浮腫ふしゅ

浮腫ふしゅ
概要がいよう
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
ICD-10	R60

浮腫ふしゅ（ふしゅ）とは、顔かおや手足てあしなどの末端まったんが体内たいないの水分すいぶんにより痛いたみを伴ともなわない形かたちで腫はれる症候しょうこう。むくみともいう。

英語えいごでは"edema"で、語源ごげんはギリシャ語ごの「腫はれる」を意味いみする "oidein" から派生はせいした "oidema" 。

病態びょうたい

細胞さいぼう組織そしきの液体えきたい（細胞さいぼう間あいだ質しつ液えき）と血液けつえきの浸透しんとう圧あつバランスが崩くずれ、細胞さいぼう組織そしきに水分すいぶんが溜たまって腫はれる。浮腫ふしゅ発症はっしょうのメカニズムとしては浸透しんとう圧あつの低下ていか、血圧けつあつ上昇じょうしょう（静脈じょうみゃく・リンパ管りんぱかんの鬱うつ滞とどこおあるいは閉塞へいそく）、血管けっかん透過とうか性せい亢進こうしんなどがあげられる。

• 炎症えんしょう反応はんのうによるものの場合ばあいには、サイトカインやケモカイン、神経しんけい伝達でんたつ物質ぶっしつにより血管けっかんの透過とうか性せい亢進こうしんにより血管けっかんから間あいだ質しつへ水分すいぶんが移動いどうする。
  • eg.遺伝いでん性せい血管けっかん性せい浮腫ふしゅ(HAE)ではブラジキニンにより発症はっしょうする。
• 心こころ疾患しっかんでは静脈じょうみゃく圧あつの上昇じょうしょうが主因しゅいんとなり、間あいだ質しつへ水分すいぶんが移動いどうする。eg.心不全しんふぜん
• 肝かん疾患しっかん・腎じん疾患しっかんなどによるものの場合ばあいには、アルブミンなどの蛋白質たんぱくしつを喪失そうしつすることにより、血液けつえきの浸透しんとう圧あつが低下ていかし、間あいだ質しつへ水分すいぶんが移動いどうすることにより浸透しんとう圧あつバランスをとるため、浮腫ふしゅをきたす。eg. 肝硬変かんこうへん、ネフローゼ症候群しょうこうぐん、蛋白たんぱく漏出ろうしゅつ性せい胃腸いちょう症しょう、栄養失調えいようしっちょう

  低ていアルブミン血ち症しょうの場合ばあい、下肢かしの圧あつ痕こんが消失しょうしつするまでの時間じかんが40秒びょう以内いないであることが多おおい。血清けっせいアルブミン値ち 3.0g/dL以下いかであれば、多おおくが 圧あつ痕こん消失しょうしつ時間じかん(pit recovery time) ≦ 40秒びょうとなりうると報告ほうこくされている。

• 甲状腺こうじょうせん機能きのう低下ていか症しょうに伴ともなう粘液ねんえき水腫すいしゅは、アルブミンとムコ多た糖とう類るいの結合けつごう物ぶつが間あいだ質しつに貯留ちょりゅうした状態じょうたいで、水分すいぶんの貯留ちょりゅうによる浮腫ふしゅとは病態びょうたいが異ことなる。非ひ圧あつ痕こん浮腫ふしゅ (non-pitting edema) と呼よばれる。

分類ぶんるい

範囲はんいによる分類ぶんるい

浮腫ふしゅが起おこっている場所ばしょによって全身ぜんしん性せい浮腫ふしゅと局所きょくしょ性せい浮腫ふしゅに分わけられる。

性質せいしつによる分類ぶんるい

圧あつ痕こん浮腫ふしゅ (pitting edema) と非ひ圧あつ痕こん浮腫ふしゅ (non-pitting edema) に分わけられる。浮腫ふしゅのある部分ぶぶんを押おさえつけた後のちに放置ほうちしても圧あつ痕こんを残のこすものを圧あつ痕こん浮腫ふしゅ、圧あつ痕こんが残のこらず弾性だんせいを持もつものを非ひ圧あつ痕こん浮腫ふしゅと呼よぶ。

• 圧あつ痕こん浮腫ふしゅの原因げんいん: 心不全しんふぜん、ネフローゼ症候群しょうこうぐん、肝硬変かんこうへん、薬剤やくざい性せいなど。
• 非ひ圧あつ痕こん浮腫ふしゅの原因げんいん: 甲状腺こうじょうせん機能きのう低下ていか症しょうによる粘液ねんえき水腫すいしゅ、好こう酸さん球だま性せい血管けっかん性せい浮腫ふしゅ(angioedema with eosinophilia)、リンパ水腫すいしゅなど。

アプローチ

まず第だい一いちに全身ぜんしん性せい浮腫ふしゅか局所きょくしょ性せい浮腫ふしゅかどうかの判断はんだんを行おこなう。全身ぜんしん性せい浮腫ふしゅの初期しょき段階だんかいは局所きょくしょ性せい浮腫ふしゅのようにみえることもあるため注意ちゅういが必要ひつようである。全身ぜんしん性せい浮腫ふしゅには心こころ原はら性せい（心不全しんふぜんなど）、腎じん原ばら性せい（腎不全じんふぜんやネフローゼ症候群しょうこうぐんなど）、肝かん疾患しっかん（肝硬変かんこうへんなど）、内分泌ないぶんぴつ疾患しっかん（甲状腺こうじょうせん機能きのう低下ていか症しょうなど）、妊娠にんしん中毒ちゅうどく症しょう、低てい栄養えいよう（低ていアルブミン血ち症しょうやビタミン欠乏症けつぼうしょうなど）、薬物やくぶつ性せい（非ひステロイド性せい抗こう炎症えんしょう薬やくやステロイド性せい抗こう炎症えんしょう薬やく）、血管けっかん浮腫ふしゅ（局所きょくしょの場合ばあいもある）などが知しられている。唇くちびるや眼瞼がんけんが腫はれる血管けっかん浮腫ふしゅとは真皮しんぴのアレルギー反応はんのうであり、表皮ひょうひのアレルギー反応はんのうである蕁麻疹じんましんと対比たいひされることが多おおく、治療ちりょうも共通きょうつうである。全身ぜんしん性せい浮腫ふしゅの場合ばあいは原則げんそくとしては重力じゅうりょくにしたがって下したから上うえの順じゅんに発症はっしょうする。立だて位いをとっている場合ばあいは、足あしの甲かぶとからはじまり、脛骨けいこつ前面ぜんめん、大腿だいたい、下腹かふく部ぶ（腹水ふくすい）、胸部きょうぶ（胸水きょうすい）、顔面がんめんという順じゅんに進行しんこうする。全身ぜんしん性せい浮腫ふしゅの頻度ひんどとしては心不全しんふぜん、腎不全じんふぜん、肝硬変かんこうへんなどが多おおい。非ひ圧あつ痕こん浮腫ふしゅの場合ばあいは甲状腺こうじょうせん機能きのう低下ていか症しょうによる全身ぜんしん性せい浮腫ふしゅの可能かのう性せいが高たかく、頸静脈じょうみゃくの怒いか脹やBNP高値たかねを認みとめる場合ばあいは心不全しんふぜんの可能かのう性せいが高たかい。全身ぜんしん性せい浮腫ふしゅの可能かのう性せいが低ひくいと判断はんだんしたら局所きょくしょ性せい浮腫ふしゅを疑うたがう。局所きょくしょ性せい浮腫ふしゅには閉塞へいそく性せいと非ひ閉塞へいそく性せいの原因げんいんがある。閉塞へいそく性せいには深部しんぶ静脈じょうみゃく血栓けっせん症しょうやリンパ管りんぱかん浮腫ふしゅ、腫瘍しゅようや動脈どうみゃく瘤こぶや後腹あとばら膜まく線維せんい症しょうなどによる圧迫あっぱくなどでおこる。非ひ閉塞へいそく性せいの原因げんいんには蜂はち窩織炎えん、痛風つうふう、偽にせ痛風つうふうなどがあげられる。

治療ちりょう

緊急きんきゅう性せいがなければ治療ちりょうは不要ふようである。原因げんいん疾患しっかんの治療ちりょうのほうが重要じゅうようである。浮腫ふしゅ自体じたいの対症療法たいしょうりょうほうとしてはナトリウムの制限せいげん、水みずの制限せいげん、利尿りにょう薬やくの投与とうよがある。また、尿にょう量りょう観察かんさつとして膀胱ぼうこう留置りゅうちカテーテルを挿入そうにゅうすることもある。検査けんさの結果けっか疾患しっかんが見当みあたらなければ、室内しつないでの階段かいだんの上のぼり下くだりや爪先立つまさきだちなど、筋肉きんにくを鍛きたえることで改善かいぜんする場合ばあいもある。

参考さんこう文献ぶんけん

• 問題もんだい解決かいけつ型がた救急きゅうきゅう初期しょき診療しんりょう 第だい2版はん ISBN 9784260013918
• Step By Step! 初期しょき診療しんりょうアプローチ(7) ISBN 9784904357231

関連かんれん項目こうもく

• 水腫すいしゅ
• 冷房れいぼう病びょう
• クワシオルコル - 足あしの浮腫ふしゅがこの症状しょうじょうの診断しんだん基準きじゅんとされている