塗ぬり絵え

塗ぬり絵え（ぬりえ）とは、輪郭りんかくだけ描えがかれた図形ずけいや模様もようの中なかに、色いろを塗ぬりわけて楽たのしむ玩具おもちゃ（知育ちいく玩具おもちゃ）である。

概要がいよう[編集へんしゅう]

本ほんとして製本せいほんされたものやスケッチブック状じょうに綴つづられたもののほか、一いち枚まいものの紙かみ（画用紙がようしなど）のものも見みられ、クレヨンや色鉛筆いろえんぴつ、マーカーやペン、絵具えのぐなど、任意にんいの画材がざいで図柄ずがらを着色ちゃくしょくして楽たのしむために用もちいられる。

従来じゅうらいは子こども（特とくに幼児ようじ）向むけのものとされていたが、高齢こうれい者しゃの認知にんち症しょう予防よぼうやデイケアなどでも多おおく使つかわれている。これは、指先ゆびさきを使つかってある程度ていど細こまかい作業さぎょうを行おこない、また、何なに色しょくを使つかうか考かんがえる必要ひつようがあることなどから、リハビリや脳のうへの刺激しげきになるとされるためである。

2005年ねん頃ごろからは「大人おとなの塗ぬり絵え」または「コロリアージュ」（フランス語ふらんすごで「塗ぬり絵え」）と呼よばれる成人せいじん向むけ商品しょうひんも多おおくみられる^[1]。単純たんじゅん作業さぎょうへの集中しゅうちゅうによって自律じりつ神経しんけいを整ととのえる効果こうかやストレス発散はっさん作用さようなどがうたわれた^[2] ことや、絵心えごころがなくても手軽てがるに見栄みばえのする絵えができるなどことから、新あたらしい趣味しゅみとして人気にんきとなり、水彩すいさい色鉛筆いろえんぴつの使用しようなど、より高度こうどな技法ぎほうを必要ひつようとするものも登場とうじょうしている。

子こども向むけの塗ぬり絵えは、漫画まんがチックに簡略かんりゃく化かされた風景ふうけいや動植物どうしょくぶつ、マンガやテレビ番組ばんぐみの人気にんきキャラクターなどを太ふとめの線せんで描えがいたものがほとんどであるが、大人おとな向むけは、浮世絵うきよえや世界せかいの名画めいが、緻密ちみつな動植物どうしょくぶつ画がや風景ふうけい画が、各種かくしゅ紋様もんようなどの図柄ずがらが、灰色はいいろやセピア色いろなどの細ほそい線せんで描えがかれている場合ばあいが多おおい（着色ちゃくしょく後ごに塗ぬり分わけ線せんが目立めだたないようにするため）。キャラクターものの塗ぬり絵えには専せん門もんのコレクターも存在そんざいする。

塗ぬり絵え用ようの線画せんがは、いわゆる「塗ぬり絵本えほん」を購入こうにゅうするほか、インターネットからPDFファイルなどの形かたちでダウンロードすることで入手にゅうしゅできる。また、イベント告知こくちの折おり込こみチラシ等とうに、主しゅとして子供こども向むけの塗ぬり絵えが掲載けいさいされる場合ばあいがあり、その際さいはイベント来場らいじょう（来店らいてん）時じの粗品そしな引ひき替かえ券けんの役割やくわりを兼かねることもある。

従来じゅうらいは紙かみの上うえに印刷いんさつされた媒体ばいたいのみであったが、2000年代ねんだい以降いこうの塗ぬり絵え人気にんきにより、携帯けいたい型がたゲーム機きを含ふくむ家庭かてい用ようゲーム機きで楽たのしむゲームソフトや、ファイル形式けいしきで配付はいふされる塗ぬり絵えをパソコンの描画びょうがソフトを使つかって塗ぬるものなども登場とうじょうしている。

塗ぬり絵えの教育きょういく的てき評価ひょうか[編集へんしゅう]

肯定こうてい的てき評価ひょうか: 色彩しきさい感覚かんかくを育そだてるとともに、枠わくに収おさめて描えがこうとすることにより運うん筆力ひつりょくを育そだてる。

否定ひてい的てき評価ひょうか: 絵えを大人おとなの枠わくに嵌はめてしまい、表現ひょうげん力りょくや独創どくそう性せいが育そだつのを阻はばむ。

ただ幼児ようじ向むけの塗ぬり絵えを幼児ようじに与あたえて自由じゆうに塗ぬらせると、大抵たいていは予想よそうだにしなかった大胆だいたんな色彩しきさいで、元もとのキャラクターが判別はんべつ不能ふのうなほどに塗ぬり潰つぶされたりといった傾向けいこうが見みられる。また幼児ようじはお絵えかきを好このむ傾向けいこうがあり、親子おやこ間あいだにおける一種いっしゅのコミュニケーションツールとしても利用りようが可能かのうである。

作業さぎょう療法りょうほう[編集へんしゅう]

塗ぬり絵えは作業さぎょう療法りょうほうの一いち手法しゅほうとして活用かつようされることがある。絵えを描えがく作業さぎょう療法りょうほうとして絵画かいが療法りょうほうがあるが、通常つうじょうの絵画かいが療法りょうほうは絵えを描えがくことを苦手にがてとする人ひとには抵抗ていこう感かんを感かんじる場合ばあいがある^[3]。そこで絵えを描えがくことの得手えて不得手ふえてが関係かんけいない絵画かいが法ほうとして塗ぬり絵えが用もちいられる^[3]。

構造こうぞう化かされている塗ぬり絵えは、高たかい創造そうぞう性せいを要求ようきゅうされないため難易なんい度どが低ひくく取とり組くみやすい心理しんり療法りょうほうとされている^[3]。絵画かいが療法りょうほうでの塗ぬり絵えの有効ゆうこう性せいに関かんしては、自分じぶんの望のぞむ色いろを使用しようして自由じゆうに彩色さいしきする場合ばあいと予あらかじめ示しめされた課題かだいとして模倣もほうして彩色さいしきする場合ばあいの脳のう活動かつどうの比較ひかくなど研究けんきゅうが行おこなわれている^[3]。