アルフレート・ヴェーゲナー

アルフレート・ウェーゲナー

アルフレート・ウェーゲナー（1925年ねん）
人物じんぶつ情報じょうほう
全ぜん名な	アルフレート・ロータル・ウェーゲナー
生誕せいたん	1880年ねん11月1日にち ドイツ帝国ていこく プロイセン王国おうこく、ベルリン
死没しぼつ	(1930-11-02) 1930年ねん11月2日にち（50歳さい没ぼつ） グリーンランド、クラリネタニア
学問がくもん
研究けんきゅう分野ぶんや	気象きしょう学がく 地球ちきゅう物理ぶつり学がく

『大陸たいりくと海洋かいようの起源きげん』第だい4版はん（1929年ねん）より

アルフレート・ロータル・ウェーゲナー（Alfred Lothar Wegener、1880年ねん11月1日にち - 1930年ねん11月2日にちもしくは11月3日にち）は、大陸たいりく移動いどう説せつを提唱ていしょうしたドイツの気象きしょう学者がくしゃ。現在げんざいでいう地球ちきゅう物理ぶつり学がく者ものである。1908年ねんからマールブルク大学だいがくで教鞭きょうべんを執とり、1924年ねんにオーストリアのグラーツ大学だいがくの教授きょうじゅに就任しゅうにんした。

義父ぎふ（妻つまの父親ちちおや）は「ケッペンの気候きこう区分くぶん」で有名ゆうめいなロシア出身しゅっしんのドイツ人じん気象きしょう学者がくしゃウラジミール・ペーター・ケッペン。日本にっぽんでは英語えいご読よみでアルフレッド・ウェゲナーとも表記ひょうきされる。

概略がいりゃく

ヴェーゲナーは、牧師ぼくしのリヒャルト・ヴェーゲナーと妻つまアンナの間あいだに生うまれた5人にんの子この末すえっ子こだった。5人にんのうち2人にんは子こどものうちに亡なくなっていた。

当初とうしょハイデルベルグとインスブルックの大学だいがくに学まなび、天文学てんもんがくを専攻せんこうしていたが、極地きょくち探検たんけんにあこがれて気象きしょう学がくも学まなぶ。ベルリン大学だいがくで天文学てんもんがくの博士はかせ号ごうを取得しゅとくしたあと、兄あにのいた航空こうくう気象台きしょうだいに助手じょしゅとして雇やとわれる。

そこで気球ききゅうを用もちいた高層こうそう気象きしょう観測かんそくや天文てんもん観測かんそくの先駆せんく的てき研究けんきゅうに携たずさわった。1906年ねんには科学かがく者しゃの兄あにクルトとともに気球ききゅうに乗のって滞空たいくうコンテストに参加さんかし、当時とうじの最長さいちょう滞空たいくうの世界せかい最高さいこう記録きろくである52.5時じ間あいだを達成たっせいした。 同年どうねん、デンマーク探検たんけん隊たいの遠征えんせいに応募おうぼし、グリーンランドに2年間ねんかん滞在たいざいした。これがヴェーゲナーの5度どにわたるグリーンランド探検たんけんの最初さいしょである。滞在たいざい中ちゅう、北東ほくとう岸がんの地図ちず作づくりの手伝てつだいをしたり、多おおくの極地きょくち気象きしょうのデータを収集しゅうしゅうした。とくに極地きょくちでの気球ききゅうによる上層じょうそう大気たいきの調査ちょうさはこれが初はじめてであったため、気象きしょう学者がくしゃの注目ちゅうもくを集あつめた（それをきっかけにケッペンと親したしくなり、のちに彼かれの娘むすめと結婚けっこんする）。

1910年ねん、世界せかい地図ちず（イギリスが中心ちゅうしんに描えがかれているもの）を見みて、南みなみ大西おおにし洋ひろしを挟はさんで、南みなみアメリカ大陸あめりかたいりくの東ひがし海岸かいがん線せんとアフリカ大陸たいりくの西海岸にしかいがん線せんがよく似にていることに気きづいた。これが大陸たいりく移動いどうのアイデアの元もととなった。 1912年ねんにフランクフルトで開ひらかれたドイツ地質ちしつ学会がっかいで初はじめて大陸たいりく移動いどう説せつを発表はっぴょうした。

1914年ねん、第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんが始はじまり陸軍りくぐん中尉ちゅういの任務にんむにつくが、二に度目どめに負傷ふしょうしたとき心臓しんぞうの悪わるいことが判わかったため、後方こうほうにまわって気象きしょう調査ちょうさの任務にんむを与あたえられた。この間あいだに大陸たいりく移動いどう説せつを研究けんきゅうし執筆しっぴつをすすめる。

1915年ねんにその主著しゅちょ『大陸たいりくと海洋かいようの起源きげん』の中なかで、地質ちしつ学がく・古こ生物せいぶつ学がく・古こ気候きこう学がくなどの資料しりょうを元もとにして、中生代ちゅうせいだいには大西洋たいせいようは存在そんざいせず、現在げんざいは大西洋たいせいようをはさむ四よん大陸たいりくが分離ぶんりして移動いどうを開始かいし、大西洋たいせいようができたとする「大陸たいりく移動いどう説せつ」を主張しゅちょうした。ヴェーゲナーの専せん門もんは気象きしょう学がくであり、地質ちしつ学がくは専せん門外もんがいである上うえ、当時とうじの地質ちしつ学がくは今日きょうでは古典こてん的てきとされる化石かせきの研究けんきゅうや同どう一いち地点ちてんの地層ちそうの重じゅうなりを調しらべる層そう序じょ学がくを主流しゅりゅうの手法しゅほうとしており、彼かれの主張しゅちょうは全まったく認みとめられなかった。1919年ねんに義父ぎふケッペンの後任こうにんとしてハンブルクの海洋かいよう観測かんそく所しょ気象きしょう研究けんきゅう部門ぶもん長ちょうとなり、『大陸たいりくと海洋かいようの起源きげん』第だい2版はんを出だした。ケッペンも古こ気候きこう学者がくしゃとして協力きょうりょくし、1922年ねんには第だい3版はんが出版しゅっぱんされた。

1929年ねんには『大陸たいりくと海洋かいようの起源きげん』の第だい4版はん（最終さいしゅう版ばんである第だい5版はんはヴェーゲナーの死去しきょにより未み出版しゅっぱん）において、南北なんぼくアメリカ大陸あめりかたいりくだけでなく、こんにち存在そんざいするすべての大陸たいりくは1つの巨大きょだい大陸たいりく「パンゲア」であったが、約やく2億おく年ねん前まえに分裂ぶんれつして別々べつべつに漂流ひょうりゅうし、現在げんざいの位置いちおよび形状けいじょうに至いたったとする説せつを発表はっぴょうした。各かく大陸たいりくの岩石がんせきの連続れんぞく性せいや氷河ひょうがの痕跡こんせき、石炭せきたん層そうや古こ生物せいぶつの分布ぶんぷなどから漂流ひょうりゅう前まえの北きたアメリカとユーラシア大陸たいりくが1つのローラシア大陸たいりくであったこと、南みなみアメリカとアフリカがゴンドワナ大陸たいりくであったことを説といた。しかし当時とうじの地質ちしつ学者がくしゃたちは化石かせきに基もとづく研究けんきゅうから彼かれが主張しゅちょうする大陸たいりく移動いどうの根拠こんきょを「陸橋りっきょう説せつ」で説明せつめいし、「大陸たいりくは沈しずむ事ことはあっても動うごくことはない」（現在げんざいでは誤あやまりと判明はんめい）として批判ひはんした。特とくに大陸たいりく移動いどうの原動力げんどうりょくをうまく説明せつめいできなかったヴェーゲナーの説せつは、またも完全かんぜんに否定ひていされた。第だい4版はんではマントル対流たいりゅうに言及げんきゅうしたが、大陸たいりく移動いどうの原動力げんどうりょくと彼かれ自身じしんが気きづかなかったのである。

気象きしょう学がく分野ぶんやでは大気たいき熱ねつ力学りきがくで業績ぎょうせきをあげたものの、彼かれはそれでは満足まんぞくせず、大陸たいりく移動いどう説せつの根拠こんきょを探さがすために自身じしんを隊長たいちょうとして5度目どめのグリーンランド探査たんさを行おこなった。（当時とうじの年代ねんだい推定すいていの不確ふたしかさから、グリーンランドが西にしに移動いどうする速度そくどは現在げんざい考かんがえられている年数ねんすうセンチメートルよりずっと大おおきい30メートルとヴェーゲナーは推定すいていしており、正確せいかくな経度けいど測定そくていで移動いどうが検出けんしゅつできると考かんがえた）　1930年ねん11月1日にち、ちょうど50歳さいの誕生たんじょう日びに、ヴェーゲナーはグリーンランド人じんのビルムセン（Rasmus Villumsen）と2人ふたりで、補給ほきゅう物資ぶっしを持もって400kmはなれた西岸せいがん基地きちへ戻もどるため、雪ゆき嵐あらしの中なかを出発しゅっぱつした。しかし悪天候あくてんこうのために2人ふたりは遭難そうなんし、基地きちへ帰かえりつくことはできなかった。翌年よくねん5月がつ12日にちになってから、捜索そうさく隊たいが基地きちから190kmの地点ちてんで立たてられたスキーの下したにウェゲナーの遺体いたいを発見はっけんした。ウェゲナーは（おそらく過労かろうによる）心臓しんぞう発作ほっさか何なにかで死亡しぼうし、ビルムセンは彼かれの遺体いたいを埋葬まいそうした後のちに1人ひとりで基地きちに向むかったと考かんがえられている。しかしビルムセンもその後ご遭難そうなんし、また彼かれがウェゲナーの日記にっきを持もち去さったために遭難そうなん当時とうじの詳くわしい様子ようすもわかっていない。墓標ぼひょうには「偉大いだいなる気象きしょう学者がくしゃであった」と記しるされているが、大陸たいりく移動いどう説せつについては何なにも触ふれられていない。

大陸たいりく移動いどう説せつその後ご

「大陸たいりく移動いどう説せつ」も参照さんしょう

ヴェーゲナーがグリーンランドの氷河ひょうがに消きえてから約やく30年ねん後ごの1950年代ねんだい - 1960年代ねんだいに、大陸たいりく移動いどうの原動力げんどうりょくをマントル対流たいりゅうであるという仮説かせつが唱となえられ、さらに岩石がんせきに残のこされた過去かこの地磁気ちじきの調査ちょうさ（古こ地磁気ちじき学がく）によって「大陸たいりくが移動いどうした」と考かんがえなければ説明せつめいできない事実じじつが判明はんめいしたことから、大陸たいりく移動いどう説せつは息いきを吹ふき返かえした。その後ご、これを発展はってんさせる形かたちで地殻ちかく変動へんどうを総合そうごう的てきに説明せつめいできる説せつとしてプレートテクトニクス理論りろんが提唱ていしょうされ、ヴェーゲナーの大陸たいりく移動いどうは「古ふるくて最もっとも新あたらしい地質ちしつ学がく」として再さい評価ひょうかされ、現在げんざいでは高たかく評価ひょうかされている。

日本にっぽんでの紹介しょうかい

日本にっぽんでの紹介しょうかいは戦前せんぜんからおこなわれていた。ただし、この時代じだいには「異端いたんの説せつ」という扱あつかいであった。その時期じきにこの説せつを取とり上あげたものの一ひとつに手塚てづか治虫おさむの漫画まんが『ジャングル大帝たいてい』（1950年ねん - 1954年ねん）がある。同どう作品さくひんのクライマックスは、大陸たいりく移動いどう説せつの証拠しょうことなる石いしを発見はっけんするための登山とざんであった。

その後ご、日本にっぽんでは1960年代ねんだいになって、主おもに地球ちきゅう物理ぶつり学がく系けいの学者がくしゃによって上記じょうきのマントル対流たいりゅうとともに紹介しょうかいされ、1970年代ねんだいには小学生しょうがくせい向むけの科学かがく読よみ物ものにも取とり上あげられるなど、広ひろく知しられるようになった。特とくに1973年ねんに小松こまつ左京さきょうが発表はっぴょうした小説しょうせつ『日本にっぽん沈没ちんぼつ』と同年どうねん公開こうかいのその映画えいが版ばんは、この説せつを普及ふきゅうさせる上じょうで大おおきな役割やくわりを果はたした。1980年ねん-2001年ねんには、光村みつむら図書としょ出版しゅっぱんの小学しょうがく5年生ねんせいの国語こくご教科書きょうかしょで、「大陸たいりくは動うごいている」（竹内たけうち均ひとし）、「大陸たいりくは動うごく」（大竹おおたけ政和まさかず）として掲載けいさいされた。

ただし、地球ちきゅう物理ぶつり学がく系けいの学者がくしゃと地質ちしつ学がく系けいの学者がくしゃの間あいだでこの説せつの受容じゅように差さがあり、1980年代ねんだいまでの高等こうとう学校がっこうの地学ちがくの教科書きょうかしょでは出版しゅっぱん社しゃによって扱あつかいに違ちがいがあった。日本にっぽん列島れっとうの形成けいせい史しという地球ちきゅう規模きぼではミクロに属ぞくする領域りょういきまでも大陸たいりく移動いどうとプレート説せつによる説明せつめいが日本にっぽんで定着ていちゃくしたのは、付加ふか体たい説せつが受容じゅようされた1990年ねん前後ぜんこうのことである。

参考さんこう文献ぶんけん

• ニールド, テッド『超ちょう大陸たいりく - 100億おく年ねんの地球ちきゅう史し』松浦まつうら俊輔しゅんすけ訳わけ、青土おうづち社しゃ、2008年ねん10月がつ。ISBN 978-4-7917-6442-6。 
• グリップ（編へん） 編へん『理科りかと数学すうがくの法則ほうそく・定理ていり集しゅう』アントレックス（発行はっこう）、図書印刷としょいんさつ（印刷いんさつ）、2009年ねん。ASIN B00AKQC728。 
• 佐々木ささき, ケン『漫画まんが人物じんぶつ科学かがくの歴史れきし11 ガモフ/ウェゲナー : 地球ちきゅうと宇宙うちゅう』インタラクティブ編へん、ほるぷ出版しゅっぱん、1991年ねん5月がつ。 

関連かんれん書籍しょせき

• 上田うえだ誠まこと也 『新あたらしい地球ちきゅう観かん』 岩波書店いわなみしょてん〈岩波いわなみ新書しんしょ 青あお版ばん 779〉、1971年ねん3月がつ。ISBN 978-4-00-416016-8。
• 都城みやこのじょう秋穂あいお 『科学かがく革命かくめいとは何なにか』 岩波書店いわなみしょてん、1998年ねん1月がつ。ISBN 978-4-00-005184-2。

関連かんれん項目こうもく

• 陸橋りっきょう (生物せいぶつ地理ちり)
• ヘアアイス - 1918年ねんに発見はっけんした現象げんしょう
• 地球ちきゅう科学かがく者しゃ

外部がいぶリンク

• Alfred-Wegener-Institut（アルフレート・ヴェーゲナー研究所けんきゅうじょ） （ドイツ語ご）