スパロー (ミサイル)

AIM-7 スパロー

スパロー（Sparrow）は、レイセオン社しゃ製せいの中なか射程しゃてい空そら対空たいくうミサイル。アメリカ軍ぐんにおける制式せいしき名めいはAIM-7で、誘導ゆうどうにはセミアクティブ・レーダー・ホーミング（SARH）方式ほうしきを採用さいようしており、視程してい外がい射程しゃてい（BVR）が可能かのうである。なお、スパローとはスズメ、もしくはスズメ科かに属ぞくする鳥類ちょうるい全般ぜんぱんの意い。

アメリカ空軍くうぐん・海軍かいぐん、日本にっぽんの航空こうくう自衛隊じえいたいなど、西側にしがわ諸国しょこくの空軍くうぐんを中心ちゅうしんとした軍事ぐんじ組織そしきで広ひろく使用しようされるが、現在げんざいではAIM-120 AMRAAMや99式しき空そら対空たいくう誘導ゆうどう弾だんなどといった、アクティブ・レーダー・ホーミング（ARH）誘導ゆうどう方式ほうしきが可能かのうな新型しんがたの空そら対空たいくうミサイルへの更新こうしんが進すすんでいる。

開発かいはつ経緯けいい

アメリカ海軍かいぐんが第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんの末期まっきに出だした「5インチロケット弾だんHVARをビームライディング方式ほうしきで誘導ゆうどうする空そら対空たいくう兵器へいき」という要求ようきゅうに端はしを発はっし、1946年ねん5月がつにプロジェクトホットショットのもとでテネシー州しゅうブリストルのスペリージャイロスコープ社しゃに「1,000〜6,000フィート（305〜1830 m）の射程しゃていでマッハ1の目標もくひょうを撃墜げきついできる」兵器へいきの提案ていあん要求ようきゅうが出だされた。翌よく1947年ねん3月がつ、スペリージャイロスコープ社しゃはHVARの直径ちょっけい5インチの弾たま体たいでは要求ようきゅうを満みたせないとして、直径ちょっけい8インチの弾たま体たいを推奨すいしょうし（これはのちのスパローのすべてのバリエーションで共通きょうつうである）、海軍かいぐんはこれを受うけ入いれ、同年どうねん5月がつ、開発かいはつ契約けいやくが結むすばれたが、スペリー社しゃは開発かいはつと指導しどうに専念せんねんし、実際じっさいの製造せいぞうはダグラス・エアクラフト社しゃが下請したうけとなった。スパローと命名めいめいされたのは7月がつのことである。「ドイツのジェット戦闘せんとう機き及および日本にっぽん軍ぐんの特攻とっこう機き対策たいさくの空そら対空たいくう兵器へいきとして開発かいはつが開始かいしされた」との主張しゅちょうもあるが、開発かいはつされた目的もくてきはドイツ製せいR4M空そら対空たいくうロケットがそうであったように大型おおがた機きや大型おおがた爆撃ばくげき機きへの対策たいさくであり、構想こうそうされた時点じてんですでに敗戦はいせん直前ちょくぜんでそれらを持もたないドイツや日本にっぽんは無関係むかんけいである。

1948年ねん1月がつからポイントマグーでの試験しけんが始はじまり、1951年ねん1月がつ、AAM-N-2 スパローとして制式せいしき採用さいようが決きまり、同時どうじに1000発はつが発注はっちゅうされた。しかし当時とうじの電子でんし技術ぎじゅつの限界げんかいから初期しょきに生産せいさんされた物ものは1951年ねんの生産せいさん開始かいしから1953年ねんの実験じっけんまでただの一いち度ども目標もくひょうに命中めいちゅうする事ことは無なかった。

誘導ゆうどう方式ほうしきをアクティブ誘導ゆうどう方式ほうしきに変更へんこうするなどコンセプトを一新いっしんしたAAM-N-2A（1952年ねんにAAM-N-3に変更へんこう）スパローIIがダグラス・エアクラフトで開発かいはつされたが、1956年ねんにキャンセルされた。1951年ねんからレイセオンがセミアクティブ誘導ゆうどう方式ほうしきによるAAM-N-6スパローIIIの開発かいはつが始はじまり、1958年ねん8月がつから配備はいびが始はじまった。

F-4Cに装備そうびされたAIM-7F

ベトナム戦争せんそうにおいては、アメリカ空軍くうぐんの主力しゅりょく戦闘せんとう機きF-4の主しゅ兵へい装そうとして使用しようされた。 しかし

• 熱帯ねったいにおける電子でんし機器ききの信頼しんらい性せいの低下ていかが起おこった
• アメリカ海軍かいぐんが航空こうくう母艦ぼかん甲板かんぱんでミサイルにフィンを取とり付つける際さいに粗末そまつな扱あつかいをした為ために部品ぶひんを損傷そんしょうさせていた
• 2-3回かいの飛行ひこう後ごに1度ど点検てんけんが必要ひつようだったのにもかかわらず、20回かい以上いじょうの飛行ひこうをしていたのに1度ども点検てんけんを実施じっししていなかった
• 攻撃こうげき対象たいしょうが小型こがたで機動きどう性せいの高たかい戦闘せんとう機きであった
• アメリカ海軍かいぐんのF-4が味方みかたのF-4を誤あやま撃墜げきついし、目視もくし外がい戦闘せんとうを禁止きんしされたことで、発射はっしゃ時じの大半たいはんが最低さいてい射程しゃてい以下いかだった

などの問題もんだいにより、命中めいちゅう率りつは非常ひじょうに悪わるく、実質じっしつ一いち割わり程度ていどであった。

F-14がまだ量産りょうさん先行せんこう型がたで試験しけん飛行ひこうを行おこなっていた1973年ねん6月がつ20日はつか、ポイントマグー海軍かいぐん基地きちに配備はいびされていた3機きの試験しけん機きのうち1機きがスパローを発射はっしゃしたところ、自じ機きに命中めいちゅうする事故じこを起おこして墜落ついらくした。

湾岸わんがん戦争せんそうにおいては、電子でんし機器ききの発達はったつやベトナム戦争せんそうでの教訓きょうくんもあって高たかい命中めいちゅう率りつとなり、イラク軍機ぐんきを多数たすう撃墜げきついしている。

型式けいしき

AIM-7AスパローI

1951年ねんに制式せいしき化かされた型式けいしきでスペリー社しゃが開発かいはつした。誘導ゆうどう方式ほうしきはビーム・ライディング式しきで誘導ゆうどう方式ほうしきからくる命中めいちゅう率りつの悪わるさから、後述こうじゅつのAIM-7Bが開発かいはつされた。名称めいしょうが時期じきによって変かわっており、1947年ねんの開発かいはつ当初とうしょはKAS-1やAAM-2と呼よばれていた。また、1951年ねんの制式せいしき化かから1962年ねん9月がつの命名めいめい規則きそくの変更へんこうまでAAM-N-2と呼よばれていた。ダグラス社しゃ製せいの新型しんがたがスパローIIと命名めいめいされた際さいにスパローIとなった。

AIM-7BスパローII

AIM-7Aの誘導ゆうどう方式ほうしきをアクティブレーダー式しきに変更へんこうした形式けいしきでダグラス社しゃが開発かいはつした。発射はっしゃ試験しけんは行おこなわれたものの制式せいしき化かされず1956年ねんに開発かいはつ中止ちゅうしとなった。1962年ねん9月がつの命名めいめい規則きそくの変更へんこうまでAAM-N-3と呼よばれていた。

AIM-7CスパローIII

誘導ゆうどう方式ほうしきをセミアクティブ・レーダー・ホーミング（SARH）に換かえた型式けいしきで現在げんざいのスパローの基礎きそとなったタイプ。レイセオンが1951年ねんから開発かいはつを行おこない1958年ねんに実用じつよう化かされた。1962年ねん9月がつの命名めいめい規則きそくの変更へんこうまでAAM-N-6と呼よばれていた。

AIM-7Dスパロー（AIM-110）

液体えきたい燃料ねんりょうモーターを使用しようした型式けいしき。1962年ねん9月がつの命名めいめい規則きそくの変更へんこうまでAAM-N-6a（末尾まつびのaは大文字おおもじではなく小文字こもじ。三軍さんぐん統一とういつ名称めいしょうになる以前いぜんの空軍くうぐんではAIM-101）と呼よばれていた

AIM-7E

ロケットモーターを液体えきたい燃料ねんりょうから固体こたい燃料ねんりょうに変更へんこうした型式けいしき。1963年ねんから生産せいさんが開始かいしされた。1962年ねん9月がつの命名めいめい規則きそくの変更へんこうまでAAM-N-6bと呼よばれていた。

AIM-7E-2

機動きどう性せいを向上こうじょうさせ、最小さいしょう交戦こうせん範囲はんいを狭せまくした型式けいしき。

AIM-7F

1972年ねん1月がつから開発かいはつ開始かいし、製造せいぞう1975年ねんから

制御せいぎょ部ぶをソリッドステート化かして小型こがた化かし、その分ぶんロケットモーターを大型おおがた化かして射程しゃてい延長えんちょうしたもの。モノパルス・ホーミング・ヘッドの採用さいようによりFCS用ようのパルス・ドップラー・レーダーでも誘導ゆうどうが可能かのうとなった。

AIM-7G

AIM-7Fの誘導ゆうどう装置そうちを改良かいりょうした型式けいしき。試作しさくのみ。

AIM-7H

AIM-7Gの誘導ゆうどう装置そうちを改良かいりょうした型式けいしき。試作しさくのみ。

AIM-7M

AIM-7Mの模擬もぎ弾だん

新型しんがたシーカーを搭載とうさいしてECCM能力のうりょくや信頼しんらい性せいを向上こうじょうさせたもの、信管しんかんの改良かいりょうと弾頭だんとうの変更へんこうで破壊はかい力りょくを高たかめている。

AIM-7P

F-15Cから発射はっしゃされたAIM-7P

1990年ねんから生産せいさんが開始かいしされた型式けいしき。小型こがた目標もくひょうに対たいする迎撃げいげき能力のうりょくを向上こうじょうさせるため信管しんかんを改良かいりょうしている。また、ブロック2からは中間ちゅうかんアップデート用ようのデータリンク受信じゅしん機きが搭載とうさいされ中なか間あいだコースでのアップデートが可能かのうとなった。

AIM-7R

シーカーをモノパルスレーダーと赤外線せきがいせんの複ふく合ごう型がたに変更へんこうした型式けいしき。新型しんがた信管しんかんの採用さいよう、処理しょり能力のうりょくの向上こうじょう、ECCM能力のうりょくの強化きょうかが盛もり込こまれていた。

1990年代ねんだい初はじめから開発かいはつされ、1993年ねんには試射ししゃも行おこなわれたが、1996年ねんに計画けいかく中止ちゅうしとなった。

派生はせい型がた

RIM-7 シースパロー

AIM-7をベースに開発かいはつされたセミアクティブレーダーホーミング方式ほうしきの個こ艦かん防空ぼうくうミサイル。

AGM-45 シュライク

AIM-7Cの弾たま体たいに対たいレーダー用ようシーカー・ヘッドを搭載とうさいした対たいレーダーミサイル。

スカイフラッシュ

BAe社しゃが開発かいはつしたAIM-7Eの発展はってん型がた。内部ないぶ回路かいろ系統けいとうを改良かいりょうし低空ていくう目標もくひょう対処たいしょ能力のうりょくやECCM能力のうりょくを向上こうじょうさせている。イギリス・イタリア・サウジアラビア・スウェーデンの4カ国かこくが運用うんようしていた。

アスピーデ

AIM-7E-2をベースにイタリアが開発かいはつした空そら対空たいくうミサイル。シースパローの様ような艦かん対空たいくうミサイルや、地ち対空たいくうミサイル等ひとしの派生はせい型がたが存在そんざいする。またアクティブレーダーホーミング方式ほうしきの改良かいりょう型がたも計画けいかくされたが中止ちゅうしされている。

採用さいよう国こく

• オーストラリア
• カナダ
• エジプト
• ギリシャ
• イラク
• イラン
• イスラエル
• ウクライナ

• イタリア
• 日本にっぽん
• ヨルダン
• クウェート
• マレーシア
• サウジアラビア
• シンガポール

• パキスタン
• 韓国かんこく
• スペイン
• 中華民国ちゅうかみんこく（台湾たいわん）
• トルコ
• イギリス
• アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく

仕様しよう

諸しょ元もと表ひょう

	AIM-7A （AAM-N-2）	AIM-7B （AAM-N-3）	AIM-7C	AIM-7E	AIM-7F	AIM-7M/P
全長ぜんちょう	3.74m	3.85m	3.66m
直径ちょっけい	0.203m
翼つばさ幅はば	（前部ぜんぶ）0.94m （後部こうぶ）0.88m	（前部ぜんぶ）1.02m （後部こうぶ）不明ふめい	（前部ぜんぶ）1.02m （後部こうぶ）0.81m
重量じゅうりょう	143kg	176kg	172kg	197kg	231 kg
推進すいしんシステム	エアロジェット 1.8KS7800 固体こたい燃料ねんりょうロケットモーター			ロケットダイン Mk.38/Mk.52 固体こたい燃料ねんりょうロケットモーター	ハーキュリーズ Mk.58 デュアル推進すいしん固体こたい燃料ねんりょうロケットモーター
射程しゃてい	10km	7km	11km	30km	70km
飛翔ひしょう速度そくど	M2.5		M4
弾頭だんとう	20kg弾頭だんとう		30kg MK38		39kg Mk.71	40kg WDU-27/B

登場とうじょう作品さくひん

映画えいが

『ガメラ2 レギオン襲来しゅうらい』

第だい201飛行ひこう隊たい所属しょぞくのF-15Jが津軽海峡つがるかいきょう上空じょうくうで巨大きょだいレギオンを迎撃げいげきする場面ばめんにて、スパローの発射はっしゃシーンが使用しようされている。

『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京とうきょうSOS』

冒頭ぼうとうにて、スクランブル発進はっしんした百里基地ひゃくりきち所属しょぞくのF-15Jに搭載とうさいされたものがモスラに対たいして使用しようされるが、鱗粉りんぷんがチャフの代かわりになったために命中めいちゅうしなかった。

アニメ

『ルパン三さん世せいVS名めい探偵たんていコナン THE MOVIE』

航空こうくう自衛隊じえいたいのF-15Jに搭載とうさいされたものが、ルパン三さん世せいと江戸川えどがわコナンたちが乗のるアランの輸送ゆそう機きに対たいして1発はつ使用しようされるが、輸送ゆそう機きが発射はっしゃした迎撃げいげきチャフに妨害ぼうがいされ、命中めいちゅうせずに終おわる。

小説しょうせつ

『アイドル防衛ぼうえい隊たいハミングバード』

主人公しゅじんこうたちが搭乗とうじょうするF-4 ファントムIIに搭載とうさいされている。冒頭ぼうとうでは「高価こうかなAAMはぶらさげているだけで実じつは一いち度ども撃うったことがない」と言いっているが、後のちに日本にっぽんの領空りょうくうを侵犯しんぱんした所属しょぞく不明ふめいのMiG-31 フォックス ハウンドに対たいして使用しようし、2機きを撃墜げきついする。

『亡国ぼうこくのイージス』

百里基地ひゃくりきち第だい204飛行ひこう隊たい所属しょぞくのF-15Jに搭載とうさいされたものが、反乱はんらんを起おこした架空かくうのはたかぜ型がたミサイル護衛ごえい艦かん「いそかぜ」に対たいして使用しようされかけるが、発射はっしゃ直前ちょくぜんに「いそかぜ」のSM-2ERによる迎撃げいげきに遭あったために攻撃こうげきは行おこなえなかった。なおスパローを対たい艦かん攻撃こうげきに使用しようすることは、可能かのうではあるものの現実げんじつ的てきではない。

ゲーム

『Wargame Red Dragon』

NATO陣営じんえいの各種かくしゅ航空機こうくうきの武装ぶそうとしてAIM-7E・AIM-7F・AIM-7Mが登場とうじょうする。

『エースコンバットシリーズ』

『エースコンバット5 ジ・アンサング・ウォー』以降いこうの作品さくひんに登場とうじょうする特殊とくしゅ兵へい装そう「SAAM」（セミアクティブ空そら対空たいくうミサイル）のCGモデルの一ひとつとして登場とうじょうする。

『コール オブ デューティ ゴースト』

架空かくうの空母くうぼ「カロライナ」の搭載とうさい兵器へいきとして登場とうじょう。Y-8改造かいぞうのガンシップへの攻撃こうげきに使用しようされる。

『大だい戦略せんりゃくシリーズ』

西側にしがわ諸国しょこく戦闘せんとう機きユニットの空そら対空たいくうミサイル装備そうびとして登場とうじょう。

『War Thunder 』

西側にしがわ諸国しょこく戦闘せんとう機きの追加ついか武装ぶそうとしてC型がた、D型がた、E型がた、E-2型がた、F型がた、M型がた、スカイフラッシュ、アスピーデが装備そうび可能かのう。

関連かんれん項目こうもく

• 空そら対空たいくうミサイル
• アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのミサイル一覧いちらん
  • シースパロー (ミサイル)
  • ESSM
  • AGM-45 (ミサイル)
• 航空こうくう自衛隊じえいたいの装備そうび品ひん一覧いちらん
  • 99式しき空そら対空たいくう誘導ゆうどう弾だん

同どう世代せだいの他国たこく製せい空そら対空たいくうミサイル

• ソビエト連邦れんぽう/ ロシア - R-24 (AA-7エイペックス)、R-27 (AA-10アラモ)
• フランス - シュペル530F/D

外部がいぶリンク

• レイセオン： 開発かいはつメーカーのページ
• GlobalSecurity.org： グローバルセキュリティの解説かいせつページ
• Air National Guard F-15A Eagles kills QF-4 Target Drones - YouTube： F-15Aがスパローの実弾じつだんで標的ひょうてき機きを撃墜げきつい