ形がた：𦮙。
西にし	㢴	西にし	xī	篆書てんしょ形がたは元来がんらいは袋ふくろか籠かごを表あらわす象形しょうけい文字もじだったが、「西にし」を意味いみするために音声おんせい的てきに借用しゃくよう（仮借かしゃく）された。
角すみ、縁えん、片側かたがわ	𨘢	邊あたり	biān	より早はやい青銅器せいどうきの銘文めいぶん（金文きんぶん）形かたちは、辵と自じ・穴あな・方ほうからなった。篆書てんしょ形がたにおける右みぎ下部かぶの構成こうせい要素ようそは、方ほうが崩くずされるようになった結果けっかである。より後のちに形かたちを成なした隷書れいしょの異体いたい字じとして、構成こうせい要素ようそ方ほうが文書ぶんしょに再さい出現しゅつげんを果はたした。
食たべる	𠊊	食しょく	shí	篆書てんしょ形がた：。現代げんだいの隷変形かたちの下したの構成こうせい要素ようそは、皀（「食器しょっき」）の単純たんじゅん化かであり、良りょう（）や艮うしとら（）と無関係むかんけいで親しん縁えん性せいはない。
夢幻むげん	𠄔	幻まぼろし	huàn	篆書てんしょ形がた は、元来がんらい、予よ（、「与あたえる」）の反転はんてんだった。
故郷こきょう		鄉さと	xiāng	元来がんらいは、青銅器せいどうき銘文めいぶん（金文きんぶん）において「饗宴きょうえん」を表あらわす𠨍（「互たがいに顔かおを向むけ合あう2人ふたり」）＋皀（「食器しょっき」）からなる会意かいい文字もじである。隷書れいしょ形がたへの移行いこうの間あいだ、𠨍が𨙨と邑（）にまで崩くずされるようになった。隷変の簡略かんりゃく化かに伴ともなって、邑が、語源ごげん的てきに親おや縁えん関係かんけいにある阝部ぶに簡略かんりゃく化かされるようになり、𨙨が無関係むかんけいの乡部ぶ（/幺と親しん縁えん関係かんけいにある）に簡略かんりゃく化かされ、皀が無関係むかんけいの構成こうせい要素ようそ良りょうに置おき換かえられた。「故郷こきょう」の意味いみは音声おんせい借用しゃくよう（仮借かしゃく）経由けいゆで獲得かくとくされた。一方いっぽうで、「饗宴きょうえん」を表あらわすには饗きょう（上古じょうこ中国語ちゅうごくご：/*qʰaŋʔ/）が採用さいようされた。
香気こうき		香こう	xiāng	篆書てんしょ形がたは黍きび（「キビ」）＋甘あま（「甘あまい」）からなったが、隷変形かたちが黍きびを禾（「穀物こくもつ植物しょくぶつ」）に単純たんじゅん化かし、下したの構成こうせい要素ようそ甘あまを、無関係むかんけいな字じである曰（「～と言いう」）に置おき換かえた。
魚さかな	𤋳	魚さかな	yú	篆書てんしょ形がた：。
夜よる	𡖍	夜よる	yè	篆書てんしょ形がたは、声こえ符ふ亦また（、上古じょうこ中国語ちゅうごくご：/*laːɡ/）＋義よし符ふ夕ゆう（、「三日月みかづき」）からなり、夜よるの右みぎ下かの構成こうせい要素ようそは隷変に伴ともなう夕ゆうの崩くずれたものである。一方いっぽうで、亠＋亻は亦またの簡変である。
胃い		胃い	wèi	視覚しかく的てきに胃いを表あらわした象形しょうけい要素ようそが田たに単純たんじゅん化かされた。
排泄はいせつ物ぶつ	𦳊	屎	shǐ	篆書てんしょ形がたは、艸そうこう（「草くさ」）＋胃い（「胃い」）からなる会意かいい文字もじであった。隷書れいしょへの移行いこうに伴ともなって、文献ぶんけん中ちゅうで幅広はばひろい使用しようを獲得かくとくしたこの字形じけいは、戦国せんごく時代じだいからの金文きんぶん形がたに基もとづいている。
移住いじゅうする		徙	xǐ	左ひだりの構成こうせい要素ようそ辵の片割かたわれである止とめは、隷変中なかに右みぎへ再さい配置はいちされ、結果けっか、それぞれ頭あたまに2つの止とめが載のり、偶然ぐうぜんの一致いっちで歨（、即すなわち步ふ、「歩あるく」の商しょう代だいの形かたち）と同おなじ構造こうぞうをもって統合とうごうされることになった。