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カルドアの定型ていけいされた事実じじつ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

カルドアの定型ていけいされた事実じじつ(かるどあのていけいかされたじじつ、えい: Kaldor's stylized facts)は、ニコラス・カルドア1957ねん1961ねん論文ろんぶん提示ていじされた経済けいざい成長せいちょうのパターンにかんする6つの観察かんさつ事実じじつのこと[1][2][3]

概要がいよう[編集へんしゅう]

ニコラス・カルドアは長期ちょうきてき成長せいちょう統計とうけいてき特徴とくちょうを6つ要約ようやくしている[1]。6つの特徴とくちょう以下いかとおりである[1][4]

  1. 労働ろうどう分配ぶんぱいりつ資本しほん分配ぶんぱいりつ長期間ちょうきかんでほぼ一定いっていである。
  2. 労働ろうどうしゃいちにんあたりの資本しほんストック成長せいちょうりつ長期間ちょうきかんでほぼ一定いっていである。
  3. 労働ろうどうしゃいちにんあたりの生産せいさん成長せいちょうりつ長期間ちょうきかんでほぼ一定いっていである。
  4. 資本しほん労働ろうどう比率ひりつ資本しほんへのそう支払しはらいがく/労働ろうどうしゃへのそう支払しはらいがく)は長期間ちょうきかんでほぼ一定いっていである。
  5. 投資とうし資本しほん蓄積ちくせき)からの収益しゅうえき長期間ちょうきかんでほぼ一定いっていである。
  6. 労働ろうどう生産せいさんせいそう生産せいさん成長せいちょうりつかんしては国家こっかあいだで2-5%程度ていどちがいがある。

2.は「実質じっしつ資本しほんストックは、労働ろうどうりょくよりもたかりつ成長せいちょうする」、3.は「実質じっしつ生産せいさんだかは、およそ一定いっていりつ成長せいちょうする」、5.は「所得しょとくめる利潤りじゅんりつたか経済けいざいでは、投資とうし生産せいさん効率こうりつたかい」といいかえることもできる[5]

ただし、カルドアはつねにこれらの事実じじつ観察かんさつできるとは主張しゅちょうしていない。実際じっさい経済けいざい成長せいちょうりつ分配ぶんぱいりつビジネスサイクル影響えいきょうけて短期たんきてき変動へんどうする。しかし、これらの変数へんすう長期間ちょうきかん平均へいきんをとると一定いっていしているということを主張しゅちょうしている。これらの観察かんさつ事実じじつアメリカイギリスのデータにもとづいたものであったが、そのくにでも観察かんさつされ、「定型ていけいされた事実じじつ」とばれるようになった。

カルドアの事実じじつ以下いかのようになおすことができる。

  1. 労働ろうどうしゃいちにんあたりの生産せいさん成長せいちょうりつ長期間ちょうきかん一定いっていで、逓減ていげんしない。
  2. 労働ろうどうしゃいちにんあたりの資本しほんストックは時間じかんつうじて成長せいちょうする。
  3. 資本しほん労働ろうどう比率ひりつ資本しほんへのそう支払しはらいがく/労働ろうどうしゃへのそう支払しはらいがく)はほぼ一定いっていである(1と2のけい)。
  4. 資本しほんストックからの収益しゅうえきはほぼ一定いっていである。
  5. じゅん所得しょとく資本しほん労働ろうどう比率ひりつはほぼ一定いっていである。
  6. 実質じっしつ賃金ちんぎん時間じかんつうじて成長せいちょうする(2、4、5のけい)。

さい解釈かいしゃく[編集へんしゅう]

チャールズ・ジョーンズポール・ローマーはカルドアの事実じじつについてさい解釈かいしゃくあたえている[4]かれらのさい解釈かいしゃく以下いかとおりである[4]

  1. 市場いちば拡大かくだいしている(イノベーション、市場いちば貿易ぼうえき自由じゆう都市としなどによる)。
  2. 成長せいちょう加速かそくしている(人口じんこう成長せいちょうりつ経済けいざい成長せいちょうりつ工業こうぎょうまえはほぼゼロだったのが20世紀せいき以降いこう成長せいちょう加速度かそくどてきこっている)。
  3. 近代きんだい成長せいちょうりつくにによってことなる(技術ぎじゅつフロンティアからの距離きょりおうじて成長せいちょうりつことなる)。
  4. くにによって所得しょとく水準すいじゅん生産せいさんせい水準すいじゅんおおきくことなる。
  5. 労働ろうどうしゃいちにんあたりの人的じんてき資本しほん増大ぞうだいしている。
  6. 熟練じゅくれん労働ろうどうしゃ人的じんてき資本しほんたかい)と熟練じゅくれん労働ろうどうしゃ人的じんてき資本しほんひくい)のあいだ相対そうたい賃金ちんぎん長期間ちょうきかんでほぼ一定いっていである。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c Kaldor, Nicholas (1957). “A Model of Economic Growth”. The Economic Journal 67 (268): 591–624. doi:10.2307/2227704. JSTOR 2227704. 
  2. ^ Kaldor, Nicholas (1961) "Capital Accumulation and Economic Growth." In: The Theory of Capital, ed. F. A. Lutz and D. C. Hague, 177-222, New York: St. Martines Press.
  3. ^ Allen, R. G. D. (1968). “Kaldor (Keynesian) Models”. Macro-Economic Theory: A Mathematical Treatment. London: Macmillan. pp. 305–320. ISBN 978-0-333-04112-3. https://archive.org/details/macroeconomicthe0000alle/page/305 
  4. ^ a b c Jones, Charles I.; Romer, Paul M. (2010). “The New Kaldor Facts: Ideas, Institutions, Population, and Human Capital”. American Economic Journal: Macroeconomics 2 (1): 224–245. doi:10.1257/mac.2.1.224. https://www.jstor.org/stable/25760291. 
  5. ^ 阿部あべおさむじん(2007)2007年度ねんど上級じょうきゅうマクロ経済けいざいがく講義こうぎノート(2) Solowの経済けいざい成長せいちょう理論りろん, 2こう