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オウシュウトウヒ(欧州唐檜、学名: Picea abies)は、マツ科トウヒ属の針葉樹。ヨーロッパ原産で、標準和名はドイツトウヒ[2]、別名でヨーロッパトウヒ、ドイツマツ。樹高は50メートルのもなる高木であるが、クリスマスツリーに使われたり、材はバイオリンの響板に利用される。
分布・生育地[編集]
ヨーロッパ原産。北はノルウェーから南はバルカン半島まで、ヨーロッパ全土に分布する。アルプスなどの山岳地帯や、スカンジナビア半島の北方針葉樹林の主要樹種である。日当たりを好み、乾燥を嫌う。日本では、公園や庭園に植えられている。
日本語ではドイツトウヒと呼ばれることがあるが、自然分布としては、ドイツではシュヴァルツヴァルトなど南部の標高の高い一部地域に分布するに過ぎず、英語名Norway Spruceが示す通り、本種の本来の分布の中心は、東ヨーロッパおよび北ヨーロッパにある[7]。ドイツにおけるものは、ほとんどが人為的に植林されたものである。
常緑針葉樹の高木で、高さ50メートル (m) 、直径2 mに達することがある。樹形は円錐形となる。葉はらせん状に互生し、黒緑色で光沢があり、長さ2センチメートル (cm) ほどの先端が尖ったやや硬めの針状葉が密につく。花期は4 - 5月ごろ。果期は10月ごろで、枝先に長さ10 - 20 cmにもなる独特の球果(コーン、松笠)が下向きにぶら下がってつく。初めは緑色であるが、のちに紅色を帯びて見た目に美しい。
10 mを超える高さになると小枝が下側に垂れ下がるようになり、独特の外観となる。生育は容易であるが、酸性雨や排気ガスには弱く、公害の深刻な地域では枯死することがある。寒冷への耐性があり、土壌は選ばない。防風林などにも適しているが、根張りが強くないために強風で倒れてしまうことがある。
2008年、スウェーデン・ウメオ大学レイフ・クルマン(Leif Kullman)教授らのチームが、同国ダラルナ(Dalarna)地方で発見されたオウシュウトウヒの樹齢(正確には根の部分の年齢)を約9,550年とする報告を発表した。これは現在確認されている中では世界最長の樹齢である。
モミの木などとともにクリスマスツリーとしてもよく使われるが、若木のうちはモミの木と区別が困難である。深根性のモミの木に対して、本種は浅根性で移植に対して耐性がある。成長が早く、そのため苗木は安価で流通している。また庭木としては大きくなりすぎるために不向きである。鳩時計の重りは、オウシュウトウヒの球果を模したものである。
北海道では鉄道の防雪林として植えられたところもあり、北海道帝国大学教授の新島善直は、1905年(明治38年)からドイツで林学を学んだ折りにオウシュウトウヒに目をつけ、苗木を持ち帰って北大植物園に植え、その生育を確かめた上で鉄道防雪林として推奨した。以来、国鉄時代に営々と鉄道防雪林として植えられていった。
材木は、全体的に白色〜淡い黄白色で、辺心材の境目は明瞭ではない。木理はほぼ通直、肌目も緻密で光沢を持つ。やや軽軟で加工性がよく、乾燥による収縮も小さく狂いも少ない。スプルース類の代替材として利用され、建築材、ヴァイオリンやピアノ、ギターなどの響板(表板)などの楽器用に使われる。ストラディバリが制作したバイオリン(ストラディバリウス)の響板はオウシュウトウヒが使われている。バイオリンの響板用木材に求められる性質は、軽くて腰が強く、振動が長く続くことであり、それら条件を満たすことができた比較的高地で生育した年輪幅の小さいオウシュウトウヒが優良材となった。
耐朽性は悪く、腐りやすい。そのために集成材の原料として使われることが多い。また、近年では木肌が白くて美しく、木特有の匂いも少ないことから、蒲鉾板や棺おけ、卒塔婆の材料として日本に輸出されている。
- ^ Conifer Specialist Group 1998. Picea abies. In: IUCN 2010. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2010.4.
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Picea abies (L.) H.Karst. ドイツトウヒ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年4月27日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Picea excelsa Link ドイツトウヒ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年4月27日閲覧。
- ^ http://www.euforgen.org/fileadmin/templates/euforgen.org/upload/Documents/Maps/JPG/Picea_abies.jpg
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