グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード

グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード（Goodwood Festival of Speed、略称りゃくしょう・FoS。イギリスではFestival of Speedとしても知しられる）は、イングランドのウェスト・サセックスにあるグッドウッドで開催かいさいされるモータースポーツのイベント。年としに一いち度ど、6月がつ下旬げじゅんから7月がつ初旬しょじゅんに開催かいさいされる。

世界せかい各国かっこくのレーシングカーやレーシングサイクルが集結しゅうけつし、多おおくのモータースポーツ愛好あいこう家か達たちでにぎわう。日本にっぽんの自動車じどうしゃメーカーも参加さんかし、自動車じどうしゃ雑誌ざっしに開催かいさいの様子ようすが取とり上あげられる。

概要がいよう[編集へんしゅう]

フェスティバルの主催しゅさい者しゃであるリッチモンド公爵こうしゃく家かは、グレートブリテン島とう南岸なんがんのチチェスター北部ほくぶの丘陵きゅうりょう地ちに12,000エーカーの広大こうだいな私有地しゆうちを持もち、カントリー・ハウス (Goodwood House) や牧草ぼくそう地ち、リゾートホテル、ゴルフコース、グッドウッド競馬けいば場じょう、グッドウッド・サーキット、チチェスター・グッドウッド空港くうこうなどを所有しょゆうしている。

第だい11代だいリッチモンド公爵こうしゃくチャールズ・ゴードン＝レノックス（英語えいご版ばん）は祖父そふ第だい9代だいリッチモンド公爵こうしゃくフレデリック・ゴードン＝レノックスが建設けんせつしたサーキットを復活ふっかつさせた。また、公おおやけ自身じしんも熱心ねっしんなレース愛好あいこう家かであることから、私有地しゆうちを開放かいほうして、古ふるき良よき時代じだいのレーシングマシンの魅力みりょくを楽たのしむことのできるイベントを企画きかくした。

1993年ねん 6月13日にちに最初さいしょの大会たいかいが開催かいさいされ、成功裏せいこうりに終おわった。翌よく1994年ねんからは2日間にちかん開催かいさい、1996年ねんには金曜日きんようびが追加ついかされ3日間にちかん開催かいさいとなった。2012年ねんは木曜もくよう〜日曜にちようの4日間にちかんで行おこなわれる。

入場にゅうじょう料金りょうきんは22歳さい以上いじょうの成人せいじんの場合ばあい、4日間にちかん通とおしチケットが120ユーロ（2012年ねん、日本円にほんえんで約やく13,000円えん）。

カントリー・ハウス前まえの広場ひろばがメイン会場かいじょうとなり、古ふるくは20世紀せいき初頭しょとうのクラシックカーから最新さいしん型がたのF1マシンまでが多数たすう展示てんじされる。名車めいしゃ・珍ちん車しゃの類るいまで普段ふだん目めにすることのない様々さまざまなマシンを間近まぢかで見みることができる。また、専門せんもん書籍しょせきの書店しょてんやパーツショップ、モデルカーショップなどが出店しゅってんし、ビンテージカーのコンクールやオークションも行おこなわれる。

イギリス荘園しょうえん文化ぶんかの薫かおりや開放かいほう的てきな雰囲気ふんいきから「モータースポーツのガーデン・パーティー」と形容けいようされる。この種たねの催もよおしとして歴史れきしはまだ浅あさいが、年々ねんねん規模きぼが拡大かくだいし、世界せかい的てきに注目ちゅうもくされるイベントとなっている。初期しょきの頃ころは数すう万まん人にんの参加さんか者しゃだったが、2003年ねんには約やく15万まん8千せん人にん、2011年ねんには推定すいてい18万まん人にん^[1]を記録きろくしている。

なお、フェスティバルの2ヵ月かげつ後ごの9月がつには「グッドウッド・リバイバル」 (Goodwood Revival) というイベントも開催かいさいされる。こちらはグッドウッド・サーキットを走行そうこうするヒストリックマシンのレースイベントである。

ヒルクライム[編集へんしゅう]

イベントのハイライトは、新旧しんきゅうの参加さんか車両しゃりょうが出走しゅっそうするヒルクライムレースである。カントリー・ハウス周辺しゅうへんの庭園ていえんや牧草ぼくそう地ちを抜ぬける細ほそい私道しどうを、1台だいずつ順番じゅんばんに走行そうこうする。計時けいじ方式ほうしき（タイムアタック）だが、特とくに優勝ゆうしょう等とうの設定せっていはない。イギリスのモータースポーツ・アソシエーション (Motor Sport Association) からオブザーバーが派遣はけんされ、イギリス自動車じどうしゃレースクラブ (British Automobile Racing Club) からコースマーシャルとレスキューが参加さんかしている^[2]。

コースは全長ぜんちょう1.16マイル（約やく1.867km）で、高低こうてい差さは57mある^[2]。コース脇わきにはガードレールではなく、藁わらで作つくった昔むかしながらのストローバリアが並ならべられている。レコードタイムは1999年ねんにニック・ハイドフェルドがマクラーレン・MP4-13で記録きろくした41.6秒びょうであったが、2019年ねんDay2（Timed Practice）にロマン・デュマがフォルクスワーゲンの電気でんき自動車じどうしゃID.Rで41.18秒びょうを記録きろくし20年ねんぶりの更新こうしんとなった。さらに翌よくDay3（Qualifying Shoot Out）で同車どうしゃが39.90秒びょうを記録きろくし40秒びょうの壁かべを打うち破やぶる快挙かいきょを成なし遂とげた。なお、現在げんざいは安全あんぜん面めんの配慮はいりょからF1マシンは公式こうしき計時けいじに参加さんかしていない。

また近年きんねんでは世界せかいラリー選手権せんしゅけん (WRC) 用ようのワークスマシンを中心ちゅうしんとしたラリーカーのために特設とくせつラリーステージも設もうけられている。出走しゅっそう車両しゃりょうは年代ねんだいやカテゴリによってクラス分わけされる。以前いぜんはソープボックス（動力どうりょくを持もたず、坂道さかみちを滑走かっそうするカート）によるレースも行おこなわれていたが、2004年ねんを最後さいごに休止きゅうしされている。車両しゃりょうとドライバーの組くみ合あわせにも趣向しゅこうが凝こらされている。往年おうねんの名めいドライバーがゆかりのマシンを走はしらせることもあれば、現役げんえき若手わかてドライバーが戦前せんぜんのマシンを初はつ体験たいけんすることもある。コースサイドの観客かんきゃく席せき間近まぢかをマシンが走行そうこうするので、スピードやエンジンサウンドなどの迫力はくりょくを楽たのしむことができる。また、運営上うんえいじょうの垣根かきねがなく、一般いっぱん客きゃくが自由じゆうにパドックに立たち入いってドライバーと交流こうりゅうを図はかれる点てんも参加さんか者しゃを増ふやす要因よういんとなっている。

2013年ねん12月発売はつばいのPS3用ようゲーム『グランツーリスモ6』には、このヒルクライムコースが収録しゅうろくされた^[3]。

事故じこ[編集へんしゅう]

2000年ねんのヒルクライムでは死亡しぼう事故じこが発生はっせいした。ジョン・ドーソン・ダマーがドライブするロータス・63がゴール付近ふきんでコントロールを失うしない、オフィシャルポストに激突げきとつ。ドライバーとオフィシャル1名めいが死亡しぼうし、もう1名めいのオフィシャルも片足かたあしを切断せつだんする重傷じゅうしょうを負おった^[4]。

また、同年どうねんのイベントではF1のジョーダン・グランプリの開発かいはつ責任せきにん者しゃだったマイク・ガスコインもジョーダン・199をドライブ中ちゅうにコースオフし、コース脇わきの木きに激突げきとつした^[4]。ガスコインは無傷むきずだったが、マシンはひどく損傷そんしょうした。

記録きろく[編集へんしゅう]

史上しじょう唯一ゆいいつ30秒びょう台だいに入いれた超ちょう小型こがたEVマクマートリー・スピアリング。ファンを回まわしてダウンフォースを発生はっせいさせる、いわゆる「ファン・カー」である。

歴代れきだいの最速さいそくタイム記録きろく^[5]。公式こうしき記録きろくは日曜日にちようび「The Sunday Shootout」での計時けいじが対象たいしょうとなっており、2019年ねんのコースレコード更新こうしんは反映はんえいされていない。

開催かいさい年ねん	ドライバー	車両しゃりょうモデル	記録きろくタイム
1993	Willie Green	Surtees Cosworth TS20	0:56.30
1994	Martin Brundle	McLaren MP4/9	0:47.80
1995	Jonathan Palmer	Williams FW08B	0:46.06
1996	Jonathan Palmer	Williams FW07B	0:45.00
1997	Nick Heidfeld	McLaren MP4/11B	0:47.30
1998	Nick Heidfeld	McLaren MP4/12	0:48.30
1999	Nick Heidfeld	McLaren MP4/13	0:41.60
2000	Martin Stretton	Tyrrell P34	0:45.05
2001	David Franklin	Ferrari 712 Can Am	0:48.26
2002	Rod Millen	Toyota Celica Pikes Peak	0:47.40
2003	Graeme Wight, Jr.	Gould GR51	0:42.90
2004	Justin Law	Jaguar XJR-12	0:49.26
2005	Justin Law	Jaguar XJR-12	0:47.96
2006	Richard Lyons	Nissan 350Z GT500	0:49.51
2007	Anthony Reid	Nissan 350Z GT500	0:53.78
2008	Justin Law	Jaguar XJR8/9	0:44.19
2009	Justin Law	Jaguar XJR8/9	0:44.40
2010	Roger Wills	Williams Cosworth FW05	0:47.15
2011	Dan Collins	Lotus Cosworth 88	0:48.52
2012	Anthony Reid	Chevron GR8 GT3	0:46.46
2013	Justin Law	Jaguar XJR8/9	0:45.95
2014	Sébastien Loeb	Peugeot 208 T16 Pikes Peak	0:44.60
2015	Olly Clark	Subaru Impreza "Gobstopper II"	0:44.91
2016	Olly Clark	Subaru Impreza "Gobstopper II"	0:46.23
2017	Justin Law	Jaguar XJR-12D	0:46.13
2018	Romain Dumas	Volkswagen I.D R Pikes Peak	0:44:32
2019	Romain Dumas	Volkswagen I.D R Pikes Peak	0:42:32
2021	Rob Bell	McLaren 720S GT3X	0:45.01
2022	Max Chilton	McMurtry Spéirling	0:39.08
2023	Marvin Kirchhöfer	McLaren Solus GT	0:45.34

テーマ[編集へんしゅう]

グッドウッドでは毎年まいとし何なにがしかのテーマを設もうけて、そのテーマに沿そった車両しゃりょうやゲストが招待しょうたいされる。また、特定とくていの自動車じどうしゃメーカーを取とり上あげ、そのメーカーにイベントのホストを任まかせている。メイン会場かいじょうの庭にわにはメーカーの実車じっしゃを使つかった巨大きょだいなオブジェが展示てんじされる。過去かこに取とり上あげられたメーカー（および個人こじん）は以下いかの通とおり。