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クヌースの矢印やじるし表記ひょうき

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

クヌースの矢印やじるし表記ひょうき(クヌースのやじるしひょうき、えい: Knuth's up-arrow notation)とは、1976ねんドナルド・クヌースきょ大数たいすう表現ひょうげんするために発明はつめいした表記ひょうきほうである[1][2]。これは、乗算じょうざん加算かさん反復はんぷくであり、べきじょう乗算じょうざん反復はんぷくであるのと同様どうようかんがかたもとづくもので、べきじょう反復はんぷくテトレーション)をあらわ演算えんざん表記ひょうきほうである。たとえば宇宙うちゅうろん使つかわれた最大さいだいかずは、クヌースの矢印やじるし表記ひょうきあらわすとおよそ[注釈ちゅうしゃく 1]である。このように、クヌースの矢印やじるし表記ひょうき現実げんじつ世界せかい事物じぶつたとえるにはあまりにもおおきすぎるようなきょ大数たいすう簡単かんたん表現ひょうげんできる表記ひょうきほうひとつである。

クヌースの矢印やじるし表記ひょうき用語ようごとして、日本にっぽんではタワー表記ひょうきという呼称こしょうもちいられる[3][4]一方いっぽう英語えいごでは、テトレーションを指数しすう表記ひょうきしたときの、まるでとうのようにたかみあがる様子ようすした「Power tower[5]」というかたりはあるが、タワー表記ひょうき相当そうとうする用語ようご見受みうけられない。

クヌースの矢印やじるし表記ひょうきのさらに拡張かくちょうとなる表記ひょうきほうには、コンウェイのチェーン表記ひょうきなどがある。

導入どうにゅう

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加算かさん乗算じょうざんべきじょう

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乗算じょうざんは、加算かさん反復はんぷくによって定義ていぎできる。

べきじょうは、乗算じょうざん反復はんぷくによって定義ていぎできる。

なお、一部いちぶ初期しょきコンピュータでは、上向うわむ矢印やじるしべきじょう演算えんざん使つかった[6]ので、それを使つかうと

れいとして、グーゴルプレックス は、10↑10↑100 とける。

テトレーション

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ここでクヌースは、じゅう矢印やじるしテトレーション指数しすう計算けいさん反復はんぷく)をあらわ演算えんざんとして定義ていぎした[2]

これをもちいると、

(10の100おくじょう)

などとける。

それ以上いじょう

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さらにクヌースは、三重みえ以上いじょう矢印やじるし演算えんざん定義ていぎした。三重みえ矢印やじるしじゅう矢印やじるしによる演算えんざん反復はんぷくする演算えんざんであり、ペンテーションあらわす。

同様どうように、よんじゅう矢印やじるし演算えんざん定義ていぎできる。これはヘキセーションあらわす。

これを一般いっぱんてきべると、n じゅう矢印やじるし演算えんざんは、(n -1) じゅう矢印やじるし演算えんざん反復はんぷくとしてあらわすことができる[2]

具体ぐたいれいげると、14↑↑↑↑4 は 14↑↑↑14↑↑↑14↑↑↑14 である。

なお、矢印やじるし使つかった指数しすう記法きほう も、クヌースの矢印やじるし記号きごう特殊とくしゅれいいちじゅう矢印やじるし)としてさい解釈かいしゃくされる。

定義ていぎ

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n じゅう矢印やじるし演算えんざん略記りゃっきすることにする。このとき、クヌースの矢印やじるし表記ひょうきは、つぎのように定義ていぎされる。

ただし、b ≥ 0である。なおa0 = 1なので、最初さいしょの2しき優先ゆうせん順位じゅんいはどちらでもよい。

結合けつごう規則きそく

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クヌースの矢印やじるし通常つうじょう指数しすう計算けいさんである abふくむ)はみぎ結合けつごうである。つまり、かれたときこれは あらわし、 ではない。

具体ぐたいれいげると、

だが、

ではない。

記法きほうとの関係かんけい

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すでべたとおり、1じゅうのクヌースの矢印やじるしべきじょうあらわす。また、2じゅうのクヌースの矢印やじるしはテトレーションをあらわす。

また、もちいてアッカーマン関数かんすう一般いっぱんかいあらわすことができる。

ハイパー演算えんざんは、せき後者こうしゃ関数かんすうあらわせる以外いがいは、使つかったクヌースの記法きほう等価とうかである。

コンウェイのチェーン表記ひょうきは、3れんでは 使つかったクヌースの矢印やじるし表記ひょうき等価とうかだが、さらにながつづけることで、クヌースの矢印やじるし表記ひょうきでは簡潔かんけつあらわせない、あるいは現実げんじつてきあらわせないおおきなかず、たとえばグラハムすう範囲はんいなどをあらわすことができる。

配列はいれつ表記ひょうきも3変数へんすうではクヌースの矢印やじるし表記ひょうき等価とうかだが、この配列はいれつ表記ひょうきをさらにながつづけた場合ばあいは、コンウェイのチェーン表記ひょうきよりもはるかに効率こうりつてきかず爆発ばくはつする。具体ぐたいてきには、4変数へんすう配列はいれつ表記ひょうきでコンウェイのチェーン表記ひょうきレベル、5変数へんすうその拡張かくちょう表記ひょうきレベルとなり、6変数へんすう以上いじょうとなるとそのレベルをえる。

また、多角たかくがた表記ひょうききょ大数たいすうのレベルとしてはクヌースの矢印やじるし表記ひょうきレベルのきょ大数たいすうつくることができ、ハイパーE表記ひょうき拡張かくちょう表記ひょうきでない段階だんかいではクヌースの矢印やじるし表記ひょうきどう程度ていど増加ぞうか速度そくどである。

フォントの都合つごうによる代替だいたい表記ひょうき

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コンピュータうえでのテキストとして表記ひょうきする場合ばあいフォントによっては↑のような記号きごう場合ばあいもあるため、a^^bのようにサーカムフレックスならべる表記ひょうきおこな場合ばあいがある。クヌース自身じしんも、これを代替だいたいてきあるいは簡便かんべん記法きほうとしてみとめている。

指数しすう表記ひょうき ab のかわりに a^b とくのも、これとおなじである。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 複数ふくすう宇宙うちゅうぜん質量しつりょう1個いっこブラックホール圧縮あっしゅくしそれが蒸発じょうはつしたのちに、ポアンカレの回帰かいき定理ていりしたがふたたびブラックホールができる時間じかんべき指数しすう表現ひょうげんするとであり、桁数けたすう非常ひじょうおおきいため、時間じかん単位たんいプランク時間じかんびょうとしのいずれにしても無視むしできる範囲はんい近似きんじする。

出典しゅってん

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  1. ^ フィッシュ『きょ大数たいすうろん だい2はん』インプレス R&D、東京とうきょう、2017ねんISBN 9784802093194http://gyafun.jp/ln/ 
  2. ^ a b c Knuth, D. E. (1976-12-17). “Mathematics and Computer Science: Coping with Finiteness” (英語えいご). Science 194 (4271): 1235–1242. doi:10.1126/science.194.4271.1235. ISSN 0036-8075. https://www.sciencemag.org/lookup/doi/10.1126/science.194.4271.1235. 
  3. ^ S.O. (2017ねん2がつ2にち). “おおきすぎてぜん世界せかいのインクを使つかってもけない「きょ大数たいすう」の世界せかい”. QuizKnock inc.. 2021ねん3がつ28にち閲覧えつらん
  4. ^ ギネスブックにった世界一せかいいちおおきなかずがヤバすぎる!”. 学生がくせい団体だんたいPOMB. 2021ねん3がつ28にち閲覧えつらん
  5. ^ Galidakis, Ioannis and Weisstein, Eric W. “Power Tower”. Wolfram MathWorld. 2021ねん3がつ28にち閲覧えつらん
  6. ^ B. Randell and L.J. Russell, ALGOL 60 Implementation: The Translation and Use of ALGOL 60 Programs on a Computer. Academic Press, 1964. The design of the Whetstone Compiler, p.23 pp.25-26 p.49 p.52 p.61 pp.152-155 p.159 p.171 pp.273-274 p.280 p.287 pp.304-305 p.328 p.347

関連かんれん項目こうもく

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