1947年 ねん から2002年 ねん までのアメリカの四半期 しはんき データ(年率 ねんりつ ではない)を用 もち いたオークンの法則 ほうそく の差分 さぶん 形式 けいしき のグラフ。GNPの変化 へんか 率 りつ (%) = 0.856 - 1.827*(失業 しつぎょう 率 りつ の変化 へんか )。 R^2 = 0.504。他 た の推計 すいけい 結果 けっか との違 ちが いは、部分 ぶぶん 的 てき には四半期 しはんき データを使 つか っていることによる。
経済 けいざい 学 がく において、オークンの法則 ほうそく (Okun's law) とは、一 いち 国 こく の産出 さんしゅつ 量 りょう と失業 しつぎょう の間 あいだ に経験 けいけん 的 てき に観測 かんそく される安定 あんてい 的 てき な負 まけ の相関 そうかん 関係 かんけい のことである。この法則 ほうそく の「乖離 かいり 形式 けいしき 」 (gap version) は、一 いち 国 こく の国内 こくない 総 そう 生産 せいさん (GDP) が潜在 せんざい 産出 さんしゅつ 量 りょう より1%小 ちい さくなる度 たび に失業 しつぎょう 率 りつ が約 やく 0.55%上昇 じょうしょう することを述 の べる(米国 べいこく の場合 ばあい )。「差分 さぶん 形式 けいしき 」 (difference version)[1] は、実質 じっしつ 経済 けいざい 成長 せいちょう 率 りつ と失業 しつぎょう 率 りつ の差分 さぶん の間 あいだ における関係 かんけい を表 あらわ す。この法則 ほうそく の正確 せいかく さは議論 ぎろん の的 まと になっている。法則 ほうそく の名前 なまえ は、1962年 ねん にこの関係 かんけい を提案 ていあん した経済 けいざい 学者 がくしゃ アーサー・オーカン (en:Arthur Okun ) にちなむ[2] 。
日本 にっぽん の完全 かんぜん 失業 しつぎょう 率 りつ と実質 じっしつ 国内 こくない 総 そう 生産 せいさん 成長 せいちょう 率 りつ の推移 すいい
オークンの法則 ほうそく は、理論 りろん から導 みちび かれた結果 けっか ではなく主 しゅ として経験 けいけん 的 てき 観測 かんそく なので、より正確 せいかく には「オークンの経験 けいけん 則 そく 」と呼 よ ばれる。産出 さんしゅつ 量 りょう と雇用 こよう の間 あいだ の関係 かんけい に影響 えいきょう する、生産 せいさん 性 せい などのその他 た 要素 ようそ は考慮 こうりょ されていない。オークン自身 じしん の元々 もともと の法則 ほうそく は、3%の産出 さんしゅつ 量 りょう の増加 ぞうか は、1%の失業 しつぎょう 率 りつ の減少 げんしょう 、0.5%の労働 ろうどう 力 りょく 率 りつ の減少 げんしょう 、0.5%の従業 じゅうぎょう 員 いん 一 いち 人 にん 当 あ たり労働 ろうどう 時間 じかん の増加 ぞうか 、1%の時間 じかん 当 あ たりの産出 さんしゅつ 量 りょう (労働 ろうどう 生産 せいさん 性 せい )の増加 ぞうか に対応 たいおう する、ということであった[3] 。
この相関 そうかん の度合 どあ いは、対象 たいしょう とする国 くに や時期 じき によって変 か わる。
この相関 そうかん はGDPまたはGNP 成長 せいちょう 率 りつ と失業 しつぎょう 率 りつ の変化 へんか を用 もち いた回帰 かいき 分析 ぶんせき によって検証 けんしょう されている。Martin Prachownyは失業 しつぎょう 率 りつ が1%上 あ がる度 たび に産出 さんしゅつ 量 りょう が3%下 さ がると推計 すいけい した (Prachowny 1993[2] ) 。産出 さんしゅつ 量 りょう の変化 へんか に対 たい する失業 しつぎょう 率 りつ の感応 かんおう 度 ど はアメリカでは時間 じかん と共 とも に上 あ がっているようである。Andrew Abelとベン・バーナンキ は、近年 きんねん のデータを使 つか って失業 しつぎょう 率 りつ の1%上昇 じょうしょう が産出 さんしゅつ 量 りょう の2%減少 げんしょう に対応 たいおう すると推計 すいけい した (Abel and Bernanke, 2005) 。
失業 しつぎょう の減少 げんしょう または増加 ぞうか より、GDPの増加 ぞうか または減少 げんしょう の方 ほう が速 はや くなりうる理由 りゆう はいくつかある[要 よう 出典 しゅってん ] 。
失業 しつぎょう が増加 ぞうか すると、
従業 じゅうぎょう 員 いん からの資金 しきん 循環 じゅんかん の乗数 じょうすう 効果 こうか が減少 げんしょう する
失業 しつぎょう 者 しゃ が労働 ろうどう 力 りょく から退出 たいしゅつ する(求職 きゅうしょく 活動 かつどう を止 と める)ため、失業 しつぎょう の統計 とうけい には含 ふく まれない
雇用 こよう 労働 ろうどう 者 しゃ の労働 ろうどう 時間 じかん が短 みじか くなる
雇用 こよう 者 しゃ が必要 ひつよう 以上 いじょう の雇用 こよう を維持 いじ する等 ひとし の理由 りゆう で労働 ろうどう 生産 せいさん 性 せい が下降 かこう する
オークンの法則 ほうそく の含意 がんい のひとつは、労働 ろうどう 生産 せいさん 性 せい が上昇 じょうしょう したり労働 ろうどう 力 りょく 人口 じんこう が増加 ぞうか したりすると、失業 しつぎょう 率 りつ の純 じゅん 減 げん なしで産出 さんしゅつ 量 りょう の純増 じゅんぞう がありうるということである(雇用 こよう なき成長 せいちょう 現象 げんしょう )[4] 。これはまた、少 すく なくとも失業 しつぎょう 率 りつ の変化 へんか ゼロに対応 たいおう するだけのGDP成長 せいちょう が無 な ければ、たとえGDPがプラス成長 せいちょう であっても失業 しつぎょう 率 りつ が上昇 じょうしょう することを表 あらわ している。
オークンの法則 ほうそく の数学 すうがく 的 てき 記述 きじゅつ [ 編集 へんしゅう ]
オークンの法則 ほうそく の乖離 かいり 形式 けいしき は次 つぎ のように書 か ける (Abel & Bernanke 2005):
(
Y
¯
−
Y
)
/
Y
¯
=
c
(
u
−
u
¯
)
{\displaystyle ({\overline {Y}}-Y)/{\overline {Y}}=c(u-{\overline {u}})}
Y
¯
{\displaystyle {\overline {Y}}}
は完全 かんぜん 雇用 こよう 状態 じょうたい での潜在 せんざい 産出 さんしゅつ 量 りょう (GDP)
Y
{\displaystyle Y}
は実際 じっさい の総 そう 産出 さんしゅつ 量 りょう
u
¯
{\displaystyle {\overline {u}}}
は自然 しぜん 失業 しつぎょう 率 りつ
u
{\displaystyle u}
は実際 じっさい の失業 しつぎょう 率 りつ
c
{\displaystyle c}
は失業 しつぎょう の変化 へんか と産出 さんしゅつ 量 りょう の変化 へんか の相関 そうかん 係数 けいすう
アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく では、1965年 ねん ごろから c の値 ね が上述 じょうじゅつ のとおり3から2程度 ていど になっている。
上 うえ に示 しめ したオークンの法則 ほうそく の乖離 かいり 形式 けいしき をそのまま検証 けんしょう するのは難 むずか しい。
Y
¯
{\displaystyle {\overline {Y}}}
と
u
¯
{\displaystyle {\overline {u}}}
は推計 すいけい するしかなく、測定 そくてい することはできないためである。「差分 さぶん 形式 けいしき 」または「成長 せいちょう 率 りつ 形式 けいしき 」として知 し られている形式 けいしき の方 ほう がよく使 つか われており、産出 さんしゅつ 量 りょう の変化 へんか と失業 しつぎょう の変化 へんか とを次 つぎ のように関連付 かんれんづ ける:
Δ でるた
Y
/
Y
=
k
−
c
Δ でるた
u
{\displaystyle \Delta Y/Y=k-c\Delta u\,}
:
Y
{\displaystyle Y}
と
c
{\displaystyle c}
の定義 ていぎ は上記 じょうき の通 とお り
Δ でるた
Y
{\displaystyle \Delta Y}
はある年 とし から翌年 よくねん までの実際 じっさい の産出 さんしゅつ 量 りょう の変化 へんか
Δ でるた
u
{\displaystyle \Delta u}
はある年 とし から翌年 よくねん までの実際 じっさい の失業 しつぎょう 率 りつ の変化 へんか
k
{\displaystyle k}
は完全 かんぜん 雇用 こよう 状態 じょうたい での産出 さんしゅつ 量 りょう の年 とし 平均 へいきん 成長 せいちょう 率 りつ
アメリカでは現在 げんざい k がおよそ3%で c がおよそ2である。従 したが ってこの式 しき は次 つぎ のように書 か ける。
Δ でるた
Y
/
Y
=
.03
−
2
Δ でるた
u
.
{\displaystyle \Delta Y/Y=.03-2\Delta u.\,}
この記事 きじ の一番 いちばん 上 じょう にあるグラフは、オークンの法則 ほうそく の成長 せいちょう 率 りつ 形式 けいしき を図示 ずし している。これは一 いち 年 ねん 毎 ごと ではなく四半期 しはんき データを基 もと に計測 けいそく されている。
オークンの法則 ほうそく の成長 せいちょう 率 りつ 形式 けいしき の導出 どうしゅつ [ 編集 へんしゅう ]
オークンの法則 ほうそく の第 だい 一 いち 形式 けいしき から始 はじ める:
(
Y
¯
−
Y
)
/
Y
¯
=
1
−
Y
/
Y
¯
=
c
(
u
−
u
¯
)
{\displaystyle ({\overline {Y}}-Y)/{\overline {Y}}=1-Y/{\overline {Y}}=c(u-{\overline {u}})}
−
1
+
Y
/
Y
¯
=
c
(
u
¯
−
u
)
.
{\displaystyle -1+Y/{\overline {Y}}=c({\overline {u}}-u).}
両辺 りょうへん の一 いち 期間 きかん の差分 さぶん をとり、次 つぎ 式 しき を得 え る:
Δ でるた
(
Y
/
Y
¯
)
=
(
Y
+
Δ でるた
Y
)
/
(
Y
¯
+
Δ でるた
Y
¯
)
−
Y
/
Y
¯
=
c
(
Δ でるた
u
¯
−
Δ でるた
u
)
.
{\displaystyle \Delta (Y/{\overline {Y}})=(Y+\Delta Y)/({\overline {Y}}+\Delta {\overline {Y}})-Y/{\overline {Y}}=c(\Delta {\overline {u}}-\Delta u).}
通分 つうぶん して次 つぎ 式 しき を得 え る:
(
Y
¯
Δ でるた
Y
−
Y
Δ でるた
Y
¯
)
/
(
Y
¯
(
Y
¯
+
Δ でるた
Y
¯
)
)
=
c
(
Δ でるた
u
¯
−
Δ でるた
u
)
.
{\displaystyle ({\overline {Y}}\Delta Y-Y\Delta {\overline {Y}})/({\overline {Y}}({\overline {Y}}+\Delta {\overline {Y}}))=c(\Delta {\overline {u}}-\Delta u).}
左辺 さへん に
(
Y
¯
+
Δ でるた
Y
¯
)
/
Y
{\displaystyle ({\overline {Y}}+\Delta {\overline {Y}})/Y}
(ほぼ1に等 ひと しい)を掛 か けて, 次 つぎ 式 しき を得 え る:
(
Y
¯
Δ でるた
Y
−
Y
Δ でるた
Y
¯
)
/
(
Y
¯
Y
)
=
Δ でるた
Y
/
Y
−
Δ でるた
Y
¯
/
Y
¯
≈
c
(
Δ でるた
u
¯
−
Δ でるた
u
)
{\displaystyle ({\overline {Y}}\Delta Y-Y\Delta {\overline {Y}})/({\overline {Y}}Y)=\Delta Y/Y-\Delta {\overline {Y}}/{\overline {Y}}\approx c(\Delta {\overline {u}}-\Delta u)}
Δ でるた
Y
/
Y
≈
Δ でるた
Y
¯
/
Y
¯
+
c
(
Δ でるた
u
¯
−
Δ でるた
u
)
.
{\displaystyle \Delta Y/Y\approx \Delta {\overline {Y}}/{\overline {Y}}+c(\Delta {\overline {u}}-\Delta u).}
自然 しぜん 失業 しつぎょう 率 りつ の変化 へんか
Δ でるた
u
¯
{\displaystyle \Delta {\overline {u}}}
は、ほぼ0に等 ひと しいと仮定 かてい する。また、完全 かんぜん 雇用 こよう 状態 じょうたい での産出 さんしゅつ 量 りょう の成長 せいちょう 率 りつ
Δ でるた
Y
¯
/
Y
¯
{\displaystyle \Delta {\overline {Y}}/{\overline {Y}}}
は、その平均 へいきん 値 ち
k
{\displaystyle k}
にほぼ等 ひと しいと仮定 かてい する。すると、最後 さいご に次 つぎ 式 しき を得 え る:
Δ でるた
Y
/
Y
≈
k
−
c
Δ でるた
u
.
{\displaystyle \Delta Y/Y\approx k-c\Delta u.}
^ Knotek, 75
^ a b Martin Prachowny, "Okun's Law: Theoretical Foundations and Revised Estimates", The Review of Economics and Statistics, 1993, 75, (2), 331-36
^ Gordon, 2004, 220
^ Gordon, 2004, Chapter 8 and 9, p 223
Abel, Andrew B. & Bernanke, Ben S. (2005). Macroeconomics (5th ed.). Pearson Addison Wesley. ISBN 0-321-16212-9 .
Baily, Martin Neil & Okun, Arthur M. (1965) The Battle Against Unemployment and Inflation: Problems of the Modern Economy . New York: W.W. Norton & Co.; ISBN 0393950557 (1983; 3rd revised edition).
Case, Karl E. & Fair, Ray C. (1999). Principles of Economics (5th ed.). Prentice-Hall. ISBN 0-13-961905-4 .
Knotek, Edward S. "How Useful Is Okun's Law." Economic Review , Federal Reserve Bank of Kansas City, Fourth Quarter 2007, pages 73–103.
Prachowny, Martin F. J. (1993). "Okun's Law: Theoretical Foundations and Revised Estimates," The Review of Economics and Statistics , 75(2), p p. 331 -336.
Gordon, Robert J., Productivity, Growth, Inflation and Unemployment, Cambridge University Press, 2004