ちょう音波おんぱ検査けんさ

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エコー検査けんさから転送てんそう
医療いりょうようちょう音波おんぱ検査けんさ装置そうち(TOSHIBA SSA-270A)

ちょう音波おんぱ検査けんさ(ちょうおんぱけんさ、英語えいご: ultrasonography, US echo)とは、ちょう音波おんぱ対象たいしょうぶつててその反響はんきょう映像えいぞうする画像がぞう検査けんさほうである。一般いっぱんに「エコー検査けんさ」、りゃくして「エコー」とだけばれることがおお[1]ちょう音波おんぱ検査けんさおかせかさねてき検査けんさ手法しゅほうであるほかに、X線画せんがぞう検査けんさなどとはちがってちょう音波おんぱ検査けんさには被曝ひばく心配しんぱいがないため、放射線ほうしゃせん管理かんり不要ふようなので装置そうちさえ用意よういすれば病室びょうしつでもおこなえるうえに、えて検査けんさなんかいおこなっても問題もんだいないこともあり医療いりょう分野ぶんやひろ利用りようされている。また近年きんねん金属きんぞく材料ざいりょうなどを対象たいしょうとして、レーザーもちいてちょう音波おんぱ励起れいき計測けいそくするレーザーちょう音波おんぱ計測けいそくおこなわれる。肝臓かんぞう胆嚢たんのう膵臓すいぞう腎臓じんぞう脾臓ひぞう心臓しんぞう甲状腺こうじょうせん乳腺にゅうせん下肢かし血管けっかんおも検査けんさ対象たいしょうとするが、医師いし判断はんだんで、ちょう膀胱ぼうこうなどの検査けんさおこなわれる[1]肝臓かんぞうがんにゅうがんなどでは、りゅう目的もくてきで、造影ぞうえいざい使用しようしてちょう音波おんぱ検査けんさおこなうこともある[2]本稿ほんこうでは、おも医療いりょうようちょう音波おんぱ検査けんさについて記述きじゅつする。

原理げんり[編集へんしゅう]

対象たいしょうぶつさがせさわててちょう音波おんぱ発生はっせいさせ、反射はんしゃしたちょう音波おんぱ受信じゅしんし、画像がぞうデータとして処理しょりする。ちょう音波おんぱ発生はっせいさせると、ごくみじか時間じかんのうちに、そのおと対象たいしょうぶつなかすすんでいき、ほねなどのかた組織そしきたるとだい部分ぶぶん反射はんしゃする [注釈ちゅうしゃく 1] 。また、組織そしき境界きょうかいのように性状せいじょうわる場所ばしょでも一部いちぶ反射はんしゃしたり、散乱さんらんこる。そのからだひょうまでもどってきたちょう音波おんぱ検知けんちする。このときちょう音波おんぱ発生はっせいさせてから、そのちょう音波おんぱからだひょうまでもどってきた時間じかん計測けいそくすることで、からだひょうからの反射はんしゃきた場所ばしょまでの距離きょりることができる。なぜなら、音速おんそくをv、ちょう音波おんぱ反射はんしゃてんまでの距離きょりをLとすると、組織そしきちゅう音速おんそく一定いってい仮定かていした場合ばあい [注釈ちゅうしゃく 2]からだひょうまでちょう音波おんぱもどってくるのにかかる時間じかんtは、

あらわせるので、

もとまるからである。基本きほんてきには、これを利用りようして生体せいたい内部ないぶ様子ようす可視かしする。

ただし、ちょう音波おんぱさがせさわから放射ほうしゃされると、ちょう音波おんぱ減衰げんすいしてゆくので、ある程度ていどつよさのちょう音波おんぱ必要ひつようとする。しかしながら、ちょう音波おんぱつよさをぎると、ちょう音波おんぱ減衰げんすいするときねつすため、このねつによって生体せいたい打撃だげきあたえる可能かのうせいがある。そして、やく10 (W/cm)のつよさだと、ちょう音波おんぱのエネルギーそのものによって細胞さいぼうそのものを破壊はかいする [3] 。 したがって、使つかえるちょう音波おんぱつよさには上限じょうげん存在そんざいする。なお、やく0.1 (W/cm)程度ていどつよさまでのちょう音波おんぱであれば、ちょう音波おんぱによる加熱かねつ作用さよう問題もんだいないとされる [3]

また、りゅうのようにうごきのあるものたいしてはドップラー効果こうか利用りようして、うごいている方向ほうこう調しらべることもおこなわれる。これを利用りようして、たとえば、心臓しんぞうはくりょう調しらべたり、りゅう逆流ぎゃくりゅういかを調しらべたりすることができる。

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

基本きほんてきちょう音波おんぱ液体えきたい固体こたいがよくつたわり、気体きたいつたわりにくい。そのため、液状えきじょう成分せいぶんや軟体の描出びょうしゅつすぐれており、実質じっしつ臓器ぞうき描出びょうしゅつのうたかく、はい消化しょうかかん描出びょうしゅつのうひくい。また、ほね表面ひょうめんでの反射はんしゃつよほね表面ひょうめんなどの観察かんさつまる。

さがせさわ種類しゅるい[編集へんしゅう]

ひだりはセクタがた中央ちゅうおうがリニアがたみぎがコンベックスがたさがせさわ先端せんたんと、Bモードにおいてちょう音波おんぱビームが発射はっしゃされる方向ほうこうのイメージ。

開発かいはつ当初とうしょのエコー検査けんさでは、音波おんぱ一方向いちほうこうのみに発射はっしゃするだけのものであったが、その改良かいりょうされ、扇状せんじょう音波おんぱ発生はっせいすることで、対象たいしょうぶつ断面だんめん画像がぞうがリアルタイムにられるようになっている。

Linearがた(リニアがた
からだひょう接触せっしょくさせるちょう音波おんぱのビームを発射はっしゃする部分ぶぶん平面へいめんである。ここから、その平面へいめんたいして垂直すいちょく方向ほうこうのビームを、なんほん発生はっせいさせる。つまり、ちょう音波おんぱビームの発射はっしゃてんを、平面へいめんじょうにおいてくまなく移動いどうさせる方法ほうほう走査そうさしている。よって、すべてのちょう音波おんぱビームは平行へいこうである。したがって、とくにSectorがたくらべると、からだひょうちか部分ぶぶんでは広範囲こうはんいちょう音波おんぱビームをてられる。このため、おもからだひょうちか部分ぶぶん位置いちする組織そしき検査けんさもちいられ、たとえば、からだひょうちかくの血管けっかん筋肉きんにく乳腺にゅうせん甲状腺こうじょうせんなどをるのにく。
Sectorがた(セクタがた
からだひょう接触せっしょくさせるちょう音波おんぱのビームを発射はっしゃする部分ぶぶんは、Linearがたなどとくらべてせまちいさい。この接触せっしょく部分ぶぶんの1てんからちょう音波おんぱビームを発射はっしゃする。そして、ちょう音波おんぱビームは角度かくどえて次々つぎつぎ放射ほうしゃされる。つまり、ちょう音波おんぱビームを発射はっしゃする角度かくどえる方法ほうほう走査そうさしている。よって、いずれのちょう音波おんぱビームも平行へいこうではない。したがって、からだひょうちか部分ぶぶんせま範囲はんいにしかちょう音波おんぱビームをてられないのにたいし、からだひょうからとお部分ぶぶんではひろ範囲はんいちょう音波おんぱビームをてられる。また、Linearがたとはちがって、Sectorがたならばちょう音波おんぱビームがはいってゆく場所ばしょせまくても問題もんだいがない。ちょう音波おんぱほねたると、そこで反射はんしゃしてからだひょうもどってきてしまうものの、Sectorがたなら、肋骨あばらぼねあいだから、そのこうがわへとちょう音波おんぱビームを放射ほうしゃすることも容易よういである。このため、たとえば肋骨あばらぼねかこまれた胸腔きょうこうない臓器ぞうき標的ひょうてきとしたちょう音波おんぱ検査けんさたとえば心臓しんぞうちょう音波おんぱ検査けんさなどにもちいられる。なお、産婦人科さんふじんかもちいられるけいちつちょう音波おんぱ検査けんさ英語えいごばんも、ちょう音波おんぱビームの発射はっしゃ部分ぶぶん、つまり、さがせさわはSectorがたのようにちいさくする必要ひつようてくる。
Convexがた(コンベックスがた
からだひょう接触せっしょくさせるちょう音波おんぱのビームを発射はっしゃする部分ぶぶんは、ゆるやかな凸面とつめんである。このため、Linearがたくらべて、凹凸おうとつのあるからだひょうにも密着みっちゃくさせやすい。しかも、接触せっしょくめんがさほどひろくなくとも、からだひょうからはなれるにつれてちょう音波おんぱビームがひろがってゆくので、からだひょうからとお部分ぶぶんではひろ範囲はんいちょう音波おんぱビームをてられる。このため、おもからだひょうからの腹部ふくぶちょう音波おんぱ検査けんさもちいられる。

画像がぞう種類しゅるい[編集へんしゅう]

29しゅう胎児たいじ頭部とうぶ3Dした画像がぞう

おもに、以下いか画像がぞうモードがある。

Aモード[編集へんしゅう]

受信じゅしんしたエコーを表現ひょうげんするための方法ほうほうはいくつかあるが、A(amplitude:振幅しんぷく)モードとB(brightness:輝度きど)モードが基本きほんとなっている。ちょう音波おんぱ直進ちょくしんせいすぐれており、音響おんきょうインピーダンスのことなった物質ぶっしつあいだ境界きょうかいめん反射はんしゃがおこり、受信じゅしんするまでの時間じかんもと物質ぶっしつまでの位置いち計算けいさんすることが出来できる。 物質ぶっしつまでの距離きょりよこじくにとり、反射はんしゃしたエコーの振幅しんぷくたてじくにとったグラフがAモードぞうである。原理げんりとしては重要じゅうようであるが、Aモードは実際じっさい検査けんさには、あまりもちいられない。

Bモード[編集へんしゅう]

Aモードではエコーの振幅しんぷく位置いち表示ひょうじしていたが、この振幅しんぷくてんあかるさ(輝度きど)として表示ひょうじしたものがBモードである。1ほんちょう音波おんぱビームでは、いち次元じげんぞうしかられないが、複数ふくすうちょう音波おんぱビームを発生はっせいさせると次元じげんぞう作成さくせいすることが出来できる。たんちょう音波おんぱ断層だんそう検査けんさった場合ばあいにはBモードをすことがおおい。

Mモード[編集へんしゅう]

M(Motion:うごき)モードとは、断面だんめんじょうのさらにある一直線いっちょくせんじょう注目ちゅうもくし、そこでの音波おんぱ反射はんしゃ経時きょうじ変化へんか画像がぞうする検査けんさである。心臓しんぞうべん心筋しんきんうごきなど、うごきのある部位ぶいとき系列けいれつ観察かんさつできるため、ドップラーエコーと同様どうようしんエコーでの有用ゆうようせいたかい。

カラードップラー[編集へんしゅう]

ドップラー効果こうかによって、反射はんしゃした音波おんぱ周波数しゅうはすう変化へんかすることを利用りようして、物体ぶったいがプローブにちかづいているのかとおざかっているのかを判定はんてい画像がぞう評価ひょうかできる。

ドップラーには、特定とくてい位置いちちょう音波おんぱビームの周波数しゅうはすう変化へんか流速りゅうそく変換へんかんしグラフするドップラーモードと、Bモード画像がぞうじょう指定していした領域りょういきでの流速りゅうそく変化へんかいろ表現ひょうげんするカラードップラーモードがある。とくしんエコーで、心臓しんぞうりゅう評価ひょうかするさい有用ゆうようである。

カラードップラーでは、「あか方偏かたへんうつり」「あお方偏かたへんうつり」がそれぞれ「とおざかる」「ちかづく」場合ばあいのドップラーシフトにたるが、医療いりょうよう機器ききではぎゃくに「ちかづく」「とおざかる」を表示ひょうじしている。

パワードップラー[編集へんしゅう]

カラードップラーに比較ひかくして感度かんどたかい。一方いっぽう、フレームレートはち、分解能ぶんかいのうちる。

ワイドバンドドップラー[編集へんしゅう]

Bモードみの分解能ぶんかいのうとフレームレートをゆうする表示ひょうじ方法ほうほう。 メーカーにより名称めいしょうことなる。

検査けんさ種類しゅるい[編集へんしゅう]

新生児しんせいじをエコー検査けんさする様子ようす

ちょう音波おんぱつたわりやすいように、からだ表面ひょうめん検査けんさようゼリーり、ちょう音波おんぱ器械きかいであるプローブをあてて検査けんさおこなう。食事しょくじをすると臓器ぞうきえなくなるため飲食いんしょく禁止きんし[1]

おも以下いかのような検査けんさ種類しゅるいがある。

腹部ふくぶちょう音波おんぱ検査けんさ[編集へんしゅう]

からだひょうよりアプローチし、肝臓かんぞう胆嚢たんのう膵臓すいぞう脾臓ひぞう腎臓じんぞう子宮しきゅう卵巣らんそう前立腺ぜんりつせんひとし腹部ふくぶ実質じっしつ臓器ぞうき妊娠にんしんなか胎児たいじ評価ひょうかおこなう。また、大腸だいちょう虫垂ちゅうすいひとし描写びょうしゃにももちいられる。ただ、子宮しきゅう卵巣らんそう前立腺ぜんりつせんひとしからだひょう腹部ふくぶちょう音波おんぱ検査けんさよりもけいちつけい肛門こうもんちょう音波おんぱ検査けんさからの描出びょうしゅつほうすぐれている。

心臓しんぞうちょう音波おんぱ検査けんさ[編集へんしゅう]

からだひょうよりアプローチし、心臓しんぞうだい血管けっかん評価ひょうかおこなう。こころ腔内にかんしてはからだひょう心臓しんぞうちょう音波おんぱ検査けんさよりもけい食道しょくどう心臓しんぞうちょう音波おんぱ検査けんさからの描出びょうしゅつほうすぐれている。

頸部ちょう音波おんぱ検査けんさ[編集へんしゅう]

からだひょうよりアプローチし、頚部けいぶ甲状腺こうじょうせんふく甲状腺こうじょうせん頸動みゃく・頸静脈じょうみゃく評価ひょうかおこなう。

乳房ちぶさちょう音波おんぱ検査けんさ[編集へんしゅう]

からだひょうよりアプローチし、乳房ちぶさ評価ひょうかおこなう。

血管けっかんちょう音波おんぱ検査けんさ[編集へんしゅう]

からだひょうよりアプローチし、腹腔ふくこうない大動脈だいどうみゃくだい静脈じょうみゃく上肢じょうし下肢かし動脈どうみゃく静脈じょうみゃく評価ひょうかおこなう。

けいちつちょう音波おんぱ検査けんさ[編集へんしゅう]

ちつうちよりアプローチし、子宮しきゅう卵巣らんそうひとし女性じょせい評価ひょうかおこなう。

運動うんどうちょう音波おんぱ検査けんさ[編集へんしゅう]

からだひょうよりアプローチして「すじ」「けん」などの形態けいたい診断しんだん機能きのう診断しんだんおこなう。

ちょう音波おんぱ内視鏡ないしきょう検査けんさ[編集へんしゅう]

軟性なんせいかんもちいて上部じょうぶ消化しょうかかん気管支きかんしの腔内よりアプローチし、かんかべ周囲しゅうい臓器ぞうき評価ひょうかおこなう。

そのちょう音波おんぱ検査けんさ[編集へんしゅう]

FAST(Focused Assessment with Sonography for Trauma)
外傷がいしょう患者かんじゃ場合ばあい致死ちしてき臓器ぞうき損傷そんしょう有無うむ即座そくざ評価ひょうかするための迅速じんそくちょう音波おんぱ検査けんさ方法ほうほう名称めいしょう。これはしん嚢、左右さゆう肋間ろっかんモリソン窩ダグラス窩脾臓ひぞう周囲しゅういの6かしょをすばやくちょう音波おんぱ検査けんさ施行しこうし、腹腔ふくこうない出血しゅっけつがないことを確認かくにんすることである。出血しゅっけつ所見しょけんにより点数てんすう開腹かいふく手術しゅじゅつ必要ひつようせい評価ひょうかできる。

ちょう音波おんぱ装置そうちもちいた治療ちりょう[編集へんしゅう]

ちょう音波おんぱ装置そうちもちいた治療ちりょうとして集束しゅうそくちょう音波おんぱドラッグデリバリーシステム(DDS)にかんしてべる。

集束しゅうそくちょう音波おんぱ[編集へんしゅう]

強力きょうりょく集束しゅうそくちょう音波おんぱ(High-Intensity Focused Ultrasound、HIFU)装置そうち標的ひょうてき部位ぶい体外たいがいからピンポイントにちょう音波おんぱのエネルギーを集束しゅうそくできる装置そうちであり前立腺ぜんりつせんがん子宮しきゅう筋腫きんしゅ乳癌にゅうがんたいするていおかせかさね治療ちりょうほうとして利用りようされている[4]。これは強力きょうりょくちょう音波おんぱがん集中しゅうちゅうさせることで焦点しょうてん部分ぶぶん温度おんどを80ちかくにねっすることでがん細胞さいぼう凝固ぎょうこさせる治療ちりょうほうである。本態ほんたいせいせんではMRIガイドけい頭蓋とうがいてきのうない視床ししょう腹中ふくちゅうあいだかく(Vimかく)にHIFUを照射しょうしゃ凝固ぎょうこさせる治療ちりょうほうが2019ねんより保険ほけん診療しんりょう可能かのうとなっている。ちょう音波おんぱには照射しょうしゃ部位ぶい振動しんどうさせたりする機械きかいてき作用さよう加熱かねつなどをこすねつてき作用さようがある。これらはちょう音波おんぱ周波数しゅうはすう強度きょうどにより変化へんかするものの、照射しょうしゃ強度きょうどたかくしていくと機械きかいてき作用さようねつてき作用さよう増大ぞうだいしていく。この機械きかいてき作用さようねつてき作用さよう利用りようして、HIFUで特定とくてい部位ぶい凝固ぎょうこさせることが可能かのうとなる。

血液けつえきのう関門かんもん通過つうかするDDS[編集へんしゅう]

集束しゅうそくちょう音波おんぱちょう音波おんぱ照射しょうしゃエネルギーを徐々じょじょげていくとねつてき作用さよう低下ていかして機械きかいてき作用さようのみを利用りようすることができる。この機会きかいてき作用さようによる組織そしき振動しんどうは、組織そしきない毛細血管もうさいけっかん密着みっちゃく結合けつごうゆるめることで血管けっかん透過とうかせい亢進こうしんみちびく。そのため集束しゅうそくちょう音波おんぱもちいて血液けつえきのう関門かんもん透過とうかせい亢進こうしんさせ、治療ちりょうやくのう送達そうたつさせる方法ほうほうかんがえられた。ちょう音波おんぱ照射しょうしゃのみで血管けっかん透過とうかせい亢進こうしんさせるためにはちょう音波おんぱ照射しょうしゃ強度きょうどたかくなり組織そしき障害しょうがいのリスクがたかまる[5]事実じじつ、1990ねん報告ほうこくでは血液けつえきのう関門かんもん透過とうかせい十分じゅうぶんたかめるには頭蓋骨ずがいこつ切除せつじょ必要ひつようであった[6]ちょう音波おんぱ造影ぞうえいざいとして利用りようされるマイクロバブル併用へいようすると比較的ひかくてきひくちょう音波おんぱ強度きょうどちょう音波おんぱ機械きかいてき作用さよう増強ぞうきょうさせることができる[7]

マイクロバブルにちょう音波おんぱ照射しょうしゃすると振動しんどう(オシレーション)とあつ壊(キャビテーション)が誘導ゆうどうされる。マイクロバブルの振動しんどうあつ壊は細胞さいぼうまく作用さよう一過いっかせいしょうあな形成けいせいし、細胞さいぼうがい物質ぶっしつ細胞さいぼうないまれることがられている。この作用さようをソノポレーションという。マイクロバブルを血管けっかんない投与とうよ体外たいがいからちょう音波おんぱ照射しょうしゃすると組織そしき血管けっかんないでマイクロバブルの振動しんどうあつ壊が誘導ゆうどうされ、周囲しゅうい血管けっかん内皮ないひ細胞さいぼうあいだ密着みっちゃく結合けつごう作用さようして血管けっかん透過とうかせい変化へんかさせることができるのではないかとかんがえられている[8][9] [10][11]血液けつえきのう関門かんもん透過とうかせい亢進こうしん持続じぞく時間じかん数時間すうじかん可逆かぎゃくてきかんがえられている[12]代表だいひょうてき研究けんきゅうとして下記かきのようなものがげられる。集束しゅうそくちょう音波おんぱ血液けつえきのう関門かんもん作用さようさせ、乳癌にゅうがん治療ちりょうやく抗体こうたい医薬いやくであるハーセプチンのうない移行いこうさせたという研究けんきゅうられている[13]脳腫瘍のうしゅよう患者かんじゃ集束しゅうそくちょう音波おんぱとマイクロバブルをもちいて抗癌剤こうがんざいドキソルビシンリポソームやテモゾロミド脳腫瘍のうしゅよう送達そうたつさせた報告ほうこくがある[14]一方いっぽう集束しゅうそくちょう音波おんぱとマイクロバブルの併用へいよう無菌むきんせい炎症えんしょうこすという報告ほうこくもあり副作用ふくさよう懸念けねんされる[15]

細胞さいぼうまく通過つうかするDDS[編集へんしゅう]

治療ちりょうようちょう音波おんぱとマイクロバブルを併用へいようして細胞さいぼうがい薬物やくぶつ遺伝子いでんし細胞さいぼうない導入どうにゅうさせることができる[16][17]

医療いりょう以外いがいでのちょう音波おんぱ検査けんさ[編集へんしゅう]

対象たいしょうぶつ破壊はかいせずに、構造こうぞう内部ないぶ評価ひょうかおこなえる非破壊ひはかい検査けんさとして、ひろ利用りようされている。またその検査けんさ方法ほうほうにおいて、ちょう音波おんぱさがせきず試験しけんSAT試験しけんの2つに大別たいべつされる。

ちょう音波おんぱさがせきず試験しけん[編集へんしゅう]

英語えいご: Ultrasonic Testing, UT とは、対象たいしょう直接ちょくせつさがせさわ評価ひょうかおこな方法ほうほうてつ鋼構造物こうこうぞうぶつ電力でんりょく化学かがくプラントなどにおいて構造こうぞうぶつ内部ないぶ欠陥けっかんげんにく調査ちょうさ目的もくてき使用しようされる。製作せいさく経年けいねん変化へんかをチェックする場合ばあいがあり、たとえば建設けんせつぶつ欠陥けっかん老朽ろうきゅう測定そくていしたり、材料ざいりょう部品ぶひん内部ないぶ検査けんさおこなったりする目的もくてきで、ちょう音波おんぱ検査けんさ実用じつようされている。日本にっぽんでは社団しゃだん法人ほうじん破壊はかい検査けんさ協会きょうかいが、認定にんてい技術ぎじゅつしゃ資格しかく発効はっこうしている。鉄骨てっこつかんしては、通称つうしょうぜんはがねれん」の資格しかくもとめられることがおおい。

SAT試験しけん[編集へんしゅう]

英語えいご: Scanning Acoustic Tomograph, SAT とは、みずなどを媒体ばいたいとして対象たいしょう映像えいぞうする方法ほうほうさがせさわから対象たいしょうみず媒体ばいたいとしてちょう音波おんぱ発振はっしんし、その反射はんしゃもしくは透過とうか強弱きょうじゃくにて内部ないぶ構造こうぞう映像えいぞうする。金属きんぞく鋼材こうざい接合せつごう半導体はんどうたいパッケージウェハーなどの検査けんさ使用しようされている[18][19]

トピックス[編集へんしゅう]

リピッドバブル

帝京大学ていきょうだいがく丸山まるやまらのグループはちゅう安定あんていせい滞留たいりゅうせいすぐれたポリエチレングリコール(PEG)修飾しゅうしょくリポソーム眼科がんか領域りょういき使用しようされているない長期ちょうき滞留たいりゅうガス(パーフルオロプロパン)を封入ふうにゅうしたバブル製剤せいざい、リピッドバブルを開発かいはつした[20][21]。リピッドバブルはもともとソノポレーションによる遺伝子いでんし核酸かくさん導入どうにゅうツールとしての有効ゆうこうせい報告ほうこくされている。丸山まるやまらはリピッドバブルと強力きょうりょく集束しゅうそくちょう音波おんぱ併用へいよう静脈じょうみゃく投与とうよされたエバンスブルーがのうない蓄積ちくせきすることが報告ほうこくした[22]。これは分子ぶんしりょう67000程度ていど物質ぶっしつ血液けつえきのう関門かんもん通過つうかすることを意味いみする。この血液けつえきのう関門かんもん透過とうかさせる効果こうか一過いっかせいであった。蛍光けいこう標識ひょうしきしたデキストランもちいると2000kDaの分子ぶんしまで透過とうか可能かのうである。のうへのさらなる導入どうにゅう効率こうりつ目指めざし、LRP1にたいするたか親和しんわせいゆうするペプチド配列はいれつであるAngiopep-2ペプチド[23]をリピッドバブル表面ひょうめん修飾しゅうしょくペプチドとしてもちいるこころみもおこなわれている[24]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ ただしほねかこまれた部分ぶぶんへのからだひょうからのちょう音波おんぱ検査けんさ不可能ふかのうというわけではない。たとえば、けい頭蓋とうがいちょう音波おんぱ検査けんさって、頭皮とうひうえからさがせさわてて、のう様子ようすさぐちょう音波おんぱ検査けんさ存在そんざいする。Transcranial Dopplerなど、いくつか種類しゅるいがある。
  2. ^ 参考さんこうまでに、ヒトの組織そしきつたわる音速おんそく組織そしきによってことなるものの、だいたい水中すいちゅうつたわる音速おんそくちかく、おおよそ1500 (m/びょう)前後ぜんこうである部分ぶぶんおおい。音速おんそくおおきくことなる場所ばしょは、ほね気体きたいまっている場所ばしょである。なお、音速おんそくは、ほねでははやく、気体きたいまっている部分ぶぶんではおそい。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c ちょう音波おんぱ(エコー)検査けんさ”. 日本赤十字社にほんせきじゅうじしゃ愛知あいち医療いりょうセンター名古屋なごやだいいち病院びょういん. 2024ねん3がつ19にち閲覧えつらん
  2. ^ がんの検査けんさについて ちょう音波おんぱ(エコー)検査けんさとは”. がん情報じょうほうサービス. 2024ねん3がつ19にち閲覧えつらん
  3. ^ a b ME技術ぎじゅつ教育きょういく委員いいんかい 監修かんしゅう 『MEの基礎きそ知識ちしき安全あんぜん管理かんり改訂かいていだい4はん)』 p.60 南江堂なんこうどう 2002ねん4がつ20日はつか発行はっこう ISBN 4-524-22408-4
  4. ^ 鈴木すずきあきら, 小俣おまた大樹だいき, ウンガ・ヨハン ほか, 「ちょう音波おんぱとマイクロバブルによる血管けっかん透過とうかせい亢進こうしんもとづくEPR効果こうか促進そくしんへの期待きたい」『Drug Delivery System』 33かん 2ごう 2018ねん p.115-122, doi:10.2745/dds.33.115
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外部がいぶリンク[編集へんしゅう]