マクドネル・ダグラス MD-90 (McDonnell Douglas MD-90 ) は、アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく のマクドネル・ダグラス が開発 かいはつ ・製造 せいぞう した、小型 こがた 双発 そうはつ ジェット 旅客機 りょかくき である。
ダグラスDC-9 の発展 はってん 型 がた であるマクドネル・ダグラスMD-80 をベースにさらに近代 きんだい 化 か したナローボディ機 き で、新型 しんがた エンジンの採用 さいよう により低 てい 騒音 そうおん ・低 てい 排気 はいき ガスを実現 じつげん した。低 てい 翼 つばさ 配置 はいち の後退 こうたい 翼 つばさ にリア・マウント のエンジン、T字 じ 尾翼 びよく という特徴 とくちょう がDC-9から引 ひ き継 つ がれている。MD-90の巡航 じゅんこう 速度 そくど はマッハ 0.76、全長 ぜんちょう は46.50メートル、全幅 ぜんぷく は32.87メートル、最大 さいだい 離陸 りりく 重量 じゅうりょう はオプション採用 さいよう 時 じ の最大 さいだい 値 ち が76.2トン、標準 ひょうじゅん 座席 ざせき 数 すう は2クラスで153席 せき 、1クラスで172席 せき 、降着 こうちゃく 装置 そうち は前輪 ぜんりん 式 しき 配置 はいち である。
MD-90は1989年 ねん 11月に正式 せいしき 開発 かいはつ が決定 けってい され、1993年 ねん 2月 がつ に初 はつ 飛行 ひこう 、1995年 ねん 4月 がつ にデルタ航空 こうくう により初 はつ 就航 しゅうこう した。MD-90の総 そう 生産 せいさん 数 すう は116機 き で、2000年 ねん 10月 がつ に納入 のうにゅう された機体 きたい を最後 さいご に生産 せいさん 終了 しゅうりょう となった。
日本 にっぽん では日本 にほん エアシステム が1996年 ねん からMD-90を導入 どうにゅう し、映画 えいが 監督 かんとく の黒澤 くろさわ 明 あきら がデザインした7種類 しゅるい の虹 にじ の機体 きたい 塗装 とそう が話題 わだい となった。日本 にほん エアシステムでは最終 さいしゅう 的 てき に16機 き を導入 どうにゅう し、後 ご の日本航空 にほんこうくう との経営 けいえい 統合 とうごう 後 ご も引 ひ き継 つ がれたが、2013年 ねん 3月 がつ 末 まつ までに全 ぜん 機 き 引退 いんたい した。MD-90は、日本 にっぽん の航空 こうくう 会社 かいしゃ が運航 うんこう した最後 さいご のダグラス製 せい 旅客機 りょかくき であった。
2020年 ねん 6月2日 にち 、最後 さいご まで運用 うんよう していたデルタ航空 こうくう が新型 しんがた コロナウイルス感染 かんせん 症 しょう (COVID-19)流行 りゅうこう の影響 えいきょう でMD-90の退役 たいえき を早 はや めた事 こと により、ヒューストン発 はつ アトランタ着 ぎ DL90便 びん をもって定期 ていき 便 びん としての運行 うんこう を終了 しゅうりょう した。
本 ほん 項 こう では以下 いか 、ダグラス 、マクドネル・ダグラス、ボーイングおよびエアバス 製 せい 旅客機 りょかくき については社名 しゃめい を省略 しょうりゃく して英数字 えいすうじ のみで表記 ひょうき する。たとえばダグラスDC-9は「DC-9」、ボーイング737 は「737」、エアバスA320 は「A320」とする。
ダグラスが開発 かいはつ した小型 こがた ジェット旅客機 りょかくき DC-9。
米国 べいこく のダグラス は、同社 どうしゃ で最初 さいしょ のジェット旅客機 りょかくき となるDC-8 を開発 かいはつ した後 のち 、プロペラ機 き が担 にな っていた小型 こがた 旅客機 りょかくき 市場 いちば に向 む けて、短距離 たんきょり 用 よう の小型 こがた ジェット旅客機 りょかくき のDC-9を開発 かいはつ した。DC-9シリーズで最初 さいしょ のモデルとなったのはDC-9-10で、1965年 ねん 12月8日 にち に初 はつ 就航 しゅうこう した。DC-9はエンジンを胴体 どうたい 尾 お 部 ぶ に左右 さゆう 1発 はつ ずつ配置 はいち したリア・マウント方式 ほうしき を採用 さいよう し、T字 じ 型 がた の尾翼 びよく を持 も ち、客席 きゃくせき の通路 つうろ が1本 ほん のナローボディ機 き であった。ダグラスはDC-9-10をベースに胴体 どうたい 延長 えんちょう 型 がた や最大 さいだい 離陸 りりく 重量 じゅうりょう 増加 ぞうか 型 がた といった派生 はせい 型 がた を開発 かいはつ してDC-9シリーズのラインナップを拡充 かくじゅう した。1967年 ねん 4月 がつ 、ダグラスは同 おな じ米国 べいこく の航空機 こうくうき メーカーのマクドネル と合併 がっぺい してマクドネル・ダグラス となった。
表 ひょう 1: MD-80シリーズの概要 がいよう
全長 ぜんちょう
主 おも な特徴 とくちょう
MD-81
41.54 m
DC-9スーパー81として開発 かいはつ された基本 きほん 型 がた 。名称 めいしょう がMD-81へ変更 へんこう された。
MD-82
MD-81の最大 さいだい 離陸 りりく 重量 じゅうりょう 増加 ぞうか 型 がた 。燃料 ねんりょう タンク容量 ようりょう は変 か わらないが、乗客 じょうきゃく ・貨物 かもつ 満載 まんさい 時 じ に搭載 とうさい 可能 かのう な燃料 ねんりょう が増加 ぞうか 。
MD-83
床下 ゆかした 貨物 かもつ 室 しつ に追加 ついか 燃料 ねんりょう タンクを増設 ぞうせつ し、最大 さいだい 離陸 りりく 重量 じゅうりょう を増加 ぞうか させた航続 こうぞく 距離 きょり 延長 えんちょう 型 がた 。
MD-87
37.21 m
MD-80シリーズの胴体 どうたい 短縮 たんしゅく 型 がた 。
MD-88
41.54 m
MD-82のコックピットにCRT ディスプレイを導入 どうにゅう したハイテク型 がた 。
出典 しゅってん :日本 にほん エアシステム 1996 , pp. 17–18
1970年代 ねんだい の中頃 なかごろ になると、150席 せき 級 きゅう の旅客機 りょかくき の需要 じゅよう が高 たか まると考 かんが えられるようになり、マクドネル・ダグラスはDC-9のさらなる胴体 どうたい 延長 えんちょう 型 がた を開発 かいはつ して対応 たいおう しようとした。また、胴体 どうたい 延長 えんちょう と合 あ わせて主翼 しゅよく の設計 せっけい 変更 へんこう やエンジン更新 こうしん も行 おこな うことになり、1977年 ねん 10月 がつ 14日 にち に正式 せいしき 開発 かいはつ が決定 けってい し、DC-9スーパー80と呼 よ ばれた。DC-9スーパー80の最初 さいしょ のモデルは1980年 ねん 8月 がつ 25日 にち に型式 けいしき 証明 しょうめい を取得 しゅとく し、その年 とし の10月 がつ に路線 ろせん 就航 しゅうこう を開始 かいし した。1983年 ねん 7月 がつ 、マクドネル・ダグラスは製品 せいひん 名 めい の変更 へんこう を発表 はっぴょう し、DC-9スーパー80はMD-80 シリーズと呼 よ ばれることとなった。MD-80シリーズでも胴体 どうたい 長 ちょう や航続 こうぞく 距離 きょり 性能 せいのう が異 こと なるシリーズ機 き が開発 かいはつ された(表 ひょう 1)が、いずれもDC-9と同 おな じ胴体 どうたい 断面 だんめん を用 もち い、リア・マウント方式 ほうしき のエンジン配置 はいち とT字 じ 尾翼 びよく という特徴 とくちょう もDC-9から引 ひ き継 つ がれた。
1984年 ねん 3月 がつ になると、欧州 おうしゅう のエアバス が完全 かんぜん に新 しん 設計 せっけい となるA320 の開発 かいはつ を決定 けってい し、150席 せき 級 きゅう のジェット旅客機 りょかくき 市場 いちば へ参入 さんにゅう を決 き めた。また、1981年 ねん 3月 がつ にはボーイングも737 の発展 はってん 型 がた (737-300 )の開発 かいはつ を決定 けってい しており、さらに後継 こうけい 機 き となる新型 しんがた 小型 こがた 機 き の研究 けんきゅう を進 すす めていた[ 注釈 ちゅうしゃく 1] 。DC-9/MD-80シリーズは一定 いってい の市場 いちば シェアを獲得 かくとく していたが、マクドネル・ダグラスはこれら競合 きょうごう 他社 たしゃ の動 うご きへの対応 たいおう が必要 ひつよう となった。また、1973年 ねん の第 だい 1次 じ オイルショック により石油 せきゆ 価格 かかく の高騰 こうとう が予想 よそう され、旅客機 りょかくき も燃費 ねんぴ 向上 こうじょう が最 さい 重要 じゅうよう 課題 かだい となっていた。マクドネル・ダグラスは、MD-80のエンジンを超 ちょう 高 こう バイパス比 ひ [ 注釈 ちゅうしゃく 2] で大幅 おおはば な燃料 ねんりょう 節約 せつやく 効果 こうか が期待 きたい されていたプロップファン に換 かわ 装 そう する機体 きたい 案 あん の検討 けんとう を進 すす め、この計画 けいかく はMD-90と呼 よ ばれた。1987年 ねん から1989年 ねん にかけて、エンジンメーカーの実証 じっしょう プロップファンエンジンをMD-80の試験 しけん 機 き に搭載 とうさい し、飛行 ひこう 試験 しけん や展示 てんじ 飛行 ひこう が行 おこな われた。プロップファンは実用 じつよう 化 か に向 む けて着々 ちゃくちゃく と開発 かいはつ が進 すす められたが、航空 こうくう 会社 かいしゃ からの反応 はんのう は否定 ひてい 的 てき であった。石油 せきゆ 危機 きき が過 す ぎ去 さ り燃料 ねんりょう 価格 かかく が安定 あんてい したことに加 くわ え、信頼 しんらい 性 せい や騒音 そうおん が心配 しんぱい されたことなどから、結局 けっきょく プロップファンを装備 そうび する計画 けいかく は中止 ちゅうし された。
MD-90で採用 さいよう されたV2500 エンジン。
一方 いっぽう 、A320は先進 せんしん 的 てき な操縦 そうじゅう システムを実用 じつよう 化 か し、1987年 ねん 2月 がつ に初 はつ 飛行 ひこう に成功 せいこう 、1988年 ねん には型式 けいしき 証明 しょうめい を取得 しゅとく し航空 こうくう 会社 かいしゃ への引 ひ き渡 わた しが開始 かいし されていた。MD-80のJT8D エンジンは基本 きほん 設計 せっけい が1950年代 ねんだい のものであり、マクドネル・ダグラスは、改 あらた めてMD-80のエンジン換 かわ 装 そう の検討 けんとう を行 おこな った。候補 こうほ となったエンジンは2種類 しゅるい あり、CFMインターナショナル のCFM56 と、英 えい 米 べい 日 ひ 独 どく 伊 い 5か国 こく のエンジンメーカーの国際 こくさい 合弁 ごうべん 会社 かいしゃ であるインターナショナル・エアロ・エンジンズ (以下 いか 、IAE)社 しゃ のV2500 であった。CFM56は既 すで に十分 じゅうぶん な実績 じっせき があったが、マクドネル・ダグラスは、新規 しんき 開発 かいはつ で将来 しょうらい 性 せい があり出力 しゅつりょく 増強 ぞうきょう 型 がた の開発 かいはつ が進行 しんこう していたV2500エンジンを採用 さいよう した。
V2500を装備 そうび した機体 きたい 計画 けいかく はMD-90Vと名付 なづ けられ、1989年 ねん 6月 がつ のパリ航空 こうくう ショー で発表 はっぴょう された。その後 ご モデル名 めい や細 こま かい機体 きたい 案 あん が修正 しゅうせい され、座席 ざせき 数 すう 153席 せき で、航続 こうぞく 距離 きょり が4,200キロメートルのMD-90-30 と、燃料 ねんりょう 搭載 とうさい 量 りょう を増 ふ やして航続 こうぞく 距離 きょり を5,600キロメートルに延 の ばすMD-90-50 を開発 かいはつ する計画 けいかく となった。
1989年 ねん 11月14日 にち 、マクドネル・ダグラスはMD-90の正式 せいしき 開発 かいはつ を決定 けってい したが、この時点 じてん では確定 かくてい 受注 じゅちゅう は得 え ていなかった。DC-9やMD-80の実績 じっせき から、開発 かいはつ を進 すす めれば受注 じゅちゅう が付 つ くとの判断 はんだん による決定 けってい であった。実際 じっさい に翌年 よくねん までにデルタ航空 こうくう 、日本 にほん エアシステム 、アラスカ航空 こうくう から受注 じゅちゅう を獲得 かくとく し、この3社 しゃ がローンチカスタマー となった[ 25] 。
MD-90を正面 しょうめん から見 み る。MD-90の胴体 どうたい 断面 だんめん はDC-9のものが引 ひ き継 つ がれた。
アイスランド・エクスプレス のMD-90の左側 ひだりがわ 面 めん 。
MD-90-30の最大 さいだい 離陸 りりく 重量 じゅうりょう は70,760キログラム(156,000ポンド)を予定 よてい したため、同 どう 72,575キログラム(160,000ポンド)のMD-83がMD-90のベース機 き となった。マクドネル・ダグラスが航空 こうくう 会社 かいしゃ に提示 ていじ したMD-90の基本 きほん 仕様 しよう は、以下 いか のようなものであった。
エンジンはV2500-D5を採用 さいよう
胴体 どうたい はDC-9/MD-80と同 おな じ断面 だんめん を用 もち い、MD-83比 ひ で前方 ぜんぽう 胴体 どうたい を1.45メートル延長 えんちょう
MD-81と同様 どうよう の操縦 そうじゅう 特性 とくせい を持 も たせるため、エンジンの出力 しゅつりょく 強化 きょうか に伴 ともな い昇降 しょうこう 舵 かじ を手動 しゅどう 式 しき から油圧 ゆあつ 式 しき に変更 へんこう
MD-88のコックピットを採用 さいよう し、MD-88と同一 どういつ の操縦 そうじゅう 資格 しかく を実現 じつげん
飛行 ひこう 管理 かんり 装置 そうち 、慣性 かんせい 航法 こうほう 装置 そうち 、エンジン制御 せいぎょ の自動 じどう 化 か (FADEC )の導入 どうにゅう による自動 じどう 化 か の促進 そくしん
キャビン内装 ないそう や機器 きき を近代 きんだい 化 か
これらに対 たい し、欧州 おうしゅう の航空 こうくう 会社 かいしゃ を中心 ちゅうしん とした多 おお くの航空 こうくう 会社 かいしゃ から、以下 いか のような要求 ようきゅう が寄 よ せられた。
6面 めん のディスプレイを横 よこ 一 いち 列 れつ に配置 はいち した最新 さいしん 式 しき コックピット
航続 こうぞく 距離 きょり の増加 ぞうか
最大 さいだい 離陸 りりく 重量 じゅうりょう (搭載 とうさい 量 りょう )の増加 ぞうか
貨物 かもつ の搭載 とうさい 作業 さぎょう を容易 ようい にするため、床下 ゆかした 貨物 かもつ 室 しつ に動 うご く床 ゆか (ムービング・カーペット)を設置 せっち
マクドネル・ダグラスは、これらの要求 ようきゅう に応 こた えてMD-90欧州 おうしゅう 域内 いきない 仕様 しよう を設定 せってい したが、当面 とうめん はMD-88仕様 しよう のコックピットで開発 かいはつ 作業 さぎょう を一本 いっぽん 化 か し、発展 はってん 型 がた はその後 ご に検討 けんとう することとなった[ 28] 。コックピットはスイッチやコンポーネント類 るい は新 あたら しいものが取 と り入 い れられているが、乗員 じょういん からの見 み た目 め などはMD-80やDC-9から変 か わらないように、取 と り付 つ け位置 いち や機能 きのう などが設計 せっけい された。パイロットの視界 しかい を広 ひろ げるため、操縦 そうじゅう 室 しつ の風防 ふうぼう の一部 いちぶ が設計 せっけい 変更 へんこう され、窓 まど 面 めん が大型 おおがた 化 か された。
MD-90の胴体 どうたい は、MD-83との比較 ひかく で主翼 しゅよく 前方 ぜんぽう のみ1.45メートル(57インチ)延長 えんちょう された。この胴体 どうたい 延長 えんちょう の主 おも な目的 もくてき は、エンジン換 かわ 装 そう による尾 お 部 ぶ の重量 じゅうりょう 増加 ぞうか に対 たい して主翼 しゅよく 前後 ぜんこう の重量 じゅうりょう バランスをとることであったが、10席 せき 弱 じゃく の座席 ざせき 数 すう 増加 ぞうか にもつながった。胴体 どうたい 延長 えんちょう に伴 ともな い、緊急 きんきゅう 時 じ の脱出 だっしゅつ に関 かん する米国 べいこく 連邦 れんぽう 航空局 こうくうきょく (Federal Aviation Administration、以下 いか FAA)の規制 きせい 要求 ようきゅう へ対応 たいおう するため、主翼 しゅよく 上 じょう に片側 かたがわ 2か所 しょ ずつある非常口 ひじょうぐち のうち前方 ぜんぽう のものが1フレーム(窓 まど 1つ)分 ぶん 前方 ぜんぽう に移 うつ された。
主翼 しゅよく はMD-83のものが流用 りゅうよう され、内部 ないぶ の構造 こうぞう や前 ぜん 縁 えん 、後 こう 縁 えん 、動 どう 翼 つばさ などをMD-83のままとし、上面 うわつら と下面 かめん の外 そと 板 ばん が強化 きょうか された。垂直 すいちょく 尾翼 びよく はMD-87のものを先端 せんたん を延長 えんちょう して流用 りゅうよう し、胴体 どうたい の結合 けつごう 部 ぶ などが強化 きょうか された。水平 すいへい 尾翼 びよく は基本 きほん 的 てき にMD-83と同 おな じだが前 ぜん 縁 えん はMD-87のものが用 もち いられた。
表 ひょう 2: デザイン・サービス・ライフ
飛行 ひこう 時間 じかん
着陸 ちゃくりく 回数 かいすう
MD-90
90,000
60,000
MD-83
50,000
50,000
DC-9
30,000
40,000
出典 しゅってん :日本 にほん エアシステム 1996 , p. 21
機体 きたい 構造 こうぞう の疲労 ひろう 寿命 じゅみょう のなかには「デザイン・サービス・ライフ」というものがあり、設計 せっけい 上 じょう の目標 もくひょう に用 もち いられる。これは、特 とく に問題 もんだい となるような構造 こうぞう 上 じょう の欠陥 けっかん を生 しょう ずることなく運航 うんこう できる寿命 じゅみょう であり、飛行 ひこう 時間 じかん と着陸 ちゃくりく 回数 かいすう で表 あらわ される。MD-90のデザイン・サービス・ライフは、表 ひょう 2に示 しめ すように、原型 げんけい とされたMD-83よりも飛躍 ひやく 的 てき に高 たか い値 ね が設定 せってい された。デザイン・サービス・ライフは目標 もくひょう 値 ち であり、これを超 こ えると構造 こうぞう 上 じょう の故障 こしょう が多発 たはつ するというわけではなく、実際 じっさい にはこの値 ね を超 こ えた実績 じっせき を記録 きろく している機体 きたい が存在 そんざい している。マクドネル・ダグラスでは、66,500回 かい の飛行 ひこう を行 おこな ったDC-9を1981年 ねん に買 か い戻 もど して疲労 ひろう 強度 きょうど の実証 じっしょう 試験 しけん を実施 じっし していた。この試験 しけん により、強化 きょうか が必要 ひつよう な部分 ぶぶん と余裕 よゆう がある部分 ぶぶん を確認 かくにん され、設計 せっけい や寿命 じゅみょう の見直 みなお しを行 おこな われ、その結果 けっか がMD-90の機体 きたい 構造 こうぞう に反映 はんえい された。
客室 きゃくしつ の内装 ないそう は一新 いっしん され、座席 ざせき 上 じょう の手荷物 てにもつ 入 い れ(オーバーヘッド・ストウェッジ)が大 おお きくなり、ストウェッジ下部 かぶ には通路 つうろ を移動 いどう する人 ひと のための手 て すりが追加 ついか された。また、デジタル式 しき の空調 くうちょう システムが導入 どうにゅう された。
中国 ちゅうごく 東方 とうほう 航空 こうくう のMD-90を下方 かほう から見上 みあ げる。操縦 そうじゅう 翼 つばさ 面 めん が追加 ついか されたパイロンは、後 こう 縁 えん がエンジンの噴出 ふんしゅつ 口 こう より後 うし ろまで延 の びている。
エンジンは前述 ぜんじゅつ のとおりIAE社 しゃ のV2500ターボファンエンジンが採用 さいよう され、リア・マウント方式 ほうしき で取 と り付 つ けられるよう、パイロンは新規 しんき 設計 せっけい された。パイロンはその後部 こうぶ に操縦 そうじゅう 舵 かじ 面 めん が新設 しんせつ され、エンジンの噴出 ふんしゅつ 口 こう の後方 こうほう まで延 の びた大型 おおがた のものとなった
降着 こうちゃく 装置 そうち は、前 ぜん 脚 あし 、主 しゅ 脚 あし ともにMD-83のものを強化 きょうか して流用 りゅうよう された。ブレーキは新 あら たにカーボン ブレーキとなり、デジタル式 しき のアンチスキッドブレーキ システムが導入 どうにゅう された。その他 た 、新 あたら しくなった装備 そうび 品 ひん には、補助 ほじょ 動力 どうりょく 装置 そうち や不定 ふてい 速 そく /定 てい 周波 しゅうは 発電 はつでん システムなどがある。
MD-90の最終 さいしゅう 組 く み立 た ては、カリフォルニア州 しゅう ・ロングビーチ にあるマクドネル・ダグラスの工場 こうじょう で行 おこな われた。
1993年 ねん 2月 がつ 22日 にち 、MD-90は初 はつ 飛行 ひこう に成功 せいこう し、ロングビーチ空港 くうこう を離陸 りりく した初号 しょごう 機 き は5時 じ 間 あいだ の飛行 ひこう 後 ご 、モハーヴェ空港 くうこう に着陸 ちゃくりく した[ 35] 。初 はつ 飛行 ひこう において、基本 きほん 的 てき な耐 たい 空 そら 性 せい の確認 かくにん 、各種 かくしゅ 操縦 そうじゅう 設定 せってい における操縦 そうじゅう 性 せい の初期 しょき 評価 ひょうか 、そして運航 うんこう 速度 そくど と高度 こうど に関 かん する飛行 ひこう 可能 かのう 領域 りょういき の拡大 かくだい にむけた作業 さぎょう の3点 てん を主眼 しゅがん とした機上 きじょう 作業 さぎょう が行 おこな われたが、初 はつ 飛行 ひこう でこのような高度 こうど かつ広範 こうはん な試験 しけん を行 おこな うのは希 まれ なことであった。
2年 ねん 弱 じゃく かけて型式 けいしき 証明 しょうめい 取得 しゅとく のための試験 しけん が実施 じっし され、1994年 ねん 11月4日 にち 、FAAによってMD-90の型式 けいしき 証明 しょうめい が交付 こうふ された。
翌 よく 1995年 ねん 2月 がつ 24日 にち 、最初 さいしょ の顧客 こきゃく であるデルタ航空 こうくう に対 たい して初 はつ 引 ひ き渡 わた しが行 おこな われた。また、1996年 ねん 9月 がつ 20日 はつか には、欧州 おうしゅう の合同 ごうどう 航空 こうくう 当局 とうきょく (Joint Aviation Authorities)からもMD-90の型式 けいしき 証明 しょうめい が交付 こうふ された。
1995年 ねん 4月 がつ 2日 にち 、デルタ航空 こうくう によってMD-90は商業 しょうぎょう 運航 うんこう を開始 かいし し、ダラス・フォートワース国際 こくさい 空港 くうこう を拠点 きょてん とした路線 ろせん に就航 しゅうこう した[ 39] 。1996年 ねん 5月 がつ までに、デルタ航空 こうくう に加 くわ えて米国 べいこく のリノ・エア (英語 えいご 版 ばん ) と日本 にほん エアシステムにも機体 きたい 引 ひ き渡 わた しが行 おこな われ、計 けい 17機 き のMD-90が就航 しゅうこう し、出発 しゅっぱつ 信頼 しんらい 度 ど [ 注釈 ちゅうしゃく 3] は98.7パーセントであった。就航 しゅうこう 当初 とうしょ は不定 ふてい 速 そく /定 てい 周波 しゅうは 発電 はつでん システムの信頼 しんらい 性 せい など電気 でんき 系統 けいとう に関 かん する問題 もんだい があったが、マクドネル・ダグラスが対策 たいさく を行 おこな い出発 しゅっぱつ 信頼 しんらい 度 ど の向上 こうじょう が図 はか られたほか、航空 こうくう 会社 かいしゃ によっては発電 はつでん システムを他 た 機種 きしゅ と同様 どうよう のものに改修 かいしゅう するところもあった。
生産 せいさん 体制 たいせい の改善 かいぜん と発展 はってん 型 がた の模索 もさく
編集 へんしゅう
MD-90は、1995年 ねん 7月 がつ の時点 じてん で74機 き のバックオーダーがあったが、受注 じゅちゅう 活動 かつどう は順調 じゅんちょう ではなかった[ 43] 。マクドネル・ダグラスは、旅客機 りょかくき 市場 いちば からの引 ひ き合 あ いが続 つづ く限 かぎ りMD-80も生産 せいさん を継続 けいぞく しようと考 かんが え、MD-80とMD-90の製造 せいぞう コストを低減 ていげん するため、両機 りょうき の生産 せいさん ラインが共通 きょうつう 化 か された。胴体 どうたい の製造 せいぞう 方法 ほうほう や工程 こうてい を改善 かいぜん し、胴体 どうたい の組 く み立 た てはロングビーチからユタ州 しゅう のソルトレイクシティ に設立 せつりつ された工場 こうじょう に移 うつ された。また、設計 せっけい 管理 かんり や製品 せいひん の構成 こうせい 管理 かんり を電子 でんし 化 か し、生産 せいさん や部品 ぶひん 調達 ちょうたつ の効率 こうりつ 化 か が図 はか られたが、原型 げんけい 機 き から引 ひ き継 つ がれた古 ふる い設計 せっけい 図 ず や設備 せつび 類 るい 、従来 じゅうらい の生産 せいさん プロセスなどを電子 でんし 化 か するのは容易 ようい ではなかった。
MD-90の発展 はってん 型 がた の開発 かいはつ も計画 けいかく されていた。MD-90-30の最大 さいだい 離陸 りりく 重量 じゅうりょう を増加 ぞうか して航続 こうぞく 距離 きょり を伸 の ばしたのがMD-90-30ERである。MD-90-30ERでは降着 こうちゃく 装置 そうち や主翼 しゅよく が強化 きょうか され、最大 さいだい 離陸 りりく 重量 じゅうりょう が標準 ひょうじゅん 型 がた より10,000ポンド引 ひ き上 あ げられて75,298キログラム(166,000ポンド)となり、航続 こうぞく 距離 きょり が441海里 かいり (817キロメートル)程度 ていど 延長 えんちょう された。ただしその後 ご 、重量 じゅうりょう 増加 ぞうか 型 がた は基本 きほん 型 がた のオプションとなり、MD-90-30ERの名前 なまえ は使 つか われなくなった。
中華人民共和国 ちゅうかじんみんきょうわこく の国内線 こくないせん 向 む けにMD-90-30の派生 はせい 型 がた も計画 けいかく された。もともと、中華人民共和国 ちゅうかじんみんきょうわこく の国内線 こくないせん 用 よう 機材 きざい としてMD-82が選定 せんてい され、中華人民共和国 ちゅうかじんみんきょうわこく でのノックダウン生産 せいさん が行 おこな われていた。1994年 ねん 11月4日 にち に締結 ていけつ された契約 けいやく では、中華人民共和国 ちゅうかじんみんきょうわこく は米国 べいこく 製 せい のMD-80とMD-90-30を計 けい 20機 き 購入 こうにゅう し、国内 こくない で専用 せんよう 型 がた を20機 き 生産 せいさん することとなった。この計画 けいかく は「トランクライナー計画 けいかく 」と呼 よ ばれ、中華人民共和国 ちゅうかじんみんきょうわこく 国内 こくない で生産 せいさん する機体 きたい はMD-90-30T(Tはトランクライナーの頭文字 かしらもじ )と呼 よ ばれた。MD-90トランクライナーでは、中華人民共和国 ちゅうかじんみんきょうわこく 国内 こくない の滑走 かっそう 路 ろ や誘導 ゆうどう 路 ろ の強度 きょうど が低 ひく い空港 くうこう へも就航 しゅうこう できるように、主 しゅ 脚 あし を4輪 りん 式 しき に改修 かいしゅう して地面 じめん にかかる荷重 かじゅう を分散 ぶんさん させることとなった。新 あたら しい主 しゅ 脚 あし の設計 せっけい は、マクドネル・ダグラスと中華人民共和国 ちゅうかじんみんきょうわこく の上海 しゃんはい 航空機 こうくうき 製造 せいぞう の共同 きょうどう で行 おこな われ、組 く み立 た ても上海 しゃんはい 航空機 こうくうき 製造 せいぞう で行 おこな われた。しかし、この計画 けいかく は後 のち に大幅 おおはば に見直 みなお され、導入 どうにゅう 機 き はMD-90-30に一本 いっぽん 化 か されてMD-90-30Tは生産 せいさん されないこととなり、中華人民共和国 ちゅうかじんみんきょうわこく での生産 せいさん も2機 き に終 お わった。この時 とき の生産 せいさん 治 ち 具 ぐ は、後 のち に中国 ちゅうごく 商用 しょうよう 飛 ひ 機 き が開発 かいはつ したARJ21 の胴体 どうたい 生産 せいさん に流用 りゅうよう されている。
MD-90-30と同 おな じ座席 ざせき 数 すう で、航続力 こうぞくりょく を強化 きょうか するタイプとしてMD-90-50の計画 けいかく もあった。MD-90-50ではエンジン出力 しゅつりょく を強化 きょうか するとともに、最大 さいだい 離陸 りりく 重量 じゅうりょう の引 ひ き上 あ げて燃料 ねんりょう 搭載 とうさい 量 りょう を増 ふ やし、オプションで追加 ついか 燃料 ねんりょう タンクも設定 せってい し、乗客 じょうきゃく と貨物 かもつ の満載 まんさい 時 じ で航続 こうぞく 距離 きょり を5,593キロメートル(3,020海里 かいり )とする構想 こうそう だった。また、MD-90-50の前部 ぜんぶ 胴体 どうたい に非常口 ひじょうぐち を左右 さゆう 1か所 しょ ずつ増設 ぞうせつ し、最大 さいだい 座席 ざせき 数 すう 203席 せき を可能 かのう とする機体 きたい 案 あん がMD-90-55であった。胴体 どうたい 長 ちょう はMD-90-30と変 か わらないが、機内 きない 設備 せつび を簡略 かんりゃく 化 か することで収容 しゅうよう 力 りょく を増加 ぞうか させる構想 こうそう であった。しかし、MD-90-50とMD-90-55は、開発 かいはつ ・生産 せいさん には至 いた らなかった。
MD-90の短 たん 胴 どう 型 がた としてMD-90-10という機体 きたい 案 あん もあったが、この案 あん は練 ね り直 なお され、1995年 ねん 10月 がつ にMD-95として正式 せいしき 開発 かいはつ が決定 けってい された(詳細 しょうさい はボーイング717 を参照 さんしょう )。
サウジアラビア航空 こうくう のMD-90。
MD-90の販売 はんばい は順調 じゅんちょう ではなかった。エアバスはA320のファミリー化 か を進 すす め、1994年 ねん 2月 がつ には長 ちょう 胴 どう 型 がた のA321 、1996年 ねん 4月 がつ には短 たん 胴 どう 型 がた のA319 の納入 のうにゅう が始 はじ まっていた。また、ボーイングは737をさらに発展 はってん させることとし、1993年 ねん 11月に次世代 じせだい 型 がた 737シリーズ(737NG )の開発 かいはつ を正式 せいしき 決定 けってい していた。マクドネル・ダグラスのシェアは、主 おも にエアバスに奪 うば われる状態 じょうたい になっており、1996年 ねん 8月 がつ の時点 じてん の受注 じゅちゅう 残 ざん 数 すう は、A320ファミリーが270機 き 、ボーイングの737(737NGを含 ふく む)が390機 き であったのに対 たい し、マクドネル・ダグラスはMD-80とMD-90を合 あ わせても120機 き という状態 じょうたい だった[ 52] 。
また、DC-10 の次世代 じせだい 型 がた として開発 かいはつ されたMD-11 も期待 きたい したほどの受注 じゅちゅう を得 え られず、マクドネル・ダグラスの経営 けいえい は次第 しだい に苦 くる しくなった。マクドネル・ダグラスは、ボーイングに吸収 きゅうしゅう 合併 がっぺい されることとなり、1997年 ねん 8月 がつ 4日 にち 、合併 がっぺい 作業 さぎょう が完了 かんりょう した[ 54] 。MD-90は、ボーイングの既存 きそん 製品 せいひん である737NGと客席 きゃくせき 数 すう や航続 こうぞく 距離 きょり 性能 せいのう が完全 かんぜん に重複 じゅうふく していたため、製造 せいぞう 機種 きしゅ を737NGに一本 いっぽん 化 か することとなった。1997年 ねん 10月 がつ 、新生 しんせい ボーイングは、MD-90の新規 しんき 受注 じゅちゅう を停止 ていし して製造 せいぞう を終了 しゅうりょう することを発表 はっぴょう した。2000年 ねん 10月 がつ 23日 にち 、MD-90の最終 さいしゅう 生産 せいさん 機 き がサウジアラビア航空 こうくう (現 げん ・サウディア )に納入 のうにゅう されて生産 せいさん 終了 しゅうりょう となった。MD-90は正式 せいしき 開発 かいはつ の決定 けってい から約 やく 10年 ねん で生産 せいさん 終了 しゅうりょう を迎 むか え、総 そう 生産 せいさん 数 すう は116機 き であった。
MD-90は、そのルーツとなったDC-9の時点 じてん から保守 ほしゅ 的 てき な機体 きたい であり、ダグラスらしいと評 ひょう される堅実 けんじつ な設計 せっけい ではあったが、先進 せんしん 技術 ぎじゅつ を積極 せっきょく 的 てき に採用 さいよう したA320が登場 とうじょう すると、古 ふる さが目立 めだ つようになった。また、737やA320では胴体 どうたい 延長 えんちょう により200席 せき 級 きゅう の派生 はせい 型 がた が開発 かいはつ されたが、DC-9由来 ゆらい のMD-90の胴体 どうたい はA320や737より座席 ざせき 1つ分 ぶん 細 ほそ いことに加 くわ え、エンジンをリア・マウントしたことによる制約 せいやく [ 注釈 ちゅうしゃく 4] もあり、大型 おおがた 化 か の余地 よち が少 すく なかった。ボーイングとの合併 がっぺい 、そして737NGへの製品 せいひん 一本 いっぽん 化 か によりMD-90の生産 せいさん 期間 きかん が短 みじか くなったのは確実 かくじつ だが、マクドネル・ダグラスの経営 けいえい は悪化 あっか しており、旅客機 りょかくき の販売 はんばい 力 りょく も大幅 おおはば に低下 ていか していた。仮 かり にマクドネル・ダグラスが合併 がっぺい せずにMD-90の生産 せいさん が継続 けいぞく されたとしても、競合 きょうごう 機 き ほどの受注 じゅちゅう 機 き 数 すう は得 え られなかったであろうという見方 みかた もある。
ブルーワン のMD-90を左前 ひだりまえ 上方 かみがた から見下 みお ろす。
ブルーワンのMD-90を左側 ひだりがわ 面 めん から見 み る。
MD-90は客室 きゃくしつ に1本 ほん の通路 つうろ を持 も つナローボディ機 き で、片 かた 持 も ち式 しき の低 てい 翼 つばさ の主翼 しゅよく を持 も つ単葉 たんよう 機 き である。エンジンは胴体 どうたい 尾 お 部 ぶ に左右 さゆう 1発 はつ ずつ配置 はいち したリア・マウント方式 ほうしき であり、垂直 すいちょく 尾翼 びよく の上端 じょうたん 部 ぶ に水平 すいへい 尾翼 びよく を配 はい したT字 じ 尾翼 びよく 機 き である。
胴体 どうたい 断面 だんめん はDC-9から引 ひ き継 つ がれたもので、2つの円 えん を組 く み合 あ わせたダルマ を逆 さか さにしたような断面 だんめん を持 も ち、最大 さいだい 幅 はば が3.34メートル、胴体 どうたい 長 ちょう は43.03メートルである。
MD-90の主翼 しゅよく はテーパー がついた後退 こうたい 翼 つばさ で、内部 ないぶ の構造 こうぞう や前 ぜん 縁 えん 、後 こう 縁 えん 、動 どう 翼 つばさ などをMD-83のままとし、上面 うわつら と下面 かめん の外 そと 板 ばん が強化 きょうか された。主翼 しゅよく の平面 へいめん 形 がた は、翼 つばさ 幅 はば が32.87メートル、翼 つばさ 面積 めんせき は112.4平方 へいほう メートル、25パーセント翼 つばさ 弦 つる の後退 こうたい 角 かく は24.5度 ど である。主翼 しゅよく には動 どう 翼 つばさ として、エルロン 、スポイラー 、高 こう 揚力 ようりょく 装置 そうち が配置 はいち されている。エルロンは後 こう 縁 えん の最 もっと も外側 そとがわ にあり、トリム・タブとコントロール・タブと呼 よ ばれる小 しょう 板 いた を有 ゆう する。エルロンの操縦 そうじゅう は油圧 ゆあつ を用 もち いない手動 しゅどう 式 しき で、コックピットの操縦 そうじゅう 桿 でコントロール・タブを動 うご かし、タブにあたる空気 くうき の力 ちから でタブの変位 へんい と反対 はんたい 方向 ほうこう にエルロンを動 うご かす仕組 しく みである。高 こう 揚力 ようりょく 装置 そうち は前 ぜん 縁 えん にスラット、後 こう 縁 えん にフラップを備 そな える。スラットは翼 つばさ 幅 はば 全長 ぜんちょう にわたって配置 はいち され6枚 まい 構成 こうせい 、フラップは内 うち 舷 ふなばた 部 ぶ と外 そと 弦 つる 部 ぶ の2枚 まい 構成 こうせい である(いずれも片 かた 翼 つばさ あたりの枚数 まいすう )。フラップはベーン付 つ きのダブル・スロッテッド・フラップで油圧 ゆあつ 駆動 くどう 式 しき である。スポイラー は片 かた 翼 つばさ あたり3枚 まい で、内側 うちがわ の1枚 まい がグラウンド・スポイラー、外側 そとがわ の2枚 まい がフライト・スポイラーである。フライト・スポイラーは、飛行 ひこう 中 ちゅう にスピード・ブレーキ として働 はたら くほか、エルロンの補助 ほじょ としても用 もち いられる。着陸 ちゃくりく 時 じ の接地 せっち 後 ご と離陸 りりく 中止 ちゅうし の停止 ていし 時 じ には全 すべ てのスポイラーが直立 ちょくりつ し、主翼 しゅよく の揚力 ようりょく を減殺 げんさい すると同時 どうじ にスピード・ブレーキとしても働 はたら く。
尾翼 びよく は、MD-80シリーズのものをベースに改良 かいりょう が加 くわ えられた。水平 すいへい 尾翼 びよく は翼 つばさ 幅 はば が12.25メートルで、左右 さゆう の水平 すいへい 安定 あんてい 板 ばん に昇降 しょうこう 舵 かじ と3種類 しゅるい のタブ(コントロール・タブ、ギアード・タブ、アンチフロート・タブ)が1枚 まい ずつ付 つ いている。昇降 しょうこう 舵 かじ の操作 そうさ は、MD-80シリーズではコントロール・タブを用 もち いた手動 しゅどう 式 しき であったが、MD-90では油圧 ゆあつ 式 しき となった。昇降 しょうこう 舵 かじ を作動 さどう させるアクチュエータは片側 かたがわ あたり2個 こ 、油圧 ゆあつ 源 げん も2系統 けいとう である。コントロール・タブは油圧 ゆあつ 系統 けいとう の故障 こしょう に備 そな えたバックアップであり、油圧 ゆあつ 駆動 くどう 時 じ には固定 こてい される。残 のこ り2枚 まい のタブのうち、ギアード・タブは、コントロール・タブによる操舵 そうだ 力 りょく を補助 ほじょ するものであり、アンチフロート・タブは昇降 しょうこう 舵 かじ の角度 かくど が大 おお きくなりすぎないように動 うご きを抑制 よくせい する役割 やくわり を持 も つ。昇降 しょうこう 舵 かじ にはトリム・タブはなく、電気 でんき モータにより水平 すいへい 安定 あんてい 板 ばん 全体 ぜんたい の取付 とりつけ 角 かく を変化 へんか させて縦 たて 方向 ほうこう のトリムをとる。垂直 すいちょく 尾翼 びよく は垂直 すいちょく 安定 あんてい 板 ばん 、方向 ほうこう 舵 かじ 、コントロール・タブの各 かく 1枚 まい で構成 こうせい される。方向 ほうこう 舵 かじ の操作 そうさ も油圧 ゆあつ 式 しき であるが、油圧 ゆあつ 系統 けいとう の故障 こしょう 時 じ 、またはパイロットが意図 いと 的 てき に切 き り替 か えた場合 ばあい 、コントロール・タブによる手動 しゅどう 式 しき となる。油圧 ゆあつ での操縦 そうじゅう 時 じ には、コントロール・タブは固定 こてい され、方向 ほうこう 舵 かじ の中立 ちゅうりつ 位置 いち を調整 ちょうせい することでトリム調整 ちょうせい が行 おこな われる。
エンジンパイロンはMD-90で新規 しんき 設計 せっけい されたもので、後 こう 縁 えん がエンジンの噴出 ふんしゅつ 口 こう よりもかなり後 うし ろまで延 の ばされ、後端 こうたん 部 ぶ にパイロン・フラップを備 そな える。T字 じ 尾翼 びよく 機 き では、舵 かじ が効 き かなくなり失速 しっそく 状態 じょうたい から抜 ぬ け出 だ せなくなるディープストールと呼 よ ばれる状態 じょうたい に陥 おちい る場合 ばあい がある。パイロン・フラップは操縦 そうじゅう 桿の操作 そうさ により作動 さどう し、尾 お 部 ぶ の揚力 ようりょく を高 たか め、ディープストール発生 はっせい 時 じ の機体 きたい 姿勢 しせい の操作 そうさ をバックアップするためのものである。
MD-90を後 うし ろから見 み る。前 ぜん 脚 あし のタイヤ下部 かぶ を左右 さゆう から覆 おお うように付 つ いているのが「ウォーターデフレクター」、主 しゅ 脚 あし の下部 かぶ に逆 ぎゃく T字 じ 状 じょう に付 つ いているのが「デブリスガード」。
降着 こうちゃく 装置 そうち は前輪 ぜんりん 配置 はいち で前 ぜん 脚 あし と主 しゅ 脚 あし ともに2輪 りん 式 しき である。主 しゅ 脚 あし の格納 かくのう 室 しつ は、主翼 しゅよく の付 つ け根 ね 後方 こうほう にある。ブレーキは、デジタル式 しき のアンチスキッドブレーキ システムを備 そな えたカーボン ブレーキである。
尾 お 部 ぶ のエンジンに向 む かって雨水 あまみず や小石 こいし などの異物 いぶつ が飛 と ぶのを防 ふせ ぐため、車輪 しゃりん 下部 かぶ に小型 こがた の覆 おお いや庇 ひさし 状 じょう のパーツが取 と り付 つ けられており、前 ぜん 脚 あし のものは「ウォーターデフレクター」、主 しゅ 脚 あし のものは「デブリスガード」と呼 よ ばれる。
燃料 ねんりょう タンクは主翼 しゅよく (左右 さゆう と中央 ちゅうおう 翼 つばさ )内 ない のインテグラルタンク のみである。補助 ほじょ 動力 どうりょく 装置 そうち としてガスタービンエンジン を尾 お 部 ぶ に装備 そうび する。
方向 ほうこう 舵 かじ やエルロン などの動 どう 翼 つばさ 、尾 お 部 ぶ のテール・コーン、エンジンのカウル の扉 とびら などが複 ふく 合 あい 材料 ざいりょう 製 せい となった。使用 しよう された複 ふく 合 あい 材料 ざいりょう には、炭素 たんそ 繊維 せんい 強化 きょうか プラスチック、アラミド繊維 せんい 強化 きょうか プラスチック、ガラス繊維 せんい 強化 きょうか プラスチックなどが挙 あ げられる。また、機体 きたい の腐食 ふしょく 対策 たいさく として、エポキシ を用 もち いた塗料 とりょう 材 ざい の採用 さいよう 、表面 ひょうめん コーティングなども行 おこな われている。
サウジアラビア航空 こうくう (現 げん ・サウディア )のMD-90のコックピット。MD-90のコックピットは当初 とうしょ MD-88のレイアウトが継承 けいしょう されたが、サウジアラビア航空 こうくう への納入 のうにゅう 機 き では写真 しゃしん のように液晶 えきしょう ディスプレイ が横 よこ 一 いち 列 れつ に配置 はいち され、より本格 ほんかく 的 てき なグラスコックピット 仕様 しよう となった。
MD-90の運航 うんこう に必要 ひつよう な乗務 じょうむ 員 いん は機長 きちょう と副 ふく 操縦 そうじゅう 士 し の2名 めい である。コックピット正面 しょうめん の窓 まど は正面 しょうめん に1枚 まい 、左右 さゆう に各 かく 3枚 まい 配置 はいち されている。左右 さゆう 3枚 まい のうち中央 ちゅうおう の窓 まど が開閉 かいへい 式 しき で、窓 まど 上部 じょうぶ の天井 てんじょう に脱出 だっしゅつ 用 よう ロープが収納 しゅうのう されている。また、開閉 かいへい 式 しき 窓 まど の上部 じょうぶ にはDC-9の名残 なごり となる天測 てんそく 窓 まど がある。
当初 とうしょ のMD-90のコックピットはMD-88と同様 どうよう のレイアウトで、CRT や液晶 えきしょう ディスプレイ を用 もち いたグラスコックピット であるが、機械 きかい 式 しき 計器 けいき 類 るい も併用 へいよう されている。コックピットレイアウトは、正 せい 副 ふく 操縦 そうじゅう 席 せき の正面 しょうめん と中央 ちゅうおう に主 しゅ 計器 けいき 盤 ばん 、その上 うえ にグレアシールドパネルと呼 よ ばれるパネル、両 りょう 座席 ざせき 間 あいだ に中央 ちゅうおう ペデスタル、天井 てんじょう にオーバーヘッドパネルが配置 はいち されている。主計 しゅけい 器 き 盤 ばん の計器 けいき 配列 はいれつ は、基本 きほん 的 てき に正 せい 副 ふく 操縦 そうじゅう 席 せき で同 おな じである。後 のち に、ハネウェル 社 しゃ のペガサス飛行 ひこう 管理 かんり コンピュータを導入 どうにゅう し、主計 しゅけい 器 き 盤 ばん に横 よこ 一 いち 列 れつ 6面 めん の液晶 えきしょう ディスプレイを配 はい した仕様 しよう が開発 かいはつ され、サウジアラビア航空 こうくう (現 げん ・サウディア )に納入 のうにゅう されている[ 76] 。
航法 こうほう システムは、飛行 ひこう 管理 かんり 装置 そうち による自動 じどう 運航 うんこう 方式 ほうしき であり、リングレーザージャイロ を用 もち いた慣性 かんせい 航法 こうほう 装置 そうち を備 そな える。エンジンの制御 せいぎょ は、全 ぜん デジタル式 しき 電子 でんし 制御 せいぎょ (Full Authority Digital Engine Control :FADEC ) により自動 じどう 化 か されている。操縦 そうじゅう 士 し が選択 せんたく したモードに応 おう じてコンピュータが出力 しゅつりょく を制御 せいぎょ し、同時 どうじ にスロットル・レバーも自動的 じどうてき に動 うご くようになっている。
MD-90の客室 きゃくしつ は、長 なが さが31.67メートル、通路 つうろ は1本 ほん で、標準 ひょうじゅん 的 てき な座席 ざせき 配置 はいち は上級 じょうきゅう クラスが2-2の4アブレスト でエコノミークラス が2-3の5アブレストである。オプションで、座席 ざせき の横 よこ 幅 はば を詰 つ めて通路 つうろ 幅 はば を広 ひろ げる仕様 しよう も設定 せってい され、この場合 ばあい 、客室 きゃくしつ 乗務 じょうむ 員 いん が用 もち いる小型 こがた カートの脇 わき を通 とお り抜 ぬ けることも可能 かのう である。左右 さゆう の座席 ざせき 上 じょう には手荷物 てにもつ を収容 しゅうよう するオーバーヘッド・ストウェッジが配置 はいち され、ストウェッジ下部 かぶ には通路 つうろ を移動 いどう する人 ひと のための手 て すりが設 もう けられた。映像 えいぞう などを提供 ていきょう する機内 きない エンターテインメントシステムとして、ストウェッジ下部 かぶ に引 ひ き込 こ み式 しき の液晶 えきしょう ディスプレイを装備 そうび できるオプションも用意 ようい され、日本 にほん エアシステム で採用 さいよう された。座席 ざせき の窓 まど は10×14インチ(25.4×35.6センチメートル)で、マクドネル・ダグラスによると737よりも11パーセント大 おお きい。合 あ わせて、窓 まど の取 と り付 つ け間隔 かんかく を狭 せま くなるよう配置 はいち され、機内 きない を広 ひろ く感 かん じさせるとともに、採光 さいこう 面積 めんせき が拡大 かくだい されている。トイレはバキューム方式 ほうしき が採用 さいよう された。
駐 ちゅう 機 き 中 ちゅう のアイスランド・エクスプレス のMD-90。前後 ぜんご の乗降 じょうこう 口 こう が開 ひら いており、内蔵 ないぞう されている階段 かいだん が展開 てんかい されている。後部 こうぶ 乗降 じょうこう 口 こう は垂直 すいちょく 尾翼 びよく 下方 かほう にある。
前方 ぜんぽう 乗降 じょうこう 口 こう にはボーディング・ブリッジ も接続 せつぞく 可能 かのう 。女満別 めまんべつ 空港 くうこう にて。
左舷 さげん 最前 さいぜん 方 かた に乗降 じょうこう 用 よう ドアがあり、サービスドアは右舷 うげん 最 さい 前方 ぜんぽう と左舷 さげん 後方 こうほう (エンジンと主翼 しゅよく 後 ご 縁 えん の中 なか 間 あいだ )の2か所 しょ であり、前方 ぜんぽう 乗降 じょうこう 口 こう の下 した 側 がわ には格納 かくのう 式 しき のタラップ (エアステア )を備 そな える。客室 きゃくしつ 最後 さいご 部 ぶ には、圧力 あつりょく 隔壁 かくへき を貫通 かんつう する通路 つうろ の先 さき に後方 こうほう 乗降 じょうこう 口 こう がある。後方 こうほう 乗降 じょうこう 口 こう は尾 お 部 ぶ の中央 ちゅうおう にあり、ベントラル・ステアとよばれる階段 かいだん を備 そな え、扉 とびら が下方 かほう に展開 てんかい する構造 こうぞう である。前方 ぜんぽう 乗降 じょうこう 用 よう ドアと2か所 しょ のサービスドアは、非常 ひじょう 脱出 だっしゅつ 口 こう にもなり、脱出 だっしゅつ スライドが装備 そうび されている。加 くわ えて、主翼 しゅよく 上 じょう に左右 さゆう 2か所 しょ ずつと胴体 どうたい 最後 さいご 部 ぶ のテール・コーン部 ぶ に1か所 しょ 、非常 ひじょう 脱出 だっしゅつ 口 こう がある。後方 こうほう 乗降 じょうこう 口 こう は脱出 だっしゅつ スライドを付 つ けられない構造 こうぞう のため、後部 こうぶ ドア付近 ふきん の天井 てんじょう から緊急 きんきゅう 脱出 だっしゅつ 口 こう への別 べつ 通路 つうろ が設 もう けられ、緊急 きんきゅう 時 じ にテール・コーンが外 はず れて脱出 だっしゅつ スライドが展開 てんかい される。
床下 ゆかした の貨物 かもつ 室 しつ は、主翼 しゅよく の取 と り付 つ け部 ぶ と主 しゅ 脚 あし の格納 かくのう 室 しつ を除 のぞ いた部分 ぶぶん に割 わ り当 あ てられている。貨物 かもつ 室 しつ は3分割 ぶんかつ されており、主翼 しゅよく 前方 ぜんぽう に2区画 くかく 、後方 こうほう に1区画 くかく である。貨物 かもつ 用 よう ドアは各 かく 貨物 かもつ 室 しつ の右舷 うげん に配置 はいち され、寸法 すんぽう は全 すべ て同一 どういつ で幅 はば 53×高 たか さ50インチ(134.6×127センチメートル)である。すべてばら積 づ み方式 ほうしき であり、積 つ み下 お ろし作業 さぎょう は人手 ひとで で行 おこな う必要 ひつよう があるが、地上 ちじょう から貨物 かもつ 室 しつ 床 ゆか までの高 たか さは1.4から1.6メートル程度 ていど であり、地上 ちじょう の支援 しえん 機材 きざい などが無 な い場合 ばあい でも貨物 かもつ の積 つ み下 お ろしが可能 かのう である。貨物 かもつ 室 しつ は室内 しつない 高 だか が1メートル弱 じゃく 、長 なが さが10メートルである。
MD-90の特徴 とくちょう として低 てい 騒音 そうおん ・低 てい 排気 はいき であることが挙 あ げられ、「地球 ちきゅう にやさしい旅客機 りょかくき 」とも言 い われた。
国際 こくさい 民間 みんかん 航空 こうくう 機関 きかん (International Civil Aviation Organization、以下 いか ICAO)の騒音 そうおん 規制 きせい (ICAO Annex, 16 Volume I)に基 もと づき計測 けいそく された累積 るいせき 騒音 そうおん レベルは、MD-90、737、A320の中 なか でMD-90が最 もっと も小 ちい さかった[ 91] 。同 おな じV2500エンジンを装備 そうび するA320よりも低 てい 騒音 そうおん であることについて、マクドネル・ダグラスではエンジン配置 はいち に代表 だいひょう されるMD-90の機体 きたい 構成 こうせい によるものと説明 せつめい している。リア・マウント方式 ほうしき では、側 がわ 方 かた への騒音 そうおん は胴体 どうたい と尾 お 部 ぶ が、離着陸 りちゃくりく 時 じ の下方 かほう への騒音 そうおん は主翼 しゅよく が遮 さえぎ ることで騒音 そうおん 値 ち が低 ひく くなるとしている。また、リア・マウント方式 ほうしき では、エンジンのカウリング を前後 ぜんご 方向 ほうこう に長 なが くとれるため、MD-90用 よう のV2500エンジンではエンジンノイズを低減 ていげん するようにナセルが変更 へんこう されて空気 くうき 流入 りゅうにゅう 口 こう が延長 えんちょう されたほか、テール・コーンもノイズ対策 たいさく が施 ほどこ された。また、離陸 りりく 後 ご の高度 こうど に応 おう じて緻密 ちみつ にエンジン出力 しゅつりょく を絞 しぼ ることで、騒音 そうおん を低減 ていげん させるシステムもオプションで用意 ようい されていた。このMD-90の騒音 そうおん の小 ちい ささは、「地上 ちじょう にて、すぐ近 ちか くを自力 じりき でタキシング していてもちょっと気 き がつかないくらい」とも評価 ひょうか された。
排気 はいき ガスについても、V2500エンジンは窒素 ちっそ 酸化 さんか 物 ぶつ 、一酸化 いっさんか 炭素 たんそ 、炭化 たんか 水素 すいそ それぞれについて、開発 かいはつ 当時 とうじ のICAOの規制 きせい 基準 きじゅん を大 おお きく下回 したまわ っている。MD-90で装備 そうび されたV2525-D5型 がた の証明 しょうめい 取得 しゅとく 基準 きじゅん で見 み ると、窒素 ちっそ 酸化 さんか 物 ぶつ は約 やく 50パーセント、一酸化 いっさんか 炭素 たんそ は約 やく 80パーセント、炭化 たんか 水素 すいそ は95パーセント以上 いじょう 基準 きじゅん 値 ち を下回 したまわ っていた。
MD-90の新造 しんぞう 機 き の導入 どうにゅう は北米 ほくべい とアジア・中東 ちゅうとう 地域 ちいき の航空 こうくう 会社 かいしゃ を中心 ちゅうしん に行 おこな われた。新造 しんぞう 機 き の受領 じゅりょう 数 すう はサウジアラビア航空 こうくう (現 げん ・サウディア )が29機 き で最 もっと も多 おお く、デルタ航空 こうくう と日本 にほん エアシステムが16機 き ずつ、中国 ちゅうごく 北方 ほっぽう 航空 こうくう が11機 き 、ユニー航空 こうくう (立 たて 栄 さかえ 航空 こうくう )が10機 き であった(いずれもリース機 き を除 のぞ く)。
2010年 ねん 頃 ごろ から運用 うんよう 数 すう が減 へ り始 はじ めた[ 93] [ 94] [ 95] [ 96] [ 97] [ 98] 。一方 いっぽう で、デルタ航空 こうくう は、経営 けいえい 統合 とうごう した旧 きゅう ノ の ースウエスト航空 すうえすとこうくう から引 ひ き継 つ いだDC-9の後継 こうけい 機材 きざい として、世界中 せかいじゅう の航空 こうくう 会社 かいしゃ からMD-90の中古 ちゅうこ 機 き を買 か い取 と った[ 99] 。古 ふる い機体 きたい は燃料 ねんりょう 費 ひ やメンテナンス・コストが高 たか くなるが、デルタ航空 こうくう では新造 しんぞう 機 き の導入 どうにゅう よりも10億 おく ドル以上 いじょう の節約 せつやく になるとしている[ 99] 。2014年 ねん には、デルタ航空 こうくう が65機 き を運用 うんよう し、他 た には中華民国 ちゅうかみんこく (台湾 たいわん )のエバー航空 こうくう とユニー航空 こうくう (立 たて 栄 さかえ 航空 こうくう )でも5機 き ずつ運用 うんよう という状況 じょうきょう となった[ 100] 。2016年 ねん にはMD-90を運用 うんよう する航空 こうくう 会社 かいしゃ はデルタ航空 こうくう のみとなり[ 101] 、2017年 ねん 7月 がつ 時点 じてん では、64機 き が運用 うんよう されていた[ 102] 。
デルタ航空 こうくう は2020年 ねん 6月 がつ 2日 にち 付 づ けでMD-90とMD-88の全 ぜん 機 き を退役 たいえき させる発表 はっぴょう をした、新型 しんがた コロナウイルスによる影響 えいきょう での利用 りよう 者 しゃ 減少 げんしょう により、経年 けいねん 劣化 れっか が激 はげ しかった二 に 機 き を前倒 まえだお しで退役 たいえき させることとになった[ 103]
MD-90は、日本 にっぽん では日本 にほん エアシステムにより採用 さいよう された。同社 どうしゃ は、1996年 ねん 4月 がつ 1日 にち から日本 にっぽん の国内線 こくないせん で運航 うんこう を開始 かいし し、最終 さいしゅう 的 てき に16機 き を導入 どうにゅう した。日本 にほん エアシステムは、MD-90を「思 おも い切 き ったイメージでアピールしよう」と映画 えいが 監督 かんとく の黒澤 くろさわ 明 あきら に機体 きたい 塗装 とそう のデザインを依頼 いらい し、虹 にじ をモチーフとした7種類 しゅるい の塗装 とそう パターンを設定 せってい した。この7種類 しゅるい の塗装 とそう は1号機 ごうき から7号機 ごうき まで順番 じゅんばん に設定 せってい され、黒澤 くろさわ の監督 かんとく 作品 さくひん にちなんで「七人 しちにん の侍 さむらい 」と呼 よ ばれて航空 こうくう 関係 かんけい 者 しゃ や航空 こうくう 愛好 あいこう 家 か をはじめ多 おお くの人 ひと たちの話題 わだい を集 あつ めた 。8号機 ごうき 以降 いこう は1号機 ごうき からの塗装 とそう が繰 く り返 かえ され、同 どう 一 いち 塗装 とそう の機体 きたい が複数 ふくすう 揃 そろ ったことから同 おな じく黒澤 くろさわ 作品 さくひん にちなみ「影武者 かげむしゃ 」とも呼 よ ばれた。2004年 ねん 4月 がつ に日本航空 にほんこうくう と日本 にほん エアシステムの経営 けいえい 統合 とうごう が完了 かんりょう した際 さい には、MD-90も全 ぜん 機 き に引 ひ き継 つ がれ、当時 とうじ の統一 とういつ デザインである「太陽 たいよう のアーク」塗装 とそう に塗 ぬ り替 か えられた。なお、日本 にほん エアシステム時代 じだい の実機 じっき は現存 げんそん していないがあいち航空 こうくう ミュージアム には全 ぜん 7種類 しゅるい のミニチュアがモニュメント展示 てんじ されていて、当時 とうじ の姿 すがた を全身 ぜんしん で見 み ることができる。
日本航空 にほんこうくう と日本 にほん エアシステムの経営 けいえい 統合 とうごう 後 ご もMD-90は全 ぜん 機 き 引 ひ き継 つ がれ、羽田空港 はねだくうこう や伊丹空港 いたみくうこう と地方 ちほう を結 むす ぶローカル路線 ろせん を中心 ちゅうしん に運航 うんこう された。2011年 ねん 3月 がつ 11日 にち の東日本 ひがしにっぽん 大震災 だいしんさい の発生 はっせい 直後 ちょくご には、山形 やまがた 空港 くうこう や花巻空港 はなまきくうこう へも飛行 ひこう した。前後 ぜんご の乗降 じょうこう 扉 とびら にタラップ(エアステア )を備 そな え、貨物 かもつ 室 しつ までの高 たか さも低 ひく いMD-90は、電力 でんりょく 不足 ふそく でボーディング・ブリッジ などの地上 ちじょう 設備 せつび が使 つか えない空港 くうこう でも乗客 じょうきゃく や貨物 かもつ の積 つ み下 お ろしができたため、震災 しんさい 直後 ちょくご の輸送 ゆそう に活躍 かつやく した。
日本航空 にほんこうくう では2012年 ねん から順次 じゅんじ MD-90の退役 たいえき が始 はじ まったが、塗装 とそう 更新 こうしん のタイミングにあった1機 き のみ、新 あたら しい「鶴丸 つるまる 」塗装 とそう が施 ほどこ され、航空 こうくう 愛好 あいこう 家 か の話題 わだい となった[ 99] 。日本航空 にほんこうくう のMD-90は2013年 ねん 3月 がつ 末 まつ に運航 うんこう を終了 しゅうりょう し、引退 いんたい した全 ぜん 機 き がデルタ航空 こうくう に売却 ばいきゃく された。これにより、日本 にっぽん の航空 こうくう 会社 かいしゃ によるダグラス製 せい 旅客機 りょかくき の運航 うんこう にも終止符 しゅうしふ が打 う たれた。
日本 にっぽん で運航 うんこう されたMD-90の塗装 とそう パターン
レインボーカラー1号機 ごうき の塗装 とそう パターン。
レインボーカラー2号機 ごうき の塗装 とそう パターン。黒澤 くろさわ 監督 かんとく が最初 さいしょ にデザインしたとされ、同氏 どうし のサインが入 はい っている。
レインボーカラー3号機 ごうき の塗装 とそう パターン。
レインボーカラー4号機 ごうき の塗装 とそう パターン。
レインボーカラー5号機 ごうき の塗装 とそう パターン。
レインボーカラー6号機 ごうき の塗装 とそう パターン。
レインボーカラー7号機 ごうき の塗装 とそう パターン。
日本航空 にほんこうくう との統合 とうごう 後 ご の「太陽 たいよう のアーク」塗装 とそう 。
「鶴丸 つるまる 」塗装 とそう 。
MD-90は総計 そうけい 116機 き が生産 せいさん ・納入 のうにゅう された[ 114] 。
表 ひょう 3: 年 とし ごとの受注 じゅちゅう ・納入 のうにゅう 数 すう (キャンセル分 ぶん は当初 とうしょ 発注 はっちゅう 年度 ねんど から減 げん じている)[ 114]
年 とし
合計 ごうけい
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
受注 じゅちゅう 数 すう
116
0
0
4
3
17
39
0
0
26
0
27
納入 のうにゅう 数 すう
116
5
13
34
26
25
13
0
0
0
0
0
2017年 ねん 10月 がつ 現在 げんざい 、MD-90に関 かん する航空 こうくう 事故 じこ および事件 じけん は3件 けん 発生 はっせい している[ 115] 。いずれの事故 じこ でも、機体 きたい 損失 そんしつ となっており、その内 うち の1件 けん で乗客 じょうきゃく 1名 めい が死亡 しぼう している[ 116] 。
死亡 しぼう 事故 じこ は、1999年 ねん 8月 がつ 24日 にち に台湾 たいわん の花 はな 蓮 はちす 空港 くうこう で発生 はっせい した[ 117] 。ユニー航空 こうくう (立 たて 栄 さかえ 航空 こうくう )873便 びん (MD-90-30)が着陸 ちゃくりく 後 ご に地上 ちじょう 走行 そうこう していたところ、座席 ざせき 上 じょう の手荷物 てにもつ 入 い れで爆発 ばくはつ が起 お き、火災 かさい が発生 はっせい した[ 118] 。乗客 じょうきゃく 乗員 じょういん 96名 めい のうち1名 めい が死亡 しぼう 、27名 めい が負傷 ふしょう した[ 118] 。事故 じこ 原因 げんいん は、乗客 じょうきゃく が家庭 かてい 用 よう の漂白 ひょうはく 剤 ざい および柔軟 じゅうなん 剤 ざい の容器 ようき に入 い れたガソリン を機内 きない へ持 も ち込 こ み、漏 も れ出 だ して揮発 きはつ したガソリンが、同 おな じく機内 きない に持 も ち込 こ まれたバイクのバッテリの火花 ひばな で引火 いんか したためと推定 すいてい されている[ 119] 。
2件 けん 目 め の機体 きたい 損失 そんしつ 事故 じこ は、2009年 ねん 3月 がつ 9日 にち に発生 はっせい した。インドネシア のスカルノ・ハッタ国際 こくさい 空港 くうこう へ着陸 ちゃくりく したライオン・エア 793便 びん (MD-90-30)が滑走 かっそう 路 ろ をオーバーランした。乗員 じょういん 乗客 じょうきゃく 172人 にん が搭乗 とうじょう していたが死者 ししゃ はなかった[ 120] 。
3件 けん 目 め の機体 きたい 損失 そんしつ 事故 じこ は、2009年 ねん 5月 がつ 8日 にち に発生 はっせい した。サウジアラビア のリヤド国際 こくさい 空港 くうこう へ着陸 ちゃくりく したサウジアラビア航空 こうくう 9061便 びん (MD-90-30)が滑走 かっそう 路 ろ をオーバーランし、左 ひだり 主 ぬし 脚 あし を破損 はそん した。火災 かさい は発生 はっせい しなかったものの、機体 きたい は全 ぜん 損 そん 扱 あつか いとなった[ 121] 。
運航 うんこう 乗務 じょうむ 員数 いんずう : 2名 めい
標準 ひょうじゅん 座席 ざせき 数 すう : 153(2クラス) - 172(1クラス)
床下 ゆかした 貨物 かもつ 室 しつ 容積 ようせき : 36.8 m3 / 33.3 m3 (ER型 がた )
全長 ぜんちょう : 46.50 m
全幅 ぜんぷく : 32.87 m
全高 ぜんこう : 9.50 m
主翼 しゅよく 面積 めんせき : 112.4 m2
胴体 どうたい 幅 はば : 3.34 m
客室 きゃくしつ 幅 はば : 3.14 m
客室 きゃくしつ 長 ちょう : 31.67 m
最大 さいだい 無 む 燃料 ねんりょう 重量 じゅうりょう (MZFW): 58,967 kg / 59,874 kg (ER型 がた )
最大 さいだい 離陸 りりく 重量 じゅうりょう (MTOW): 70,760 kg / 76,204 kg (ER型 がた )
離陸 りりく 滑走 かっそう 距離 きょり : 2,166 m
巡航 じゅんこう 速度 そくど : マッハ 0.76
航続 こうぞく 距離 きょり : 3,860 km
エンジン (×2): インターナショナル・エアロ・エンジンズ V2525-D5
推力 すいりょく (×2): 111.2 kN
注 ちゅう :特 とく に記載 きさい がないものはMD-90-30の数値 すうち 。
^ 後 のち に、ボーイングは小型 こがた 機 き の新規 しんき 開発 かいはつ は見送 みおく り、737をリニューアルした次世代 じせだい 型 がた (737NG )を開発 かいはつ している。
^ ターボファンエンジンでは、吸引 きゅういん された空気 くうき は、コアを通 とお り燃焼 ねんしょう ・噴出 ふんしゅつ されるものと、コアを通 とお らず排出 はいしゅつ される(バイパスされる)ものに分 わ けられる[ 14] 。コアをバイパスする空気 くうき 流量 りゅうりょう をコアを通 とお る空気 くうき 流量 りゅうりょう で割 わ ったものがバイパス比 ひ であり、一般 いっぱん にこの値 ね が大 おお きいほど推進 すいしん 効率 こうりつ が高 たか くなる[ 14] [ 15] 。詳細 しょうさい はターボファンエンジン を参照 さんしょう 。
^ 機材 きざい トラブル等 とう による遅延 ちえん や飛行 ひこう 中止 ちゅうし がなく有償 ゆうしょう 飛行 ひこう に出発 しゅっぱつ した割合 わりあい [ 40]
^ 飛行機 ひこうき が安定 あんてい して飛行 ひこう するためには、重心 じゅうしん 位置 いち が一定 いってい の範囲 はんい (重心 じゅうしん 許容 きょよう 範囲 はんい )に入 はい っている必要 ひつよう がある[ 55] 。旅客機 りょかくき では、旅客 りょかく や貨物 かもつ の積 つ み方 かた により、重心 じゅうしん 位置 いち が前後 ぜんご に大 おお きく移動 いどう する。特 とく に、リア・マウントの旅客機 りょかくき は重心 じゅうしん 移動 いどう が大 おお きいため、積 つ み方 かた の制限 せいげん を少 すく なくするためには、重心 じゅうしん 許容 きょよう 範囲 はんい が広 ひろ くなるような設計 せっけい が求 もと められる。
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