カンムリカイツブリ

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カンムリカイツブリ
カンムリカイツブリ
カンムリカイツブリ(なつ) Podiceps cristatus
保全ほぜんじょうきょう評価ひょうか[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類ぶんるい
ドメイン : かく生物せいぶつ Eukaryota
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : 脊索せきさく動物どうぶつもん Chordata
もん : 脊椎動物せきついどうぶつもん Vertebrata
つな : とりつな Aves
: カイツブリ Podicipediformes
: カイツブリ Podicipedidae
ぞく : カンムリカイツブリぞく Podiceps
たね : カンムリカイツブリ P. cristatus
学名がくめい
Podiceps cristatus
(Linnaeus, 1758)
和名わみょう
カンムリカイツブリ
英名えいめい
Great Crested Grebe
亜種あしゅ
  • P. c. australis (Gould, 1844)
  • P. c. cristatus (Linnaeus, 1758)
  • P. c. infuscatus (Salvadori, 1884)

カンムリカイツブリかんむりにお学名がくめいPodiceps cristatus)は、カイツブリカイツブリカンムリカイツブリぞく分類ぶんるいされる鳥類ちょうるいの1たね

分布ぶんぷ[編集へんしゅう]

     繁殖はんしょく      越冬えっとう      しゅうねん生息せいそく

アフリカ大陸たいりく一部いちぶユーラシア大陸たいりく中部ちゅうぶ以南いなんイギリスオーストラリア日本にっぽんニュージーランド南島なんとう)。北半球きたはんきゅうのものはふゆ一部いちぶ南下なんかする。

日本にっぽんでは、冬季とうきもと亜種あしゅ九州きゅうしゅう以北いほくふゆとりとして飛来ひらいするが、青森あおもりけん下北半島しもきたはんとう滋賀しがけん琵琶湖びわこなど本州ほんしゅう湖沼こしょうでも少数しょうすう繁殖はんしょくする。琵琶湖びわこでは2007ねん越冬えっとうする個体こたいすう1,176が確認かくにんされている[2]

形態けいたい[編集へんしゅう]

全長ぜんちょう56cm (46-61cm)。つばさひらきちょう85cm (85-90cm)。体重たいじゅう596-1,490g[3]と、カイツブリではきたアメリカクビナガカイツブリるい大形おおがたしゅであり[4]日本にっぽんでは最大さいだいしゅとなる[5]

頸部は非常ひじょうながい。上面うわつら黒褐色こっかっしょく下面かめんしろい。頭頂とうちょうにはくろ羽毛うもう伸長しんちょうしたかんむりがある。たね小名しょうみょう cristatus は「かんむりのある」ので、和名わみょう英名えいめい(crested)と同義どうぎさきくろい。小雨こさめくつがえれつ風切かざきりにはしろ斑紋はんもんはいる。

虹彩こうさいくら赤色あかいろくちばしながくまっすぐでさきがとがり、あわ桃色ももいろ

夏季かきにはかんむり発達はったつしたなつになり、ほおからこうあたまにかけてくろ縁取へりとりのある赤褐色せきかっしょくかざしょうじる。冬季とうきにはふゆとしてかんむりはあまり発達はったつせず、ほお羽毛うもうしろい。幼鳥ようちょうかんむりがあまり発達はったつせず、ほお羽毛うもうしろくろ斑紋はんもんはいる。雌雄しゆう同色どうしょく[5][6]

生態せいたい[編集へんしゅう]

ながれのゆるやかな河川かせんみずうみぬま湿原しつげんなどに生息せいそくするが、冬季とうきには河口かこう港湾こうわん沿岸えんがんにも生息せいそくする。

しょくせい動物どうぶつしょくで、魚類ぎょるい両生類りょうせいるい水生すいせい昆虫こんちゅうなどをべる[5]潜水せんすいして獲物えもの捕食ほしょくするのに30びょう以上いじょうくぐることもある[4]

水面すいめんって滑走かっそうしてからち、ながい頸をばして小刻こきざみなつばさどう直線ちょくせんてきぶ。

繁殖はんしょくには縄張なわば形成けいせいする。雌雄しゆうが「カッカッ」と頭部とうぶをもたげながら接近せっきんし、かいって左右さゆうに頸部をる。そのはねづくろいをしたり、たがいにざい回収かいしゅうするという複雑ふくざつ求愛きゅうあい行動こうどうおこなう。繁殖はんしょくには単独たんどくすう生活せいかつする[7]

水辺みずべちかくの水生すいせい植物しょくぶつなどに固定こていされた水生すいせい植物しょくぶつくきわせたぎゃく円錐えんすいじょう直径ちょっけい70-90cmほどの浮巣うきす[8]雌雄しゆうつくり、日本にっぽんでは3-8がつに、1かいに3-5たまごとしに1-2かいむ。めすしゅとして[9]雌雄しゆう交代こうたいだきらんし、だきたまご期間きかんは27-29にちひな孵化ふかしてからやく2週間しゅうかん親鳥おやどりることがおおく、やく10週間しゅうかんそだてひなされ[9]、70-90にち飛翔ひしょうできるようになる。生後せいご2ねんせい成熟せいじゅくする。

人間にんげんとの関係かんけい[編集へんしゅう]

イギリスでは19世紀せいき帽子ぼうし羽根はねかざりや、かわごとしゅあたためるマフ (Muff) にするため大量たいりょう捕獲ほかくされ、激減げきげんしたことがある[4]

兵庫ひょうごけん西宮にしのみや回収かいしゅうされたカンムリカイツブリから、2011ねん平成へいせい23ねん)3がつ2にちこう病原びょうげんせいとりインフルエンザウイルス・つよしどくタイプが確認かくにんされた[10]

亜種あしゅ[編集へんしゅう]

以下いか亜種あしゅ分類ぶんるいされている[11][12][13]

保全ほぜんじょうきょう評価ひょうか[編集へんしゅう]

国際こくさい自然しぜん保護ほご連合れんごう(IUCN)により、レッドリスト軽度けいど懸念けねん(LC)の指定していけている[1]

日本にっぽんでは個体こたいすうすくないものの冬季とうき飛来ひらいする個体こたいすうが1970年代ねんだいから増加ぞうか傾向けいこうにあり[8]青森あおもりけん下北半島しもきたはんとう琵琶湖びわこ少数しょうすう繁殖はんしょくしている[5][6]繁殖はんしょくする個体こたいぐん開発かいはつなどによる生息せいそく破壊はかい懸念けねんされている。環境省かんきょうしょうにより「青森あおもりけんのカンムリカイツブリ繁殖はんしょく個体こたいぐん」がレッドリストの地域ちいき個体こたいぐん(LP)の指定していけている[15]。また以下いか都道府県とどうふけんでレッドリストの指定していけている[16]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b IUCN 2012.2 IUCN Red List of Threatened Species. Version 2011.2. (Podiceps cristatus)” (英語えいご). IUCN. 2012ねん12月13にち閲覧えつらん
  2. ^ 琵琶湖びわこ生物せいぶつ水鳥みずとり” (PDF). 滋賀しがけん. 2012ねん12月13にち閲覧えつらん
  3. ^ Brazil, Mark (2009). Birds of East Asia. Princeton University Press. p. 90. ISBN 978 0 691 13926 5 
  4. ^ a b c 三省堂さんせいどう編修へんしゅうしょ吉井よしいただし三省堂さんせいどう 世界せかいとりめい事典じてん』、三省堂さんせいどう、2005ねん、147-148ぺーじISBN 4-385-15378-7
  5. ^ a b c d ひとでわかる野鳥やちょう (2010)、42ぺーじ
  6. ^ a b やまけいハンディ図鑑ずかん7 日本にっぽん野鳥やちょう (2006)、23ぺーじ
  7. ^ 水辺みずべとり (2002)、13ぺーじ
  8. ^ a b 散歩さんぽたのしむ野鳥やちょうほん (2008)、45ぺーじ
  9. ^ a b 高野たかの伸二しんじ 『カラー写真しゃしんによる 日本にっぽんさん鳥類ちょうるい図鑑ずかん』、東海大学とうかいだいがく出版しゅっぱんかい、1981ねん、188-189ぺーじ
  10. ^ 兵庫ひょうごけん西宮にしのみやにおけるこう病原びょうげんせいとりインフルエンザウイルス・つよしどくタイプの確認かくにんともな環境省かんきょうしょう対応たいおうについて”. 環境省かんきょうしょう自然しぜん環境かんきょうきょく野生やせい生物せいぶつ鳥獣ちょうじゅう保護ほご業務ぎょうむしつ (2011ねん3がつ2にち). 2012ねん12月14にち閲覧えつらん
  11. ^ Clements, James (2007). The Clements Checklist of the Birds of the World (6th ed.). Ithaca, NY: Cornell University Press. p. 8. ISBN 978-0-8014-4501-9 
  12. ^ Podiceps cristatus” (英語えいご). バードライフ・インターナショナル. 2012ねん12月13にち閲覧えつらん
  13. ^ Podiceps cristatus (Linnaeus, 1758)” (英語えいご). ITIS. 2012ねん12月13にち閲覧えつらん
  14. ^ 日本にっぽんとり学会がっかい目録もくろく編集へんしゅう委員いいんかいへん日本にっぽん鳥類ちょうるい目録もくろく 改訂かいていだい7はん日本にっぽんとり学会がっかい、2012ねん、38-39ぺーじISBN 978-4-930975-00-3 
  15. ^ カイツブリ カイツブリ 絶滅ぜつめつのおそれのある地域ちいき個体こたいぐん(LP)”. 環境省かんきょうしょう. 2012ねん12月13にち閲覧えつらん
  16. ^ 日本にっぽんのレッドデータ検索けんさくシステム「カンムリカイツブリ」”. (エンビジョン環境かんきょう保全ほぜん事務じむきょく). 2012ねん12月13にち閲覧えつらん - 「都道府県とどうふけん指定していじょうきょう一覧いちらんひょう表示ひょうじ」をクリックすると、出典しゅってんかく都道府県とどうふけんのレッドデータブックのカテゴリーめい一覧いちらん表示ひょうじされる。
  17. ^ 埼玉さいたまけんレッドデータブック2008動物どうぶつへん” (PDF). 埼玉さいたまけん. pp. 84 (2008ねん). 2012ねん12月13にち閲覧えつらん
  18. ^ 北海道ほっかいどうレッドデータブック・カンムリカイツブリ”. 北海道ほっかいどう (2001ねん). 2012ねん12月13にち閲覧えつらん
  19. ^ 徳島とくしまけんばんレッドデータブック” (PDF). 徳島とくしまけん. pp. 73 (2011ねん8がつ). 2012ねん12月13にち閲覧えつらん
  20. ^ 福岡ふくおかけん希少きしょう野生やせい生物せいぶつ RED DATA BOOK 2011 FUKUOKA・カンムリカイツブリ”. 福岡ふくおかけん (2011ねん). 2012ねん12月13にち閲覧えつらん - 2001年版ねんばんでは絶滅ぜつめつ危惧きぐIIるい
  21. ^ 青森あおもりけんレッドデータブック(2010ねん改訂かいていばん” (PDF). 青森あおもりけん. pp. 200 (2010ねん). 2012ねん12月13にち閲覧えつらん
  22. ^ 千葉ちばけんレッドデータブック動物どうぶつへん(2011ねん改訂かいていばん” (PDF). 千葉ちばけん. pp. 113 (2011ねん). 2012ねん12月13にち閲覧えつらん
  23. ^ 大阪おおさかレッドデータブック・カンムリカイツブリ”. 大阪おおさか (2000ねん3がつ). 2012ねん12月13にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]