イヌビワ

イヌビワ
Ficus erecta （2007年ねん4月がつ30日にち、大阪おおさか府ふ）
分類ぶんるい（APG III）
界さかい : 植物しょくぶつ界かい Plantae 階級かいきゅうなし : 被子植物ひししょくぶつ angiosperms 階級かいきゅうなし : 真正しんしょう双そう子葉しよう類るい eudicots 階級かいきゅうなし : コア真正しんせい双そう子葉しよう類るい core eudicots 階級かいきゅうなし : バラ類るい rosids 階級かいきゅうなし : 真正しんしょうバラ類るいI eurosids I 目め : バラ目め Rosales 科か : クワ科か Moraceae 連れん : イチジク連れん Ficeae 属ぞく : イチジク属ぞく Ficus 種たね : イヌビワ F. erecta
学名がくめい
Ficus erecta Thunb. var. erecta (1786)
和名わみょう
イヌビワ、イタビ
変種へんしゅ・品種ひんしゅ
ケイヌビワ F. e. var. beecheyana イヌビワ F. e. var. erecta ホソバイヌビワ F. e. var. erecta f. sieboldii

イヌビワ（犬いぬ枇杷びわ、学名がくめい: Ficus erecta または Ficus erecta var. erecta）は、クワ科かイチジク属ぞくの落葉らくよう低木ていぼく。別名べつめいヤマビワ、イタビ、姫ひめ枇杷びわ。

名称めいしょう

果実かじつ（正確せいかくにはイチジク状じょう果はてという偽にせ果はての1種しゅ）がビワの実じつに似にていて食たべられるが、ビワに比くらべ不味ふみであることから「イヌビワ」の名ながある。「イヌ」は劣おとるという意味いみである。「ビワ」とついていてもビワ（バラ科か）の仲間なかまではなくイチジクの仲間なかまで、ビワとは近きん縁えん関係かんけいにはない。イチジク渡来とらい前まえの時代じだいの日本にっぽんでは、本ほん種しゅは「イチジク」とよばれていた。

分布ぶんぷ

日本にっぽんの本州ほんしゅう（関東かんとう以西いせい）・四国しこく・九州きゅうしゅう・沖縄おきなわと、韓国かんこくの済州さいしゅう島とうに分布ぶんぷする。海岸かいがんや沿海えんかいの山地さんちに自生じせいする。特とくに関東かんとう地方ちほうから沖縄おきなわまでの海岸かいがん沿ぞいの照葉樹しょうようじゅ林りんの林はやし縁ゆかりに多おおく見みられる。

なお、イチジク属ぞくのものには熱帯ねったい性せいのものが多おおく、本ほん種しゅは落葉らくよう性せいを獲得かくとくしたため、暖だん温帯おんたいまで進出しんしゅつできたものと考かんがえられる。本ほん種しゅはイチジク属ぞくの木本もくほんとしては本土ほんどで最もっとも普通ふつうに見みられるため、南西諸島なんせいしょとうなどに分布ぶんぷする同属どうぞくのものには「○○イヌビワ」という本ほん種しゅに比ひした名なを持もつものが多おおい。

形態けいたい・生態せいたい

落葉らくよう広葉樹こうようじゅの低木ていぼくで、高たかさは5メートル (m) くらいまでになる。樹皮じゅひを傷きずつけると、イチジクと同様どうように乳白色にゅうはくしょくの樹液じゅえきが出でる。

葉はは狭せまい倒卵形とうらんけいから長ちょう楕円だえん形がた、基部きぶは少すこし心しん形がたか丸まるまる。葉は質しつは薄うすくて草くさ質しつ、表面ひょうめんは滑なめらかかあるいは短みじかい毛もうが立たっていてざらつく。変異へんいが多おおく、海岸かいがん沿ぞいでは厚あつい葉はのものも見みることがある。ごく幅はばの狭せまい葉はをつけるものをホソバイヌビワ (var. sieboldii (Miq.) King)、葉は面めんに毛けの多おおいものをケイヌビワ (var. beecheyana (Hook. et Arn.) King) というが、中間ちゅうかん的てきなものもある。葉は縁えんに鋸歯きょしはない。秋あきには紅葉こうようし、鮮あざやかな黄色おうしょくや橙色だいだいいろに染そまり、常緑樹じょうりょくじゅ林りんの中なかでよく目立めだつ。

花期かきは晩春ばんしゅん（4 - 5月がつごろ）で、雌雄しゆう異い株かぶ。葉はの付つけ根ねについた花はな嚢（かのう）は、秋あきに赤色あかいろから黒くろ紫色むらさきいろへと変化へんかして果はて嚢（かのう）となる。イチジクを小ちいさくしたような形かたちの実みをつける。

果はて嚢は9月がつ末まつ - 10月がつごろに完熟かんじゅくし、見みた目めは小ちいさなイチジク様さまで、直径ちょっけい10 - 13ミリメートル (mm) 、白しろい粉こなを吹ふいたような濃紫こむらさき青色あおいろとなる。果はて嚢は甘あまく、食用しょくようになる。

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  樹皮じゅひ
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  葉は
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  花はな嚢
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  果はて嚢

蜂はちとの共生きょうせい

イヌビワの花序かじょには、他たの多おおくのイチジク属ぞく植物しょくぶつと同様どうように、イチジクコバチ科かのハチ（イヌビワコバチ）が寄生きせいする。雄花おばな序じょの奥おく側がわには雌花めばなに似にた「虫むしえい花はな」（花はな柱ばしらが短みじかく、不ふ妊にん）があり、これにハチが産卵さんらんする。幼虫ようちゅうは虫むしえい花はなの子房しぼうが成熟せいじゅくして果実かじつ状じょうになるとそれを食たべ、成虫せいちゅうになる。初夏しょかになると雌めす成虫せいちゅうは外そとに出でるが、雄お成虫せいちゅうは花序かじょの中なかで雌めす成虫せいちゅうと交尾こうびするだけで一生いっしょうを終おえる。雌めす成虫せいちゅうは雄花おばな序じょの出口でぐち付近ふきんにある雄花おばなから花粉かふんを受うけ、この頃ころ（初夏しょか）に開花かいかする雌花めばな序じょに入はいった際さいには授粉をするが、ここでは子孫しそんを残のこせず、雄花おばな序じょに入はいったものだけが産卵さんらんし、翌年よくねん春はるにこれが幼虫ようちゅうになる。このように、イヌビワの授粉には寄生きせい蜂はちが必要ひつようであり、イヌビワと寄生きせい蜂はちは共生きょうせいしているということができる。

他たに、イシガケチョウの食しょく草そうとしても知しられる。

参考さんこう文献ぶんけん

• 亀田かめだ龍吉りゅうきち『落おち葉ばの呼よび名な事典じてん』世界文化社せかいぶんかしゃ、2014年ねん10月がつ5日にち。ISBN 978-4-418-14424-2。 
• 林はやし将之まさゆき『紅葉こうようハンドブック』文ぶん一いち総合そうごう出版しゅっぱん、2008年ねん9月がつ27日にち。ISBN 978-4-8299-0187-8。 
• 平野ひらの隆久たかひさ監修かんしゅう 永岡書店ながおかしょてん編へん『樹木じゅもくガイドブック』永岡書店ながおかしょてん、1997年ねん5月がつ10日とおか、236頁ぺーじ。ISBN 4-522-21557-6。 

• 茂木もき透とおる写真しゃしん『樹きに咲さく花はな 離はなれ弁べん花はな1』高橋たかはし秀男ひでお・勝山かつやま輝男てるお監修かんしゅう、山やまと溪谷社けいこくしゃ〈山やま溪けいハンディ図鑑ずかん〉、2000年ねん、338-339頁ぺーじ。ISBN 4-635-07003-4。 
• 林はやし将之まさゆき『樹木じゅもくの葉は : 実物じつぶつスキャンで見分みわける1100種類しゅるい : 画像がぞう検索けんさく』山やまと溪谷社けいこくしゃ〈山やま溪けいハンディ図鑑ずかん〉、2014年ねん、323頁ぺーじ。ISBN 978-4-635-07032-4。 

関連かんれん項目こうもく

• 木きの一覧いちらん
• 救荒きゅうこう植物しょくぶつ

外部がいぶリンク

• "Ficus erecta Thunb". Germplasm Resources Information Network (GRIN). Agricultural Research Service (ARS), United States Department of Agriculture (USDA). 2014年ねん8月がつ7日にち閲覧えつらん。 （英語えいご）
• "Ficus erecta". National Center for Biotechnology Information（NCBI） (英語えいご). （英語えいご）
• "Ficus erecta" - Encyclopedia of Life （英語えいご）
• 波田なみた善夫よしお. “イヌビワ”. 植物しょくぶつ雑学ざつがく事典じてん. 岡山理科大学おかやまりかだいがく生物せいぶつ地球ちきゅう学部がくぶ. 2014年ねん8月がつ7日にち閲覧えつらん。
• 福原ふくはら達人たつひと. “イヌビワ(クワ科かイチジク属ぞく)”. 植物しょくぶつ形態けいたい学がく. 福岡教育大学ふくおかきょういくだいがく教育きょういく学部がくぶ. 2014年ねん8月がつ7日にち閲覧えつらん。