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パルス符号変調 - Wikipedia

パルス符号ふごう変調へんちょう

LPCMから転送てんそう

パルス符号ふごう変調へんちょう(パルスふごうへんちょう、PCM英語えいご: pulse code modulation)とは音声おんせいなどのアナログ信号しんごうを、アナログ-デジタル変換へんかん回路かいろにより、デジタル信号しんごう変換へんかんデジタイズ)する変調へんちょう方式ほうしきひとつである。

4ビットPCMによる信号しんごう標本ひょうほんおよ量子りょうしれいあかせんがアナログ信号しんごうであり、あおてん標本ひょうほんおよ量子りょうしのデータである。

概要がいよう

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アナログ信号しんごうたいして標本ひょうほんおよび量子りょうしおこない、数列すうれつとして出力しゅつりょくする[1]サンプリング周波数しゅうはすうたか量子りょうしビットかずおおいほど変換へんかんまえちかこう品質ひんしつなデータになるが、データサイズが非常ひじょうおおきくなるという問題もんだいがある。PCMの実用じつようふるく、1943ねんから1946ねんまで運用うんようされたSIGSALY人類じんるい史上しじょうはじめて実用じつようされた。

種類しゅるい

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量子りょうし方式ほうしきちがいにより、様々さまざま種類しゅるいのPCMが存在そんざいする。ほとんどの場合ばあい現代げんだいもちいられているPCMはサンプリング周波数しゅうはすう一定いっていである。PCMには圧縮あっしゅくのものと圧縮あっしゅくされたものが存在そんざいするが、圧縮あっしゅくされたPCMは音質おんしつ劣化れっかおさえつつデータりょう削減さくげんしている[ちゅう 1]圧縮あっしゅくけていないリニアPCMがもっとエンコードデコード簡単かんたんであり、回路かいろやソフトウェアにかるコストの問題もんだいから、通信つうしん帯域たいいきせまいあるいは記録きろく容量ようりょうすくないなどの場合ばあい以外いがいはリニアPCMが採用さいようされることがほとんどである。ただし、21世紀せいきはいってからは、圧縮あっしゅくする場合ばあいでもたん量子りょうし方法ほうほう工夫くふうするよりは、MP3AACFLACなど、音声おんせいスペクトル分析ぶんせきやチャンネルあいだ相関そうかん分析ぶんせき予測よそくなどの様々さまざま技法ぎほう駆使くしするデータ圧縮あっしゅく方式ほうしきおおくなった。

リニアPCM(線形せんけいPCM)
線形せんけい量子りょうしもちいたもの。れいとしては、CD-DADVD-Audio一部いちぶDVD-VideoBD-VideoPlayStation 3ようゲームソフトなどで採用さいようされている。
ADPCM適応てきおう差分さぶんPCM)
差分さぶん符号ふごう量子りょうしはば適応てきおうてき制御せいぎょにより、品質ひんしつをあまりとさずにデータりょう圧縮あっしゅくするPCM。れいとしては、1990年代ねんだいアーケードゲームなどで採用さいようされた。
DPCM差分さぶんPCM)
差分さぶん符号ふごうのみをもちいて、データりょう圧縮あっしゅくするPCM。れいとしては、ファミリーコンピュータ音源おんげんチップの1機能きのうとして採用さいようされた。
折線おれせん量子りょうしもちいたPCM
初期しょきPCMプロセッサー1977ねん発売はつばいソニーPCM-1など)やNT採用さいようされているダイナミックレンジ圧縮あっしゅくのための量子りょうし方式ほうしき。3折線おれせん,5折線おれせんなど、製品せいひんごとに考慮こうりょする折線おれせん本数ほんすう差異さいがあり、ダイナミックレンジ伸長しんちょう相当そうとうbitすうことなる(考慮こうりょする折線おれせん本数ほんすうおおいほどダイナミックレンジは改善かいぜんするが、折線おれせんおおぶんだけコストもたかく)。
対数たいすう量子りょうしもちいたPCM
電話でんわもうμみゅー-lawA-law)やDATのLPモードなどで採用さいようされている。デジタルはんコンパンディングである。
浮動ふどう小数しょうすう使用しようして量子りょうしされたPCM
浮動ふどう小数点しょうすうてんすうもちいたPCM。可聴かちょう領域りょういきを-1.0~1.0とさだめているが、その外部がいぶ領域りょういき(-∞~-1.0、1.0~∞)の波形はけいつぶさずに保持ほじすることが可能かのうとなっている。そのため、適切てきせつ場所ばしょ使用しようすることで、クリッピングノイズ(おとれの一種いっしゅ)をふせぐことができる場合ばあいがある。また、正規せいきすうという例外れいがいのぞ有効ゆうこう桁数けたすうつね一定いっていであることから、音量おんりょう大小だいしょう量子りょうしゆがみによるつぶやすさがわらないという利点りてんもある。たとえば、メディアプレーヤー内部ないぶ処理しょりや、DAW内部ないぶ処理しょり作業さぎょう途中とちゅうのプロジェクトファイルではこの形式けいしき採用さいようされることがおおい。

ノイズとゆが

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変調へんちょう以下いかノイズおよびゆが発生はっせいする。

サンプリングノイズ

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標本ひょうほん雑音ざつおん周波数しゅうはすうスペクトルるとサンプリング周波数しゅうはすう半分はんぶんナイキスト周波数しゅうはすうという)の周波数しゅうはすうにしてかえしたようにあらわれることからかえ雑音ざつおんともいう。

標本ひょうほん定理ていりにより、最低さいていでも音声おんせいふくまれるもっとたか周波数しゅうはすう成分せいぶんの2ばい以上いじょうのサンプリング周波数しゅうはすうたないかぎり、高音こうおん信号しんごうかえされ、にせ信号しんごうとしてあらわれる。このため、サンプリング周波数しゅうはすうはよりたかいほどより高音こうおん再現さいげんできる。

また、再生さいせいには同様どうようにしてげん信号しんごうかえしたようなにせ信号しんごう発生はっせいし、ノイズとなる。オーバーサンプリング方式ほうしきでは、最初さいしょもと信号しんごうデジタルフィルタすうばいのサンプリング周波数しゅうはすう変換へんかんすることでかえ雑音ざつおん高周波こうしゅうはすう帯域たいいき移動いどうさせ、そのアナログ変換へんかんローパスフィルタ回路かいろによるかえ雑音ざつおん除去じょきょおこなっている。

量子りょうしゆが

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うえのグラフはもと信号しんごうあお)とそれを量子りょうしした信号しんごうあか)をしめしている。したのグラフは量子りょうし誤差ごさ(2つの信号しんごう差分さぶん)をしめしている。

原理げんりじょう量子りょうしによってアナログりょうからデジタルにするさいはしすう処理しょりによる誤差ごさ量子りょうし誤差ごさという)のため、ゆがみ(量子りょうしゆがみ)が発生はっせいする。また、これによる雑音ざつおん量子りょうし雑音ざつおんという。これをおさえるためには、量子りょうしビットすうやす必要ひつようがある。

クリッピングノイズ

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録音ろくおんなどに、音量おんりょう可聴かちょう領域りょういき量子りょうしできる最大さいだい音量おんりょう)をえてしまった部分ぶぶん波形はけいとされる処理しょり(クリッピング)により発生はっせいするノイズ。これをふせぐには、音声おんせい記録きろく音量おんりょうげる必要ひつようがある。ただし、可聴かちょう領域りょういきはばたいして音量おんりょう極端きょくたんちいさい場合ばあい量子りょうしゆがみで波形はけいつぶれてしまうため、適切てきせつ音量おんりょう記録きろくおこなうことが大切たいせつである。

おとれを修復しゅうふくする作業さぎょうをデクリッピングなどと場合ばあいがあるが、この作業さぎょうられる波形はけいはあくまで予測よそくによるものであり、本来ほんらいのものとおおきくずれている可能かのうせいがある。

CD-DA(音楽おんがくCD)
コンパクトディスク採用さいようされた。サンプリング周波数しゅうはすう44.1kHzきろへるつ量子りょうしビットすう16bit、2chステレオ。
DVD-Video
必須ひっす量子りょうしビットすう16/20/24bit、サンプリング周波数しゅうはすうは48/96kHzきろへるつまで対応たいおうしている。転送てんそうレート最大さいだい1.5Mbps、チャンネルすうは2chステレオが上限じょうげんである。そのため、DVDビデオではおおくのソフトが、ドルビーデジタルもちいて5.1chサラウンド対応たいおうしている。
DVD-Audio
DVD-Audioは、次世代じせだいCD規格きかくの1つであったが、音楽おんがく配信はいしん普及ふきゅうしたことすで生産せいさんおこなわれなくなっている。サンプリング周波数しゅうはすう最大さいだい192kHzきろへるつ量子りょうし24bit。チャンネルすうは2chステレオのものが一般いっぱんてきである。
BD-Video (BDMV)
サンプリング周波数しゅうはすうは48/96/192kHzきろへるつ量子りょうしビットすう24bit、チャンネルすうは7.1chサラウンド[ちゅう 2]上限じょうげんだが、2008ねん現在げんざいではほとんどのソフトウェアが5.1chサラウンドである。最高さいこう転送てんそうレートは27.4Mbps固定こていしき比較ひかく対象たいしょうとしてHD DVDでは5.1chサラウンド、13.5Mbpsが上限じょうげん)。圧縮あっしゅくおこなわないぶん可逆かぎゃく圧縮あっしゅく音声おんせいであるドルビーTrueHDDTS-HDマスターオーディオくらべて計算けいさんエンコードデコード)は簡単かんたんになるが、使用しよう帯域たいいきえることになる[2][3]再生さいせいには、リニアPCMでのサラウンド出力しゅつりょく対応たいおうしたBDプレーヤー再生さいせい対応たいおうしたAVアンプHDMI端子たんしケーブルでの接続せつぞく必須ひっすとなる。そのため、DVDプレーヤー一般いっぱんてきであったひかりデジタル音声おんせい端子たんしケーブルでのリニアPCM音声おんせい出力しゅつりょくは、2chステレオまでとなる。なお、PlayStation 3ではシステムソフトウェアバージョン3.30以降いこう搭載とうさいされた音声おんせい出力しゅつりょく設定せっていのビットストリーム(ミックス)機能きのう使つかうことにより、リニアPCMで収録しゅうろくされたサラウンド音声おんせいDTS、またはドルビーデジタルのサラウンド音声おんせいにダウンコンバートし、これら2規格きかくのうちいずれかが再生さいせい可能かのう機器ききであれば、ひかりデジタル音声おんせい端子たんしケーブルで接続せつぞくした機器ききでもサラウンドを再生さいせいさせることが可能かのうになっている(いちはDTSないしドルビーデジタルに変換へんかんしているため、音質おんしつ劣化れっかする)。

ゲームソフト

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PlayStation 3ようゲームソフト
最高さいこうで7.1ch (48kHzきろへるつ/16bit) にまで対応たいおうしている。最近さいきんのPS3ようソフトはリニアPCM5.1chとドルビーデジタル5.1chのサウンドを収録しゅうろくしたものがおおく、規格きかくじょうマルチチャンネルサラウンドにおいてはドルビーデジタル5.1chにしか対応たいおうしていないXbox 360ようソフトにたいするアドバンテージとなっている。7.1ch収録しゅうろくのものはとくにサウンドめんにこだわったソフトの場合ばあいおおく、そのおおくはSCE製品せいひんであることがおおい。
Xbox 360ようゲームソフト
最高さいこうで2chステレオにまで対応たいおうしている。ドルビーデジタル5.1chでゲームサウンドを収録しゅうろくしていないXbox 360ようソフトは、すべてリニアPCM2chでのサウンド収録しゅうろくであると推察すいさつされる。ドルビーデジタル2chである可能かのうせいひくい。

IP電話でんわ

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1チャネルたりの基本きほん速度そくどが64kbpsの場合ばあい、24チャネルで1.544Mbpsになる。

PCMプロセッサー

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アナログビデオテープレコーダーわせ、音声おんせいデジタル信号しんごう記録きろくする装置そうちアナログ-デジタル変換へんかん回路かいろデジタル-アナログ変換へんかん回路かいろそなえる。業務ぎょうむよう家庭かていよう製品せいひん発売はつばいされ、従来じゅうらいテープレコーダー上回うわまわ高音こうおんしつ記録きろく可能かのう機器ききとして利用りようされた。コンパクトカセット普及ふきゅうしていたことから、家庭かていへの導入どうにゅうはオーディオマニアなどのきょくわずかな事例じれいのみにまり、業務ぎょうむようレコーディングのデジタル中心ちゅうしん導入どうにゅうされた。

PCM音源おんげん

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PCMデータをDA変換へんかん装置そうちによって変換へんかんすることでおと再生さいせいする装置そうちPCM音源おんげんという。サンプラーサンプリング音源おんげんばれることもある。

ソフトウェア技術ぎじゅつ

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ソフトウェアミキサー

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アプリケーションソフトがわからると、任意にんい個数こすう性能せいのう仮想かそうPCM音源おんげんらすかたちとなっていて、それらをPCM再生さいせいハードウェアにけてミキシングしておく機能きのうつソフトウエアがあり、ソフトウェアミキサーという。近年きんねんCPUの大幅おおはば処理しょり速度そくど向上こうじょうにより、よりリッチな表現ひょうげん可能かのうになった[ちゅう 3]DirectX音声おんせいデータに音階おんかい付与ふよする機能きのう、ソフトウェアMIDI音源おんげんなどはいずれもこの技術ぎじゅつによってっている。家庭かていようゲームでこれを利用りようしているものの代表だいひょうとして、ゲームボーイアドバンスげられる。一方いっぽう、これをほとんど利用りようしないゲームにはPlayStation 2などがある。これはPSやPS2において、ハードウェアPCMまたはストリーミング再生さいせいというスタイルがほぼ確立かくりつしているためである。

PCM音源おんげんによるPCMデータの再生さいせい

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PCM音源おんげんたないゲームでは、CPUでサンプリングデータを順次じゅんじDACに送信そうしんしてPCMを再生さいせいしたものがある。ネオジオポケット光速こうそくせんなどが単独たんどくでDACを搭載とうさいしていたほか、メガドライブPCエンジン音源おんげん一部いちぶをDACとして使つかうことができ、それを使つかってPCMを再生さいせいしていた。

ハードウェア制御せいぎょこまかにおこなうことにより、発声はっせい可能かのうなハードウェアをDAC見立みたてて、音声おんせい再生さいせいする手法しゅほう存在そんざいしている。ビープおんようのハードウェアでパルスはば変調へんちょうおこなったり、矩形くけい出力しゅつりょくをDACに見立みたてPSGによるPCM再生さいせいおこなこころ[4][5]や、同様どうようX68000ではOPM音色ねいろとして矩形くけい定義ていぎし、8チャンネルの出力しゅつりょくポートを利用りようすることで、最大さいだいでモノラルでは50kHz前後ぜんご、ステレオで25kHzきろへるつ前後ぜんこうのサンプリング周波数しゅうはすう再生さいせい可能かのうにしたソフトウェア[6]存在そんざいする。DACとしては非線形ひせんけい指数しすうてき特徴とくちょうつなど、元々もともと想定そうていしていないハードウェアであるため、再生さいせい音質おんしつ想定そうていした設計せっけいのものと比較ひかくし、ひくくなりがちである。

また、波形なみかたメモリ音源おんげんでは、制御せいぎょするがわで1周期しゅうきごとに波形はけい更新こうしんしてPCMを再生さいせいしたソフトウェアも存在そんざいする。

インターネット

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マイクロフォンからの入力にゅうりょくをADCによりデジタイズしてCPUレジスターやメモリーへみ、時限じげんてきなソフトウェア割込わりこみなどで、ネットワークになが手法しゅほう一般いっぱんしている。プログラミング言語げんご比較的ひかくてき容易よういにコーディングがおこなえ、ビデオ会議かいぎアプリケーションやサイマルラジオ、サイマル・テレビなどの完成かんせいされたアプリケーションを利用りようすることで遅延ちえんはあるものの技術ぎじゅつてき内容ないよう意識いしきすることがなく使つかわれている。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ マスキング効果こうかともヴェーバー‐フェヒナーの法則ほうそくとも解釈かいしゃくできる。
  2. ^ 192kHzきろへるつのみ5.1chサラウンド。
  3. ^ 2008ねん現在げんざい環境かんきょうにもよるがCPU占有せんゆうりつ1%未満みまん

出典しゅってん

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  1. ^ おきむら & 高橋たかはし 1991, p. 110.
  2. ^ HDサラウンドサウンドけのロスレスオーディオ、ドルビーTrueHD”. ドルビーラボラトリーズ. 2013ねん5がつ1にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2021ねん6がつ20日はつか閲覧えつらん
  3. ^ 次世代じせだいサラウンド規格きかく完全かんぜん対応たいおう。オンキョーのAVセンターTX-SA805に注目ちゅうもく!”. Stereo Sound ONLINE (ステレオサウンド). (2007ねん5がつ25にち). http://www.stereosound.co.jp/news/article/2007/05/25/1340.html 2021ねん6がつ20日はつか閲覧えつらん 
  4. ^ Oh!FM 1990ねん4がつごう「しゃべるんどすえ」[ようページ番号ばんごう]
  5. ^ Oh!X 1995ねん12がつごう BREEZE[ようページ番号ばんごう]
  6. ^ Oh!X 1999ねんなつごう内蔵ないぞう音源おんげん駆使くししたこう品位ひんいステレオ PCM 再生さいせい[ようページ番号ばんごう]

参考さんこう文献ぶんけん

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  • おきむら, 浩史こうじ高橋たかはし, きよし『エレクトロニクス概論がいろんはなぼう機械きかい工学こうがく選書せんしょ〉、1991ねんISBN 4785365072NCID BN07023779 

関連かんれん項目こうもく

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