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静止軌道 - Wikipedia

静止せいし軌道きどう

赤道せきどうめん基準きじゅんとして)軌道きどう傾斜けいしゃかく0はなれしんりつゼロ、自身じしん公転こうてん周期しゅうきははぼし自転じてん周期しゅうきひとしい軌道きどう

静止せいし軌道きどう(せいしきどう、geostationary orbit)は、対地たいち同期どうき軌道きどう (geosynchronous orbit) の一種いっしゅで、(赤道あかみちめん基準きじゅんめんとして)軌道きどう傾斜けいしゃかく0はなれしんりつゼロ(えん)、自身じしん公転こうてん周期しゅうきははぼし自転じてん周期しゅうき[注釈ちゅうしゃく 1]ひとしい軌道きどうである。この軌道きどうまわ衛星えいせい惑星わくせい赤道せきどうじょう自転じてん同期どうきして移動いどうし、地上ちじょうからは天空てんくういちてんまっているようにえるため、通信つうしん衛星えいせい放送ほうそう衛星えいせい気象きしょう衛星えいせいによくもちいられている。GEO[注釈ちゅうしゃく 2]りゃくされることもある。静止せいし軌道きどう人工じんこうの)衛星えいせい静止せいし衛星えいせいという。

静止せいし軌道きどう

概要がいよう

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地球ちきゅうでは、赤道あかみちうえ高度こうど35,786キロメートル円軌道えんきどうであり、軌道きどう周期しゅうきは23あいだ56ふん4びょうとなる。この軌道きどう地球ちきゅう自転じてん同期どうきしているため、赤道せきどうじょう上空じょうくうかけじょう静止せいししているようにえる。そのため対地たいち速度そくどはゼロとなるが、その高度こうど地球ちきゅう半径はんけいした、半径はんけい42,164kmの軌道きどうを24あいだかけて1しゅうする移動いどう速度そくどは11,032km/hとなる[注釈ちゅうしゃく 3]かけじょう静止せいしてん経度けいど観測かんそく緯度いど経度けいどさだまれば衛星えいせいかけの方向ほうこう一意いちいさだまる。

メリットとデメリット

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通信つうしん衛星えいせい放送ほうそう衛星えいせいもちいると、地上ちじょう衛星えいせい双方そうほうアンテナ固定こていしておくことができ、都合つごういためこの軌道きどうえらばれることがおおい。また、空気くうき抵抗ていこうによる減速げんそくもほぼいので、軌道きどう維持いじのための加速かそく不要ふようとなる。
ただし高緯度こういど地域ちいきでは、アンテナの仰角ぎょうかくひくくなるため、さん建物たてものかげになりやすいという欠点けってんもある[注釈ちゅうしゃく 4]。また、地表ちひょうからとおいぶん軌道きどう投入とうにゅうまでのエネルギーをおお必要ひつようとするうえに、一度いちどげられた衛星えいせい修理しゅうり改良かいりょうおこなうなどの物理ぶつりてき接触せっしょく困難こんなんである。

同期どうき軌道きどう(GSO: geosynchronous orbit)の一種いっしゅで、軌道きどう傾斜けいしゃかくをほぼ0にしたものが静止せいし軌道きどうである。同期どうき軌道きどう軌道きどう傾斜けいしゃかくを0以外いがいにする場合ばあいすくないため、同期どうき軌道きどうのことを静止せいし軌道きどうぶこともあるが、厳密げんみつにはことなる概念がいねんである。

軌道きどう投入とうにゅう

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静止せいし軌道きどうは、高度こうど2,000km以下いかてい軌道きどうくら高度こうどたかく、さらには要求ようきゅうされる軌道きどう速度そくどはやいため、軌道きどうへの投入とうにゅうにはおおきなエネルギーが必要ひつようになる。通常つうじょうは、ロケットによりきん地点ちてんすうひゃくkm、遠地点えんちてんやく36,000km(すなわち静止せいし軌道きどう高度こうどおなじ)の楕円だえん軌道きどうである静止せいしトランスファ軌道きどう投入とうにゅうし、つぎ衛星えいせい内蔵ないぞうする比較的ひかくてき小型こがたのロケットエンジンで円軌道えんきどう遷移せんいする。このたね軌道きどう遷移せんいようのロケットエンジンをアポジキックモーターという[注釈ちゅうしゃく 5]。また、このような方法ほうほうでより高度こうどたか軌道きどう遷移せんいするための楕円だえん軌道きどうホーマン軌道きどうという。[1]

なお、トランスファ軌道きどう軌道きどう傾斜けいしゃかくは、発射はっしゃてん緯度いど依存いぞんするため、ゼロとはかぎらない。この場合ばあい軌道きどうめん変換へんかん、すなわち軌道きどう傾斜けいしゃかくをゼロに調整ちょうせいするための操作そうさ必要ひつようである。このため、静止せいし軌道きどうへの投入とうにゅうには、発射はっしゃてん出来できるだけ赤道あかみちちかいほうが有利ゆうりである。欧州おうしゅう宇宙うちゅう機関きかんギアナ宇宙うちゅうセンターえらばれた理由りゆうのひとつは、人工じんこう衛星えいせい燃料ねんりょう消費しょうひ節約せつやくと、静止せいし衛星えいせい投入とうにゅうできる人工じんこう衛星えいせいロケット搭載とうさいりょう増大ぞうだいである。

静止せいし軌道きどうないで、変更へんこうしうるパラメータは静止せいしてん直下ちょっか経度けいどのみである。[2]

軌道きどうポジション

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軌道きどうじょうから、経済けいざい活動かつどう活発かっぱつ需要じゅようおお地域ちいきにサービスを提供ていきょうしようとすれば、おのずと軌道きどうのポジションはかぎられるため、どう経度けいど他国たこく企業きぎょうとの競合きょうごうしょうじる。さらに、衛星えいせい地上ちじょうとの通信つうしんには電波でんぱ利用りようするので、周波数しゅうはすう利用りよう競合きょうごうこる。衛星えいせい静止せいし軌道きどうじょう運用うんようすることは、有限ゆうげん資源しげんである周波数しゅうはすう軌道きどうポジションを占有せんゆうすることを意味いみする。

したがって、静止せいし衛星えいせい軌道きどう利用りようには国際こくさいてきめと調整ちょうせい必須ひっすとなる。現在げんざいは、ITUによって軌道きどうポジションと周波数しゅうはすう国際こくさい管理かんり調整ちょうせいがなされている。衛星えいせい通信つうしん現代げんだい社会しゃかい基盤きばん一部いちぶになっており、国際こくさいてきめられたルールのしたただしく運用うんようされなければならない。現在げんざい静止せいし衛星えいせい軌道きどうじょうには、運用うんようちゅう商業しょうぎょうよう通信つうしん衛星えいせいかぎっても239衛星えいせい存在そんざいしている[3]

世界せかい人口じんこう経済けいざい活動かつどう地球ちきゅう表面ひょうめん一様いちよう分布ぶんぷしていないように、静止せいし衛星えいせい軌道きどうじょう衛星えいせいかたよった分布ぶんぷをしている。静止せいし衛星えいせい軌道きどうじょう衛星えいせい増加ぞうかにともない、せま範囲はんい複数ふくすう衛星えいせい共存きょうぞんしている場所ばしょ存在そんざいする。かつて憂慮ゆうりょされていた、軌道きどうじょうのポジションと利用りよう周波数しゅうはすうたい高密度こうみつど現実げんじつとなってきている。とくに、ヨーロッパ・アフリカ上空じょうくうにあたる東経とうけい15~20アメリカ大陸あめりかたいりく上空じょうくう西経せいけい90~100、そして、日本にっぽんおよび東南とうなんアジア地域ちいき東経とうけい110周辺しゅうへんではその程度ていどいちじるしい[4]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 地球ちきゅうとその衛星えいせい場合ばあい、23あいだ56ふん4びょう
  2. ^ geosynchronous equatorial orbit対地たいち同期どうき赤道せきどうじょう軌道きどう)、また地球ちきゅうのそれの場合ばあいgeostationary earth orbit対地たいち静止せいし軌道きどう
  3. ^ 地球ちきゅう赤道せきどうじょうでの地表ちひょう自転じてん速度そくどはおよそ1,700km/hである。
  4. ^ この欠点けってんおぎな手法しゅほうとして、じゅん天頂てんちょう衛星えいせい軌道きどう使つか手法しゅほうがある。
  5. ^ 遠地点えんちてん(Apogee, アポジ)で推力すいりょくす(キックする)エンジン(モーター)の

出典しゅってん

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  1. ^ https://yomoriki.com/celestial-mechanics/1530/
  2. ^ https://qzss.go.jp/overview/column/orbit_151027.html
  3. ^ Commercial Communications Satellites Geosynchronous Orbit” (PDF). Boeing (2006ねん6がつ30にち). 2007ねん1がつ27にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2019ねん10がつ22にち閲覧えつらん
  4. ^ https://www.nict.go.jp/publication/NICT-News/0507/p02.html

関連かんれん項目こうもく

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