たてがみ

たてがみ（漢字かんじ表記ひょうき：鬣たてがみ、騣、巤、騌、鬃、鬉、鬐、鬛。英語えいご名めい：Mane、Crest）とは、動物どうぶつ（特とくに哺乳類ほにゅうるい）の頸部もしくは頭部とうぶに密集みっしゅうして生はえる長ながい毛もうのことである。代表だいひょう的てきなものとして、ウマやライオン、ハイエナなどのものがある。時ときにヒトの頭髪とうはつや髭ひげもたてがみの一種いっしゅと解釈かいしゃくされる。体温たいおん調節ちょうせつ（保温ほおんおよび放熱ほうねつ）や、頭部とうぶ・頸部の物理ぶつり的てき保護ほごのためにある部位ぶいと考かんがえられている。

呼称こしょう

日本語にほんご名めい

先史せんし時代じだいにおける日本にっぽん列島れっとうの在来ざいらい種しゅにたてがみを持もつ動物どうぶつが見当みあたらないことから、日本人にっぽんじんにとってのたてがみは、（猪いのしし、もしくは）馬うまの伝来でんらいによって始はじまったと考かんがえられる。

日本語にほんご名めい以外いがい

英語えいごではたてがみを「mane (仮名かめい転写てんしゃ：メイン)」と言いう。また、ラテン語らてんごの「crista (意い：cock's comb、鶏にわとりの鶏冠けいかん〈とさか〉)」に由来ゆらいして同義どうぎを第だい一いちとする「crest (仮名かめい転写てんしゃ：クレスト)」の、副次的ふくじてき語義ごぎの一ひとつに「（犬いぬ・馬うまなどの）首筋くびすじ」「（馬うまなどの）たてがみ」がある。

生物せいぶつ的てき特徴とくちょう

たてがみを持もつ動物どうぶつは哺乳類ほにゅうるいに限定げんていされるものではないが、ここで言いう「毛もう（体毛たいもう）」を持もつ現生げんなまの動物どうぶつは哺乳類ほにゅうるいのみであり、したがって、現世げんせいに限かぎれば、「たてがみは哺乳類ほにゅうるいの特徴とくちょうである」と言いえる。

機能きのう

種類しゅるい

たてがみはその生はえ方かたから次つぎのように大別たいべつできる。

(1)　頸椎に沿そうように生はえるもの：ラクダ、キリン、ヌー、ウマ、ブチハイエナ、チーター（幼よう獣じゅう）、オオアリクイなど。

(2)　頭部とうぶ全体ぜんたいに生はえるもの：ライオン（オス成獣せいじゅう・亜あ成獣せいじゅう）、ゴールデンライオンタマリン、シシオザル、ゲラダヒヒ（オス成獣せいじゅう・亜あ成獣せいじゅう）など。場合ばあいにより、ヒトも。

また、前者ぜんしゃ(1) は、毛もう足あしの長短ちょうたんからさらに次つぎのように分類ぶんるいが可能かのう。

(a)　毛もう足あしが短みじかいもの：キリン、ヌー、シマウマ、ロバ、ハイエナ、オオアリクイなど。

(b)　毛もう足あしが長ながいもの：イボイノシシ。

(c)　(a) も (b) もいるもの：ラクダ、ウマ。

たてがみを持もつ動物どうぶつ

現生げんなま種しゅ

太字ふとじは特徴とくちょうが顕著けんちょなもの。

鯨くじら偶蹄ぐうてい目め
- ラクダ科か：ヒトコブラクダ、フタコブラクダ。
- イノシシ科か：イボイノシシ、イノシシ。
- キリン科か：キリン,オカピ（幼よう獣じゅう）。
- ウシ科か：ヌー（オグロヌー、オジロヌー）、ローンアンテロープ、セーブルアンテロープ。
ウマ目め（奇き蹄目） - ウマ科か ：ウマ、ロバ、シマウマ。　　　　　　　　　バク科か：ブラジルバク。
ネコ目め（食肉しょくにく目め）
- ネコ科か：ライオン（オス成獣せいじゅう・亜あ成獣せいじゅう）、チーター（幼よう獣じゅう）。
- ハイエナ科か ：ブチハイエナ、カッショクハイエナ、シマハイエナ、アードウルフ。
- イヌ科か：タテガミオオカミ。
サル目め（霊長れいちょう目め）
- オマキザル科か：ライオンタマリン（ゴールデンライオンタマリン、等ひとし）。
- オナガザル科か：シシオザル、ゲラダヒヒ（オス成獣せいじゅう・亜あ成獣せいじゅう）、マントヒヒ（オス成獣せいじゅう・亜あ成獣せいじゅう）、マンドリル（オス成獣せいじゅう・亜あ成獣せいじゅう）など。
- 場合ばあいにより、ヒトをこれに含ふくむ。
ネズミ目め（齧かじ歯は目め）
- ヤマアラシ科か：タテガミヤマアラシ（en）、インドタテガミヤマアラシ（en）、ケープタテガミヤマアラシ（en）。後頭部こうとうぶに毛け足あしの長ながいたてがみあり。
有毛ありげ目め - アリクイ科か：オオアリクイ。

化石かせき種しゅ

特筆とくひつするだけの価値かちあるもののみ。 † は「絶滅ぜつめつ」の意い。

獣しし弓ゆみ目め - †ディノケファルス亜あ目め
- †アンテオサウルス ：進化しんかして体毛たいもうを本格ほんかく的てきに獲得かくとくしていた可能かのう性せいを語かたられる獣しし弓ゆみ類るいの一種いっしゅであり、それに基もとづいて、ライオン様さまの豊ゆたかなたてがみを持もった姿すがたなどで生態せいたい復元ふくげん想像そうぞう図ずが描えがかれる場合ばあいがある。ただし、可能かのう性せいをことさらに強調きょうちょうした結果けっかの描写びょうしゃであって、この種たねにたてがみがあったという積極せっきょく的てき証拠しょうこはない。
ウマ目め（奇き蹄目）
- ウマ科か ：最初さいしょ期きの種たねである†ヒラコテリウムから既すでにたてがみを持もつ姿すがたで描えがかれることが大半たいはんである。現生げんなま種しゅのような毛け足あしの長ながいたてがみは、平原ひらはらにすむ種しゅが進化しんかして以降いこうは備そなえていたと考かんがえられる。なぜなら、平原へいげんを走はしり続つづけるにあたって、運動うんどう量りょうに比例ひれいして上昇じょうしょうする体温たいおんを気化きか熱ねつの働はたらきによって降下こうかさせる機能きのうを、風ふうになびくたてがみに期待きたいできるからである。

ネコ目め（食肉しょくにく目め）
- †剣けん歯ぱ虎とら ：学術がくじゅつ的てき根拠こんきょがあるわけではないが、たてがみを備そなえた姿すがたで描えがかれる場合ばあいがある。もっともそれはライオン様さまではなく、首筋くびすじに沿そって蓄たくわえられたハイエナ様さまの復元ふくげんがほとんどである。なお、娯楽ごらく作品さくひん中ちゅうの漫画まんが的てき強調きょうちょう表現ひょうげんでは、モヒカン刈がりのように屹立きつりつしたたてがみが見みられる。
- 大型おおがたネコ科か動物どうぶつの絶滅ぜつめつ種しゅの一部いちぶ ：†ホラアナライオンのオス成獣せいじゅうなどは、たてがみを備そなえていたともそうでなかったとも言いわれる。ただ、現存げんそんするライオンのような毛け量りょう豊ゆたかなたてがみが想像そうぞうされて描えがかれることは少すくない。

たてがみと人間にんげんの関かかわり

馬うまのたてがみ

食しょく文化ぶんか

馬うま肉食にくしょく ：食肉しょくにくとしての馬うまでは、たてがみの付つけ根ねの肉にくは一いち頭とうあたりから採とれる量りょうの少すくない部位ぶいである。ほとんどが脂身あぶらみからなり、良質りょうしつのグリコーゲンに富とむこの肉にくは、日本人にっぽんじんのように食しょくす習慣しゅうかんのある者ものにとっては貴重きちょうなものである。日本語にほんごでは「たてがみ」「こうね」「こうね脂あぶら」と呼よび、刺身さしみであれば「たてがみ刺ざし」と言いう。金平きんぴらなどとしても食しょくす。別項べっこう「馬刺ばさし」には画像がぞうもあり。

芸術げいじゅつ・大衆たいしゅう文化ぶんか

その他た

競馬けいば社会しゃかいでは現役げんえき競走きょうそう馬ばのたてがみを切きることは縁起えんぎが悪わるいというジンクスが存在そんざいする。このジンクスを物語ものがたる代表だいひょう的てきな例れいとしてナリタブライアンが右股みぎまた関節かんせつ炎ほのおを発症はっしょうし、その後ご後遺症こういしょうに苦くるしんだことが挙あげられる。1995年ねん、関西かんさいテレビ・フジテレビ系列けいれつで放送ほうそうされていた視聴しちょう者しゃ参加さんか型がたオークション番組ばんぐみ『とんねるずのハンマープライス』に、関係かんけい者しゃから提供ていきょうされたナリタブライアンのたてがみ数すう十じゅう本ほんが出品しゅっぴんされた。これは44万まん円えんで落札らくさつされ、実際じっさいに出品しゅっぴんから2ヵ月かげつ後ごの同年どうねん4月がつにナリタブライアンは故障こしょうを発症はっしょうした。ナリタブライアンの調教ちょうきょう師しを担当たんとうしていた大久保おおくぼ正ただし陽ひは後のちにそのジンクスを念頭ねんとうにおいて、「ナリタブライアンが走はしらなくなったのはたてがみをとられてからだ」とコメントしている^[1]。

2019年ねん9月がつには15日にちに北海道ほっかいどう日高ひだか町まちのヴェルサイユファームにけい養ようされていたタイキシャトルとローズキングダム^[2]、16日にちに日高ひだか町まちの日ひ西にし牧場ぼくじょうにけい養ようされていたビワハヤヒデ^[3]、18日にちには浦河うらかわ町まちの観光かんこう宿泊しゅくはく施設しせつ「うらかわ優ゆう駿しゅんビレッジAERU（アエル）」でウイニングチケット^[4]のたてがみが相次あいついで切きり取とられ、さらにウイニングチケットのたてがみがフリマアプリ「メルカリ」に出品しゅっぴんされるという事態じたいが発生はっせいした^[5]。翌よく2020年ねん3月がつ27日にちには、埼玉さいたま県けん川口かわぐち市しに住すむ55歳さいの女性じょせいがタイキシャトルのたてがみを切断せつだんしたとして、器物きぶつ破損はそん容疑ようぎにより逮捕たいほされた^[6]。