(Translated by https://www.hiragana.jp/)
球果 - Wikipedia コンテンツにスキップ

たまはて

この記事は良質な記事に選ばれています
出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ドイツトウヒ Picea abiesマツ)のめすせいだまはて
ポンデローサマツ Pinus ponderosaマツ)のゆうせいだまはて

たまはて(きゅうか、かさはて[1][2][3][4][5]cone[6][2][4])は、裸子植物らししょくぶつ針葉樹しんようじゅるい形成けいせいする胞子ほうし嚢穂生殖せいしょく器官きかん)である[7]。「はて」と表現ひょうげんされるが、厳密げんみつには果実かじつではない[8][9][10][注釈ちゅうしゃく 1]英語えいご cone円錐えんすい意味いみする単語たんごであるが、はじ矢田部やたべ良吉りょうきちにより「かさはて」とやくされ、のちに「たまはて」としてひろまった[1]

針葉樹しんようじゅるいたまはてたんせい胞子ほうし嚢性であり、花粉かふんしょうじるしょう胞子ほうし嚢性のゆうせいだまはて種子しゅししょうじるだい胞子ほうし嚢性のめすせいだまはてけられる[7]ゆうせいだまはて種子しゅしつく器官きかんではないため、とくめすせいだまはてして「たまはて」とぶことがおお[9][8][6]マツマツぞくモミぞくトウヒぞくのもつめすせいだまはて大型おおがたとなり[11]ぞくに「まつかさ」や「まつぼっくり」とばれる[12][13]

送受そうじゅおこな時期じき成熟せいじゅくたまはてたまはな(きゅうか、かさはな[2]strobilus[6][2])とばれる[9][8][14]めすせい胞子ほうし嚢穂はめすだまはなめすせいだまはな[15])、ゆうせい胞子ほうし嚢穂はゆうだまはなゆうせいだまはな[15][16])とばれる[17][18]

めすせいだまはてめすだまはな)は被子植物ひししょくぶつにおけるはなではなく、花序かじょ相当そうとうするとかんがえられている[9][19]。これは、たねうろこつとうろこの維管たばたがいに相対あいたいしており、たねうろこつとうろこ腋芽えきがシュートたんえだ)がいちじるしく短縮たんしゅく変形へんけいしたものとかんがえられるためであり、たねうろこ胚珠はいしゅはな相当そうとうする器官きかんとみなされる[9][19]

かつてははなであるとかんがえられてたんに「雌花めばな (female flower)」や「雄花おばな (male flower)」というかたりもちいられ[2][20][21][22][注釈ちゅうしゃく 2]現代げんだい植物しょくぶつがくにおける用語ようごとしては適切てきせつではないものの[8][24]現在げんざい慣習かんしゅうてきもちいられることがある[8][24][26]。また、被子植物ひししょくぶつ進化しんかにおいてしんがわ子房しぼう)の獲得かくとく重要じゅうようイベントであり、たまはて子房しぼうたず、被子植物ひししょくぶつ生殖せいしょく器官きかんす「果実かじつ」や「はな」とはことなる構造こうぞうであるため[8]、それらのかたりふくまれる「たまはて」や「たまはな」という用語ようごける研究けんきゅうしゃもいる。長谷部はせべ (2020) では、一貫いっかんしてめすせいだまはてめすせいだまはな)にたいして「めすせい胞子ほうし嚢穂」、ゆうせいだまはなたいして「ゆうせい胞子ほうし嚢穂」という用語ようごもちいられている[注釈ちゅうしゃく 3]。また、福岡教育大学ふくおかきょういくだいがく教授きょうじゅ福原ふくはら達人たつひとっきゅうはてを「きり」とやくしている[27][注釈ちゅうしゃく 4]

現生げんなま針葉樹しんようじゅるいたまはて系統けいとう

[編集へんしゅう]

針葉樹しんようじゅるいマツるい Pinidaeヒノキるい Cupressidaeおおきく2系統けいとうからなり、狭義きょうぎ針葉樹しんようじゅるいがわ系統けいとうぐんである[8][28]広義こうぎ針葉樹しんようじゅるい(マツつな Pinopsida)はグネツムるい Gnetidaeふくみ、マツるいとグネツムるいからなるクレードがヒノキるい姉妹しまいぐんをなす[8][28]針葉樹しんようじゅるいっきゅうはてつくるため、たまはて植物しょくぶつ[29][30]たまはてるい[31][32]ともばれる。針葉樹しんようじゅ英語えいご conifer針葉樹しんようじゅるいたまはて植物しょくぶつ)をラテン語らてんご Coniferaeっきゅうはて (cōnus) をつける (ferō) というラテン語らてんご由来ゆらいする[33][34]

以下いかYang et al. (2022)もとづく現生げんなま裸子植物らししょくぶつ Pinophytina (=Acrogymnospermae) の系統けいとうじゅである[注釈ちゅうしゃく 5]典型てんけいてきたまはて系統けいとう太字ふとじしめ[35]。イチイとマキでは肉質にくしつ構造こうぞうともなう1つの胚珠はいしゅからなるめすせい胞子ほうし嚢穂をもち、これらはそれぞれ独立どくりつ獲得かくとくされたものである[36]。マキやイヌガヤぞくめすせい胞子ほうし嚢穂は「たまはて」と言及げんきゅうされることもある[37][38][39]

現生げんなま裸子植物らししょくぶつ
ソテツるい

ソテツ Cycadales

Cycadopsida
イチョウるい

イチョウ Ginkgoales

Ginkgopsida
マツつな

グネツムるい Gnetidae

マツるい

マツ Pinales

Pinidae
ヒノキるい
ヒノキ

コウヤマキ Sciadopityaceae

ヒノキ Cupressaceae

イチイ Taxaceae

Cupressales
ナンヨウスギ

ナンヨウスギ Araucariaceae

マキ Podocarpaceae

Araucariales
従来じゅうらいの "針葉樹しんようじゅるい"
"Coniferae"
Cupressidae
Pinopsida
Pinophytina

針葉樹しんようじゅるいたまはてるい以外いがい裸子植物らししょくぶつ胞子ほうし嚢穂についても、たまはてたまはなばれるものがある。ソテツるい胞子ほうし嚢穂もたまはなばれ、雌雄しゆうそれぞれめすだまはなゆうだまはなけられる[40][41]広義こうぎ針葉樹しんようじゅるい内包ないほうされるグネツムるいも、マオウぞくめすせい胞子ほうし嚢穂はめすせいだまはてゆうせい胞子ほうし嚢穂はしょう胞子ほうし嚢球はてばれうる[42]

めすせいだまはて

[編集へんしゅう]
ヨーロッパアカマツ Pinus sylvestrisたまはて断面だんめん
female strobilus: めすせい胞子ほうし嚢穂、ovule: 胚珠はいしゅ、seed scale: たねうろこ、bract scale: つとうろこ、pollination: 受粉じゅふん、fertilization: 受精じゅせい、woody female strobilus: 木質もくしつしためすせい胞子ほうし嚢穂(たまはて)、central stem: はてじく、seed: 種子しゅし
チョウセンシラベ Abies koreana(マツ)のたまはな
あかつばさつ2まい胚珠はいしゅたねうろこ付着ふちゃくし、その裏側うらがわにはするど突起とっきじょうつとうろこられる。

めすせいだまはて(しせいきゅうか、seed cone)は、針葉樹しんようじゅるいだい胞子ほうし嚢穂めすせい胞子ほうし嚢穂)を[43][44]めすせいだまはてめすだまはて[45]や、たんたまはて[9][8][6]ともばれ、受粉じゅふんたまはてめすだまはな[17][18]めすせいだまはな[15] (floral cone[46])とけられる。

かつてはそのあい同性どうせいについて議論ぎろんがなされたが[47]ルドルフ・フローリン英語えいごばん (1951)により、コルダイテスるいがたとしためすせいだまはて構造こうぞう進化しんか解釈かいしゃく研究けんきゅうされ、現在げんざいでもれられている[43][48][49]

たまはては1ほん木質もくしつしたじくはてじく[32])に数個すうこから多数たすう木質もくしつした鱗片りんぺんにしせいまたは対生たいせいしてついたものである[9]。この鱗片りんぺんたねうろこ(しゅりん、seed scale, ovuliferous scale, seminiferous scale)およびつとうろこ(ほうりん、つつみうろこ[22][50][51][52]bract scale)の2種類しゅるい鱗片りんぺん胚珠はいしゅ癒合ゆごうしてできたものであるため[9][35][53][注釈ちゅうしゃく 6]たねうろこふく合体がったい(しゅりんふくごうたい、ovuliferous scale complex, seed-scale complex)とばれる[9][54][55][56][48][注釈ちゅうしゃく 7]たねうろこふく合体がったいつとうろこしゅうろこふく合体がったい[58][35]たねうろこつとうろこふく合体がったい[59]ともやくされ、はてうろこ(かりん、cone scale, fructiferous scaleはて鱗片りんぺん[60]はてうろこふく合体がったい[45][3][9][46][61][62]ばれることもある[注釈ちゅうしゃく 8]。そして、種子しゅしたねうろここうじくめんにつく[9][53]たねうろこつとうろこともなうため、めすせいだまはてふくあい胞子ほうし嚢穂(ふくごうほうしのうすい、compound strobilus)と解釈かいしゃくされる[43]

つとうろこ維管たば普通ふつうの維管たばおな配列はいれつをしており、じくがわふるいこうじくがわ木部きべ位置いちする[35]。それにたいし、たねうろこの維管たばはそれとはぎゃくであり、じくがわ木部きべこうじくがわふるい位置いちする[35][43]。このことから、たまはて鱗片りんぺんつとうろこたねうろこという2まいがそれぞれかいった構造こうぞうとなっていると解釈かいしゃくされる[35][54]。ここに、コルダイテスるいとボルチアるいからつながる生殖せいしょく器官きかん変形へんけい考慮こうりょすると[63]たねうろこ変形へんけいした腋芽えきがであり[18]たねうろこ胚珠はいしゅわせたものが被子植物ひししょくぶつはな相当そうとうするとかんがえられる[9]#進化しんかふし参照さんしょう)。

たねうろこつとうろこ癒合ゆごう程度ていど様々さまざまで、一方いっぽうがほぼ退化たいかするものもみられる[53]。また、たねうろこつとうろこの維管たばじくから独立どくりつしてそれぞれにはいるものや、1個いっこや1ぐんの維管たば途中とちゅうかれてそれぞれにはいるものがある[53]

たまはてには鱗片りんぺん螺旋らせんじょ十字じゅうじ対生たいせい配列はいれつし、これは栄養えいようシュートじょ一致いっちすることがおお[10]たまはて主軸しゅじく付近ふきん鱗片りんぺん螺旋らせんじょはすれつほうしめすと、2:3 または 3:5 のものがおお[64]。しかし鱗片りんぺん表面ひょうめんはすれつせん計測けいそくすると、主軸しゅじくめんより外側そとがわ突出とっしゅつすると円周えんしゅうおおきくなりちいさくなるため、表面ひょうめんでは実際じっさいより高次こうじえる[64]マツトウヒたまはて表面ひょうめんじょう 8:13 にえるが、ははじくめんでは 3:5 である[64]メタセコイア Metasequoiaたまはて十字じゅうじ対生たいせいをなす[10][65][66]

鱗片りんぺん名称めいしょう
研究けんきゅうしゃ つとうろこしゅうろこふく合体がったい たねうろこ つとうろこ
Masters (1891)[3] Fruit-scale Seed-scale Bract Scale
Aase (1915)[3] Megasporophyll
Compound sporophyll
Scale Bract
Eames (1913)[3] Cone scale Ovuliferous scale Bract
Worsdell (1899)[3] Sporangiferous scale Seminiferous scale Bract
Pilger (1926)[3] / Herzfeld (1914)[3] Zapfenschuppen Fruchtschuppe Deckschuppe
Engler[3] Früchtblätter Fruchtschuppe Deckschuppe
神谷かみや (1909) - はてうろこ つとうろこ
早田そうだ (1933)[3] 鱗片りんぺんはてへんかさはてへん じつへんはてへん つとへんしんがわ
池野いけの[3] 鱗片りんぺん芽胞がほう はてうろこ つとうろこ
牧野まきの[3] / 宮部みやべ[3] / 熊沢くまさわ (1979) - たねうろこ つとうろこ
佐竹さたけ (1934) かさはてうろこはてうろこ たねうろこ つとうろこ
ぐんじょう (1951) - じつうろこ うろこ
本田ほんだ (1955) - じつうろこ うろこ
あたま (1964) 鱗片りんぺんはてうろこはて鱗片りんぺん たねうろこ つつみうろこ
清水しみず (2001) たねうろこふく合体がったいはてうろこ たねうろこ つとうろこ
ギフォード & フォスター (2002) たねうろこふく合体がったいつとうろこしゅうろこふく合体がったい たねうろこ つとうろこ
長谷部はせべ (2020) つとうろこしゅうろこふく合体がったい たねうろこ つとうろこ

マツ

[編集へんしゅう]
マツの1ねんたまはな縦断じゅうだんめん切片せっぺん
A. たねうろこ、B. 胚珠はいしゅ、C. じく

マツめすせいだまはてでは、たねうろこじくめん基部きぶにのみ合着あいぎしたちいさなつとうろこともない、こうじくめん基部きぶに1つい胚珠はいしゅする[43][63][32]胚珠はいしゅたおせせいし、たまあなたねうろこ基部きぶがわ[43][36]

また、つとうろこには普通ふつう同様どうように、木部きべこうじくめんいた単独たんどくの維管たば独立どくりつした維管たばあととしてつとうろこなかびていく[63]。それにたいたねうろこはいる維管たばあとわきせい栄養えいようシュートえだあと同様どうように、つとうろこよりうえ位置いちで3–4ほん中心ちゅうしんばしらから分岐ぶんきし、たねうろこ内部ないぶまた分岐ぶんきして木部きべたねうろこしたじくがわ)にいたみゃくけい形成けいせいする[63]

マツぞく Pinusツガぞく Tsugaトウヒぞく Piceaでは普通ふつうつとうろこ小型こがたで、たねうろこくらみじか[43][67][60]トガサワラぞく Pseudotsuga ではつとうろこたねうろこよりなが突出とっしゅつし、先端せんたんが3きれして3じょうえんとなる[43][67]カラマツぞく Larixモミぞく Abies では、つとうろこたねうろこよりながいかはしゅにより、顕著けんちょ突出とっしゅつした特徴とくちょうてきつとうろこつものがいる[68][60]

モミぞくやカラマツぞくたまはてえだ直立ちょくりつするのにたいし、おおくのトウヒぞくやトガサワラぞく、ツガぞくたまはて下垂かすいする[69][60]。マツぞく下垂かすいするものも上向うわむきのものもられる[60]。モミぞくたまはて成熟せいじゅくすると、はてじくえだのこして鱗片りんぺんたねうろこふく合体がったい)が脱落だつらくする[60][32]

レバノンスギ Cedrus libani(モミ)のたまはて
カナダツガ Tsuga canadensis(モミ)のたまはて
カラマツ Larix kaempferi(マツ)のたまはて
リギダマツ Pinus rigida(マツ)のたまはて

ヒノキ

[編集へんしゅう]

コウヤマキでは、マツ同様どうよう胚珠はいしゅたねうろこうえから基部きぶがわいて形成けいせいされる[36]雌雄しゆうどうかぶで、大型おおがた木質もくしつめすせいだまはてちょうえだ先端せんたんに1–2[70]鱗片りんぺんには2–9倒立とうりつ胚珠はいしゅふく[70]たねうろこ扇形せんけいで、種子しゅし側面そくめんにはせまつばさ[70]つとうろこたねうろこ半分はんぶんながさで、だい部分ぶぶんたねうろこ合着あいぎする[70]

ヒノキでは、たねうろこつとうろこはほぼ完全かんぜん癒合ゆごうする[63][71]めすせいだまはて普通ふつうちいさい[71]胚珠はいしゅたねうろこ基部きぶからとおくらい方向ほうこういて形成けいせいされる[36]胚珠はいしゅすうは、普通ふつう鱗片りんぺん1あたり2–3であるが、ヒノキでは増加ぞうかする傾向けいこうにあり、ヒノキ属きぞく Cupressus一部いちぶたねでは6–20になることもある[19][71]つとうろこではまれにしか分岐ぶんきしない1ほんの維管たばをもつ[72]たねうろこの維管たば様式ようしき複雑ふくざつで、ぞくにより、反転はんてんした維管たばが1ほんだけ形成けいせいされるもの、維管たば放射ほうしゃ方向ほうこう分岐ぶんきして2ほん弧状こじょうの維管たばつもの[注釈ちゅうしゃく 9]など、さまざまである[72]ビャクシンぞく Juniperus などでは、たまはてえきしつ肉質にくしつ)となり、漿質だまはて(しょうしつきゅうか、fleshy cone)または肉質にくしつだまはて(にくしつきゅうか、galbulus)とばれる[9][6]。それ以外いがいたまはて木質もくしつで、じゅくすときれひらけする[62]

Aase (1915)Pilger (1926)Florin (1951)仮定かていされていたたねうろこふく合体がったいでは、きゅうスギのヒノキにおけるはてうろこだい部分ぶぶんたねうろこであると解釈かいしゃくされてきた[19]。しかし発生はっせい過程かてい研究けんきゅうにより、スギ Taxodioideae などのいくつかの分類ぶんるいぐんでは実際じっさい胚珠はいしゅたねうろこふく合体がったいわき明瞭めいりょう挿入そうにゅうされており、はてうろここうじくがわたねうろこであるとみなされる一方いっぽう、いくつかのきゅうスギヒノキはてうろこでは上面うわつら栄養えいよう成長せいちょうから、はてうろことおくらいはしつとうろこであるとみなされる[19]きゅうスギヒノキ基部きぶいただきはし鱗片りんぺんみのりで、中央ちゅうおう鱗片りんぺんのみにみのりせいがある[19]セコイア Sequoia sempervirensスギ Cryptomeria japonica などでは、しばしばたまはて先端せんたんからさらにシュート伸長しんちょうする、ぬきせい (proliferation) をしめすことがある[10][19]。また、ヒノキおよびカリトリスでは胚珠はいしゅ鱗片りんぺん葉腋ようえき形成けいせいされるため、はてうろこたねうろこふく合体がったい形成けいせいせずつとうろこのみからなる[57][73]。そしてたねうろこつよ退化たいかし、胚珠はいしゅのみがのこ[57][73]

ヒノキたまはて特徴とくちょう[19][57][73]
たまはて 鱗片りんぺんすう つとうろこたねうろこおおきさ 鱗片りんぺんあたりの胚珠はいしゅすう 胚珠はいしゅ位置いち 胚珠はいしゅ
コウヨウザン
Cunninghamioideae
下垂かすい 多数たすう つとうろこおおきい 普通ふつう3[注釈ちゅうしゃく 10] 鱗片りんぺんじょう たおせせい
タイワンスギ
Taiwanioideae
直立ちょくりつ 14–20 たねうろこ退化たいかし、つとうろこのみ 2 鱗片りんぺんじょう たまはなではとおくらい方向ほうこう
成熟せいじゅくだまはてではたおせせい
タスマニアスギ
Athrotaxidoideae
やや下垂かすい 15–20 つとうろこおおきい 3–5が1れつなら 鱗片りんぺんじょう たまはなでは直立ちょくりつ成熟せいじゅく
たまはてではたおせせい
セコイア
Sequoioideae
発生はっせい初期しょき直立ちょくりつ成熟せいじゅくすると下垂かすい やく20(メタセコイア)[66] たねうろこ退化たいかし、つとうろこのみ 多数たすうが1–3れつなら 鱗片りんぺんじょう たまはなではとおくらい方向ほうこう
成熟せいじゅくだまはてではたおせせい
スギ
Taxodioideae
たまはなでは下垂かすい成熟せいじゅくすると上向うわむき(スギ)
たまはなでははすぎょう成熟せいじゅくすると直立ちょくりつ(スイショウ)
えだとともにはすぎょう(ヌマスギ)
20–30(スギ)[74] たねうろこおおきい 2–5[75] わきせい 直立ちょくりつ
カリトリス
Callitroideae
はすぎょうまたは直立ちょくりつ 4–9 つとうろこのみ 1–9 わきせい 直立ちょくりつ
ヒノキ
Cupressoideae
ぞくにより多様たよう 1–7たい つとうろこのみ 1–30 じくいただきせいまたはつとうろこわきせい 直立ちょくりつ

イチイっきゅうはてたず[76]いただきせいする胚珠はいしゅち、イチイぞくカヤぞくではたねころも肉質にくしつしてかり種皮しゅひはて(かしゅひか、arillocarpium)を形成けいせいする[77][78]。また、イヌガヤぞく Cephalotaxus では2胚珠はいしゅわきせいする十字じゅうじ対生たいせいつとうろこをもち、胚珠はいしゅかり種皮しゅひたまがわ肉質にくしつして種子しゅしはて(しゅしか、seminicarpium)となる[77][78][注釈ちゅうしゃく 11]。このようにイチイ明瞭めいりょうたまはてをもたないため、フローリンは独自どくじ進化しんかつとかんがえていたが、現在げんざい否定ひていされている[55][79]

コウヤマキ Sciadopitys verticillataたまはて
とおくらいはしからシュートが伸長しんちょうするスギ Cryptomeria japonica(ヒノキ)の成熟せいじゅく途中とちゅうたまはて
ビャクシンぞく一種いっしゅ Juniperus grandis(ヒノキ)の漿質だまはて
トウイヌガヤ Cephalotaxus fortunei(イチイ[注釈ちゅうしゃく 12])の種子しゅしはてたまはて[38]

ナンヨウスギ

[編集へんしゅう]

ナンヨウスギ現在げんざい南半球みなみはんきゅうにしか分布ぶんぷしていないが、化石かせき記録きろくから中生代ちゅうせいだいには北半球きたはんきゅうにもひろ分布ぶんぷすることがかっており、たまはて形態けいたい変化へんか追跡ついせきされている[80]。ナンヨウスギたまはてはふつうおおきく、たねうろこ顕著けんちょ退化たいかつとうろことほぼ完全かんぜん癒合ゆごうしたたねうろこふく合体がったい形成けいせいする[63][71]ナンヨウスギぞく Araucaria ではマツとはことなり1個いっこ胚珠はいしゅたねうろこかこまれて形成けいせいされ、つばさたない[81][50][80]。それにたいし、ウォレミアぞく Wollemiaナギモドキぞく Agathisつばさ種子しゅしたねうろこ上側うわがわはだかしょうじる[80]

マキイヌマキでは、めすせい胞子ほうし嚢穂に複数ふくすうつとうろこ形成けいせいされたのちいただきはしに1まいたねうろこと1つの胚珠はいしゅふく合体がったい形成けいせいされ、成熟せいじゅくするとつとうろこ基部きぶあか肉質にくしつとなる[81]。この肉質にくしつ構造こうぞうはイチイとは独立どくりつ獲得かくとくされたものである[36]

現生げんなまナンヨウスギ Araucaria cunninghamii(ナンヨウスギ)のたまはて
ナンヨウスギぞく一種いっしゅ Araucaria mirabilisたまはてこう化石かせき断面だんめん
ナギモドキぞく一種いっしゅ Agathis moorei(ナンヨウスギ)のたまはて
マキぞく一種いっしゅ Podocarpus macrocarpus(マキ)の核果かっかさまたまはて

進化しんか

[編集へんしゅう]
コルダイアントゥス Cordaianthus生殖せいしょく器官きかん
A. ゆうせい胞子ほうし嚢の縦断じゅうだんめん、B. ゆうせい胞子ほうし、C. めすせい胞子ほうし嚢の縦断じゅうだんめん、D. 胚珠はいしゅ先端せんたん拡大かくだい、E. 横断おうだんめん切片せっぺん、F. 生殖せいしょく器官きかんともなうシュート
ウルマンニア Ullmannia frumentariaボルチア)のたまはてさま構造こうぞう

めすせいだまはて進化しんかでは、つぎのような道筋みちすじ想定そうていされている[63]

  1. コルダイテスるいみのりせいシュートでみのりせい鱗片りんぺん消失しょうしつし、のこった少数しょうすうみのりせい鱗片りんぺん癒合ゆごうしてたねうろこになった[63]
  2. 胚珠はいしゅはんきょくし、縮小しゅくしょうした[63]
  3. 胚珠はいしゅたねうろここうじくがわ下部かぶ癒合ゆごうした[63]

現生げんなま針葉樹しんようじゅるいたまはてがたかんがえられているのはコルダイテスるい胞子ほうし嚢穂[注釈ちゅうしゃく 13]形態けいたいぞくコルダイアントゥス Cordaianthus で、つとにともなういちじくがあり、つと葉腋ようえき有限ゆうげん成長せいちょうするみのりせいシュートを形成けいせいした[82]Cordaianthus concinnusっきゅうはて相当そうとうするみのりせいシュートは多数たすうみのりせい鱗片りんぺんち、先端せんたんの5–10まいにのみみのりせいがあった[82]かくみのりせい鱗片りんぺんには、いただきせいする基部きぶ癒合ゆごうしていた6しょう胞子ほうし嚢をけた[83]胚珠はいしゅみのりせいシュートも螺旋らせん配列はいれつする鱗片りんぺんからなり、先端せんたんの4–6まいみのりせいで、それぞれに1個いっこか(鱗片りんぺん分岐ぶんきした場合ばあい)それ以上いじょう左右さゆう相称そうしょう胚珠はいしゅつくった[83]

Florin (1951) は、コルダイテスるい胞子ほうし嚢穂がボルチアるい胞子ほうし嚢穂にがれたとかんがえた[83]。ボルチアるいめすせい胞子ほうし嚢穂は、コルダイテスるい生殖せいしょくシュートのいちじく短縮たんしゅくし、つとみのりせいシュートを有限ゆうげん成長せいちょうするたまはて構造こうぞうらせることにより進化しんかしたと解釈かいしゃくされる[83]。ボルチアるいめすせい胞子ほうし嚢穂では、葉腋ようえき形成けいせいされるシュートがレバキアぞく Lebachia のように穂状すいじょうにまとまったしゅErnestiodendron のようにすべての鱗片りんぺんみのりせいがあったたねPseudovoltzia のように圧縮あっしゅくして平面へいめんじょうになったたねられる[35][55]後期こうき石炭せきたんからペルムにかけてのLebachia pinifomis では、先端せんたんが2きれしたつと螺旋らせんじょう配列はいれつし、その葉腋ようえきみじか生殖せいしょくシュートを発達はったつさせた[55]通常つうじょう生殖せいしょくシュートの鱗片りんぺんは1まい以外いがいみのるであり、生殖せいしょく鱗片りんぺんだい胞子ほうし)は胚珠はいしゅからなっていた[55]胚珠はいしゅ左右さゆう相称そうしょう直立ちょくりつしていただきしており、たまはてじくめんしていた[55]Lebachia lockardii では、生殖せいしょくシュートは20–30まいみのり鱗片りんぺんからなり、シュート基部きぶに1–2まい生殖せいしょく鱗片りんぺんけた[55]。それぞれの生殖せいしょく鱗片りんぺんには1個いっこたおせなま胚珠はいしゅいただきした[55]。それにたいし、Ernestiodendron filiciforme ではすべての鱗片りんぺん生殖せいしょくせいであった[55]後期こうきペルム中生代ちゅうせいだい初期しょきから産出さんしゅつするぞくはさらに現生げんなまたまはてへの移行いこう段階だんかいしめし、Pseudovoltzia liebeana生殖せいしょくシュートは部分ぶぶんてき癒合ゆごうした5まい鱗片りんぺんからなり、はらせいつ「たねうろこ」の状態じょうたいになった[63]。このたねでは、たねうろこ中央ちゅうおうきれへんと2まいがわせいきれへんにはそれぞれ基部きぶたおせなま胚珠はいしゅ沿着し、つとうろこわきしたたねうろこふく合体がったい全体ぜんたい中央ちゅうおうまで癒合ゆごうしていた[63]。しかし、維管たばじくからたねうろこつとうろこそれぞれに独立どくりつしてはいっており、癒合ゆごう過程かてい途中とちゅうであることをしめしている[63]

現生げんなま針葉樹しんようじゅるいたまはてでは、たねうろこ胚珠はいしゅせるため、胞子ほうし類似るいじしているが、たねうろこつとうろこというべつわきせいするてんで、たんなる胞子ほうしかんがえることはむずかしい[55]。しかし、Florin (1951)せつしたがい、たねうろこ極端きょくたん変形へんけいした生殖せいしょくシュートと解釈かいしゃくすることで解決かいけつできる[55]つとうろこ普通ふつう同様どうようの維管たば配向はいこうであるのにたいし、たねうろこの維管たば反対はんたいがわいている[35][43][54]たねうろこ起源きげん生殖せいしょくシュートであり、じくつとつとうろこ)にめんした生殖せいしょくシュートちゅうみのりせい鱗片りんぺん消失しょうしつしたと解釈かいしゃくすると、つととは反対はんたいがわについたみのりせい鱗片りんぺん現在げんざいたねうろことしてのこ鱗片りんぺんであると理解りかいできる[84]現生げんなま針葉樹しんようじゅるいおおくのぞくしょう胞子ほうし胚珠はいしゅあわ両性りょうせい胞子ほうし嚢性だまはて報告ほうこくされているが、上記じょうきのような進化しんか過程かていからも奇形きけいであるとかんがえられている[11]

さんじょうからはく亜紀あきにかけて世界せかいてき分布ぶんぷしていたケイロレピディア針葉樹しんようじゅるいは、パララウカリア Pararaucariaばれるめすせいだまはて形成けいせいした[85]後期こうきジュラ紀じゅらきパリシアではへらじょうたねうろこふく合体がったいとみられるだい胞子ほうしち、ながさ10 cmセンチメートル程度ていどたまはて形成けいせいしていた[85]

グネツムるいっきゅうはてたないが、たまはて同様どうようにボルチアるい生殖せいしょく器官きかんがたとして、その進化しんか説明せつめいされている[81]。ボルチアるいつとがグネツムるいえりに、栄養えいよう被覆ひふくに、生殖せいしょく胚珠はいしゅ変化へんかしたとかんがえられ、MADS-box遺伝子いでんしぐんLEAFY 遺伝子いでんし発現はつげんパターンからも支持しじされている[86]

ゆうせいだまはて

[編集へんしゅう]
マツぞく Pinusゆうせいだまはて横断おうだんめん切片せっぺん。A. しょう胞子ほうし, B. しょう胞子ほうし嚢, C. じく
マツぞく Pinusゆうせいだまはて縦断じゅうだんめん切片せっぺん

ゆうせいだまはて(ゆうせいきゅうか、pollen cone)は、針葉樹しんようじゅるいしょう胞子ほうし嚢穂ゆうせい胞子ほうし嚢穂)を[87][44][注釈ちゅうしゃく 14]じくめんしょう胞子ほうし(しょうほうしのう、microsporangium)が直接ちょくせつ付着ふちゃくした鱗片りんぺんじょうしょう胞子ほうし有限ゆうげんじく密生みっせいする構造こうぞう[53]ゆうだまはな[17][18]ゆうせいだまはな[15][16]ともばれる。しょう胞子ほうし被子植物ひししょくぶつ雄蕊おしべに、しょう胞子ほうし嚢は花粉かふんふく被子植物ひししょくぶつ相当そうとうする器官きかんであり、それぞれ雄蕊おしべ[14]や葯[53]言及げんきゅうされることもある。しかし雄蕊おしべとはことなりゆうせいだまはてしょう胞子ほうしはないとはない[88]

ゆうせいだまはてではめすせいだまはてのようにつとともなわず、しょう胞子ほうし嚢はいち付属ふぞく器官きかんであるしょう胞子ほうし直接ちょくせつ付着ふちゃくするため、単体たんたい胞子ほうし嚢穂(たんたいほうしのうすい、simple strobilus)と解釈かいしゃくされる[43]。そのため、被子植物ひししょくぶつ花序かじょ相当そうとうするとかんがえられるめすせいだまはてとはことなり、被子植物ひししょくぶつはな相当そうとうするとかんがえられる[53]先端せんたんじくがわゆうせい胞子ほうし嚢をけた胞子ほうしゆうするてんシダ種子しゅしるい大葉おおばシダ植物しょくぶつしょう植物しょくぶつ共通きょうつうしており、祖先そせん形質けいしつ保持ほじしているといえる[8]。また、しょう胞子ほうし嚢は発生はっせい様式ようしき全体ぜんたいつうじて嚢性であるが、表皮ひょうひそう分裂ぶんれつにより形成けいせいされるほか系統けいとうとはことなりいちつづきのしたがわ細胞さいぼうなみそう分裂ぶんれつ起源きげんするものもあることがられる[89]

針葉樹しんようじゅるいゆうせいだまはてソテツるいしょう胞子ほうし嚢穂などと比較ひかくしてちいさく、ながすう cm 以下いかである[87]最長さいちょうは10–12 cm にたっする Araucaria bidwillii のものである[87]

形成けいせいされる位置いち系統けいとうごとに多様たようで、マツぞく Pinus では鱗片りんぺん葉腋ようえきしょうじ、えだいただきはしのややしたがわかたまり形成けいせいする[87]ヒマラヤスギぞく Cedrus では単独たんどくゆうせいだまはてたんえだ先端せんたん発達はったつする[87]。ヒノキでは発達はったつし、特殊とくしゅしたがわえだいただきせいする[87]

ゆうせいだまはてしょう胞子ほうし普通ふつうじくがわ胞子ほうし嚢が先端せんたんひろがった扁平へんぺい葉状ようじょうのもの (hyposporangiate microsporangiophore) である[87][90]。しかし、イチイではしょう胞子ほうし嚢が放射状ほうしゃじょう着生ちゃくせいするもの (perisporangiate microsporangiophore) がられる[91][90]。これはたてじょうしょう胞子ほうしわれていたが[87]実際じっさい極端きょくたん退すさちぢみした胞子ほうし放射状ほうしゃじょう着生ちゃくせいしているものである[91][90]イヌガヤぞく Cephalotaxusゆうせいだまはて鱗片りんぺんじょうつと集合しゅうごうしてたま果状はたしじょう構造こうぞうをとるが、つとわき付近ふきんからたんじくじょうに10程度ていどしょう胞子ほうし着生ちゃくせいし、そのそれぞれのじくがわに2–3胞子ほうし嚢をける[18][90]。それぞれのじくいただきはしにつく胞子ほうしではつとともなわないたんじくいただきはししょう胞子ほうし嚢が放射状ほうしゃじょう着生ちゃくせいする[91][90]Wilde (1975) は、これをはらせい胞子ほうしすうこうじくがわ合着あいぎしたもの(ふくあい胞子ほうし嚢穂、花序かじょ相当そうとうする)とかんがえ、イチイぞく Taxusゆうせいだまはてにおける胞子ほうし嚢穂もこれが退化たいかしてできたものであると解釈かいしゃくした[91]シロミイチイぞく Pseudotaxus発生はっせいがくてき研究けんきゅうからもこれが支持しじされており、イヌガヤぞくからシロミイチイぞく、イチイぞく、そしてカヤぞくいたゆうせいだまはて進化しんか仮説かせつてられている[90]

しょう胞子ほうしにつくしょう胞子ほうし嚢のかず多様たようである[87]。マツでは2一定いっていする[87]では2–7胞子ほうし嚢がひとつのしょう胞子ほうしき、ナンヨウスギぞくナギモドキぞくでは13–15胞子ほうし嚢をけるものもられる[87]

Pinus halepensis(マツ)のゆうせいだまはて
コウヨウザン Cunninghamia lanceolata(ヒノキ)のゆうせいだまはて
ヨーロッパイチイ Taxus baccata(イチイ)のゆうせいだまはて
スイシスギマキ Dacrycarpus dacrydioides(マキ)のゆうせいだまはて

生殖せいしょく

[編集へんしゅう]
ポンデローサマツ Pinus ponderosaちょうえだめすせいだまはてちょうえだうえわかめすせいだまはな形成けいせいされており、したには前年ぜんねんめすせいだまはてがぶらがっている。
やま火事かじのちひらいたコントルタマツ Pinus contortaめすせいだまはて

針葉樹しんようじゅるい受粉じゅふんふうなかだちであり、送受そうじゅゆうせいだまはてから花粉かふん放出ほうしゅつされる[92]胞子ほうし放出ほうしゅつするだけのゆうせいだまはてとはちがい、めすせいだまはて様々さまざま機能きのうてき役割やくわりっている[92]

トガサワラぞく Pseudotsuga(マツ)などおおくの針葉樹しんようじゅるいでは、おなぶし受粉じゅふん受精じゅせいこり、成熟せいじゅくに2ねん必要ひつようとする[93][22]マツぞく Pinus(マツ)や日本にっぽんビャクシンぞく Juniperus(ヒノキ)ではさらにながく、胚珠はいしゅ受粉じゅふんから受精じゅせいまでに12–14がつかかり、完全かんぜん生活せいかつたまきは3ねんちかくになる[93][22]たいしてモミぞく Abies ではたまはて年内ねんないじゅくし、種子しゅしたねうろこつとうろことともにはてじくえだのこして脱落だつらくする[32]北米ほくべいさんのものでは、エンピツビャクシン Juniperus virginiana のようにビャクシンぞくにも年内ねんない成熟せいじゅくするものがられる[22]

ポンデローサマツ Pinus ponderosa(マツ)をもちいた研究けんきゅうでは、9がつ中旬ちゅうじゅんまでには鱗片りんぺんつつまれたわか分化ぶんかめすせいだまはてはらはじめ存在そんざいすることが確認かくにんされており、ふゆからはるにかけて成長せいちょうつづける[55]翌年よくねん3がつまでにはもとめいただきてきつとうろこ発生はっせいこり、ぜん形成けいせいそう分化ぶんかして下部かぶつとうろこはらはじめ侵入しんにゅうする[55]。4がつちゅうにはつとうろこ完全かんぜんおおきさにちかづき、そのわきたねうろこはらはじめ発達はったつする[55]。5月1にちまでには成熟せいじゅくしたつとうろこわきしたたねうろこはらはじめ目立めだつようになる[55]。この発生はっせい段階だんかいめすせいだまはて発達はったつちゅうたんえだわきせいするつとわか栄養えいようシュートと比較ひかくされている[55]

マツぞくたまはてでは、受粉じゅふんたねうろこたがいにちかづき、成熟せいじゅくして種子しゅし放出ほうしゅつするまでしっかりと密着みっちゃくしたままである[94]Pinus attenuataPinus pungensリギダマツ Pinus rigida などの閉鎖へいさだまはてclosed coneまたは晩生ばんせいだまはてserotinus coneがたのマツでは成熟せいじゅくきれひらけせず長年ながねんじゅじょうまり、やま火事かじねつもちいてたねうろこひらいて種子しゅし放出ほうしゅつする[94][95]

ギャラリー

[編集へんしゅう]
ヒマラヤスギぞく一種いっしゅ Cedrus atlantica(マツ
A. シュート、B. ゆうせいだまはな、C. ゆうせいだまはて、D.めすせいだまはて、E. 種子しゅし、F. はい、G. 胚乳はいにゅう
イトスギぞく一種いっしゅ Cupressus pygmaea(ヒノキ
めすせいだまはて中央ちゅうおう)とゆうせいだまはてみぎ
コノテガシワ Platycladus orientalis(ヒノキ
めすせいだまはて中央ちゅうおう)とゆうせいだまはて左下ひだりした
Agathis robusta(ナンヨウスギ
めすせいだまはてひだり)と鱗片りんぺん右上みぎうえ)、ゆうせいだまはてみぎ

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく

[編集へんしゅう]
  1. ^ 果実かじつ」という用語ようご被子植物ひししょくぶつ成熟せいじゅくした子房しぼう限定げんていして使つかわれる[8]
  2. ^ はな」という用語ようご現代げんだい植物しょくぶつがくでは被子植物ひししょくぶつ生殖せいしょく器官きかんにのみもちいられる[8][23]。かつてのはな定義ていぎではゲーベル英語えいごばんにより提唱ていしょうされた「胞子ほうしからなるシュート」というかんがかたもちいていた[24]。この定義ていぎではトクサるいツクシしょうるいヒカゲノカズラ胞子ほうし嚢穂もはなになる[24][20]イームス英語えいごばんによる定義ていぎでは、「1個いっこ有限ゆうげんくきいただき胞子ほうしおよび普通ふつうにはみのりほか付属ふぞくぶつ着生ちゃくせいしたもの」である[23][25]
  3. ^ なお、この用語ようごではっきゅうはてたまはな区別くべつがつかないため、めすせいだまはてたいしては「種子しゅしをつけためすせい胞子ほうし嚢穂」という表現ひょうげんもちいている[8]
  4. ^ この場合ばあいゆうせいだまはてを「花粉かふんきり (pollen cone)」、「きり (male cone)」や「しょう胞子ほうしきり」と、めすせいだまはてを「種子しゅしきり (seed cone)」、「めすきり (female cone)」や「だい胞子ほうしきり」とけている。ただし、これらは植物しょくぶつがく分野ぶんや一般いっぱんてき用語ようごではない。クレイン (2014) では、イチョウゆうせい胞子ほうし囊穂にたいして pollen coneもちいられ、矢野やの真千子まちこによる邦訳ほうやくでは「花粉かふんきり」とやくされているが、金井かない (2016) による書評しょひょうでは、これまでの表現ひょうげんのように「雄花おばな」で十分じゅうぶんであるとひょうされている。
  5. ^ ただし、Yang et al. (2022) ではイヌガヤぞく Cephalotaxusたんかたイヌガヤ Cephalotaxaceae としてイチイから分離ぶんりされ、イチイ姉妹しまいぐんとなっているが、かつての系統けいとう解析かいせきではイチイ内包ないほうされることもおおく、ほんこうではイチイ内包ないほうしてあつかう。
  6. ^ かつてはしゅうろこを「はてうろこ (seminiferous scale)」[4]や「じつうろこじつうろこFruchtschuppen)」[5][47]び、つとうろこを「うろこDeckschuppen)」とんだ[5][47]
  7. ^ 後述こうじゅつとおり、ヒノキでは胚珠はいしゅ鱗片りんぺん葉腋ようえき形成けいせいされるため、鱗片りんぺん部分ぶぶんたねうろこ一部いちぶふくまず、はてうろこつとうろこのみからなる[57]
  8. ^ ただし、前記ぜんきとおふるくは「はてうろこ」はたねうろこしていた[4]佐竹さたけ (1934) はそれを認識にんしきしたうえで、たねうろこつとうろこからなるたまはて鱗片りんぺんはてうろこぶべきであるとべている。このように、鱗片りんぺん名称めいしょうには混乱こんらんられるため、下記かきにまとめる。
  9. ^ 反転はんてんした維管たばだけでなく、それにかいってつとうろこおなきの維管たばつことをす。
  10. ^ とおくらいはしでは2中央ちゅうおうでは4になることもある。
  11. ^ ただしイヌガヤぞくめすせい胞子ほうし囊穂はめすせいだまはて言及げんきゅうされることもある[38]
  12. ^ Yang et al. (2022) ではイヌガヤとされる。
  13. ^ めすせい胞子ほうし嚢穂・ゆうせい胞子ほうし嚢穂どちらにたいしてももちいられる。
  14. ^ pollen cone という表現ひょうげん針葉樹しんようじゅるいかぎらず、イチョウるいグネツムるい

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ a b 相場そうば & 宮本みやもと 2017, pp. 307–311.
  2. ^ a b c d e 猪野いいの 1964, p. 488.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m 佐竹さたけ 1934, pp. 185–206.
  4. ^ a b c d 神谷かみや 1909, p. 146.
  5. ^ a b c 本田ほんだ 1955, pp. 4–9.
  6. ^ a b c d e いわおほか 2013, p. 308b.
  7. ^ a b ギフォード & フォスター 2002, p. 424.
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m 長谷部はせべ 2020, p. 205.
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m 清水しみず 2001, p. 108.
  10. ^ a b c d 塚腰つかごし岡野おかの 2016, pp. 33–42.
  11. ^ a b ギフォード & フォスター 2002, p. 425.
  12. ^ 長谷部はせべ 2020, p. 口絵くちえ33.
  13. ^ 大橋おおはし 2015, p. 30「マツ PINACEAE」
  14. ^ a b あたま 1964, p. 1.
  15. ^ a b c d 中山なかやまつよし. “植物しょくぶつせい”. 筑波大学つくばだいがく. 2024ねん1がつ30にち閲覧えつらん
  16. ^ a b 落合おちあいさい知香ちか; 門脇かどわき正史せいし; 玉木たまき恵理香えりか; 杉山すぎやま昌典まさのり (2015). “長野ながのけんにおけるくそ分析ぶんせきによるヤマネ Glirulus japonicusしょくせい”. 哺乳類ほにゅうるい科学かがく 55 (2): 209–214. doi:10.11238/mammalianscience.55.209. 
  17. ^ a b c 邑田むらた米倉よねくら 2018, pp. 49–104.
  18. ^ a b c d e 熊沢くまさわ 1979, p. 33.
  19. ^ a b c d e f g h Jagel & Dörken 2014, pp. 117–136.
  20. ^ a b ぐんじょう 1951, p. 94.
  21. ^ あたま 1964, pp. 12–184.
  22. ^ a b c d e 小林こばやし 1966, pp. 107–131.
  23. ^ a b 熊沢くまさわ 1979, p. 8.
  24. ^ a b c d 西田にしだ 2017, p. 210.
  25. ^ げん 1994, p. 152.
  26. ^ 大橋おおはし 2015, pp. 194–214.
  27. ^ 福原ふくはら達人たつひと. “たまはてるい”. 植物しょくぶつ形態けいたいがく. 福岡教育大学ふくおかきょういくだいがく. 2024ねん1がつ28にち閲覧えつらん
  28. ^ a b Yang et al. 2022, pp. 340–350.
  29. ^ 田村たむら堀田ほった 1974, p. 207.
  30. ^ あたま 1964, p. 12.
  31. ^ 西田にしだ 2017, p. 204.
  32. ^ a b c d e 大橋おおはし 2015, p. 25「マツ PINACEAE」
  33. ^ Charlton T. Lewis, Charles Short. “cōnĭfer , fĕra, fĕrum, adj. conus-fero”. A Latin Dictionary. 2024ねん2がつ1にち閲覧えつらん
  34. ^ conifer (n.). https://www.etymonline.com/word/conifer#etymonline_v_18209 2024ねん2がつ1にち閲覧えつらん. 
  35. ^ a b c d e f g h 長谷部はせべ 2020, p. 200.
  36. ^ a b c d e 長谷部はせべ 2020, p. 202.
  37. ^ 大橋おおはし 2015, p. 34「マキ PODOCARPACEAE」
  38. ^ a b c ギフォード & フォスター 2002, p. 409.
  39. ^ ギフォード & フォスター 2002, p. 410.
  40. ^ 西田にしだ 2000, p. 94.
  41. ^ 邑田むらた米倉よねくら 2018, p. 47.
  42. ^ ギフォード & フォスター 2002, p. 467.
  43. ^ a b c d e f g h i j ギフォード & フォスター 2002, p. 429.
  44. ^ a b 荒木あらき 2012, pp. 134–158.
  45. ^ a b 西田にしだ 2005, pp. 5–20.
  46. ^ a b 楠本くすもと 2012, pp. 198–209.
  47. ^ a b c ぐんじょう 1951, p. 95.
  48. ^ a b 西田にしだ 1997a, p. 124.
  49. ^ 西田にしだ 2017, p. 176.
  50. ^ a b 西田にしだ 2000, p. 108.
  51. ^ 西田にしだ 2017, p. 177.
  52. ^ あたま 1964, p. 42.
  53. ^ a b c d e f g 熊沢くまさわ 1979, p. 31.
  54. ^ a b c 熊沢くまさわ 1979, p. 32.
  55. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p ギフォード & フォスター 2002, p. 432.
  56. ^ 西田にしだ 1998, p. 232.
  57. ^ a b c d Jagel & Dörken 2015a, pp. 51–78.
  58. ^ ギフォード & フォスター 2002, p. 428.
  59. ^ 長谷部はせべ 2004, p. 190.
  60. ^ a b c d e f あたま 1964, p. 43.
  61. ^ あたま 1964, p. 152.
  62. ^ a b 大橋おおはし 2015, p. 37「ヒノキ CUPRESSACEAE」
  63. ^ a b c d e f g h i j k l m ギフォード & フォスター 2002, p. 434.
  64. ^ a b c ぐんじょう 1951, p. 125.
  65. ^ 邑田むらた米倉よねくら 2018, p. 84.
  66. ^ a b 肥田ひだ 1957, pp. 44–51.
  67. ^ a b 大橋おおはし 2015, p. 32「マツ PINACEAE」
  68. ^ ギフォード & フォスター 2002, p. 431.
  69. ^ 大橋おおはし 2015, p. 28「マツ PINACEAE」
  70. ^ a b c d 大橋おおはし 2015, p. 36「コウヤマキ SCIADOPITYACEAE」
  71. ^ a b c d Taylor et al. 2009, p. 850.
  72. ^ a b ギフォード & フォスター 2002, p. 435.
  73. ^ a b c Jagel & Dörken 2015b, pp. 91–108.
  74. ^ 大橋おおはし 2015, p. 38「ヒノキ CUPRESSACEAE」
  75. ^ Takaso & Tomlinson 1990, pp. 1209–1221.
  76. ^ 大橋おおはし 2015, p. 42「イチイ TAXACEAE」
  77. ^ a b 長谷部はせべ 2020, p. 203.
  78. ^ a b 清水しみず 2001, p. 110.
  79. ^ Miller 1977, pp. 217–280.
  80. ^ a b c 西田にしだ 2017, p. 46.
  81. ^ a b c 長谷部はせべ 2020, p. 201.
  82. ^ a b ギフォード & フォスター 2002, p. 451.
  83. ^ a b c d ギフォード & フォスター 2002, p. 453.
  84. ^ Florin 1951, pp. 258–282.
  85. ^ a b 西田にしだ 2017, p. 206.
  86. ^ 長谷部はせべ 2004, p. 191.
  87. ^ a b c d e f g h i j k ギフォード & フォスター 2002, p. 426.
  88. ^ げん 1994, p. 153.
  89. ^ ギフォード & フォスター 2002, pp. 426–427.
  90. ^ a b c d e f Dörken & Nimsch 2023, pp. 149–156.
  91. ^ a b c d 熊沢くまさわ 1979, p. 34.
  92. ^ a b Leslie 2011, pp. 587–602.
  93. ^ a b ギフォード & フォスター 2002, p. 436.
  94. ^ a b ギフォード & フォスター 2002, p. 440.
  95. ^ 中井なかい 1988, pp. 227–230.

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]